ベクトルデータベースとは?生成AIを支える最新技術をわかりやすく解説

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ChatGPTをはじめとする生成AIの急速な普及に伴い、「ベクトルデータベース」という言葉を耳にする機会が増えています。
しかし、これが具体的にどのような技術で、なぜ注目されているのかについては、わかりにくい面もあります。

この記事では、ベクトルデータベースの基本的な概念から、従来のデータベースとの違い、実際の活用例まで、中学生でも理解できるレベルでわかりやすく解説します。

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  1. ベクトルデータベースとは
    1. 基本的な定義
  2. ベクトルとベクトル埋め込み
    1. ベクトルとは
    2. ベクトル埋め込み(Vector Embedding)とは
    3. ベクトルの次元
  3. 従来のデータベースとの違い
    1. リレーショナルデータベース
    2. ベクトルデータベース
  4. ベクトルデータベースの主な機能
    1. セマンティック類似性検索
    2. 高速な類似検索
    3. インデックス構造
  5. 類似度の計測方法
    1. コサイン類似度(Cosine Similarity)
    2. ユークリッド距離(Euclidean Distance)
    3. マンハッタン距離(Manhattan Distance)
  6. ベクトルデータベースの活用例
    1. 大規模言語モデル(LLM)との連携
    2. 検索拡張生成(RAG: Retrieval Augmented Generation)
    3. 画像検索
    4. レコメンデーションシステム
    5. 自然言語処理(NLP)
  7. 主要なベクトルデータベース製品
    1. Pinecone
    2. Milvus
    3. Weaviate
    4. Qdrant
    5. Chroma
    6. その他の選択肢
  8. ベクトルデータベースの市場動向
    1. 急速な市場拡大
    2. 企業の採用状況
  9. ベクトルデータベースの仕組み
    1. データの格納プロセス
    2. 検索プロセス
  10. ベクトルデータベースのメリット
    1. 高速な検索
    2. セマンティック検索
    3. スケーラビリティ
    4. 非構造化データの処理
    5. AIアプリケーションとの親和性
  11. ベクトルデータベースの課題
    1. 専門知識の必要性
    2. 埋め込みモデルへの依存
    3. ストレージコスト
    4. 精度と速度のトレードオフ
  12. ベクトルデータベースの選び方
    1. 用途に応じた選択
    2. 考慮すべきポイント
  13. まとめ
  14. 参考情報

ベクトルデータベースとは

ベクトルデータベース(Vector Database) とは、高次元のベクトル埋め込み(ベクトル表現)を格納・管理・検索するために設計された特殊なデータベースです。

簡単に言えば、「データの意味や特徴を数値の配列として保存し、類似したデータを高速に検索できるデータベース」のことです。

基本的な定義

ベクトルデータベースは、テキスト、画像、音声などの非構造化データを数値ベクトルに変換し、それらを保存・管理します。
データ・ポイントが「ベクトル」と呼ばれる数値の配列として保存され、類似性に基づいてクラスター化されます。

従来のリレーショナルデータベースが行と列で構成された表形式でデータを格納するのに対し、ベクトルデータベースは高次元空間の点としてデータを表現します。

ベクトルとベクトル埋め込み

ベクトルデータベースを理解するために、まず「ベクトル」と「ベクトル埋め込み」について説明します。

ベクトルとは

ベクトルとは、大きさと向きを持つ量を表す数学的概念です。
ベクトルデータベースでは、数値の配列(リスト)としてデータを表現します。

例えば、[0.2, 0.8, -0.4, 0.6, ...] のような数値の並びがベクトルです。

ベクトル埋め込み(Vector Embedding)とは

ベクトル埋め込み とは、テキスト、画像、音声などのデータを、その意味や特徴を保持したまま数値のベクトルに変換することです。

機械学習モデル(埋め込みモデル)を使用して、あらゆる種類のデータを、アセットの意味とコンテキストを捉えたベクトルにエンコードします。

例えば:

  • 「犬」という単語を [0.15, 0.42, 0.78, ...] というベクトルに変換
  • 「猫」という単語を [0.16, 0.45, 0.80, ...] というベクトルに変換

「犬」と「猫」は意味的に似ているため、ベクトル空間上でも近い位置に配置されます。

ベクトルの次元

ベクトルデータベース内の各ベクトルは特定の次元数で構成されます。
次元数は数十次元から数千次元までさまざまで、データの複雑さと粒度に依存します。

例えば、OpenAIのモデルが生成するベクトルは1,536次元を持ちます。

従来のデータベースとの違い

リレーショナルデータベース

データ構造:
行と列を使用してデータを表形式で格納します(エクセルのようなスプレッドシート構造)。

クエリ方法:
SQL(Structured Query Language)を使用してデータを操作します。

検索方法:
キーワードの完全一致で検索します。
例えば、「スマートフォン」を検索すると、「スマートフォン」という単語を含む結果のみが返されます。

適用分野:
構造化されたデータの管理に適しており、Eコマース、トランザクション処理、顧客管理情報などで広く利用されています。

ベクトルデータベース

データ構造:
ベクトル形式で格納され、多次元空間の点として表現されます。

クエリ方法:
伝統的なSQLクエリとは異なり、ベクトル間の類似性に基づいて実施されます。

検索方法:
セマンティック検索(意味的類似性に基づく検索)が可能です。
例えば、「スマートフォン」をベクトル検索すると、「携帯電話」や「モバイル・デバイス」の結果も返される場合があります。

適用分野:
非構造化データ(テキスト、画像、音声)の管理に適しており、AI・機械学習アプリケーションで活用されています。

ベクトルデータベースの主な機能

セマンティック類似性検索

ベクトルデータベースのコア機能は、セマンティック類似性検索 を実行することです。

キーワードの一致ではなく、概念的に類似したデータポイントを特定できます。

例えば、「魚についての心温まる物語」という検索クエリに対して、「魚」という単語を含まなくても、内容的に似た本を見つけることができます。

高速な類似検索

ベクトルデータベースは、N次元空間の最も近い近傍を効率的かつ高速に検索するための機能を提供します。

通常、以下のアルゴリズムを使用します:

k-最近傍(k-NN: k-Nearest Neighbor):
クエリベクトルに最も近いk個のベクトルを特定します。

近似最近傍(ANN: Approximate Nearest Neighbor):
正確な距離計算の代わりに近似アルゴリズムを使用し、検索速度を大幅に向上させます。

インデックス構造

効率的な検索を実現するために、以下のようなインデックスアルゴリズムが使用されます:

HNSW(Hierarchical Navigable Small World):
階層的なグラフ構造を使用した高速検索アルゴリズム。

IVF(Inverted File Index):
転置ファイルインデックスを使用した効率的な検索手法。

類似度の計測方法

ベクトル間の類似性を測定するために、さまざまな距離メトリックが使用されます。

コサイン類似度(Cosine Similarity)

ベクトル間の角度に注目します。
テキスト処理や情報検索に最適で、方向に基づいて意味論的類似点を捉えます。

スコアが1に近いほど類似しており、-1に近いほど反対の意味を持ちます。

ユークリッド距離(Euclidean Distance)

2つの点間の直線最短距離をピタゴラスの定理を用いて測定します。
全体的な差異が重要となる密の特徴セットをクラスター化する、あるいは分類する目的で役立ちます。

マンハッタン距離(Manhattan Distance)

直交座標の絶対差の合計を計算します。
グリッドのような構造の経路探索や最適化の問題に適しています。

ベクトルデータベースの活用例

大規模言語モデル(LLM)との連携

ベクトルデータベースは、大規模言語モデル(LLM)が参照できる外部ナレッジベースとして機能します。

モデルの応答を「グラウンディング」し、ハルシネーション(事実に基づかない情報の生成)のリスクを軽減します。

検索拡張生成(RAG: Retrieval Augmented Generation)

RAGは、企業が自社データを活用した生成AIアプリケーションを開発する際に必須となるアプローチです。

RAGの仕組み:

  1. 企業の社内データをチャンク(小さな断片)に分割
  2. 埋め込みモデルを使用してベクトルに変換
  3. ベクトルデータベースに保存
  4. ユーザーからの質問もベクトルに変換
  5. ベクトルデータベースで類似性検索を実行
  6. 関連するデータチャンクを取得
  7. 取得したコンテキストとともにLLMに送信
  8. LLMが正確な回答を生成

これにより、OpenAIのGPTモデルなどに社内データを与え、社員が社内データから必要な情報を取得できるシステムを開発できます。

画像検索

スマートフォンで写真を撮影すると、その写真と視覚的に似ている画像を検索できます。

画像を高次元のベクトルとして符号化し、ベクトルデータベースで画像を表すベクトルを比較することで、類似画像を素早く見つけます。

レコメンデーションシステム

Eコマースサイトで、「この商品を閲覧したユーザーは、こちらの商品もチェックしています」といった提案を行います。

商品やユーザーの特徴をベクトルで表現し、類似度を計算することで、関連商品を推薦します。

自然言語処理(NLP)

感情分析、固有表現認識、テキスト分類、機械翻訳、質問応答など、さまざまなNLPタスクで活用されます。

主要なベクトルデータベース製品

Pinecone

マネージドサービスの先駆者で、クラウドネイティブな設計が特徴です。
インフラ管理が不要で、スケーラビリティと安定した低レイテンシが魅力です。

特徴:

  • 完全マネージド型(SaaS)
  • インフラ管理不要
  • 無料プランあり(2GB、約30万ベクトル)

適用例:
リアルタイム検索が必要なアプリケーション、スタートアップ向け。

Milvus

スケーラビリティの王とも呼ばれ、10億件超のベクトルを扱う大規模データ処理に特化したオープンソースのベクトルデータベースです。

特徴:

  • オープンソース
  • 分散型アーキテクチャ
  • GPU加速クエリ対応
  • 高可用性設計

適用例:
超大規模データセット、エンタープライズ向けアプリケーション。

Weaviate

ハイブリッド検索の雄で、キーワード検索とベクトル検索の組み合わせが得意です。

特徴:

  • オープンソース
  • GraphQLインターフェース
  • リアルタイムデータ更新可能
  • ハイブリッド検索対応

適用例:
複雑なデータ関係を扱うアプリケーション、ナレッジグラフ。

Qdrant

Rust製の新星で、高速なフィルタリングとメモリ効率に優れます。

特徴:

  • オープンソース
  • Rust言語で実装
  • 高速なメタデータフィルタリング
  • セルフホスト可能

適用例:
高性能が求められるアプリケーション。

Chroma

入門者向けで、LLMアプリ開発に特化し、シンプルなAPIが特徴です。

特徴:

  • オープンソース
  • 軽量で導入が簡単
  • 小規模プロジェクト向け

適用例:
プロトタイピング、開発初期段階。

その他の選択肢

pgvector:
PostgreSQLの拡張機能としてベクトル検索機能を追加。
既存のPostgreSQLを使用している場合に便利です。

Elasticsearch:
全文検索データベースにベクトル検索機能を追加。
既存のElasticsearch環境との連携が容易です。

クラウドサービス:

  • AWS OpenSearch
  • Google Cloud Vertex AI Vector Search
  • Azure AI Search

ベクトルデータベースの市場動向

急速な市場拡大

MarketsandMarketsの調査によると、ベクトルデータベース市場規模は2023年に15億ドルとなり、今後23%以上の成長率を維持し、2028年には43億ドルに拡大する見込みです。

企業の採用状況

Gartner社によると、2026年までに企業の30%以上がベクトルデータベースを採用し、関連ビジネスデータで基盤モデルを構築するようになると予測されています。

ベクトルデータベースの仕組み

データの格納プロセス

  1. データの準備: テキスト、画像、音声などの元データを用意
  2. ベクトル化: 埋め込みモデルを使用してデータをベクトルに変換
  3. インデックス作成: 効率的な検索のためにインデックスを構築
  4. 保存: ベクトルとメタデータをデータベースに格納

検索プロセス

  1. クエリのベクトル化: ユーザーの検索クエリを同じ埋め込みモデルでベクトルに変換
  2. 類似性検索: クエリベクトルと最も近いk個のベクトルを検索
  3. 距離計算: コサイン類似度やユークリッド距離などで類似度を計算
  4. 結果の返却: 類似度でランク付けされた結果を返す

ベクトルデータベースのメリット

高速な検索

高次元データに対して効率的なインデックス構造を使用することで、高速な類似性検索を実現します。

セマンティック検索

キーワードの完全一致ではなく、意味的な類似性に基づいた検索が可能です。

スケーラビリティ

分散アーキテクチャにより、データ量の増加に応じてスケールアップできます。

非構造化データの処理

テキスト、画像、音声など、さまざまな種類の非構造化データを統一的に扱えます。

AIアプリケーションとの親和性

機械学習モデルやLLMとの連携が容易で、AI・機械学習アプリケーションに最適です。

ベクトルデータベースの課題

専門知識の必要性

効果的に使用するには、機械学習やベクトル表現に関する知識が必要です。

埋め込みモデルへの依存

ベクトルの質は埋め込みモデルに大きく依存します。
適切なモデルの選択が重要です。

ストレージコスト

高次元ベクトルは大量のストレージスペースを必要とする場合があります。

精度と速度のトレードオフ

近似アルゴリズム(ANN)を使用すると、速度は向上しますが、精度がわずかに低下する可能性があります。

ベクトルデータベースの選び方

用途に応じた選択

小規模プロジェクト・プロトタイピング:
Chroma、pgvector(既存のPostgreSQL環境がある場合)

中規模プロジェクト:
Pinecone(マネージドサービスが良い場合)、Weaviate、Qdrant

大規模・エンタープライズ:
Milvus、クラウドネイティブサービス(AWS OpenSearch、Vertex AI Vector Search、Azure AI Search)

考慮すべきポイント

オープンソースかマネージドサービスか:
オープンソースは柔軟性が高いが運用が必要です。
マネージドサービスは運用が簡単ですが、コストが高くなる場合があります。

既存システムとの統合:
既存のデータベースやクラウド環境との連携を考慮します。

スケーラビリティ要件:
将来的なデータ量の増加を見越して選択します。

コスト:
無料枠の有無、従量課金の仕組みを確認します。

まとめ

ベクトルデータベースとは、高次元のベクトル埋め込みを格納・管理・検索するために設計された特殊なデータベースです。

ベクトルデータベースの重要なポイント:

  • データの意味や特徴を数値ベクトルとして保存
  • セマンティック検索(意味的類似性に基づく検索)が可能
  • 従来のキーワード検索では実現できない高度な検索を実現
  • LLM、RAG、画像検索、レコメンデーションシステムなど幅広い活用例
  • Pinecone、Milvus、Weaviate、Qdrant、Chromaなど多数の製品が存在
  • 2023年から2028年にかけて市場が急拡大する見込み

生成AIや大規模言語モデルの普及に伴い、ベクトルデータベースは今後ますます重要な技術となっていきます。

従来のリレーショナルデータベースでは困難だった非構造化データの意味的検索を可能にすることで、AIアプリケーションの可能性を大きく広げています。

企業が自社データを活用したAIアプリケーションを開発する際には、ベクトルデータベースが必須のインフラとなりつつあります。

参考情報

本記事は、以下の信頼できる情報源を参考に作成しました。

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