「GNOME Webってどんなブラウザ?」「Epiphanyという名前も聞くけど、違いは?」「ChromeやFirefoxと比べてどうなの?」
こんな疑問を持ったことはありませんか。
GNOME Webは、LinuxのGNOMEデスクトップ環境向けに開発された軽量なWebブラウザです。
この記事では、GNOME Webの基本的な特徴から歴史、使い方、メリット・デメリットまで詳しく解説します。
GNOMEユーザーだけでなく、軽量なブラウザを探している方にも役立つ情報をお届けします。
GNOME Web(Epiphany)とは
GNOME Webは、GNOMEプロジェクトが開発する無料でオープンソースのWebブラウザです。
2012年まで「Epiphany(エピファニー)」という名前で知られていました。
名前の変遷
Epiphany時代(2002年〜2012年):
2002年12月24日に最初のバージョンがリリースされました。
「Epiphany」という名前は「突然の気づき、本質的な理解」という意味です。
GNOME Webへの改名(2012年〜現在):
GNOME 3.4のリリースに合わせて「Web」に改名されました。
各言語で分かりやすい名前を付けるというGNOMEの方針に従っています。
開発コードやソースコードでは今でも「Epiphany」という名前が使われています。
パッケージ名の違い:
Debian系: epiphany-browser(「Epiphany」という名前のゲームと名前が衝突するため)
Fedora/Arch Linux系: epiphany
基本的な特徴
GNOME Webは、シンプルさと使いやすさを重視したブラウザです。
レンダリングエンジン:
WebKitGTK(AppleのWebKitをGTK向けに移植したもの)を使用しています。
ChromiumのBlinkやFirefoxのGeckoではなく、Safariと同じWebKit系のエンジンです。
対象ユーザー:
技術者ではない一般ユーザー(全ユーザーの約90%)を対象にしています。
シンプルで分かりやすいインターフェースを提供します。
複雑な設定や専門的な機能は意図的に省かれています。
デスクトップ環境との統合:
GNOMEデスクトップとの完全な統合を重視しています。
GNOMEのテーマ、キーリング(パスワード管理)、オンラインアカウントなどと連携します。
他のデスクトップ環境でも動作しますが、GNOME以外での使用は主な目的ではありません。
GNOME Webの歴史
GNOME Webの開発の歴史を振り返ります。
Galeonからのフォーク(2002年)
GNOME Webは、Marco Pesenti GrittiがGaleonというブラウザからフォークして作りました。
フォークの理由:
GNOMEプロジェクトがヒューマンインターフェースガイドライン(HIG)を採用しました。
Galeonはパワーユーザー向けで、多機能すぎて複雑でした。
Galeonの開発者たちはシンプル化に反対しました。
GrittiはGNOME HIGに準拠したシンプルなブラウザを作ることにしました。
初期の設計思想:
不要な機能を削除し、必要最小限に絞りました。
GNOMEのグローバルテーマと設定を使用しました。
「シンプル」は「機能が少ない」ではなく「分かりやすい」という意味でした。
Geckoからの移行(2002年〜2009年)
初期のEpiphanyは、MozillaのGeckoレンダリングエンジンを使用していました。
Gecko時代の課題:
MozillaのリリースサイクルとGNOMEの6ヶ月サイクルが合いませんでした。
Mozillaが徐々にGeckoをFirefoxの一部として扱うようになりました。
第三者によるGecko利用が軽視されるようになりました。
リソース消費が多く、シンプルさという目標に反していました。
WebKitへの移行:
2007年7月: WebKitのサポートを追加しました(Geckoと並行)。
2008年4月1日: WebKitのみを使用することを発表しました。
2009年7月1日: バージョン2.26がGecko対応の最終版となることを発表しました。
2009年9月: GNOME 2.28でWebKitへの移行が完了しました。
WebKitを選んだ理由:
GObject APIでGNOME技術(Cairo、Pango、libsoup、GStreamer)と統合しやすい。
6ヶ月のリリースサイクルがGNOMEと一致する。
軽量でシンプルさという目標に合致する。
メンテナンスしやすい。
近年の進化
主なマイルストーン:
2012年: GNOME 3.4で「Web」に改名しました。
2013年: iOS 7.0とOS X 10.9でJavaScriptCore.frameworkが利用可能になりました(これは別のプロジェクトですが、同時期の出来事として記載)。
2019年: バージョン3.34でBubblewrapサンドボックスが導入されました。
2020年: バージョン3.36でPDF.jsによるネイティブPDFサポートが追加されました。
2022年: バージョン43でlibadwaitaに移行し、GTK4対応になりました。
GNOME Webの機能
GNOME Webが提供する主な機能を紹介します。
基本機能
タブブラウジング:
複数のタブを開いてWebサイトを閲覧できます。
タブの概要表示機能で、開いているすべてのタブを一覧できます。
タブの固定やミュートも可能です。
スマート検索:
アドレスバーから直接検索できます。
DuckDuckGoがデフォルトの検索エンジンです(Google、Bingも選択可能)。
カスタム検索エンジンの追加もできます。
検索候補を有効にすると、Googleからキーワード候補が表示されます。
ブックマーク:
アドレスバーから簡単にブックマークを追加できます。
見やすく整理されたブックマーク管理画面があります。
履歴:
閲覧履歴を管理できます。
履歴から特定のページを素早く見つけられます。
プライバシーとセキュリティ機能
サンドボックス化:
バージョン3.34(2019年9月)からBubblewrapサンドボックスを導入しました。
タブ内のプロセスが他のタブやOSにアクセスできないように隔離されます。
悪意のあるWebサイトからシステムを保護します。
広告ブロック:
デフォルトで広告ブロッカーが有効になっています。
WebKitコンテンツブロッカーに基づいています。
マルウェアやフィッシング攻撃から保護します。
トラッキング防止:
Webサイトによる追跡を防ぎます。
プライバシーを重視した設計になっています。
インテリジェントトラッキング防止(ITP):
WebKitのITP機能を利用しています。
サードパーティCookieによる追跡を制限します。
便利な機能
リーダーモード:
広告やサイドバーなどの不要な要素を取り除きます。
テキストを読みやすいシンプルなレイアウトで表示します。
文字サイズやフォントをカスタマイズできます。
プログレッシブWebアプリ(PWA):
Webアプリをデスクトップアプリとしてインストールできます。
GNOMEのアプリケーションリストに表示されます。
通常のブラウザとは独立したウィンドウで動作します。
PDFビューアー:
バージョン3.36からPDF.jsを使用してPDFをネイティブ表示できます。
外部アプリを起動せずにPDFを閲覧できます。
セキュリティ面でも安全です(サンドボックス内で表示)。
オートフィル:
フォームの自動入力に対応しています。
パスワードマネージャーと連携します。
マウスジェスチャー:
マウスの動きでブラウザを操作できます(設定で有効化可能)。
タブを閉じる、ページを更新する、戻る/進むなどの操作ができます。
同期機能
Firefox Syncサポート(一部バージョン):
GNOME 3.26からGNOME 46まで、Firefox Syncに対応していました。
ブックマーク、履歴、パスワード、開いているタブを同期できました。
GNOME 47でMozillaのFirefox Sync仕様変更により無効化されました。
カスタマイズ機能
カスタムスタイルシート(CSS):
Webページの見た目をカスタマイズできます。
設定の「Fonts and style」で有効化できます。
ユーザースクリプト:
JavaScriptスクリプトを実行してWebページの動作を変更できます。
特定のWebサイトにのみ適用することもできます。
パワーユーザー向けの機能です。
GNOMEデスクトップとの統合
GNOME Webは、GNOMEデスクトップと深く統合されています。
見た目の統合
テーマの自動適用:
GNOMEのグローバルテーマを自動的に使用します。
ライトモード/ダークモードに自動で対応します。
libadwaitaを使用してAdwaitaテーマを適用します。
アイコンテーマ:
GNOMEで選択したアイコンテーマが自動的に使われます。
Firefoxのように別途アイコンテーマを用意する必要がありません。
機能の統合
GNOMEキーリング:
パスワードを「パスワードと鍵」アプリで一元管理できます。
他のGNOMEアプリとパスワードを共有できます。
GNOMEオンラインアカウント:
GoogleやMicrosoftなどのアカウントと連携できます。
ログイン情報を自動的に処理します。
NetworkManager:
ネットワーク接続の状態を検知します。
ネットワークの切り替えに自動で対応します。
アクセシビリティ機能:
視覚障害者向けのテーマをサポートします。
GNOMEのアクセシビリティ機能と統合されています。
フルキーボードナビゲーションに対応しています。
プラットフォーム技術
GTK4/libadwaita:
バージョン43からGTK4とlibadwaitaを使用しています。
モダンで洗練されたUIになっています。
Wayland対応:
Waylandディスプレイサーバーに対応しています。
Firefoxよりも早くWaylandサポートを実装しました(Firefox is still experimental as of 2017)。
Flatpak対応:
Flatpakパッケージとして配布されています。
サンドボックス環境で安全に実行できます。
GNOME Webのメリット
GNOME Webを使用するメリットを紹介します。
シンプルで使いやすい
インターフェースが非常にシンプルです。
技術的な知識がなくても簡単に使えます。
不要な機能がなく、迷うことがありません。
軽量で高速
ChromeやFirefoxと比べてメモリ使用量が少ない傾向があります。
起動が速く、動作が軽快です。
古いPCや非力なマシンでも快適に動作します。
GNOMEとの完璧な統合
GNOMEデスクトップと完全に統合されています。
見た目や操作性がGNOMEと一貫しています。
パスワード管理などの機能を他のGNOMEアプリと共有できます。
プライバシーとセキュリティ
デフォルトで広告ブロックとトラッキング防止が有効です。
サンドボックス化によりセキュリティが強化されています。
プライバシーを重視した設計になっています。
完全なオープンソース
ソースコードが完全に公開されています。
GPLライセンスで配布されています。
コミュニティによる開発が行われています。
標準準拠
Web標準に準拠しています。
非標準機能を採用せず、Webの自由を守ることを重視しています。
特定のブラウザへの依存を避けます。
GNOME Webのデメリット
GNOME Webにはいくつかの制限や課題もあります。
拡張機能のサポートが限定的
過去の拡張機能:
以前は拡張機能をサポートしていましたが、安定性とメンテナンスの問題で削除されました。
人気のある機能(広告ブロックなど)は本体に組み込まれました。
現在の状況:
GNOME 43で実験的にWebExtensionsサポートが追加されました。
ChromeやFirefoxで使われているWebExtensions形式の対応を目指しています。
まだ完全には実装されていません。
機能の不足
GNOME Shell拡張機能:
GNOME Shell Extensionsの管理ができません。
これだけのためにChromiumやFirefoxを併用する必要があります。
その他の制限:
一部のWebサイトで正しく表示されないことがあります。
開発者ツールは基本的なものしかありません(WebInspectorは使えます)。
高度なカスタマイズには限界があります。
パフォーマンスの問題
動画再生:
YouTubeなどでの動画再生が遅く感じることがあります。
CPU使用率が高くなることが報告されています。
ハードウェアアクセラレーションは改善されつつあります。
Webページの読み込み:
FirefoxやChromeと比べて読み込みが遅く感じることがあります。
GPUよりもCPUを多用する傾向があります。
安定性の課題
クラッシュが比較的多いという報告があります。
特に複数のタブを開いている場合に不安定になることがあります。
開発が活発な一方、バグ修正が追いついていない面もあります。
開発リソースの不足
FirefoxやChromeと比べて開発者が少ないです。
新機能の追加や改善のペースが遅い傾向があります。
コミュニティからの貢献が少ない状況です。
他のブラウザとの比較
GNOME Webと主要なブラウザを比較します。
Firefox vs GNOME Web
Firefox:
多機能で拡張性が高い。
開発者ツールが充実している。
クロスプラットフォーム対応。
メモリ使用量が多い。
GNOMEとの統合は限定的。
GNOME Web:
シンプルで軽量。
GNOMEと完璧に統合。
拡張機能のサポートが限定的。
一部のサイトで互換性に問題。
Chrome/Chromium vs GNOME Web
Chrome/Chromium:
高速で安定している。
Google サービスとの統合が強い。
拡張機能が豊富。
メモリ使用量が非常に多い。
プライバシーへの懸念(Chrome)。
GNOME Web:
メモリ使用量が少ない。
プライバシー重視。
シンプルなインターフェース。
機能が限定的。
Safari vs GNOME Web
両方ともWebKitベースですが、用途が異なります。
Safari:
macOS/iOS向けに最適化。
Appleのエコシステムと統合。
高速で安定している。
GNOME Web:
Linux/GNOME向けに最適化。
GNOMEエコシステムと統合。
完全にオープンソース。
GNOME Webのインストール方法
GNOME Webをインストールする方法を紹介します。
パッケージマネージャーでインストール
Ubuntu/Debian系:
sudo apt install epiphany-browser
Fedora:
sudo dnf install epiphany
Arch Linux:
sudo pacman -S epiphany
Flatpakでインストール(推奨)
公式が推奨するインストール方法です。
flatpak install flathub org.gnome.Epiphany
メリット:
最新版を使用できます。
サンドボックス環境で安全に実行できます。
ディストリビューションに依存しません。
開発版のインストール
Technology Preview(テスト版):
flatpak install https://nightly.gnome.org/repo/appstream/org.gnome.Epiphany.Devel.flatpakref
Canary(最新開発版):
flatpak --user install https://nightly.gnome.org/repo/appstream/org.gnome.Epiphany.Canary.flatpakref
注意:
開発版は不安定です。
日常使用には推奨されません。
テストや開発目的で使用してください。
GNOME Webの使い方
GNOME Webの基本的な使い方を説明します。
起動方法
Superキーを押して「Web」と入力します。
GNOME Webのアイコンをクリックします。
基本操作
新しいタブを開く:
Ctrl+Tキーを押します。
タブバーの「+」ボタンをクリックします。
タブを閉じる:
Ctrl+Wキーを押します。
タブの「×」ボタンをクリックします。
ブックマークを追加:
アドレスバーの星アイコンをクリックします。
リーダーモードを有効化:
対応しているページでアドレスバーの本アイコンをクリックします。
設定のカスタマイズ
広告ブロックの管理:
設定 → Privacy → Block adverts and tracking
検索エンジンの変更:
設定 → Search → Search engine
カスタムCSSの有効化:
設定 → Fonts and style → Use custom stylesheet
Webアプリのインストール
対応するWebサイトを開きます。
メニューから「Install Site as Web Application」を選択します。
WebアプリがGNOMEのアプリケーションリストに追加されます。
GNOME Webの今後
GNOME Webの将来の展望について考えます。
開発の課題
開発者の不足:
コミュニティからの貢献が少ない状況です。
Firefoxが強力すぎて、GNOME Webへの関心が低いです。
機能の充実:
WebExtensionsサポートの完全実装が求められています。
パフォーマンスの改善が必要です。
安定性の向上が課題です。
期待される改善
WebExtensionsサポート:
実験的サポートから本格的な実装へ。
ChromeやFirefoxの拡張機能が使えるようになる可能性。
パフォーマンス改善:
ハードウェアアクセラレーションの強化。
動画再生の最適化。
ページ読み込み速度の向上。
WebKitGTKの進化:
WebKitGTKの継続的な改善がGNOME Webに恩恵をもたらします。
Safariとは独立した機能開発が行われています。
存在意義
多様性の維持:
FirefoxとChromium以外の選択肢として重要です。
Webの多様性を保つために必要です。
GNOMEユーザーへの最適化:
GNOMEデスクトップに完璧に統合されたブラウザとして価値があります。
軽量でシンプルな選択肢を提供します。
まとめ
GNOME Web(旧Epiphany)は、GNOMEプロジェクトが開発する軽量でシンプルなWebブラウザです。
主な特徴:
2002年にGaleonからフォークして開発が始まりました。
2009年にGeckoからWebKitGTKに移行しました。
2012年に「Epiphany」から「Web」に改名されました。
GNOMEデスクトップとの完璧な統合を重視しています。
シンプルさと標準準拠を設計思想としています。
メリット:
軽量で高速、メモリ使用量が少ない。
GNOMEとの統合が完璧。
デフォルトで広告ブロックとトラッキング防止。
完全なオープンソース。
サンドボックス化によるセキュリティ強化。
デメリット:
拡張機能のサポートが限定的。
一部のWebサイトで互換性の問題。
動画再生などのパフォーマンス課題。
クラッシュが比較的多い。
開発リソースが不足している。
どんな人におすすめ?
GNOMEデスクトップを使用している人。
軽量でシンプルなブラウザを探している人。
プライバシーとセキュリティを重視する人。
ChromeやFirefox以外の選択肢を求めている人。
逆におすすめできない人:
多数の拡張機能を使いたい人。
Web開発者。
動画視聴が主な用途の人。
安定性を最優先する人。
GNOME Webは、ChromeやFirefoxのような万能ブラウザではありませんが、GNOMEユーザーにとっては魅力的な選択肢です。
シンプルさと軽量さを求めるなら、一度試してみる価値があります。
参考情報
本記事は以下の信頼できる情報源を参照して作成しました。
- GNOME Web – Wikipedia
- GNOME/epiphany – GitHub
- Web – Apps for GNOME
- GNOME Web – ArchWiki
- Taking Stock: The Present Condition of GNOME Web
この記事は2025年2月9日時点の情報に基づいています。

コメント