Kinza(キンザ)は、日本のDayz株式会社が開発していたChromiumベースのWebブラウザです。
「ユーザーの声で進化するブラウザ」をコンセプトに、2014年から2021年まで開発が続けられました。
この記事では、Kinzaの特徴、独自機能、開発の歴史、そして開発終了に至った経緯を詳しく解説します。
重要な注意事項:
Kinzaは2021年7月9日に開発終了が発表され、現在はセキュリティアップデートが提供されていません。
そのため、利用の継続は推奨されません。
Kinzaの基本情報
Kinzaは、Google ChromeやMicrosoft EdgeのベースとなっているChromiumをもとに、日本独自のカスタマイズを施したWebブラウザでした。
基本情報は以下の通りです。
- 開発元: Dayz株式会社(日本・東京都中央区日本橋)
- 初版リリース: 2014年5月22日
- 最終バージョン: v6.9.0(2021年5月リリース)
- ベース: Chromium 89.0.4389.128
- 対応OS: Windows、macOS
- ライセンス: フリーウェア(クローズドソース)
- 開発終了: 2021年7月9日
- 新規ダウンロード終了: 2021年12月31日
名前の由来
「Kinza」という名前は、開発拠点があった東京の日本橋に由来しています。
江戸時代、日本橋には金貨や小判を鋳造する「金座(きんざ)」がありました。
開発元のDayz株式会社は、以下のような想いを込めて名付けました。
日本橋の街で生み出した国産ブラウザを通じて、たくさんのユーザーの皆様に金貨や小判に匹敵するような多くの価値やエクスペリエンスを得て頂きたい
Kinzaのロゴは、「金座」の”金”と日本橋にある麒麟の像をモチーフにデザインされていました。
「エターナル青春系ブラウザ」というキャッチコピー
Kinzaは、リリース当初「エターナル青春系ブラウザ」というユニークなキャッチコピーを使用していました。
これは、ユーザーと共に成長し続けるブラウザを目指す姿勢を表現したものです。
Kinzaの開発コンセプト
Kinzaは、他の大手ブラウザとは異なる独自の開発方針を掲げていました。
ユーザーファーストの開発姿勢
Kinzaの最大の特徴は、「ユーザーの声で進化するブラウザ」というコンセプトでした。
開発方針の特徴は以下の通りです。
- 公式サイト内にユーザー掲示板を設置
- ユーザーからのバグ報告や機能要望を積極的に受け付け
- フィードバックを開発に直接反映
- ユーザーとの距離が近い「日本ならではのホスピタリティ」
このような姿勢は、かつてのソフトウェア開発では当たり前でしたが、大手ブラウザではあまり見られなくなっていました。
シンプルさの追求
Kinzaは、「Webサイトの閲覧を快適にする」という基本的な価値を徹底的に追求しました。
開発の背景には、2013年11月にDayz社が実施した調査結果がありました。
全国1,182名を対象とした調査では、使用しているブラウザへの不満として以下の声が多く挙がりました。
- 動作が重い・フリーズする
- わからない/使わない機能が多い
- Webサイトの表示が遅い
Kinzaは、このような不満を解消するため、余計な機能を削ぎ落とし、快適性を優先したブラウザとして開発されました。
日本製であることの意義
Kinzaは、世界の主要ブランドと比べてユーザーとの距離が近いことを強みとしていました。
日本製であることのメリットは以下の通りです。
- 日本語での要望やバグ報告が可能
- 日本のユーザーに最適化された機能
- 日本ならではのホスピタリティ
- 迅速な日本語サポート
Kinzaの主な機能
Kinzaは、Chromiumベースでありながら、独自の機能を多数搭載していました。
マウスジェスチャー
マウスジェスチャーは、Kinzaを代表する機能の一つでした。
他のブラウザでは拡張機能として追加する必要がありますが、Kinzaはデフォルトで搭載していました。
マウスジェスチャーの特徴は以下の通りです。
- 右クリック+マウス移動で各種操作を実行
- 詳細な設定が可能
- 例: 右クリック+下移動で下スクロール
- 例: 右クリック+右移動でページを進む
マウスに「戻る/進む」ボタンが付いていなくても、快適に操作できます。
スーパードラッグ機能
スーパードラッグは、Kinzaの最も特徴的な機能でした。
多くのユーザーがKinzaを選ぶ理由の一つとなっていました。
スーパードラッグの機能は以下の通りです。
- 選択したテキストをドラッグして検索
- バックグラウンドで検索結果を開く
- デフォルト以外の検索エンジンでも検索可能
- 精度の高い実装
この機能により、効率的な情報収集が可能になりました。
RSSリーダー標準搭載
Kinzaは、高性能なRSSリーダーを標準搭載していました。
RSSリーダーの特徴は以下の通りです。
- ブラウザ内でニュースやブログを簡単にチェック
- OPML形式でのインポートに対応
- 他のRSSリーダーからの移行が容易
- 初回インストール時にInfoseekニュースのRSSが登録済み
- 自動購読機能
別途RSSリーダーを用意する必要がなく、ブラウザ内で完結できました。
サイドパネル(サイドバー)
サイドパネル機能により、ブックマークやRSSフィードにすぐにアクセスできました。
サイドパネルの特徴は以下の通りです。
- ブックマークを常時表示可能
- RSSフィードの一覧表示
- 画面スペースの有効活用
Chromeにはないサイドバーでのブックマーク表示が、Kinzaを選ぶ理由の一つとなっていました。
Boss Key(ボスキー)
Boss Keyは、ユニークな機能でした。
Boss Keyの機能は以下の通りです。
- 特定のキーを押すとKinzaを瞬時に閉じる
- 閲覧履歴も削除される
- 緊急時に素早くブラウザを隠せる
ただし、間違って押してしまうと絶望的な状況になるというリスクもありました。
タブ操作の強化
Kinzaは、タブ操作を細かく設定できました。
タブ操作の特徴は以下の通りです。
- タブのクローズアクションを詳細に設定
- タブの表示位置のカスタマイズ
- タブサイクラー
- ロッカージェスチャー(デフォルトで変更可能)
- 現在のタブを閉じて右/左のタブへ移動
オムニボックス(統合検索バー)
オムニボックスは、検索とアドレス入力を統合したバーです。
オムニボックスの特徴は以下の通りです。
- 検索キーワードとURLの両方を入力可能
- 検索エンジン、RSS、ブックマークから横断検索
- 瞬時にショートカットを表示
- ワンタッチで検索結果を閲覧
Chrome拡張機能への対応
Kinzaは、Chrome Web Storeの拡張機能に対応していました。
拡張機能対応のメリットは以下の通りです。
- 豊富な拡張機能が利用可能
- ウイルス対策ソフトのツールバーも使用可能
- 利用者が少ないブラウザの悩みを解消
Chromiumベースの大きな利点の一つでした。
HTML5動画再生への対応
バージョン3.6.0から、Windows版がMP4やMP3の再生に対応しました。
それ以前は、他のChromium派生ブラウザと同様、ライセンス問題がクリアになっていなかったため再生できませんでした。
Kinzaは「技術的解決」により、この問題を克服しました。
プライバシー保護
Kinzaは、プライバシーにも配慮していました。
プライバシー保護の特徴は以下の通りです。
- スパイウェアやアドウェアをインストールしない
- ユーザーの許諾なしに無関係なソフトウェアを追加しない
- 自動アップデートによる無断機能追加をしない
- ユーザー情報が外部に送信されることはない(検索サービスのサジェスト機能は除く)
Kinzaのユーザーインターフェース
Kinzaは、Google Chromeとよく似た外見でした。
これはChromiumベースであるためで、Chrome使用者は違和感なく使用できました。
新しいタブページの構成
新しいタブページは、上から順に以下の要素で構成されていました。
- 天気予報と占い
- 検索バー
- よく見るページ(スピードダイヤル機能、8ページ分)
- RSSフィード(Infoseekニュース)
- 開発ブログ
- レイアウトの変更ボタン
不要な項目は非表示にできるカスタマイズ性も備えていました。
ツールバー
Kinzaのツールバーは、Chromeとほぼ同じ配置でした。
ただし、Kinza独自の機能にアクセスするためのボタンも配置されていました。
Kinzaの評判
Kinzaに対するユーザーの評価は、概ね好意的でした。
肯定的な評価
- Chromeより軽量で快適
- マウスジェスチャーとスーパードラッグが便利
- 日本製で安心感がある
- Chrome拡張機能が使える
- RSSリーダーが標準搭載
- ユーザーの声を反映する姿勢が良い
- Chromiumの更新に迅速に追随
- Vivaldiよりも安定している
否定的な評価
- 動画再生に問題がある(初期バージョン)
- 起動時にすべてのタブを読み込むため操作しにくい
- ポータブル版がない
- ユーザー数が少なく情報が限られる
- デフォルト検索エンジン(Kinza)が使いにくい
競合ブラウザとの比較
ユーザーは、以下のような比較をしていました。
Sleipnir(スレイプニル)との比較:
- Sleipnirはマウスジェスチャーとスーパードラッグの設定がより柔軟
- Sleipnirはタブグループ機能が優秀
- Kinzaは動画再生に対応
Vivaldi(ヴィヴァルディ)との比較:
- Vivaldiはタブやマウスジェスチャーの設定がより詳細
- Vivaldiにはスーパードラッグがない
- Kinzaの方が安定している
開発終了の経緯
2021年7月9日、Dayz株式会社はKinzaの開発終了を発表しました。
開発終了の理由
公式発表によると、開発終了の理由は以下の通りです。
1. Google APIへのアクセス遮断:
- Googleアカウントによるブラウザ設定の同期機能に使用していたGoogle APIへのアクセスが遮断された
- この機能の代替実装が困難だった
2. 収益性の問題:
- ブラウザビジネスの収益性が課題となっていた
- 継続的な開発を支えるだけの収益が確保できなかった
開発終了後のスケジュール
開発終了後のスケジュールは以下の通りでした。
- 2021年7月9日: 開発終了を発表
- 2021年8月31日: Kinzaで利用しているパッチファイルを無償公開
- 2021年12月31日: 新規ダウンロード終了、公式サイトクローズ
パッチファイルの公開
Kinzaが独自に実装した機能のソースコードは、Chromiumへのパッチという形で無償公開されました。
これにより、以下のことが可能になりました。
- 他の開発者がKinzaの機能を参照できる
- Chromium派生ブラウザへの機能移植が可能
- オープンソースコミュニティへの貢献
利用継続についての警告
執筆時点(2026年2月)で、Kinzaの最終バージョンはv6.9.0(Chromium 89.0.4389.128)です。
2021年5月のリリース以降、Chromiumのセキュリティアップデートが反映されていません。
そのため、一般ユーザーの利用は推奨できません。
セキュリティ上の脆弱性が放置されている可能性が高く、個人情報の流出やマルウェア感染のリスクがあります。
Kinzaの代替ブラウザ
Kinzaの開発が終了した現在、代替となるブラウザを検討する必要があります。
Vivaldi
Vivaldiは、Kinzaユーザーに最も推奨される代替ブラウザです。
Vivaldiの特徴は以下の通りです。
- Chromiumベース
- 高度なカスタマイズ性
- タブの詳細な管理機能
- マウスジェスチャー標準搭載
- サイドバー機能
- タブスタック、タブタイリング
- 内蔵VPN、広告ブロッカー
スーパードラッグ機能はありませんが、拡張機能で追加できます。
Sleipnir
Sleipnirは、日本のフェンリル株式会社が開発するブラウザです。
Sleipnirの特徴は以下の通りです。
- 日本製
- マウスジェスチャーとスーパードラッグがデフォルト搭載
- タブグループ機能
- RSS機能
- 独自のエンジンとBlinkエンジンの切り替えが可能(Windows版)
Kinzaユーザーには違和感なく移行できるでしょう。
Google Chrome
Google Chromeは、Kinzaのベースとなったブラウザです。
Chromeの特徴は以下の通りです。
- 世界で最も使用されているブラウザ
- 豊富な拡張機能
- 高速な動作
- 継続的なアップデート
マウスジェスチャーやスーパードラッグは拡張機能で追加できます。
Microsoft Edge
Microsoft Edgeも、Chromiumベースのブラウザです。
Edgeの特徴は以下の通りです。
- Chromiumベース
- Windows統合
- Chrome拡張機能に対応
- 垂直タブ機能
- コレクション機能
Opera
Operaは、独自機能を多数搭載したブラウザです。
Operaの特徴は以下の通りです。
- Chromiumベース
- 内蔵VPN、広告ブロッカー
- サイドバー
- ワークスペース機能
- スナップショット機能
Kinzaから学ぶこと
Kinzaの開発と終了から、私たちは多くのことを学べます。
ユーザー重視の開発姿勢
Kinzaは、「ユーザーの声で進化する」というコンセプトを一貫して貫きました。
ユーザー掲示板を設置し、フィードバックを積極的に受け付ける姿勢は、多くのソフトウェア開発者にとって参考になります。
日本製ソフトウェアの強みと課題
Kinzaは、日本製であることを強みとしていました。
日本語でのサポート、日本のユーザーに最適化された機能は、確かに価値がありました。
しかし、ニッチな市場では収益性の確保が難しいという課題も明らかになりました。
オープンソースへの貢献
開発終了時にパッチファイルを公開したことは、オープンソースコミュニティへの貢献として評価できます。
これにより、Kinzaの技術は他のプロジェクトに引き継がれる可能性があります。
Google APIへの依存リスク
Google APIへのアクセス遮断が開発終了の一因となったことは、サードパーティ開発者にとって重要な教訓です。
大手プラットフォームのAPIに依存するリスクを認識する必要があります。
まとめ
Kinza(キンザ)は、2014年から2021年まで開発された日本製のChromiumベースブラウザでした。
主要なポイントをまとめると以下の通りです。
Kinzaの特徴:
- Chromiumベースの日本製ブラウザ
- マウスジェスチャー標準搭載
- スーパードラッグ機能
- RSSリーダー内蔵
- サイドパネル、Boss Keyなど独自機能
- Chrome拡張機能に対応
- ユーザーの声で進化するコンセプト
開発の歴史:
- 2014年5月22日: 初版リリース
- 「エターナル青春系ブラウザ」としてスタート
- ユーザー掲示板で要望を受け付け
- Chromiumの更新に迅速に追随
- 2021年7月9日: 開発終了発表
- 2021年8月31日: パッチファイル公開
- 2021年12月31日: 新規ダウンロード終了
開発終了の理由:
- Google APIへのアクセス遮断
- 収益性の問題
現在の状況:
- 最終バージョンはv6.9.0(Chromium 89.0.4389.128)
- セキュリティアップデートなし
- 利用継続は推奨されない
代替ブラウザ:
- Vivaldi(高度なカスタマイズ性)
- Sleipnir(日本製、スーパードラッグ対応)
- Google Chrome(Kinzaのベース)
- Microsoft Edge(Chromiumベース)
- Opera(独自機能豊富)
Kinzaは、日本のブラウザ開発の歴史において重要な役割を果たしました。
「ユーザーの声で進化する」というコンセプトは、多くのユーザーに支持されました。
開発は終了しましたが、Kinzaが示したユーザー重視の開発姿勢や、日本製ソフトウェアの可能性は、今後のソフトウェア開発に活かされるべき遺産です。
現在Kinzaを使用している方は、セキュリティリスクを考慮し、速やかに代替ブラウザへの移行を検討してください。
参考情報
本記事は以下の情報源を参照して作成しました。


コメント