最中(もなか)の漢字・名前の由来とは?なぜ「さいちゅう」ではなく「もなか」と読むのか

「最中」という漢字を見たとき、「さいちゅう」と読んでしまった経験はありませんか。
和菓子の名前としては「もなか」と読みますが、なぜこの読み方になったのでしょうか。

この記事では、「最中(もなか)」という言葉の漢字の意味、名前の由来、そして「さいちゅう」ではなく「もなか」と読む理由について詳しく解説します。

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「最中」の読み方

「最中」という漢字には、実は3つの読み方があります。

さいちゅう
物事が一番盛んな状態にあるとき、進行中のときを意味します。
「会議の最中(さいちゅう)」「食事の最中(さいちゅう)」のように使います。
また、「真ん中」という意味もあります。

さなか
物事が一番盛り上がっているときを意味します。
「さいちゅう」とほぼ同じ意味ですが、「さなか」のほうがやや硬い言い方とされています。
「忙しい最中(さなか)」「戦いの最中(さなか)」のように使います。

もなか
物事が一番盛んな状態、真ん中という意味があります。
そして、もち米の粉を練って薄く伸ばして焼いた皮の間に、あんを詰めた和菓子を指します。

このように、「最中」は読み方によって使い方が変わります。
和菓子の場合は必ず「もなか」と読みます。

和菓子「最中(もなか)」の名前の由来

和菓子の「最中(もなか)」という名前は、平安時代の和歌に由来します。

源順の和歌

平安時代中期の歌人で学者でもあった源順(みなもとのしたごう)が詠んだ和歌が起源です。
源順は三十六歌仙の一人でもあります。

この和歌は『拾遺和歌集』(巻3・秋171)に収められています。

「水の面に 照る月なみを 数ふれば 今宵ぞ秋の 最中なりける」
(みずのおもに てるつきなみを かぞふれば こよいぞあきの もなかなりける)

この和歌の意味は、「池の水面に映る月の波を数えてみると、今宵こそが秋の真ん中(十五夜)だと実感する」というものです。

「最中の月」の誕生

宮中で行われた月見の宴において、白くて丸い餅菓子が出されました。
その菓子が中秋の名月に似ていたことから、公家たちが「もなかの月」と名付けたと伝えられています。

「最中の月」とは、まさに真ん中の月、つまり「十五夜の満月」のことを指しています。
旧暦8月15日の満月は「中秋の名月」と呼ばれ、一年で最も美しい月とされていました。

江戸時代の商品化

平安時代の和歌が起源ですが、現在の「最中」につながる菓子が誕生したのは江戸時代です。

江戸時代中期、吉原遊郭の煎餅屋「竹村伊勢」が、この和歌にちなんで「最中の月」という菓子を売り出しました。

この「最中の月」は、もち米粉に水を加えてこねたものを蒸した後に焼き、砂糖をまぶした干菓子でした。
現在の最中の皮に近いものですが、まだこの時点ではあんは入っていませんでした。

江戸時代は砂糖が非常に高価で、1kgあたり約5,000円相当だったとされています。
現在の砂糖の価格(1kgあたり約200円)と比べると、約25倍の高級品でした。
そのため、「最中の月」は遊郭で遊女への手土産として人気を集めました。

「最中饅頭」の誕生

その後、「最中の月」にあんを挟んだ「最中饅頭」が、日本橋などの和菓子屋で販売されるようになりました。
この「最中饅頭」が、現代の最中の原型となりました。

次第に円形でない最中も登場し、様々な形の最中が作られるようになると、「最中の月」という名前が短縮され、単に「最中」と呼ばれるようになったのです。

明治時代以降は金型技術の進歩により、丸や四角だけでなく、菊模様、魚、貝殻、動物など、様々な形の最中が誕生しました。

なぜ「さいちゅう」ではなく「もなか」と読むのか

「最中」という漢字を見ると、「さいちゅう」と読んでしまいそうですが、和菓子の場合は「もなか」と読みます。
その理由を詳しく見ていきましょう。

和歌の読みをそのまま採用

答えは、源順の和歌にあります。

和歌では「今宵ぞ秋の 最中なりける」を「こよいぞあきの もなかなりける」と読んでいます。
つまり、平安時代の時点で「最中」を「もなか」と読んでいたのです。

この和歌から名付けられた菓子「最中の月(もなかのつき)」が、後に「最中(もなか)」に省略されました。
つまり、和菓子の「もなか」という読み方は、和歌の読みをそのまま受け継いだものなのです。

「もなか」にも「真ん中」の意味がある

実は、「もなか」という読み方にも、「物事の真ん中」「物事が一番盛んな状態」という意味があります。

古典文学では、「もなか」と読んで「さいちゅう」の意味を表すこともありました。
例えば、『日葡辞書』(1603年刊行)には「タタカヒノモナカ」という表記があります。

つまり、「最中(もなか)」という読み方は、和菓子だけの特別な読み方ではなく、古くから存在していた読み方だったのです。

誤った語源説について

「最中は真ん中に餡が入っているため、中央を意味する『最中(さいちゅう)』が語源である」という説を聞いたことがあるかもしれません。

しかし、この説は時系列的に誤りです。

「最中の月」という名前が付けられた江戸時代中期の時点では、まだあんは入っていませんでした。
あんを挟んだ「最中饅頭」が登場したのは、「最中の月」という名前が付けられた後のことです。

したがって、「真ん中に餡があるから『さいちゅう』が語源」という説は成り立ちません。

正しくは、和歌の「最中(もなか)の月」から名付けられた菓子が、後にあんを挟むようになり、最終的に「最中(もなか)」という名前に落ち着いたのです。

「最中」という漢字の意味

「最中」という漢字そのものの意味を見てみましょう。

「最」という字は、「もっとも」「この上なく」「いちばん」という意味を持ちます。
「中」という字は、「なか」「真ん中」「中央」という意味です。

この2つの漢字を組み合わせた「最中」は、「物事の中心」「盛りの時期」「一番盛んな状態」を意味します。

「最中の月」という表現は、「盛りの月」、つまり「十五夜の満月」を指していたのです。

満月は月の満ち欠けの真ん中であり、最も明るく美しい状態です。
この「最も盛んな状態」という意味が、「最中(もなか)」という言葉に込められています。

「最中」の用例

「最中」という言葉の使い方を、読み方ごとに見てみましょう。

「さいちゅう」の用例

会議の最中に電話がかかってきた。
食事の最中に話しかけられた。
作業の最中にトラブルが発生した。
真っ最中(まっさいちゅう)。

「さなか」の用例

忙しい最中に申し訳ございません。
戦いの最中で判断を誤った。
土砂降りの最中に家を出た。

「もなか」の用例

お中元に最中を贈る。
この最中は皮がサクサクで美味しい。
夏の最中、月影さやかなる夜であった。(国木田独歩『少年の悲哀』より)

最後の例のように、「もなか」と読んで「真っ盛り」という意味で使われることもあります。

文脈による読み分け

「最中」という漢字だけを見た場合、文脈がなければ読み方を完全に判別することはできません。

和菓子を指す場合は必ず「もなか」ですが、「物事の真ん中」という意味では「さいちゅう」「さなか」「もなか」のいずれの読み方もあり得ます。

一般的には、「物事の進行中」という意味では「さいちゅう」と読むことが多く、「物事の盛り」という意味では「さなか」や「もなか」と読むことが多いとされています。

「真っ最中」と書いた場合は「まっさいちゅう」と読み、「まっさなか」とは読みません。

まとめ

「最中(もなか)」という和菓子の名前の由来をまとめます。

平安時代の歌人・源順が詠んだ和歌『拾遺和歌集』の「今宵ぞ秋の最中なりける」が起源です。
この和歌では「最中」を「もなか」と読んでいました。

宮中の月見の宴で出された白い丸餅が中秋の名月に似ていたことから、「もなかの月」と名付けられました。

江戸時代中期、煎餅屋「竹村伊勢」がこの和歌にちなんで「最中の月」という菓子を商品化しました。

後に「最中の月」にあんを挟んだ「最中饅頭」が登場し、様々な形の最中が作られるようになりました。

「最中の月」が短縮され、単に「最中(もなか)」と呼ばれるようになったのです。

「さいちゅう」ではなく「もなか」と読む理由は、和歌の読み方をそのまま受け継いだためです。
「真ん中に餡があるから『さいちゅう』が語源」という説は、時系列的に誤りです。

「最中」という漢字には「物事の中心」「盛りの時期」という意味があり、十五夜の満月を指す「最中の月」という言葉から、和菓子の名前が生まれました。

平安時代の雅な和歌から生まれた「最中(もなか)」という名前には、中秋の名月の美しさへの憧れが込められているのです。

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