Qwen3-Coder-Nextとは?驚異の効率性を実現したオープンソースAIコーディングモデルを徹底解説

2026年2月、Alibaba Cloud のQwenチームが、AIコーディング分野に革命をもたらす新モデル「Qwen3-Coder-Next」を発表しました。
わずか3Bの活性パラメータで80Bモデルに匹敵する性能を実現し、ローカル環境でも実行可能という画期的な特徴を持つこのモデルについて、詳しく解説します。

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Qwen3-Coder-Nextとは

Qwen3-Coder-Nextは、Alibaba CloudのQwenチームが2026年2月3〜4日にリリースした、コーディングエージェントとローカル開発に特化したオープンウェイト言語モデルです。
Apache 2.0ライセンスで公開されており、商用利用も可能です。

最大の特徴:超高効率なMoEアーキテクチャ

このモデルの最大の特徴は、総パラメータ数80Bのうち、推論時に活性化されるのはわずか3Bという超高効率設計です。
Mixture-of-Experts(MoE)アーキテクチャを採用することで、10〜20倍のパラメータを持つモデルに匹敵する性能を、大幅に少ない計算コストで実現しています。

この設計により、以下が可能になりました。

  • 高性能な個人用PCでの実行(64GB RAM搭載のMacBook Proなど)
  • RTX 4090 2枚やAMD Radeon 7900 XTXなど、コンシューマー向けGPUでの動作
  • APIコストの削減(クラウドサービスに依存しない)

開発背景

2026年初頭、AIコーディング市場は大きな転換点を迎えていました。

2026年1月、Anthropicは技術的制限を実装し、Cursor、Windsurf、OpenCodeなどのサードパーティツールがClaude Code サブスクリプションプランを通じてClaudeモデルにアクセスすることをブロックしました。
OpenAIのCodexアプリも高額な料金体系を維持していました。

こうした中、開発者コミュニティは、ベンダーロックインから解放されたオープンソースの代替案を求めていました。
Qwen3-Coder-Nextは、まさにこのニーズに応える形で登場したのです。

技術仕様と特徴

アーキテクチャ

Qwen3-Coder-Nextは、Qwen3-Next-80B-A3B-Baseをベースに構築されています。
48レイヤー構成で、各レイヤーは以下のハイブリッド構造を採用しています。

12 × [3 × (Gated DeltaNet → MoE) → 1 × (Gated Attention → MoE)]

この構造の核心は、2つの異なるアテンションメカニズムの組み合わせです。

Gated DeltaNet:
線形複雑度O(n)で動作する効率的なアテンション機構です。
従来のTransformerが持つ二次関数的なスケーリング問題を回避し、長文脈処理を高速化します。

Gated Attention:
重要な推論タスクに対しては、従来の標準的なアテンション機構を使用します。
これにより、精度を犠牲にすることなく、効率性を追求しています。

Mixture-of-Experts(MoE):
512個のエキスパートモデルを搭載していますが、各トークンの処理時には10個のエキスパートのみが活性化されます。
この極端に低い活性化率により、推論コストを大幅に削減しながら、モデル全体の能力を維持しています。

コンテキスト長

ネイティブで256Kトークンのコンテキスト長をサポートしています。
Yarn技術を使用することで、最大1Mトークンまで拡張可能です。

この長いコンテキストにより、大規模なコードベース全体、ログ、会話履歴を単一のセッションで保持できます。
これは、リポジトリレベルの理解を必要とするエージェント的なコーディングタスクに不可欠な機能です。

対応言語

Qwen2.5-Coderシリーズの92言語から大幅に拡張され、370以上のプログラミング言語をサポートしています。
これは、多言語コードベースを扱うエンタープライズ環境において、ベンダーロックインを排除し、外部API呼び出しのレイテンシーオーバーヘッドを解消します。

トレーニング手法:エージェント的訓練

Qwen3-Coder-Nextの性能を支えているのは、「エージェント的訓練(Agentic Training)」と呼ばれる革新的な手法です。

従来の訓練との違い

従来のコーディングモデルは、静的なコード-テキストペアで訓練されていました。
これは「読み取り専用の教育」とも言える手法です。

Qwen3-Coder-Nextは、GitHubのプルリクエストから採掘された実世界のバグ修正シナリオを使用し、完全に実行可能な環境とペアにした80万の検証可能なタスクで訓練されました。

MegaFlowトレーニングインフラ

訓練には、Alibaba Cloud Kubernetesベースのクラウドネイティブオーケストレーションシステム「MegaFlow」が使用されました。

各エージェントタスクは、以下の3段階のワークフローで処理されます。

  1. エージェントロールアウト: モデルがコンテナ化された実行環境と対話
  2. 評価: 生成されたコードが単体テストに失敗したりコンテナがクラッシュした場合、即座にフィードバックを受け取る
  3. 後処理: 強化学習を通じて改善

この手法により、モデルは長期的な推論、複雑なツール使用、実行失敗からの回復能力を習得しました。

専門家モデルの活用

Qwenチームは、すべてのタスクに対応する汎用モデルを訓練する代わりに、ドメイン特化のエキスパートモデルを開発しました。

Web開発エキスパート:
フルスタックタスク(UIコンストラクション、コンポーネント構成)に特化しています。
すべてのコードサンプルは、Playwright制御のChromium環境でレンダリングされました。
Reactサンプルの場合、依存関係が正しく初期化されるようViteサーバーが展開されました。
Vision-Language Model(VLM)が、レンダリングされたページのレイアウトの整合性とUI品質を判定しました。

ユーザーエクスペリエンスエキスパート:
Cline、OpenCodeなどの多様なCLI/IDEスキャフォールドにわたるツールコール形式の遵守に最適化されています。
多様なツールチャットテンプレートでの訓練により、デプロイ時の未知のスキーマに対するモデルの堅牢性が大幅に向上しました。

ベンチマーク性能

Qwen3-Coder-Nextは、複数の主要ベンチマークで優れた性能を示しています。

SWE-Bench

SWE-Bench(Software Engineering Benchmark)は、実世界のソフトウェアメンテナンスタスクを評価する最も権威あるベンチマークの一つです。

SWE-Bench Verified(SWE-Agentスキャフォールド使用):

  • Qwen3-Coder-Next: 70.6%
  • DeepSeek-V3.2(671Bパラメータ): 70.2%
  • GLM-4.7(358Bパラメータ): 74.2%

わずか3Bの活性パラメータで、100倍以上のパラメータを持つモデルに匹敵する性能を達成しています。

SWE-Bench Multilingual:

  • Qwen3-Coder-Next: 62.8%
  • DeepSeek-V3.2: 62.3%
  • GLM-4.7: 63.7%

SWE-Bench Pro(より困難な課題):

  • Qwen3-Coder-Next: 44.3%
  • DeepSeek-V3.2: 40.9%
  • GLM-4.7: 40.6%

より困難なタスクでは、大規模モデルを上回る性能を示しています。

セキュリティベンチマーク

SecCodeBench(脆弱性修復能力の評価):
コード生成シナリオにおいて、Qwen3-Coder-NextはClaude Opus 4.5を上回りました。

  • Qwen3-Coder-Next: 61.2%
  • Claude Opus 4.5: 52.5%

CWEval(多言語セキュリティ評価):
機能性とセキュアなコード生成のバランスで、DeepSeek-V3.2とGLM-4.7の両方を上回りました。

  • Qwen3-Coder-Next func-sec@1: 56.32%

その他のベンチマーク

Terminal-Bench 2.0(Terminus-2 JSONスキャフォールド使用):

  • Qwen3-Coder-Next: 36.2%

Aiderベンチマーク:

  • Qwen3-Coder-Next: 66.2%

これらの結果は、Qwenチームの「10〜20倍のアクティブパラメータを持つモデルに匹敵する性能」という主張を裏付けています。

ハードウェア要件とローカル実行

必要なハードウェア

Qwen3-Coder-Nextをローカルで実行するには、以下のようなハードウェアが必要です。

Q4量子化(推奨):

  • 必要VRAM/RAM: 約46GB
  • 対応ハードウェア例:
  • NVIDIA RTX 4090 × 2
  • NVIDIA RTX 5090(単体)
  • Mac Studio M3 Ultra(64GB以上)
  • AMD Radeon 7900 XTX(ユーザー報告あり)

8ビット量子化:

  • 必要VRAM/RAM: 約85GB

CPUオフロード併用:

  • VRAM 8GB + RAM 32GB
  • 推論速度: 約12トークン/秒

3Bの活性パラメータ設計により、トークン生成は控えめなハードウェアでも高速です。
ボトルネックは推論実行ではなく、80B全体の重みをメモリに格納することです。

実装ツール

Qwen3-Coder-Nextは、複数の推論フレームワークをサポートしています。

llama.cpp:
最も汎用的な選択肢で、GGUF形式の量子化モデルを使用します。
UnslothチームがダイナミックGGUFとFP8量子化を提供しており、高品質と高速性を両立しています。

vLLM:
高スループット・メモリ効率的な推論エンジンです。
vLLM 0.15.0以降が必要で、OpenAI互換のAPIサービスを起動できます。

SGLang:
SGLang 0.5.8以降が必要です。
Tensor Parallelによる分散推論をサポートしています。

Ollama:
Ollama 0.15.5(プレリリース版)が必要です。
最もシンプルなインストールと実行方法を提供します。

Transformers:
Hugging FaceのTransformersライブラリを使用した標準的な実装も可能です。

IDE・エージェント統合

Qwen3-Coder-Nextは、様々なコーディングエージェントプラットフォームとの統合を想定して設計されています。

対応プラットフォーム:

  • Claude Code
  • OpenAI Codex
  • Qwen Code
  • Cline
  • OpenCode
  • Kilo
  • Trae

256Kのコンテキスト長と、多様なスキャフォールドテンプレートへの適応性により、異なるCLI/IDE環境へのシームレスな統合が可能です。

実際の使用例

基本的な使用方法(Transformers)

from transformers import AutoModelForCausalLM, AutoTokenizer

model_name = "Qwen/Qwen3-Coder-Next"

# トークナイザーとモデルの読み込み
tokenizer = AutoTokenizer.from_pretrained(model_name)
model = AutoModelForCausalLM.from_pretrained(
    model_name,
    torch_dtype="auto",
    device_map="auto"
)

# 入力の準備
prompt = "クイックソートアルゴリズムを実装してください。"
messages = [
    {"role": "user", "content": prompt}
]

text = tokenizer.apply_chat_template(
    messages,
    tokenize=False,
    add_generation_prompt=True,
)

model_inputs = tokenizer([text], return_tensors="pt").to(model.device)

# テキスト生成
generated_ids = model.generate(
    **model_inputs,
    max_new_tokens=65536
)

output_ids = generated_ids[0][len(model_inputs.input_ids[0]):].tolist()
content = tokenizer.decode(output_ids, skip_special_tokens=True)
print("生成されたコード:", content)

Ollamaでの使用

# モデルの実行(Ollama 0.15.5以降が必要)
ollama run qwen3-coder-next
# Python APIでの使用
from ollama import chat

response = chat(
    model='qwen3-coder-next',
    messages=[{'role': 'user', 'content': 'Hello!'}],
)
print(response.message.content)

ツールコーリング

Qwen3-Coder-Nextは、高度なツールコーリング機能を備えています。

# ツール定義の例
tools = [
    {
        "type": "function",
        "function": {
            "name": "execute_python",
            "description": "Pythonコードを実行します",
            "parameters": {
                "type": "object",
                "properties": {
                    "code": {
                        "type": "string",
                        "description": "実行するPythonコード"
                    }
                },
                "required": ["code"]
            }
        }
    }
]

# ツールを使用したチャット
messages = [
    {"role": "user", "content": "2つの数値を足す関数を作成して実行してください"}
]

# モデルはツールを呼び出すJSON応答を生成

最適な推論パラメータ

公式ドキュメントでは、以下のサンプリングパラメータが推奨されています。

  • temperature: 1.0
  • top_p: 0.95
  • top_k: 40

他のモデルとの比較

Qwen3-Coder-Next vs Claude Opus 4.5

性能:

  • SWE-Benchでは、Qwen3-Coder-NextはClaude Sonnet 4.5に匹敵する性能を示しています
  • セキュアコード生成では、Qwen3-Coder-NextがClaude Opus 4.5を上回ります

コスト:

  • Claude Opus 4.5: 高額なAPI料金が必要
  • Qwen3-Coder-Next: オープンソースでローカル実行可能、API料金なし

実行環境:

  • Claude Opus 4.5: クラウドAPIのみ
  • Qwen3-Coder-Next: ローカル実行可能(プライバシーとデータ主権の確保)

Qwen3-Coder-Next vs DeepSeek-V3

アーキテクチャ:

  • Qwen3-Coder-Next: 80B総パラメータ、3B活性パラメータ(MoE)
  • DeepSeek-V3: 671Bパラメータ

性能:

  • SWE-Bench Verified: Qwen3-Coder-Next(70.6%) > DeepSeek-V3.2(70.2%)
  • SWE-Bench Pro: Qwen3-Coder-Next(44.3%) > DeepSeek-V3.2(40.9%)

ローカル実行:

  • Qwen3-Coder-Next: コンシューマーハードウェアで実行可能
  • DeepSeek-V3: 1兆パラメータの推論には大規模なインフラが必要

Qwen3-Coder-Next vs Kimi K2.5

どちらも2026年初頭にリリースされた最新のMoEモデルですが、最適化の方向性が異なります。

Qwen3-Coder-Next:

  • 効率性重視(3B活性パラメータ)
  • ローカル実行を強く意識した設計
  • コーディングエージェントに特化

Kimi K2.5:

  • より広範な活性パラメータ(32B)
  • エージェントスウォーム機能(最大100のサブエージェント並列実行)
  • BrowseCompベンチマークで78.4%(エージェントスウォーム有効時)

どちらを選ぶかは、用途とハードウェアリソースによります。
ローカル実行とコスト効率を優先するならQwen3-Coder-Next、ブラウジングや複雑なマルチエージェントタスクならKimi K2.5が適しています。

制限事項と注意点

Thinkingモード非対応

Qwen3-Coder-Nextは、非Thinkingモード専用です。
<think></think>ブロックを生成しません。
信頼性とスピードを重視した設計で、長時間の推論よりも迅速なコード応答を優先しています。

Thinkingモードが必要な場合は、Qwen3-Next-80B-A3B-Thinkingを使用してください。

コンテキスト長の調整

デフォルトのコンテキスト長は256Kですが、サーバー起動に失敗する場合は、より小さい値(例:32,768)に減らすことを検討してください。

メモリ要件

80Bパラメータの重みをメモリに格納する必要があるため、量子化なしでの実行には大容量のVRAM/RAMが必要です。
実用的には、Q4量子化以上の使用が推奨されます。

コミュニティとサポート

公式リソース

コミュニティサポート

  • Unslothドキュメント: 詳細な実装ガイドとGGUF量子化版を提供
  • HuggingFace Discussions: モデルページのディスカッションセクション
  • Reddit r/LocalLLaMA: 実用的な使用例と最適化テクニック

まとめ:オープンソースAIコーディングの新時代

Qwen3-Coder-Nextは、AIコーディングアシスタントの民主化において重要なマイルストーンです。

主な特徴

  • 超高効率: わずか3B活性パラメータでClaude Sonnet 4.5レベルの性能
  • ローカル実行可能: 高性能なコンシューマーハードウェアで動作
  • オープンウェイト: Apache 2.0ライセンスで商用利用可能
  • 実世界の性能: SWE-Bench Pro 44.3%を達成
  • コスト効率: 高額なAPIコストを排除

オープンソースの優位性

2026年2月時点で、オープンソースとプロプライエタリモデルの性能差は急速に縮小しています。
Qwen3-Coder-Next、GLM-4.7-Flash、そして今後リリースされるDeepSeekなどのモデルにより、以下のような未来が近づいています。

  • プライバシーとデータ主権: センシティブなコードをローカルで処理
  • コスト効率: API料金なしで無制限に使用可能
  • カスタマイズ性: 特定のドメインやコーディングスタイルに合わせてファインチューニング可能
  • ベンダーロックインからの解放: 複数のプラットフォームとツールで自由に使用

今後の展望

Qwenチームは、モデルの継続的な改善を約束しています。

  • より強力な推論能力
  • よりスマートなツール使用
  • より広範なタスクカバレッジ
  • ユーザーフィードバックに基づく迅速な更新

2026年は、AIコーディングアシスタントが、巨大なクラウドモデルから、効率的でローカル実行可能なモデルへとシフトする転換点となるでしょう。
Qwen3-Coder-Nextは、その最前線に立つモデルの一つです。

参考情報

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