「ミシンの女の子」は、深夜の家庭で足踏みミシンに座る謎の少女が現れるという都市伝説です。
振り返ったその顔には目も鼻も口もなく、青いあざのようになっているだけ——。
1997年に青森県で収集された怪談として記録されており、のっぺらぼう系の怪異と家庭内の恐怖が融合した独特の話として知られています。
ミシンの女の子のあらすじ
この都市伝説は、ある少年が深夜に体験した恐怖として語られています。
ある夜、少年はトイレに行きたくなって目を覚ましました。
二階の自分の部屋を出て、一階のトイレへ向かいます。
用を済ませて階段を上がろうとしたとき、異変に気づきました。
廊下の奥に置いてある足踏みミシンに、見知らぬ少女が座っていたのです。
驚いた少年がその子を見つめていると、少女が突然こちらに顔を向けました。
その顔には、目も鼻も口もありません。
あるのは青いあざのようなものだけでした。
少女はいきなり立ち上がると、少年のほうへ近づいてきます。
少年は慌てて階段を駆け上がりましたが、背後からは足音がついてきました。
部屋に戻った少年は布団の中で震えていましたが、それ以降は何も起こらず、そのまま朝を迎えたといいます。
翌朝、部屋を出てミシンを見ると、茶色の糸がぐちゃぐちゃに絡まっていました。
この都市伝説の特徴
「ミシンの女の子」には、日本の怪談によく見られるいくつかの要素が組み合わさっています。
のっぺらぼうの系譜
顔に目・鼻・口がないという特徴は、日本の伝統的な妖怪「のっぺらぼう」と共通しています。
のっぺらぼうは小泉八雲の『怪談』に収録された「貉(むじな)」でも有名で、古くから日本人に恐れられてきた存在です。
ただし、伝統的なのっぺらぼうが「人を驚かすだけで危害を加えない」とされるのに対し、ミシンの女の子は少年を追いかけてくるという攻撃的な行動を見せます。
足踏みミシンという舞台装置
足踏みミシンは、昭和時代の家庭に広く普及していた道具です。
電動ミシンが主流となった現代では見かけることが少なくなりましたが、かつては多くの家庭の廊下や部屋の片隅に置かれていました。
薄暗い場所に置かれた古い機械という設定が、この話の不気味さを高めています。
「証拠」が残る構造
朝になると糸が絡まっていたという結末は、怪異が実際に起きたことを示唆する「証拠」として機能しています。
「夢だったのかもしれない」という逃げ道を塞ぎ、恐怖をより現実的なものとして印象づける効果があります。
出典と収録文献
この都市伝説は、以下の文献に記録されています。
原典
久保孝夫編『女子高生が語る不思議な話』(青森県文芸協会出版部、1997年)に収録されています。
この本は、青森県の女子高生から収集した不思議な話や怪談をまとめたもので、263ページにわたる地方出版ながら貴重な怪異資料として知られています。
事典類での紹介
朝里樹『日本現代怪異事典』(笠間書院、2018年)では、この怪談が紹介されており、出典として上記の『女子高生が語る不思議な話』が明記されています。
また、朝里樹監修『日本の都市伝説大事典』(新星出版社、2020年)にも収録されています。
『日本現代怪異事典』は1000種類以上の現代怪異を五十音順で紹介した事典で、怪異研究の基礎資料として広く参照されています。
関連する都市伝説・怪談
「ミシンの女の子」と共通する要素を持つ怪談は他にもあります。
家庭科室のミシンの幽霊
学校の家庭科室で、ミシンに向かって作業をしている少女の幽霊が出るという話が各地で語られています。
「自分の手を縫い付けている」というバリエーションもあり、ミシンという道具が持つ「針」「糸」といった要素が恐怖と結びつきやすいことがわかります。
深夜のトイレ帰りの怪異
深夜にトイレへ行った帰りに怪異と遭遇するというパターンは、学校の怪談から家庭の怪談まで幅広く見られます。
「トイレの花子さん」に代表されるように、トイレという場所は怪談の舞台として定番化しています。
まとめ
「ミシンの女の子」は、1997年に青森県で収集された都市伝説です。
深夜の家庭という身近な舞台、のっぺらぼうという伝統的な妖怪の要素、そして翌朝に残された「証拠」という構成が、独特の恐怖を生み出しています。
足踏みミシンを見かけることが少なくなった現代でも、暗がりに置かれた古い機械の不気味さや、深夜に「何か」と遭遇する恐怖は普遍的なものとして語り継がれています。
参考文献
- 久保孝夫編『女子高生が語る不思議な話』青森県文芸協会出版部、1997年
- 朝里樹『日本現代怪異事典』笠間書院、2018年
- 朝里樹監修『日本の都市伝説大事典』新星出版社、2020年


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