画面の向こうで、アニメキャラクターがリアルタイムで話しかけてくる。
そんな光景が当たり前になったのは、ここ数年の話です。
VTuber(バーチャルYouTuber)は、2016年のキズナアイ登場から急速に発展し、今や年間1000億円を超える巨大市場へと成長しました。
でも、実は「最初のVTuber」はキズナアイよりもずっと前から存在していたんです。
この記事では、2011年の黎明期から2025年の最新動向まで、VTuber文化がどのように生まれ、発展してきたのかを時系列で詳しく解説します。
VTuberとは?
VTuber(バーチャルYouTuber)は、2DCGや3DCGで描画されたキャラクター(アバター)を使って、動画投稿や生配信を行う配信者の総称です。
演者はモーションキャプチャ技術やフェイストラッキング技術を使ってアバターを動かし、リアルタイムでキャラクターと同期させます。
顔出しせずに活動できるため、プライバシーを守りながら配信者としての活動が可能になったんですね。
「バーチャルYouTuber」という言葉は2016年12月に活動を開始したキズナアイが名乗り、初めて使用されました。
その後、略語として「VTuber」が広まり、現在ではYouTube以外のプラットフォームで活動する配信者も含む、より広範な意味で使われています。
黎明期(2011-2015年)|最初のVTuber的存在
Ami Yamato(2011年)|世界最古のバーチャルブロガー
VTuber的活動をした最初のキャラクターと言われているのが、Ami Yamatoです。
彼女が初めて動画を投稿したのは2011年6月。
ロンドン在住の日本人という設定で、自身の日常をビデオブログとしてYouTubeに投稿していました。
当時はまだ「VTuber」という言葉すら存在していませんでした。
海外では「Virtual Vlogger(バーチャルブロガー)」と呼ばれており、ピクサー映画のような綺麗な3Dモデルで、現実世界の中で車を運転する動画を投稿するなど、技術力の高さが際立っていました。
面白いことに、Ami本人は自分をVTuberとは考えていません。
「誰もが自分自身のペルソナ…誰もがYouTube上ではバーチャルな存在だ」と語っています。
ウェザーロイドTypeA Airi(2012年)|天気予報番組のバーチャルキャスター
2012年、株式会社ウェザーニューズが天気予報番組「SOLiVE24」にウェザーロイドTypeA Airi(アイリ)を登場させました。
Vocaloid風のキャラクターデザインで、ニコニコ動画やYouTubeで24時間天気予報を配信。
2014年からはモーションキャプチャを使った生放送も開始し、現在のVTuberに近いスタイルでの活動を行いました。
放送ではよくハプニングを起こすことから、「ポンコツアンドロイド」として「ポン子」の愛称で親しまれています。
みゅみゅ・アニメ娘エイレーン(2014年)
2014年には、VR系の動画配信を活発に行っていたみゅみゅや、後のミライアカリの前身である「アニメ娘エイレーン」が活動を開始しました。
ただし、この時期はまだVTuberという概念が確立されておらず、活動者も少数でした。
VTuberという言葉が生まれるのは、あと2年待つことになります。
VTuber誕生(2016年)|キズナアイの衝撃
世界初のバーチャルYouTuber
2016年12月、日本のVTuber史における最も重要な出来事が起こりました。
キズナアイの誕生です。
キズナアイは動画の中で自らを「バーチャルYouTuber」と名乗り、この言葉を初めて使用しました。
デジタルプロダクション会社Activ8によって制作され、声優の春日望さんが声を担当しています。
当初から週5ペースで動画投稿を行い、最初の1ヶ月で20本以上の動画を公開。
チャンネル登録者数も1000人を達成し、徐々に注目を集めていきました。
キズナアイが受け入れられた理由
キズナアイの人気は、単なる技術的な新しさだけではありませんでした。
従来のウェブカメラを使ったYouTuberに飽きた視聴者にとって、仮想キャラクターという存在は新鮮だったんです。
幼い外見でありながら、ゲーム実況では悪態をつくなど、ギャップのあるキャラクター性も視聴者の心を掴みました。
また、ファンの質問にも反応する「リアルな親密さ」を作り出し、視聴者との距離感の近さが人気の理由となりました。
2017年4月にはチャンネル登録者数50万人、同年12月には100万人を突破。
2021年3月時点では、VTuberの中で最も登録者数の多い存在でした。
VTuber四天王時代(2017年)|ブームの始まり
5人の先駆者たち
2017年は、VTuber文化が本格的に広がり始めた年です。
キズナアイに続いて、以下の4人のVTuberが相次いで登場しました:
電脳少女シロ(2017年8月)
サイコパス系ゲーマーとして知られ、「PUBG」のゲーム実況動画が2.5百万回再生を記録。
VTuberのゲーム実況というジャンルを確立しました。
ミライアカリ(2017年10月)
初音ミクのイラストレーターとして知られるKEI氏がキャラクターデザインを担当。
「エゴサーの姫」として、視聴者の反応を積極的にチェックする姿勢が話題になりました。
バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさん(ねこます)(2017年11月)
可愛い女の子の見た目に、おじさんの声というギャップが特徴的。
「のじゃロリ」という独特のキャラクター性で人気を獲得しました。
輝夜月(2017年12月)
「首絞めハム太郎」の異名を持つ、ハイテンションなキャラクター。
特徴的な叫び声で注目を集め、短期間で急成長しました。
「VTuber四天王」という呼称
キズナアイを含めた5人は、ファンコミュニティの間で「バーチャルYouTuber四天王」と呼ばれるようになりました。
この呼称は5人いるのに「四天王」という、日本のネット文化特有のユーモアが込められています。
この5人の活躍により、「バーチャルYouTuber」はキズナアイの専売特許から、3Dキャラクターを使った配信者の総称へと意味が変化していったんです。
「VTuber」という略語の誕生
2017年末頃から、「バーチャルYouTuber」を略した「VTuber」という言葉が使われ始めました。
ライターのすらによると、2017年12月21日のX(旧Twitter)と5ちゃんねるの投稿が最初ではないかとされています。
また、12月23日にバーチャルYouTuberの「さはな」が動画内で「VTuber」という略語をテロップに使用したことも、広まるきっかけになったと言われています。
この略語は瞬く間に広がり、現在ではYouTube以外のプラットフォームで活動する配信者も含む、より広い意味で使われるようになりました。
企業参入と大衆化(2018年)|2Dモデル革命
VTuber人口の爆発的増加
2018年は、VTuber業界にとって転換点となる年でした。
ユーザーローカルのバーチャルYouTuberランキングサイトによると、2017年末には約1,000人だったVTuberが、2018年5月から7月にかけて2,000人から4,000人へと倍増しました。
この急増の背景には、大手企業の参入と、配信スタイルの大きな変化がありました。
にじさんじの登場|2Dモデル・生配信主体の革新
2018年2月、VTuber業界に革命をもたらす存在が登場しました。
ANYCOLOR株式会社(旧いちから株式会社、2017年5月設立)が運営する「にじさんじ」です。
にじさんじは、キズナアイなどの3Dモデル・動画主体のスタイルとは異なり、2Dモデル・生配信主体のスタイルを採用しました。
名前の由来は「二次元と三次元をつなぐ」という意味です。
当初はバーチャルライブアプリとして展開する予定でしたが、既に複数の競合プラットフォームが存在していたため、ライバー(配信者)のマネジメントに方針転換。
この判断が、後のVTuber業界の主流を作ることになりました。
ホロライブの始動|アイドル路線の確立
2018年6月、カバー株式会社(2016年6月設立)が運営する「ホロライブ」の1期生がデビューしました。
実はカバー株式会社は2016年の設立時から存在しており、ホロライブ1期生の前から活動していたメンバーも存在します。
特に最初のときのそらは2017年9月(ニコニコ動画)、2017年12月(YouTube)からデビューしており、ホロライブの原点とされています。
ホロライブはアイドルをコンセプトとした女性VTuberグループとして展開され、現在ではVTuber業界の最大手の一つとなっています。
ネット流行語大賞で1位獲得
2018年、「バーチャルYouTuber/VTuber」がネット流行語大賞2018で1位を獲得しました。
この頃から、VTuberは一部のネット文化から、より広い層に認知される存在へと変化していきました。
海外展開期(2019年)|グローバル化の始まり
2019年、にじさんじとホロライブはともに海外展開を開始しました。
にじさんじは「NIJISANJI ID」(インドネシア)、「NIJISANJI KR」(韓国)を立ち上げました(後に2022年4月に日本のにじさんじに統合)。
ホロライブは「hololive Indonesia」を設立し、インドネシア市場への進出を果たしました。
さらに翌2020年には「hololive English」を設立し、英語圏市場への本格的な展開を開始します。
この海外展開が、後のVTuber文化の世界的な広がりにつながっていきます。
パンデミックブースト(2020年)|VTuber視聴者の急増
2020年、COVID-19のパンデミックが世界を襲いました。
しかし、VTuber業界にとって、これは予想外の追い風となりました。
在宅需要の爆発
ロックダウンにより多くの人々が自宅での時間を過ごすことを余儀なくされ、オンラインエンターテイメントの需要が急増。
生配信の視聴時間が大幅に伸び、VTuberの視聴者数も急激に増加しました。
2020年までに、世界中で活動するVTuberの数は10,000人を超えたと報告されています。
hololive Englishの大成功
2020年9月、ホロライブが英語圏向けグループ「hololive English -Myth-」をデビューさせました。
この中の一人、Gawr Gura(がうる・ぐら)は、わずか1年足らずで爆発的な人気を獲得。
2021年6月には、VTuber界の先駆者であるキズナアイのチャンネル登録者数を上回り、VTuber史上最速で100万人を達成しました。
現在、Gawr Guraは世界で最も登録者数の多いVTuberとなっています。
個人VTuberの増加
大手事務所だけでなく、個人で活動するVTuberも急増しました。
Live2DやVTube Studioなどのソフトウェアが普及したことで、個人でもVTuber活動を始めるハードルが大幅に下がったんです。
ビジネス成熟期(2022-2024年)|市場の急成長
大手企業の株式上場
2022年、VTuber業界にとって歴史的な出来事が起こりました。
にじさんじを運営するANYCOLOR株式会社が東証グロース市場に上場したんです。
続いて2023年3月には、ホロライブを運営するカバー株式会社も東証グロース市場に上場。
VTuber事業を展開する2社が相次いで上場したことで、業界の将来性が広く認識されるようになりました。
誹謗中傷対策での連携
2022年12月、ホロライブとにじさんじが誹謗中傷の根絶を行うための連携を発表しました。
ライバル関係にある2社が協力することで、VTuber業界全体の健全性を守る姿勢を示したんです。
日本市場規模の推移
矢野経済研究所の調査によると、VTuber市場(日本)の規模は以下のように推移しています:
- 2023年度: 800億円(前年度比153.8%)
- 2024年度: 1,050億円(推計)
- 2025年度: 1,260億円(予測、前年度比120.0%)
セグメント別の内訳(2023年度)では:
- グッズ: 445億円(55.6%)
- ライブストリーミング: 160億円(20.0%)
- BtoB(タイアップ広告など): 131億円(16.4%)
- イベント: 64億円(8.0%)
グッズ販売が過半数を占めており、VTuberのIP(知的財産)としての価値が高まっていることがわかります。
世界市場の成長
世界市場でも、VTuber市場は急成長を続けています。
市場調査レポートによると、世界のバーチャルアイドル・VTuber市場は:
- 2024年: 14億1,638万米ドル
- 2030年: 38億5,242万米ドル(予測)
- 年平均成長率(CAGR): 18.15%
主要企業としては、ANYCOLOR(にじさんじ)、Cover(ホロライブ)、Bilibili、774 inc、Re:AcT、VShojo等が挙げられており、2023年時点で上位5社が約56.78%の収益シェアを占めています。
現在の状況(2024-2025年)|多様化と深化
メジャーリーグやNBAとのコラボ
VTuberは今や、主流のスポーツ業界ともコラボする存在になりました。
2024年6月、ホロライブとメジャーリーグの名門ロサンゼルス・ドジャースがコラボ。
ドジャースの誕生100周年記念イベント「hololive night」で、兎田ぺこらとGawr Guraが出演しました。
同様に、にじさんじとNBAのコラボも発表され、30チームと30名のライバーのコラボグッズが販売されました。
技術の進化
VTuberを支える技術も日々進化しています。
AIを活用した自動配信システム、より高精度なモーションキャプチャ、3Dモデルの品質向上など、技術革新により表現の幅が広がっています。
2024年には、AI-DOLが人間の支援なしで24時間ライブストリーミングできる自律型AIエージェントを作成したことも報告されています。
VTuber科の開設
2023年12月、代々木アニメーション学院が「VTuber科」を開講すると発表しました。
VTuberが職業として認識され、専門教育が提供される時代になったんです。
VTuber業界の特徴と強み
二重性:タレントとキャラクター
VTuberの最大の特徴は、「タレント」と「キャラクター」の二重性にあります。
視聴者は配信者の人格(タレント性)を楽しみつつ、同時にキャラクターデザインやストーリー性も楽しめます。
この二重性が、従来のYouTuberやアニメキャラクターとは異なる独自の魅力を生み出しているんです。
IP活用の可能性
VTuberのキャラクターは、ゲーム、音楽、グッズ、アニメなど、さまざまな形で展開可能です。
特にホロライブは「IP軸」の展開を重視しており、ホロライブ オルタナティブという世界観の構築や、複数のゲームタイトルの開発を進めています。
事務所によるマネジメント
大手事務所は、VTuberのキャラクターデザイン、モデル制作、配信サポート、グッズ販売、イベント運営など、総合的なマネジメントを提供しています。
これにより、配信者は配信活動に集中でき、事務所は長期的なIP展開が可能になります。
事務所がアバターの権利を保持することで、活動継続率の高さと経営の安定性も実現されています。
今後の展望
市場の継続的な成長
矢野経済研究所の予測によれば、日本のVTuber市場は2025年度に1,260億円に達し、その後も成長が続くと見込まれています。
ファン数の増加だけでなく、収益化の事業領域が拡大していることから、さらなる成長が期待されます。
グローバル展開の加速
現在、VTuberは日本発祥の文化ですが、世界各地で独自の発展を遂げています。
英語圏ではホロライブEnglishやVShojoが人気を獲得。
中国・台湾ではBilibiliで多数のVTuberが活躍。
東南アジアでもインドネシアやフィリピンでVTuberの人気が高まっています。
技術革新による新体験
VR/AR技術の進化により、VTuberとの交流体験はさらに深化していくでしょう。
メタバースでのライブイベント、AIによるリアルタイム翻訳、より高度なモーションキャプチャなど、技術革新が新しい体験を生み出していきます。
まとめ
VTuberの歴史を振り返ると、2011年のAmi Yamamotoから始まり、わずか14年で1000億円を超える市場へと成長してきました。
主要なマイルストーン:
- 2011年: Ami Yamato登場
- 2016年: キズナアイが「バーチャルYouTuber」という言葉を使用
- 2017年: VTuber四天王時代、「VTuber」という略語が広まる
- 2018年: にじさんじ・ホロライブが活動開始、2Dモデル・生配信主体のスタイルが主流に
- 2020年: COVID-19でVTuber視聴者が急増、1万人を突破
- 2022-2023年: ANYCOLOR・カバーが上場
- 2024年: 日本市場1,050億円、世界市場14億米ドル規模に
VTuberは単なるネット文化から、メジャーリーグとコラボし、株式市場にも上場する一大産業へと成長しました。
技術革新と文化の融合が生み出したこの新しいエンターテイメントは、今後もさらなる発展を続けていくでしょう。
参考情報
VTuber業界の基礎知識
- Wikipedia「バーチャルYouTuber」 – VTuberの定義と歴史
- Wikipedia「VTuber」(英語版) – 国際的な視点からの解説
歴史と発展
- VirtualHumans.org「Who Were the First VTubers」 – 初期VTuberの詳細
- RealSound「流行から約5年、いかにして「VTuber」は市民権を得たのか」 – VTuberの社会的認知度の変遷
企業情報
- にじさんじ公式サイト – ANYCOLOR運営のVTuberグループ
- Wikipedia「にじさんじ」 – にじさんじの詳細情報
- ホロライブ公式サイト – カバー株式会社運営のVTuberグループ
- Wikipedia「ホロライブプロダクション」 – ホロライブの詳細情報
市場調査・統計
- 矢野経済研究所「2025年 VTuber市場の徹底研究」 – 日本市場の詳細分析
- 矢野経済研究所プレスリリース(2025年4月) – 2025年度市場規模予測
- GII「バーチャルアイドル・VTuberの世界市場」 – 世界市場の動向
- Research Nester「バーチャルアイドル・VTuber市場調査」 – 市場予測2037年まで
業界動向・ニュース
- uyet media「VTuber業界の歴史まとめ」 – 2016-2024年の主要トピック
- KAI-YOU「VTuber市場規模、2025年度は1260億円に到達」 – 矢野経済研究所の調査報告
- PANORA「にじフェス・ホロEXPO座談会」 – にじさんじとホロライブの方向性の違い
専門解説記事
- uyet media「VTuber市場はなぜ急拡大したのか」 – イノベーション理論で読み解く成長理由
- digitaldiy「VTuberの歴史と変遷」 – 初期から現在までの有名VTuber
- VTuberArt「Who Was The First VTuber?」 – 初期VTuberの詳細解説


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