「消えるボールペンってどうやって消えるの?」
「本当に消えてるの?」
「なぜ冷やすと戻るの?」
こんな疑問をお持ちではありませんか?
この記事では、パイロットの「フリクション」に代表される消えるボールペンの仕組みを、科学的な原理から実用上の注意点まで、分かりやすく解説します。
消えるボールペンとは
消えるボールペンとは、専用のラバー(消しゴム)でこすると書いた文字が消えるボールペンです。
代表的な商品がパイロット社の「フリクション」シリーズで、2006年の発売以来、世界累計販売本数は20億本を突破し、2015年にはグッドデザイン金賞を受賞しています。
従来のボールペンとの違い
従来のボールペン:
- 一度書いたら消せない
- 修正液や修正テープが必要
- 紙を破らずに訂正できない
消えるボールペン:
- 何度でも書き直せる
- 修正液・修正テープ不要
- 消しカスが出ない
- 消し残りが少ない
消えるボールペンの仕組み
消えるボールペンが消える秘密は、特殊なインクと温度変化にあります。
基本原理:摩擦熱で透明化
重要なポイント:
消えるボールペンは、文字を「消す」のではなく、インクを「透明」にしているだけです。
仕組み:
- 専用ラバーで筆跡をこする
- 摩擦熱が発生(約65℃以上)
- インクが化学変化を起こす
- インクが無色透明になる
- 文字が見えなくなる
特殊なインク:フリクションインキ
フリクションボールペンには「フリクションインキ」という特殊なインクが使われています。
フリクションインキの特徴:
- 温度変化で色が変わる
- 60℃以上で透明化
- -20℃で色が完全復元
- -10℃で復元開始
インクの構造:マイクロカプセルの秘密
フリクションインキの色素は、特殊なマイクロカプセルが担っています。
マイクロカプセル内の3つの成分
このマイクロカプセルの中には、3つの重要な成分が入っています:
1. 発色剤(ロイコ染料)
- インクの色(赤、黒、青など)を決める成分
- 条件によって有色と無色が切り替わる
- 感熱紙(レシート)にも使用される技術
2. 顕色剤
- 発色剤を発色させる成分
- 電子受容性化合物
3. 変色温度調整剤
- 色が消える温度を調整する成分
- 発色剤と顕色剤の結合を制御
温度による化学変化
マイクロカプセル内の3つの成分は、温度によって組み合わせが変化します。
常温(約20℃)の状態:
発色剤 + 顕色剤 = 色が見える
変色温度調整剤 = 待機中
高温(65℃以上)の状態:
発色剤 = 単独(無色)
顕色剤 + 変色温度調整剤 = 結合
↓
インクが透明化
低温(-20℃)の状態:
発色剤 + 顕色剤 = 再結合
変色温度調整剤 = 分離
↓
色が完全復元
消える仕組みを動物で例えると
パイロット公式サイトでは、3つの成分を動物に例えて分かりやすく説明しています。
常温時:
- A(色のもと)とB(発色成分)が手をつないでいる → 色が見える
- C(消す成分)は眠っている
高温時(ラバーでこすった後):
- Cが目を覚まし、Bと手をつなぐ
- AとBが離れる → 色が消える(透明化)
低温時(冷凍庫に入れた後):
- Cが再び眠る
- AとBが再び手をつなぐ → 色が戻る
専用ラバーの役割
フリクションボールペンの後端に付いている専用ラバーには、こだわりが詰まっています。
ラバーの特徴:
- 弾力性: 強くこすっても紙を傷めない
- 耐久性: 何度使っても磨耗しにくい
- 摩擦性: 効率的に65℃以上の摩擦熱を発生
ラバーの重要性:
- 消しゴムのようにインクをこすり取っているわけではない
- 摩擦熱を発生させることが目的
- 紙の繊維に入り込んだインクも熱で透明化
消えるボールペンの歴史
消えるボールペンの技術は、実は40年以上前から研究されていました。
メタモカラーインキ(1975年)
基本原理の発見:
- 1975年に基本技術が開発
- 温度変化で色が変わるインク
- ロイコ染料+顕色剤+変色温度調整剤の3成分
問題点:
- 温度が下がるとすぐに色が戻ってしまう
- 実用性が低い
フリクションインキ(2006年)
技術的ブレークスルー:
- 復色温度を-20℃まで下げることに成功
- 常温では色が戻らない
- 実用的な消えるボールペンが誕生
開発のポイント:
「一度消したインキがすぐに元に戻らないように、復色する温度を下げる」技術が商品化の鍵でした。
実験:消えた文字を復活させる
消えた文字は、冷やすことで復活させることができます。
冷凍庫で復活
手順:
- 消えた文字が書かれた紙を用意
- ビニール袋に入れる(濡れ防止)
- 冷凍庫(-18℃程度)に入れる
- 数時間〜一晩放置
- 徐々に文字が戻ってくる
復元の温度:
- -10℃: 復元開始
- -20℃: 完全復元
ドライアイスで復活
より早く復元:
- ドライアイス(-79℃)を細かく砕く
- 耐寒性の容器に入れる
- エタノールをゆっくり注ぐ
- 消えた文字の部分に数秒当てる
- すぐに文字が戻る
注意:
- ドライアイスは素手で触らない(凍傷の危険)
- 必ず軍手を使用
- 密閉容器には入れない
お湯で消す実験
紙コップアート:
- 紙コップに普通のペンとフリクションで絵を描く
- コップにお湯(60℃以上)を注ぐ
- フリクション部分だけが消える
この実験で、「摩擦」ではなく「温度」がポイントだと分かります。
使用上の注意点
便利な消えるボールペンですが、重要な注意点があります。
1. 高温で勝手に消える
消える温度: 60℃以上
注意が必要な場面:
- 夏の車内(ダッシュボードは80℃近くなる)
- ストーブの近く
- アイロンがけ
- 直射日光の当たる場所
- ドライヤーの熱
実例:
「夏の車内に置いた手帳が真っ白になった」
「ダッシュボードに2時間で文字が消えた」
2. 冷やすと復活する
重要:
消えた文字は、完全に削除されたわけではありません。
復活する可能性:
- 冷凍庫に入れると復元
- -10℃以下で復元開始
- -20℃で完全復元
事件例:
2012年、大阪府警の警官が消えるボールペンで調書を改ざん。
冷凍庫で冷やすことで改ざんが判明し、書類送検・懲戒処分となりました。
3. 使用してはいけない書類
絶対に使用禁止:
- 公的書類(証明書、契約書、申請書)
- 宛名書き
- 履歴書
- 重要な記録
- 長期保存が必要な文書
- 法的効力のある書類
理由:
- 高温で消える
- 冷やすと復活する
- 改ざんの証拠が残る
- 法的トラブルの原因
4. 紙の種類による消え方
消えにくい紙:
- コート紙(ツルツルした紙)
- 感熱紙
- 特殊加工された紙
きれいに消える紙:
- 普通のノート
- コピー用紙
- レポート用紙
5. 色による違い
復元速度:
色によって復元する速度が異なります。
一般的に:
- 黒: 復元が早い
- 赤: 復元が中程度
- 青: 復元がやや遅い
消えるボールペンのメリット
1. 何度でも書き直せる
便利な場面:
- 勉強のノート取り
- スケジュール帳
- アイデア出し
- 下書き
従来の方法との比較:
- 修正液: 乾くまで待つ必要あり
- 修正テープ: かさばる
- 鉛筆: 薄い、にじむ
2. 消しカスが出ない
環境に優しい:
- 消しゴムのカスがない
- ゴミが出ない
- デスクが汚れない
仕組み:
温度変化でインクを透明化するため、物理的に削り取っていない。
3. 消し残りが少ない
きれいに消える理由:
紙の繊維に入り込んだインクも、熱が伝わることで透明化するため。
4. 訂正作業の効率化
時間短縮:
- 修正液の乾燥待ち不要
- 修正テープを探す手間不要
- すぐに書き直せる
ビジネスでの活用:
- 会議のメモ
- 資料への書き込み
- スケジュール管理
5. 学習効果の向上
間違いを恐れない:
- 何度でも書き直せる安心感
- 試行錯誤しやすい
- きれいなノートが作れる
消えるボールペンの活用シーン
学習・勉強
おすすめの使い方:
- 問題演習(間違えても書き直せる)
- 暗記カード作成
- ノート整理
- 図解作成
ビジネス
便利な場面:
- 会議メモ
- スケジュール調整
- 資料への注釈
- ブレインストーミング
注意:
正式な書類には使用しない
趣味・クリエイティブ
活用例:
- 手帳デコレーション
- イラスト下書き
- カリグラフィー練習
- 塗り絵
家庭
日常での使用:
- 買い物リスト
- 献立メモ
- 家計簿
- カレンダー記入
よくある質問
Q. 本当に完全に消えていますか?
いいえ、インクは透明化しているだけで、完全に消滅したわけではありません。
冷やすと色が戻ります。
Q. なぜこすると消えるのですか?
摩擦熱(65℃以上)によってインクが化学変化を起こし、透明になるからです。
Q. 消しゴムで消せますか?
消せません。専用のラバーで摩擦熱を発生させる必要があります。
普通の消しゴムでは熱が不足します。
Q. 夏の車内に置いても大丈夫ですか?
絶対にダメです。車内温度は60℃を超えるため、文字が消えてしまいます。
Q. 消えた文字を戻す方法は?
冷凍庫(-18℃程度)に数時間入れると、徐々に色が戻ります。
ドライアイスとエタノールを使うと、より早く復元できます。
Q. どんな紙にも使えますか?
普通の紙なら問題ありません。
ただし、コート紙(ツルツルした紙)や感熱紙では消えにくいことがあります。
Q. 重要な書類に使っても大丈夫ですか?
絶対にダメです。公的書類、契約書、証明書などには使用できません。
高温で消える、冷やすと復活する性質があるため、トラブルの原因になります。
Q. 替え芯はありますか?
はい、フリクションシリーズには替え芯があります。
経済的で環境にも優しい設計です。
Q. 他のメーカーにも消えるボールペンはありますか?
三菱鉛筆の「ユニボール シグノ イレイサブル」などがあります。
ただし、フリクションほど一般的ではありません。
Q. インクの色は何色がありますか?
黒、赤、青、緑、ピンク、オレンジなど、多数のカラーバリエーションがあります。
消えるボールペンの選び方
用途で選ぶ
勉強・ノート:
- フリクションボール(標準タイプ)
- 0.5mm または 0.7mm
細かい文字:
- フリクションボール スリム
- 0.38mm
イラスト・塗り絵:
- フリクションカラーズ
- 多色セット
マーカー:
- フリクションライト(蛍光ペン)
- フリクションマーカー
太さで選ぶ
細字(0.38mm):
- 手帳、スケジュール帳
- 小さな文字
中字(0.5mm):
- ノート、レポート
- 一般的な使用
太字(0.7mm、1.0mm):
- 目立たせたい文字
- 宛名書き(※重要書類除く)
まとめ
消えるボールペンの仕組みについて、重要なポイントをまとめます。
消える仕組み:
- 摩擦熱で65℃以上になる
- マイクロカプセル内の3成分が化学変化
- インクが透明化(消滅ではない)
- 文字が見えなくなる
3つの成分:
- 発色剤(色のもと)
- 顕色剤(発色させる成分)
- 変色温度調整剤(消す成分)
温度と色の関係:
- 65℃以上: 透明化(消える)
- -10℃以下: 復元開始
- -20℃: 完全復元
メリット:
- 何度でも書き直せる
- 消しカスが出ない
- 消し残りが少ない
- 効率的な訂正
注意点:
- 高温(60℃以上)で勝手に消える
- 冷やすと復活する
- 重要書類には使用禁止
- 完全に消滅したわけではない
使ってはいけない場面:
- 公的書類
- 契約書
- 証明書
- 宛名書き
- 長期保存が必要な記録
消えるボールペンは、「摩擦」ではなく「温度」で消えることがポイントです。
この仕組みを理解して、適切に使い分ければ、とても便利な文房具です。
ただし、完全に消滅するわけではないので、重要な書類には絶対に使用しないようにしましょう!


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