SeaMonkey(シーモンキー)は、ウェブブラウザ、メールクライアント、HTMLエディタ、IRCチャットなどを一つにまとめたインターネット統合アプリケーションです。
かつてNetscape Communicatorが提供していたオールインワンのコンセプトを継承し、コミュニティによって開発が続けられています。
FirefoxやThunderbirdと同じGeckoレンダリングエンジンを使用しており、高度なユーザー、ウェブ開発者、企業ユーザーに適しています。
この記事では、SeaMonkeyの基本情報から主要機能、導入方法まで詳しく解説します。
SeaMonkeyの基本情報
SeaMonkeyは、Mozilla Foundationがかつて開発していたMozilla Application Suiteの後継版として、コミュニティ主導で開発されているフリーでオープンソースのインターネット統合環境です。
SeaMonkeyの名前の由来
SeaMonkey(シーモンキー)という名前は、小型甲殻類アルテミアの別名に由来しています。
もともとは、NetscapeとMozilla Foundationが、未発売に終わったNetscape Communicator 5、そして後のMozilla Application Suite自体のコードネームとして使用していました。
当初、Netscapeの開発者たちは社内コンテストで「Buttmonkey」というコードネームを選びましたが、Netscapeの経営陣が「Seamonkey」に変更したという経緯があります。
SeaMonkey Councilは、Mozilla Foundationの支援を受けてこの名前を商標登録しました。
開発の経緯
2005年3月10日、Mozilla Foundationは、「Mozilla」名義で発表していたインターネット統合アプリケーションをバージョン1.7で打ち切ると発表しました。
今後はMozilla Firefox(ブラウザ)とMozilla Thunderbird(電子メールクライアント)の開発に注力していくという方針転換でした。
同時に、開発コード「SeaMonkey」として開発が続けられていたMozillaについて、開発の継続を行う意志のあるコミュニティに対し、ソースコードなどの環境を提供し、協力していくと表明しました。
2005年7月、SeaMonkey CouncilがMozillaの開発を継続することを表明し、ここにSeaMonkeyプロジェクトが立ち上がりました。
プロジェクトはMozilla時代から使われてきた開発コードをそのまま踏襲することとなり、プロジェクトの名称はもともとMozilla 1.8のコードネームであったSeaMonkeyを正式のものとしました。
SeaMonkeyプロジェクトによって開発が再開されたインターネット統合アプリケーションは、2005年9月にアルファ版、12月にベータ版をリリースしました。
そして2006年1月30日、SeaMonkeyプロジェクトの最初の製品版であるバージョン1.0の英語版がリリースされました。
2007年7月には、かねてより非公式で提供されていた日本語インストーラー版(Windows)と日本語化パック(マルチプラットフォーム)がSeaMonkey Councilの承認を受け、公式版としてリリースされるようになりました。
対応環境
SeaMonkeyは以下の環境で動作します。
- Windows(Windows 7以降)
- macOS(64ビット版)
- Linux(64ビット版)
2025年時点での最新版SeaMonkey 2.53.23(2026年1月初旬リリース)では、64ビット版のみが提供されています。
SeaMonkey 2.53.21が32ビット版(Windows x86、Linux i686)をサポートする最後のバージョンとなりました。
SeaMonkeyの構成要素
SeaMonkeyは、複数のアプリケーションが統合された「インターネットスイート」です。
ウェブブラウザ
Firefoxで使われているGeckoレンダリングエンジンを使用したタブブラウザです。
Firefoxと同じ基盤を持ちながら、NetscapeやMozilla Application Suiteの伝統的なインターフェースを維持しています。
主な機能は以下の通りです。
- タブブラウジング
- フィード検出
- ポップアップブロック
- スマートロケーションバー
- タイプして検索(Find as you type)
- セッション復元(クラッシュリカバリー)
メール&ニュースグループクライアント
Thunderbirdと多くのコードを共有するメールクライアントです。
メール、ニュースグループ、RSSフィードの閲覧に対応しています。
主な機能は以下の通りです。
- 適応型迷惑メールフィルタリング
- タグとメールビュー
- ウェブフィードリーダー
- タブ型メッセージング
- 複数アカウント対応
- S/MIME対応
- アドレス帳(LDAP対応)
Composer(HTMLエディタ)
WYSIWYGのHTML編集ツールです。
視覚的にウェブページを作成・編集できます。
FirefoxでもカスタムCSSを使えば同様の機能を実現できますが、自力でファイルを用意し高度な設定を変更する必要があります。
一方、SeaMonkeyのComposerは標準で搭載されており、すぐに使用できます。
ただし、CSS編集支援機能は限定的で、HTMLタグモードでタグをダブルクリックし、表示されるダイアログボックスでCSSのインラインスタイルを追加・編集することは可能です。
ChatZilla(IRCクライアント)
IRCチャット用のアプリケーションです。
インターネットリレーチャット(IRC)サーバーに接続して、リアルタイムのテキストチャットを楽しめます。
ウェブ開発ツール
DOM Inspectorなどのウェブ開発ツールが含まれています。
ウェブ開発者にとって便利な機能が統合されています。
SeaMonkeyの主要機能
オールインワンのコンセプト
SeaMonkeyの最大の特徴は、インターネットで必要となる複数の機能が一つのアプリケーションに統合されている点です。
ブラウザ、メールクライアント、HTMLエディタ、IRCチャットを個別にインストールする必要がありません。
一つのアプリケーションで統合管理できるため、設定やデータの管理が容易です。
Mozilla技術の活用
SeaMonkeyは、FirefoxやThunderbirdの成功の原動力となったものと同じMozillaのソースコードを多く使用しています。
FirefoxやThunderbirdの新機能やセキュリティアップデートなども、適宜SeaMonkeyに実装されます。
逆に、SeaMonkeyでの改良点がFirefoxやThunderbirdにフィードバックされることもあります。
Mozillaとは別組織ですが、まったく無縁ではなく、相互に開発を支援する関係にあります。
アドオンシステム
SeaMonkeyは、レガシーなXPCOMベースのアドオンシステムを維持しています。
これにより、Thunderbirdのアドオンや、Firefoxが拡張機能をWebExtensionsに切り替える前に互換性があったアドオンを使用できます。
SeaMonkey用のアドオンはSeaMonkey Add-onsから入手できます。
ただし、SeaMonkey専用のアドオンは数が限られています。
カスタマイズ性
ブラウザ、メインメール・ニュース、メッセージ作成ウィンドウのツールバーは完全にカスタマイズ可能です。
アイコンサイズ、アイコンとテキストの表示設定など、各主要ツールバーのコンテキストメニューから設定できます。
プライバシー保護
トラッキング保護機能が強化されており、ユーザーのプライバシーを守ります。
設定画面からトラッキング拒否の通知を有効にできます。
SeaMonkeyの最新版
2026年1月時点での最新版は、SeaMonkey 2.53.23です。
バージョン2.53.23の主な特徴
SeaMonkey 2.53.23は、2.53.xブランチの段階的なアップデートで、アプリケーションおよび基盤となるプラットフォームコードへの多数の機能強化、変更、修正が組み込まれています。
主な変更点は以下の通りです。
- Firefox 60.8およびThunderbird 60.8のセキュリティ修正を含む
- Firefox 140.6 ESRおよびThunderbird 140.6 ESRまでの重要なセキュリティ修正とエンハンスメントをバックポート
- RECAPTCHAの新バージョンの問題を修正するため、MessagePort用のPostMessageOptionsのサポートを追加
- CSS justify-items legacyのサポートをGeckoに追加
- Linuxのクローズ時のクラッシュ問題を修正
セキュリティとアップデート
SeaMonkeyプロジェクトは、最新の安定版のみをサポートしています。
セキュリティを維持するため、最新版へのアップデートが推奨されます。
ただし、バージョン2.53.1より前のバージョンからアップグレードする場合、プロファイルに変更が加えられ、古いバージョンに戻すことができなくなります。
アップグレード前に、必ずプロファイルの完全バックアップを取ることが強く推奨されます。
導入方法
SeaMonkeyは公式サイトから無料でダウンロードできます。
インストール手順
- SeaMonkey公式サイトにアクセス
- 「Download」ボタンをクリック
- 使用しているOSと言語を選択
- インストーラーをダウンロード
- ダウンロードしたファイルを実行してインストール
日本語版は、公式サイトから直接ダウンロードできます。
Windows、macOS、Linuxの各OSに対応したインストーラーが提供されています。
初期設定
初回起動時には、「既定のクライアント」の設定画面が表示されます。
ウェブブラウザ、メール、ニュースなどをSeaMonkeyで処理するかどうかを選択できます。
起動時に毎回確認するのが煩わしい場合は、「SeaMonkeyを起動するたびに確認する」のチェックを外しておくとよいでしょう。
メールアカウントの設定
メールクライアントを初めて起動すると、「アカウントウィザード」が表示されます。
ウィザードの画面に従って、メールアカウントを設定します。
通常のアカウント作成だけでは詳細な設定を行えない場合があります。
メールアカウントの右クリックメニューから「設定」をクリックし、「メールとニュースグループのアカウント設定」画面で詳細設定を確認すると、メールを送受信できるようになる場合があります。
SeaMonkeyのメリットとデメリット
メリット
SeaMonkeyの主なメリットは以下の通りです。
- 複数のインターネット機能が一つのアプリケーションに統合されている
- オープンソースで無料で使用できる
- MozillaのGeckoエンジンを使用しており、高速で安全
- 伝統的なインターフェースを維持している
- レガシーアドオンシステムを使用できる
- コミュニティによって継続的に開発されている
デメリット
一方で、以下のようなデメリットもあります。
- FirefoxやChromeほど頻繁にアップデートされない
- 最新のウェブ技術への対応が遅れる可能性がある
- SeaMonkey専用のアドオンが少ない
- 一部のウェブサイトで互換性の問題が発生する可能性がある
- 統合アプリケーションであるため、個別のアプリケーションと比べると柔軟性が低い
SeaMonkeyの開発体制
SeaMonkey Council
SeaMonkey Councilは、プロジェクトをリードするチームです。
その責任には、リリース管理(いつリリースを行い、どのコードをリリースに含めるかの決定)、開発者間で意見が分かれた場合の機能に関する最終決定が含まれます。
SeaMonkey Councilは、Mozilla Foundationと連携して、SeaMonkeyプロジェクトに関する法的問題も決定します。
Mozilla Foundationは、プロジェクトに法的支援を提供しています。
SeaMonkey Association
SeaMonkey Associationは、SeaMonkeyプロジェクトに法的支援を提供しています。
SeaMonkeyとSeaMonkeyのロゴは、SeaMonkey Association(SeaMonkey e.V.)の登録商標です。
コミュニティによる開発
SeaMonkeyの開発はコミュニティ主導で行われています。
Mozilla Foundationが管理していたMozilla Application Suiteとは対照的に、SeaMonkeyはボランティアを中心に開発が進められています。
開発に貢献したい場合、コミュニティに参加し、コードの提供、バグ報告、テストなどで協力できます。
Firefox、Thunderbirdとの比較
Firefoxとの比較
SeaMonkeyのブラウザ部分は、Firefoxと同じGeckoレンダリングエンジンを使用していますが、いくつかの違いがあります。
SeaMonkeyが優れている点は以下の通りです。
- ブラウザに加えてメールクライアントやHTMLエディタなどが統合されている
- 伝統的なインターフェースを維持している
- レガシーアドオンシステムを使用できる
Firefoxが優れている点は以下の通りです。
- 最新のウェブ技術への対応が早い
- より頻繁にアップデートされる
- より多くのユーザーベースがあり、情報が豊富
- より多くの拡張機能が利用できる
Thunderbirdとの比較
SeaMonkeyのメールクライアント部分は、Thunderbirdと多くのコードを共有しています。
SeaMonkeyが優れている点は以下の通りです。
- ブラウザやHTMLエディタなどが統合されている
- 一つのアプリケーションで管理できる
Thunderbirdが優れている点は以下の通りです。
- メール機能に特化しており、より洗練されている
- より多くのアドオンが利用できる
- より頻繁にアップデートされる
SeaMonkeyのライセンス
SeaMonkeyは、フリーでオープンソースのソフトウェアです。
コアとなるMozillaプロジェクトのソースコードは、Mozilla Public License 2.0の下でライセンスされています。
ソースコードは、GitLabのSeaMonkeyプロジェクトリポジトリから入手できます。
誰でもソースコードを閲覧し、自分のバージョンをビルドできます。
まとめ
SeaMonkeyは、かつてのNetscape Communicatorのオールインワンコンセプトを継承し、コミュニティによって開発が続けられているインターネット統合環境です。
ウェブブラウザ、メールクライアント、HTMLエディタ、IRCチャットなどが一つのアプリケーションに統合されています。
FirefoxやThunderbirdと同じGeckoレンダリングエンジンを使用しており、高速で安全なブラウジング体験を提供します。
伝統的なインターフェースを維持しており、レガシーアドオンシステムも使用できます。
一方で、最新のウェブ技術への対応がFirefoxより遅れる可能性があり、専用のアドオンも限られています。
また、一部のウェブサイトで互換性の問題が発生する可能性もあります。
複数のインターネット機能を一つのアプリケーションで管理したい上級ユーザー、ウェブ開発者、企業ユーザーには、SeaMonkeyは優れた選択肢となるでしょう。
オールインワンのコンセプトを好むユーザーや、伝統的なインターフェースを好むユーザーにもおすすめです。


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