ウルカグアリー(Urcaguary)とは?インカ神話の地下の宝物を守る神

神話・歴史・文化

インカ神話には、数多くの神々が登場しますが、その中でも特に神秘的な存在がウルカグアリー(Urcaguary)です。
地下深くに眠る金や宝石を守るこの神は、人間の貪欲さから財宝を守護する役割を担っていたと伝えられています。
この記事では、ウルカグアリーの姿、役割、そして限られた記録から読み解けるこの神の謎に迫ります。

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概要

ウルカグアリーは、インカ神話における地下の宝物を司る神です。
金属、宝石、その他の地下資源を守護する役割を持ち、山の内部や地下世界に住むとされています。
この神についての記録は非常に限られており、多くの謎に包まれた存在です。

名前の意味と表記

ウルカグアリーという名前には、いくつかのバリエーションがあります。
スペイン語圏の資料では「Urcaguari」「Urkawari」とも表記されます。

「Urca」はケチュア語で「山」を意味し、この神が山の内部に住むという性質を反映している可能性があります。

ウルカグアリーの役割

地下の守護神

ウルカグアリーは、地下に眠る貴重な資源を守る神として知られています。

具体的には以下のものを司っていたとされます。

  • 金属(金、銀など)
  • 宝石
  • その他の地下資源

インカ帝国では、金や銀は太陽神インティ(Inti)と月の女神ママ・キリャ(Mama Quilla)の象徴として神聖視されていました。
そのため、これらの貴重な資源を守るウルカグアリーも重要な神と考えられていたはずです。

貪欲さからの守護

ウルカグアリーは、単に宝物を守るだけでなく、人間の貪欲さから財宝を守る役割も担っていました。

山の内部や地下深くに住み、欲深い人間が宝物を盗もうとするのを防いでいたと伝えられています。

ウルカグアリーの姿

ウルカグアリーの外見については、資料によって記述が異なります。

スペイン語版Wikipediaの記述

現代の研究では、ウルカグアリーは以下のような姿で描写されることがあります。

  • 蛇の体
  • 鹿(taruka)の頭部
  • 金の鎖で飾られた尾

一次資料の記述

16世紀のアウグスティノ会修道士による記録「Relación de idolatrías de Huamachuco(フアマチューコの偶像崇拝に関する報告書)」には、ウルカグアリーと関連があると考えられる存在「Uscaiguai(ウスカイグアイ)」の記述があります。

この記録によれば、ウスカイグアイは「蛇または大蛇で、尾に金の小箱を持つ」とされています。
インディオたちは、富を得るためにこの存在を崇拝したと記されています。

ウスカイグアイとウルカグアリーが同一の存在なのか、それとも関連する別の存在なのかは明確ではありません。
ただし、どちらも「蛇の姿」「金や財宝との関連」という共通点があることは注目に値します。

地下世界との関連

インカ神話の宇宙観では、世界は三つの領域に分かれています。

  1. Hanan Pacha(ハナン・パチャ): 天上界、神々が住む場所
  2. Kay Pacha(カイ・パチャ): 地上世界、人間が住む場所
  3. Uku Pacha(ウク・パチャ): 地下世界、死者や地下の神々が住む場所

ウルカグアリーは、Uku Pacha(地下世界)に属する神として分類されます。
地下世界の神は、スーパイ(Supay、死の神)のように恐れられる存在もいれば、ウルカグアリーのように貴重な資源を守る重要な役割を持つ存在もいました。

アンデスの民間伝承に見る類似の存在

ウルカグアリーと似た特徴を持つ存在は、アンデス各地の民間伝承にも登場します。

Huaracuy(ワラクイ)

ペルーのワヌコ地方の口承文学に登場する存在で、以下のような特徴があります。

  • 地下の神(ctónico)
  • 湖や地下に住む
  • 宝物、鉱物、知恵を守護する
  • 外見は資料によって異なる(虹色の羽を持つ大蛇、翼を持つ蛇など)

Carcasの伝説

ペルーのボロニェシ県チキアン地区の小さな村カルカスには、以下のような伝説があります。

Huayna山の内部にインカの宝物が隠されており、太陽神(ビラコチャまたはインティの可能性)が「立派な鹿」に永遠の守護を命じた、という話です。

美しい毛皮と輝く角を持つこの鹿は、今もその場所を守り続け、悪魔が宝物を見つけようとすると激しく戦うとされています。

これらの伝承は、ウルカグアリー神話の変容や地域的なバリエーションである可能性があります。

インカ神話の記録の限界

ウルカグアリーについての情報が限られている理由は、インカ神話そのものが直面した歴史的な困難にあります。

文字を持たなかったインカ

インカ帝国には文字がありませんでした。
神話や伝承は、口承によって代々伝えられていました。

そのため、スペイン征服以前の正確な神話の内容を知ることは困難です。

スペイン征服による破壊

1532年から1533年にかけて、フランシスコ・ピサロ率いるスペイン人がインカ帝国を征服しました。

その後、カトリック教会による「偶像破壊運動(Extirpación de idolatrías)」が行われ、従来の宗教が弾圧されました。
多くの神話伝承が失われたと考えられています。

限られた記録

現在、インカ神話について知ることができる主な資料は以下のものです。

  • スペイン人宣教師や征服者による記録
  • 征服後間もない時期の現地の記録
  • 口承で残った伝承

ウルカグアリーに関する記述は、これらの資料の中でも非常に限られています。

ウルカグアリーとインカ社会

鉱物資源の重要性

インカ帝国にとって、金や銀などの鉱物資源は非常に重要でした。

金は「太陽の汗」、銀は「月の涙」と呼ばれ、神聖なものとされていました。
これらの金属は、神殿の装飾や儀式の道具、支配者の権威の象徴として使用されました。

鉱山と信仰

インカ帝国では、鉱山で働く人々は危険な環境下で労働していました。
鉱山の安全や豊かな鉱脈を願って、地下の神々への信仰が重要だったと考えられます。

ウルカグアリーは、こうした鉱山労働者たちにとって、畏敬の対象であった可能性があります。

まとめ

  • ウルカグアリーは、インカ神話における地下の宝物を守る神
  • 金属、宝石、地下資源を司り、山の内部や地下世界に住むとされる
  • 蛇の姿で描写されることが多く、金や財宝との関連が強調される
  • 記録が非常に限られており、多くの謎に包まれた存在
  • アンデス各地の民間伝承には、類似の存在が登場する
  • インカ帝国の鉱物資源への依存を考えると、重要な神であった可能性が高い

ウルカグアリーは、インカ神話の中でも特に記録が少ない神の一柱ですが、地下の財宝を守るという役割は、インカ社会における鉱物資源の重要性を反映していると言えるでしょう。

参考情報

この記事で参照した情報源

一次資料

  • 「Relación de idolatrías de Huamachuco(フアマチューコの偶像崇拝に関する報告書)」(16世紀、アウグスティノ会修道士による記録)
  • Uscaiguaiという存在の記述を含む
  • スペイン征服直後の貴重な記録

学術資料

  • Lucila Castro de Trelles『Relación de la religión y ritos del Perú en Huamachuco』
  • フアマチューコの宗教と儀礼に関する研究

参考になる外部サイト

注記
ウルカグアリーに関する情報は非常に限られており、多くの資料で「詳細不明」と記載されています。
この記事では、信頼できる一次資料と学術的な二次資料に基づいて記述しました。

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