Comodo Dragon(コモドドラゴン)は、セキュリティベンダーのComodo社が開発した、プライバシーとセキュリティに特化したウェブブラウザです。
Google Chromeと同じChromiumをベースにしながら、Googleへの情報送信機能を削除し、独自のセキュリティ機能を追加した「Chromeのより安全版」として開発されています。
この記事では、Comodo Dragonの特徴、メリット・デメリット、使い方、注意点まで詳しく解説します。
Comodo Dragonとは
Comodo Dragonは、オープンソースのChromiumプロジェクトをベースに、セキュリティベンダーのComodo Groupが独自にカスタマイズしたウェブブラウザです。
無料で利用でき、Windows向けに提供されています。
Comodo Groupについて
Comodo Groupは、アメリカに本社を置くサイバーセキュリティ企業です。
日本ではやや知名度が低いかもしれませんが、以下のような製品を提供しています。
- Comodo Internet Security(総合セキュリティソフト)
- Comodo Firewall(ファイアウォールソフト)
- SSL証明書発行サービス
特にComodo Firewallは、強力なプロセス監視機能(HIPS:Host Intrusion Prevention System)を持ち、セキュリティ専門家の間で定評があります。
このようなセキュリティの専門知識を持つ企業が開発したブラウザが、Comodo Dragonです。
Chromiumベースとは
Chromiumは、Google Chromeの母体となっているオープンソースのウェブブラウザプロジェクトです。
Google ChromeはこのChromiumに、以下のようなGoogle独自機能を追加してリリースしています。
- Googleアカウントとの同期機能
- 自動アップデート(Google Updater)
- Adobe Flash Playerの内蔵
- RLZトラッキング(Googleによる利用状況追跡)
- 各種情報のGoogle送信機能
Comodo Dragonは、このChromiumをベースにしながら、Googleへの情報送信機能を削除し、Comodo独自のセキュリティ機能を追加したブラウザです。
同様のコンセプトのブラウザとして、SRWare Ironなどがあります。
最新バージョン情報
2025年5月時点での最新バージョンは134.0.6998.179です。
Comodo Dragonは継続的にアップデートされており、Chromiumの最新バージョンに追従しています。
2024年から2025年にかけても、以下のようなバージョンがリリースされています。
- 134.0.6998.179(2025年5月19日)
- 132.0.6834.160(2025年3月11日)
- 131.0.6778.109(2024年12月24日)
- 129.0.6668.90(2024年11月13日)
定期的なアップデートにより、最新のセキュリティパッチと機能が提供されています。
Comodo Dragonの主な特徴
Comodo DragonがGoogle Chromeや他のブラウザと異なる点を見ていきましょう。
プライバシー保護機能の強化
Comodo Dragonの最大の特徴は、プライバシー保護機能の強化です。
Google Chromeから以下の機能が削除または無効化されています。
クライアント識別番号の削除
Chromeでは、ユーザーごとに固有の識別番号が割り当てられ、Googleに送信されます。
Dragonではこの機能が削除されています。
RLZトラッキングの削除
RLZは、Chromeがどこからインストールされたか、どのように使用されているかを追跡する機能です。
Dragonでは完全に削除されています。
Googleへのエラーレポート送信の削除
ブラウザのクラッシュやエラー情報がGoogleに自動送信される機能が削除されています。
URLトラッカーの削除
アドレスバーに入力したURLがGoogleに送信される機能が削除されています。
ダウンロードトラッキングのブロック
ファイルのダウンロード情報がGoogleに送信されることを防ぎます。
リモートエラーページの削除
ページ読み込みエラー時に、Googleのサーバーに問い合わせる機能が削除されています。
Comodo独自のセキュリティ機能
プライバシー機能の削除だけでなく、Comodo独自のセキュリティ機能も追加されています。
Comodo SecureDNS
インストール時に、Comodo SecureDNSを使用するかどうか選択できます。
Comodo SecureDNSは、悪意のあるウェブサイトや不正・違法なコンテンツを自動的に検出してブロックする無料サービスです。
DNSサーバーは世界中に配置されており、ウェブサイトの読み込み高速化にも貢献します。
プライマリDNS:8.26.56.26
セカンダリDNS:8.20.247.20
すべてのアプリケーションで使用するか、Dragonのみで使用するかを選択できます。
SSL証明書の強化検証
ドメイン検証技術により、優れたSSL証明書と劣ったSSL証明書を識別・分離します。
低検証証明書の警告機能があり、安全でないSSL証明書を使用しているサイトに警告を表示します。
CertSentry機能により、SSL証明書の強度を評価します。
Site Inspector拡張機能
Comodoのサイト検査サービスを使用して、ウェブページをスキャンする拡張機能がプレインストールされています。
コンテキストメニュー(右クリックメニュー)からリンクをスキャンし、安全である場合に自動的に移動する機能があります。
悪意のあるコードをホストしているサイトかどうかを判定します。
Online Security Pro拡張機能
悪意のあるサイトや、正規のサイトを装ったフィッシングサイトなどのオンライン脅威からユーザーを保護する拡張機能です。
リアルタイムでPCや個人情報を守ります。
Comodo独自の便利機能
セキュリティ以外にも、便利な機能が追加されています。
Media Downloader(メディアダウンローダー)
動画サイトの動画などのメディアファイルをPCに簡単にダウンロードできる機能です。
対応している動画サイトは多数ありますが、サイトによってはダウンロードできない場合もあります。
Share機能(共有機能)
閲覧しているページをFacebook、Twitter、LinkedInで簡単に共有できます。
テキストをハイライトしてブラウザの左マージンにドラッグ&ドロップするだけで共有できます。
検索機能の強化
テキストをハイライトしてアドレスバーにドラッグ&ドロップすると、Google、Googleイメージ、Google翻訳、YouTube、Wikipediaで検索を実行できます。
IP/DNS Leakage Detector
自分のIPアドレス、DNSサーバーの設定、回線速度や場所などの情報を表示するツールです。
VPN使用時のIPリーク(情報漏洩)を確認するのに便利です。
Google Chromeと共通の機能
Chromiumベースなので、以下のChrome機能も利用できます。
- タブブラウジング
- ブックマーク管理
- シークレットモード(プライベートブラウジング)
- Chrome拡張機能のサポート
- 高速なJavaScriptエンジン
- 開発者ツール
- 自動翻訳機能
- PDFビューア内蔵
Chrome用の拡張機能やテーマがそのまま使えるため、カスタマイズ性も高いです。
自動アップデート機能
Google Updaterの代わりに、Comodo独自のアップデート機能が搭載されています。
dragon_updater.exeというプロセスが常時起動し、最新版があれば自動的にインストーラーをダウンロードしてくれます。
ポータブル版でも自動アップデートが機能します。
SRWare Ironなどの同様のブラウザには自動アップデート機能がないため、これはComodo Dragonの大きな利点です。
インターフェースと使い方
Comodo DragonのUIは、Google Chromeとほぼ同じです。
基本的なインターフェース
デザインはシンプルでエレガント、濃い色調が優勢です。
Chromeよりもやや厳格な印象を受けるかもしれません。
一つの大きな違いは、ツールメニューの位置です。
Chromeでは右上にありますが、Dragonでは左上にあります。
アドレスバーの横には、以下のボタンが配置されています。
- Privdog
- WebInspector
- Share
- Media Downloader
インストール方法
Comodo公式サイトからインストーラー(dragonsetup.exe)をダウンロードします。
インストーラーを実行し、使用許諾契約書に同意します。
インストール先を選択します(デフォルトのままで問題ありません)。
ポータブル版を希望する場合は、「Portable version」にチェックを入れます。
他のブラウザから設定をインポートするかどうか選択します。
Comodo SecureDNSを使用するかどうか選択します。
- すべてのアプリケーションで使用
- Dragonのみで使用
- 使用しない
インストールが完了したら、Dragonが起動します。
主な設定項目
Dragonの設定画面には、Chrome標準にはない以下の項目が追加されています。
シークレットモードでブラウザを起動
起動時に常にシークレットモード(プライベートブラウジング)で開始します。
HTTPリファラヘッダを抑制する
リファラ情報(どのページから来たか)の送信を抑制し、プライバシーを保護します。
ブラウザを閉じた時に履歴をクリアする
ブラウザ終了時に自動的に閲覧履歴を削除します。
プロキシ設定オプション
プロキシサーバーの設定を簡単に変更できます。
マルウェアのドメインフィルタリング
Comodo Secure DNSによるマルウェアドメインのフィルタリングを有効化します。
Comodo Dragonのメリット
Comodo Dragonを使用する利点をまとめます。
プライバシー保護
Googleへの情報送信機能が削除されているため、プライバシーを重視するユーザーに適しています。
ダウンロード履歴、検索履歴、エラー情報などがGoogleに送信されることがありません。
高いセキュリティ
セキュリティベンダーが開発しているだけあって、セキュリティ機能が充実しています。
Comodo SecureDNS、SSL証明書検証強化、Site Inspectorなどにより、安全なブラウジングが可能です。
Chromeとの互換性
Chromiumベースなので、Chromeと同じ拡張機能やテーマが使えます。
Chromeから移行しても、使い慣れた環境をそのまま維持できます。
自動アップデート
SRWare Ironなどと異なり、自動アップデート機能があります。
常に最新のセキュリティパッチが適用されるため、安全性が保たれます。
高速なパフォーマンス
Chromiumベースなので、ページ読み込みが高速です。
多くのユーザーレビューで、Chrome、Dragon、SRWare Ironの順に速いと評価されています。
無料で利用可能
完全無料で、機能制限もありません。
Comodo Dragonのデメリットと注意点
一方で、いくつかのデメリットや注意すべき点もあります。
過去のセキュリティ問題
2015年、Comodo DragonにプレインストールされていたPrivdogという広告ブロック拡張機能に重大なセキュリティ脆弱性が発見されました。
Privdogは、暗号化されたSSL通信の内容をプレーンテキスト(平文)でAdTrustMediaに送信していることが判明しました。
この問題はGoogleのエンジニアによって公開され、大きな批判を受けました。
Googleエンジニアの報告によると、以下の問題がありました。
- Dragonがデフォルトブラウザを強制的に変更
- DNS設定をハイジャック
- 同一生成元ポリシー(Same-Origin Policy)を無効化
- これにより、悪意のあるウェブサイトがプライベートデータにアクセス可能に
Comodoは問題を修正したと主張していますが、最初のパッチは効果がないことが示されました。
その後、問題は修正されたとされていますが、この出来事は信頼性を大きく損ないました。
ユーザートラッキングの存在
Googleへの情報送信は削除されていますが、Comodo自身もユーザーをトラッキングしています。
Comodoは以下の情報を収集します。
- ブラウザ使用時間
- オペレーティングシステム
- 証明書失効確認(訪問したサイトを示す)
プライバシーポリシーによると、カリフォルニア州以外では、IPアドレスは個人情報とみなされないとされています。
ログファイルには、クッキーやブラウザ機能(およびカリフォルニア州外ではIPアドレス)で識別可能なユーザー情報が含まれます。
ブラウザには広告が表示され、「製品の一部としての情報またはクエリの内容に関連」するとされています。
知名度とコミュニティの小ささ
ChromeやFirefoxと比べると、ユーザー数が少なく、情報も限られています。
問題が発生した際に、解決方法を見つけるのが難しい場合があります。
公式フォーラムやコミュニティは存在しますが、規模は小さめです。
一部のウェブサイトとの互換性問題
主流ブラウザではないため、一部のウェブサイトで正常に動作しない可能性があります。
特に、ブラウザを厳密にチェックするサイトでは問題が発生することがあります。
リソース消費
Chromiumベースのブラウザ全般に言えることですが、メモリを多く使用します。
高いパフォーマンスを得るため、システムリソースをある程度消費します。
古いPCや低スペックPCでは、動作が重く感じられる可能性があります。
公式拡張機能の数が限られている
Chrome Web Storeの拡張機能は使用できますが、Comodo公式の拡張機能は限られています。
類似ブラウザとの比較
Comodo Dragonと似たコンセプトのブラウザを比較します。
SRWare Iron
SRWare Ironも、Chromiumベースでプライバシー重視のブラウザです。
SRWare Ironとの違い
- Comodo Dragon:自動アップデート機能あり
- SRWare Iron:自動アップデート機能なし(手動で確認が必要)
- Comodo Dragon:更新速度が速く、Chromiumの最新版に早く追従
- SRWare Iron:更新がやや遅れがち
- Comodo Dragon:セキュリティベンダーの製品
- SRWare Iron:ドイツのソフトウェア会社の製品
動作速度は、多くのレビューでDragonの方がIronより速いとされています。
Google Chrome
Google Chromeとの違い
- プライバシー:DragonはGoogle送信機能を削除
- セキュリティ:Dragonは追加のセキュリティ機能を搭載
- 同期:ChromeはGoogleアカウントと同期可能、Dragonは不可
- 知名度:Chromeは圧倒的に高い、Dragonは低い
- サポート:Chromeは公式サポート充実、Dragonは限定的
Comodo IceDragon
Comodo社は、Firefoxベースの「Comodo IceDragon」も提供しています。
IceDragonは、Firefoxに対してDragonがChromeに対するのと同様の関係です。
Firefoxベースのため、Firefox拡張機能が使用できます。
Chromeベースが好みならDragon、Firefoxベースが好みならIceDragonという選択になります。
Comodo Dragonの適切な使用者
以下のような方にComodo Dragonは適しています。
プライバシーを重視する方
Googleへの情報送信を避けたい方には良い選択肢です。
ただし、Comodo自身もトラッキングを行っていることは理解しておく必要があります。
セキュリティを重視する方
セキュリティ機能が充実しているため、安全なブラウジングを求める方に適しています。
Comodo SecureDNS、SSL証明書検証、Site Inspectorなどが役立ちます。
Chromeの操作性に慣れている方
Chromeとほぼ同じUIなので、Chromeユーザーなら違和感なく使えます。
自動アップデートを重視する方
常に最新の状態を保ちたい方には、自動アップデート機能が便利です。
よくある質問(FAQ)
Comodo Dragonに関するよくある質問と回答をまとめました。
Comodo Dragonは完全に無料ですか
はい、完全に無料で、機能制限もありません。
Comodo公式サイトからダウンロードして自由に使用できます。
Google Chromeの拡張機能は使えますか
はい、使えます。
ChromiumベースなのでChrome Web Storeから拡張機能をインストールできます。
ほとんどの拡張機能が正常に動作しますが、一部互換性のないものもあります。
Windows以外のOSで使えますか
現在、Comodo DragonはWindows専用です。
macOSやLinux版は提供されていません。
Windows 7、8、10、11で動作します。
ポータブル版はありますか
はい、インストール時にポータブル版を選択できます。
ポータブル版は、USBメモリなどから直接実行できます。
レジストリを使用せず、設定ファイルがインストールフォルダに保存されます。
Comodo Dragonは安全ですか
基本的にはセキュリティベンダーが開発しているため、セキュリティ機能は充実しています。
ただし、2015年のPrivdog問題があったことや、Comodo自身がユーザーをトラッキングしていることを理解した上で使用する必要があります。
完全に匿名・プライベートなブラウジングを求めるなら、Tor Browserなど他の選択肢も検討すべきです。
Chromeから簡単に移行できますか
はい、インストール時にChromeからブックマーク、パスワード、履歴などをインポートできます。
インストール後でも設定からインポート可能です。
ただし、Googleアカウントとの同期機能はないため、複数デバイス間での同期はできません。
アンインストールは簡単ですか
はい、Windowsの標準的なアンインストール手順で削除できます。
アンインストール時に、ユーザーデータ(キャッシュ、クッキーなど)を残すか削除するか選択できます。
これはChrome にはない機能です。
まとめ
Comodo Dragonは、セキュリティベンダーComodoが開発した、プライバシーとセキュリティに特化したChromiumベースのウェブブラウザです。
主な特徴
- Google Chromeへの情報送信機能を削除
- Comodo SecureDNS、SSL証明書強化検証などの独自セキュリティ機能
- 自動アップデート機能搭載
- Chrome拡張機能が使用可能
- 無料で利用可能
メリット
- プライバシー保護(Google送信機能削除)
- 高いセキュリティ(セキュリティベンダー製)
- Chromeとの互換性(拡張機能、UI)
- 自動アップデート機能
- 高速なパフォーマンス
デメリット・注意点
- 2015年のPrivdog問題(SSL通信内容の送信)
- Comodo自身もユーザーをトラッキング
- 知名度とコミュニティが小さい
- 一部サイトとの互換性問題の可能性
- メモリ消費が多い
適している人
- プライバシーを重視する方(ただし完全な匿名性は期待できない)
- セキュリティを重視する方
- Chromeの操作性に慣れている方
- 自動アップデートを重視する方
注意が必要な点
過去のセキュリティ問題やComodo自身のトラッキング行為を考慮すると、「完全にプライベート・安全」とは言い切れません。
プライバシーとセキュリティのバランスを理解した上で使用することが重要です。
完全な匿名性を求める場合は、Tor Browserなどの別のソリューションを検討すべきです。
一方で、セキュリティベンダーが開発しているだけあって、セキュリティ機能は充実しています。
Chromeの使い勝手を保ちながら、より高いセキュリティとプライバシー保護を求める方には、試してみる価値のあるブラウザと言えるでしょう。
最終的には、自分のニーズとリスク許容度に応じて、適切なブラウザを選択することが大切です。



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