チェロキー族の神話に登場するウネラヌヒは、世界に光と暖かさをもたらす太陽の女神です。「すべてを作る者」という意味を持つこの女神は、多くの文化で太陽が男性神として描かれるのとは対照的に、母なる太陽として崇められています。
チェロキー族について
チェロキー族は、北米南東部のアパラチア山脈一帯に古くから暮らしてきた先住民族です。現在のノースカロライナ州、テネシー州、ジョージア州、アラバマ州にまたがる広大な土地を故郷としていました。
豊かな口承文化を持ち、神話や伝説は世代から世代へと語り継がれてきました。1830年代の「涙の道(Trail of Tears)」と呼ばれる強制移住によって多くのチェロキー族がオクラホマへ移住させられましたが、一部は東部に残り、現在も伝統を守り続けています。
名前の意味
ウネラヌヒ(Unelanuhi)という名前は、チェロキー語で「すべてを作る者」または「分配者」を意味します。
より広い概念としてはウネトランヴィ(Unetlanvhi)とも呼ばれ、この名前は「偉大なる精霊」「創造主」といった最高神としての側面を表しています。時間を分割し、季節の移り変わりを司る神として、人々の生活リズムそのものを支配する存在でした。
世界創造の神話
チェロキー族の創世神話によれば、太古の世界は水と天空だけが存在していました。
動物たちは天の丸天井の中に住んでいましたが、土地がなく困っていました。そこで小さな水甲虫ダユニスィ(Dâyuni’sï)が水中に潜り、海底から泥を掘り起こしました。この泥があらゆる方向に広がり、大地が生まれたのです。
次に大鷲ツァヌニィ(Tsanun’yi)が新しい大地の上を飛び、羽ばたきによって谷と山を作り出しました。これがアパラチア山脈の起源だとされています。
しかし世界はまだ暗く冷たいままでした。ウネラヌヒが光をもたらすまで、生命は満足に育つことができなかったのです。
蜘蛛の女神による太陽の引き上げ
もともと地上には太陽がありませんでした。動物たちは永遠の闇の中で暮らしていました。
オポッサムが太陽を地上に持ってこようとしましたが、尻尾を焼いてしまい失敗しました(今でもオポッサムの尻尾に毛が生えていないのはこのためだとされています)。
最終的に、蜘蛛の女神が大きな網を織り、ウネラヌヒを地下世界から空へと引き上げることに成功しました。こうして世界に初めて太陽の光がもたらされたのです。
娘の死と世界の暗闇
ウネラヌヒには愛する娘がいました。娘は空の真ん中に住んでおり、毎日正午になるとウネラヌヒは娘のもとを訪れて一緒に食事をしていました。
ある日、娘が蛇に噛まれて死に、死者の国へ連れ去られてしまいます。深い悲しみに暮れたウネラヌヒは姿を隠し、世界は再び暗闇に包まれました。彼女の涙は大洪水となって大地を覆いました。
チェロキーの人々は若い男女を集め、歌と踊りでウネラヌヒの悲しみを癒そうとしました。彼らの努力が実を結び、ウネラヌヒは再び空に姿を現し、世界に光が戻ったのです。
この神話は、悲しみを乗り越えるためには共同体の支えが必要であることを教えています。
人々への怒りと蛇の刺客
別の伝承では、ウネラヌヒが地上の人間たちに不満を抱いていた様子が語られます。
人々が彼女を見上げるたびに目を細め、顔をしかめることに腹を立てたウネラヌヒは、強烈な熱で人間を滅ぼそうと決意しました。
精霊たちは人間たちに太陽を殺すよう助言し、2人の人間をマムシとマッサソーガ(ヘビの一種)に変身させました。彼らは天上のウネラヌヒの娘の家で待ち伏せしましたが、まぶしい光に目がくらんで失敗に終わりました。
2度目の試みでは、人間をガラガラヘビとウクテナ(角を持つ恐ろしい大蛇)に変身させましたが、この結果は伝承によって異なります。
ウネラヌヒの役割と属性
ウネラヌヒは単なる太陽の女神にとどまらず、多様な役割を担っています。
光と暖かさの提供者として、すべての生命の成長に不可欠な存在です。太陽の動きは季節の変化をもたらし、農耕の時期を教えてくれました。
時間の支配者として、ウネラヌヒは時間を単位に分割し、昼と夜のリズムを作り出しました。彼女が空を横切る様子が、季節の移り変わりと時の流れを反映しています。
癒しの神としても知られ、困っている者を助ける力を持っています。病気の治癒や心の傷を癒すことができるとされています。
真実と正義の守護者として、チェロキー社会において道徳的な規範を示す存在でもありました。人々は彼女の祝福に感謝し、共同体の価値観を守ることを誓いました。
女性の太陽神という特徴
ウネラヌヒは、世界的に見ても珍しい女性の太陽神です。
多くの文化圏では太陽は男性、月は女性とされていますが、チェロキー族をはじめとする一部の文化では、この役割が逆転しています。
太陽は生命を育む母なる存在として捉えられ、その暖かさと光は母親が子供を育てるようにすべての生き物を養います。この視点は、太陽のエネルギーに対する非常に女性的な見方を示しています。
太陽は太陽系の中心であり、私たちの体の心臓、家の炉端に例えられます。地球上のすべてのものは太陽の暖かさと光に依存して成長するのです。
現代における継承
ウネラヌヒの物語は、今日でもチェロキーの人々の間で語り継がれています。
伝統的な芸術作品や口承文化を通じて、彼女の姿は次世代へと受け継がれています。子供たちは、光と暖かさとバランスの重要性を学ぶために、ウネラヌヒの物語を聞いて育ちます。
太陽の動きを観察する儀式や、日食のような重要な天文現象の際には、ウネラヌヒへの祈りが捧げられてきました。彼女の祝福を求め、感謝の気持ちを表すことは、チェロキーの精神性の核心をなしています。
まとめ
- ウネラヌヒはチェロキー族の太陽の女神で、「すべてを作る者」を意味する
- 蜘蛛の女神によって地下世界から空へ引き上げられ、世界に光をもたらした
- 娘の死により悲しみに暮れ、世界を暗闇に包んだが、人々の歌と踊りで癒された
- 光、暖かさ、時間の支配、癒し、真実と正義の守護という多様な役割を持つ
- 女性の太陽神という世界的に珍しい特徴を持ち、母なる太陽として崇められている
ウネラヌヒの神話は、自然への深い敬意、共同体の大切さ、そして悲しみを乗り越える力を教えてくれる、チェロキー族の精神性を象徴する物語なのです。

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