経典とは?意味・読み方から仏教や他宗教の聖典までわかりやすく解説

神話・歴史・文化

「経典」という言葉を聞いて、どんなイメージが浮かびますか?
お坊さんがお葬式で読んでいるお経?それとも、古びた巻物に書かれた難しい漢字の羅列?

実は「経典」には2つの読み方があり、それぞれ意味が違うんです。
さらに仏教だけでなく、キリスト教やイスラム教にも「経典」にあたる聖典が存在します。

この記事では、経典の意味や読み方、仏教経典の種類、そして世界の宗教の聖典について解説します。


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経典とは?2つの読み方と意味の違い

「経典」と書いて、あなたは何と読みますか?
実は「きょうてん」と「けいてん」、どちらも正解なんです。

ただし、読み方によって意味が少し変わります。

「きょうてん」と読む場合は、宗教的な意味合いが強くなります。
仏教の教えを記した書物、いわゆる「お経」のことを指すのが一般的です。
広い意味では、キリスト教の聖書やイスラム教のコーランなど、信者が守るべき教えを記した神聖な書物全般を含みます。

「けいてん」と読む場合は、儒教などの思想書を指すことが多いです。
孔子の「論語」や「孟子」、いわゆる「四書五経」と呼ばれる書物がこれにあたります。
こちらは宗教書というより、思想的なマニュアルや古典といったニュアンスですね。

日本で「経典」といえば、多くの場合は仏教の経典(きょうてん)を指します。


経典の語源は「縦糸」だった

経典の「経」という漢字、実はサンスクリット語の「スートラ」を翻訳したものです。

スートラの本来の意味は「縦糸」。
織物の縦糸のように、決して変わらない真理を表すとされています。

縦糸がなければ布は織れないように、経典は信仰の土台となる大切な存在。
そう考えると、なかなか深い意味が込められていますよね。

ちなみに、仏教では「経」のほかに「律」「論」を加えて「三蔵」と呼びます。

三蔵内容
経(きょう)釈迦の教えを記した書物
律(りつ)僧侶が守るべき戒律・規則
論(ろん)経や律の注釈・解釈をまとめたもの

「三蔵法師」という名前は、この三蔵すべてに精通した高僧に与えられる称号だったんですね。


仏教経典はいつ、どうやって生まれた?

ここで意外な事実をひとつ。
お釈迦様は、自分で経典を書いていません。

紀元前5世紀頃のインドには、教えを文字に残す習慣がなかったんです。
むしろ、書くことで尊い教えが損なわれると考えられていました。

そのため、お釈迦様の教えは弟子たちの間で口伝えに受け継がれていきました。
現在の経典の多くが「如是我聞(にょぜがもん)」=「私はこのように聞きました」で始まるのは、その名残です。

経典が文字として残されるようになったのは、お釈迦様の没後数百年が経ってから。
弟子たちの記憶を頼りにまとめられ、やがて膨大な数の経典が編纂されていきました。


仏教経典の3つの分類

仏教の経典は、大きく3つに分類されます。

小乗経典(上座部経典)

お釈迦様の没後、比較的早い時期にまとめられた経典です。
口伝えで伝えられていた教えを、紀元前3世紀頃にパーリ語で記録しました。

「阿含経(あごんきょう)」「法句経(ほっくきょう)」などが代表的です。
出家した修行者が悟りを開くための教えが中心となっています。

大乗経典

お釈迦様の入滅後、数百年を経てからまとめられた経典です。
出家者だけでなく、一般の人々にも救いの道を開くために作られたとされています。

日本の仏教の多くの宗派で用いられているのは、この大乗経典です。
「般若心経」「法華経」「華厳経」「浄土三部経」などがあります。

密教経典

真言宗などで重視される経典です。
「大日経」「金剛頂経」などがあり、特別な儀式や修行を通じて悟りを求めます。
「密教」の名の通り、秘密の教えとして伝えられてきました。


日本で有名な経典

日本の仏教で特によく知られている経典を紹介します。

般若心経

最も広く親しまれている経典のひとつです。
わずか262文字(漢字版)という短さながら、仏教の核心である「空(くう)」の思想が凝縮されています。

「色即是空、空即是色」というフレーズ、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
すべてのものには実体がなく、形あるものはいつか変化する——そんな深遠な教えが込められています。

写経で人気があるのも、この般若心経です。
ただし、日蓮宗や浄土真宗など一部の宗派では読まれません。

法華経

天台宗や日蓮宗で重視される経典です。
正式名称は「妙法蓮華経」で、「南無妙法蓮華経」というお題目はここから来ています。

「すべての人が平等に仏になれる」という教えが説かれており、鎌倉時代以降の日本仏教に大きな影響を与えました。

浄土三部経

浄土宗や浄土真宗で重視される3つの経典の総称です。
「無量寿経」「観無量寿経」「阿弥陀経」から成り、阿弥陀如来の極楽浄土について説かれています。

「南無阿弥陀仏」と唱えることで救われるという教えは、この経典に基づいています。


日本の主な宗派と経典

宗派開祖主な経典本尊
天台宗最澄法華経、大日経など特定なし(阿弥陀如来が多い)
真言宗空海大日経、金剛頂経大日如来
浄土宗法然浄土三部経阿弥陀如来
浄土真宗親鸞浄土三部経阿弥陀如来
臨済宗栄西特定なし釈迦如来
曹洞宗道元特定なし釈迦如来
日蓮宗日蓮法華経釈迦如来

禅宗(臨済宗・曹洞宗)では「不立文字(ふりゅうもんじ)」といって、文字や経典に頼らず、座禅を通じて直接悟りを目指す教えがあります。
そのため、特定の経典を定めていないのが特徴です。


仏教以外の宗教の「経典」

経典は仏教だけのものではありません。
世界の主要な宗教にも、それぞれ聖典と呼ばれる書物があります。

キリスト教:聖書

キリスト教の聖典は「聖書」です。
「旧約聖書」と「新約聖書」の2部構成になっています。

旧約聖書は、イエス・キリスト以前の神とユダヤ民族の契約を記した書物。
新約聖書は、イエス・キリストの言行や初期キリスト教の教えを記した書物です。

旧約聖書はヘブライ語、新約聖書はギリシャ語で書かれました。

イスラム教:コーラン(クルアーン)

イスラム教の聖典は「コーラン」です。
正確にはアラビア語で「クルアーン」と発音し、「誦まれるもの」という意味があります。

預言者ムハンマドが神(アッラー)から授かった啓示を記録したもので、全114章から構成されています。

興味深いのは、コーランはアラビア語で書かれたものだけが正式な聖典とされていること。
他の言語に翻訳されたものは、あくまで理解を助けるための補助文書という位置づけです。

また、コーランはムハンマドの死後わずか20年ほどで編纂されました。
お釈迦様の教えが数百年かけて経典になったことを考えると、かなり早いですね。

ユダヤ教:旧約聖書(トーラー)

ユダヤ教の聖典は、キリスト教でいう「旧約聖書」にあたります。
特に最初の5つの書(創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記)を「トーラー(律法)」と呼び、最も重要視しています。

キリスト教、イスラム教、ユダヤ教は同じ唯一神を信仰し、聖典にも共通するエピソードが多く登場します。
アダムとイブ、ノアの方舟、アブラハムなどの物語は、いずれの宗教でも大切にされています。


世界の主要な宗教と聖典一覧

宗教主な聖典成立時期使用言語
仏教三蔵(経・律・論)紀元前3世紀頃〜パーリ語、サンスクリット語、漢語など
キリスト教聖書(旧約・新約)紀元前〜5世紀頃ヘブライ語、ギリシャ語
イスラム教コーラン(クルアーン)7世紀アラビア語
ユダヤ教旧約聖書(トーラー)紀元前5世紀頃ヘブライ語
ヒンドゥー教ヴェーダ、ウパニシャッドなど紀元前15世紀頃〜サンスクリット語

神道には経典がありません。
自然界のあらゆるものに神が宿るという考え方をもち、信仰の対象が広いため、特定の教えを記した書物を持たないのです。


まとめ

この記事では、経典の意味や読み方、仏教経典の種類、世界の宗教の聖典について解説しました。

ポイントをおさらいしましょう。

  • 「経典」は「きょうてん」と「けいてん」の2つの読み方がある
  • 「きょうてん」は仏教の教えや宗教的な書物、「けいてん」は儒教の古典を指す
  • 「経」の語源はサンスクリット語の「スートラ(縦糸)」で、不変の真理を表す
  • 仏教経典は、お釈迦様の死後に弟子たちがまとめたもの
  • 日本の仏教宗派ごとに重視する経典が異なる
  • キリスト教の聖書、イスラム教のコーランも「経典」にあたる聖典

お葬式や法事で僧侶がお経を読む場面に出会ったら、それが何千年もの時を超えて伝えられてきた教えだと思うと、少し見方が変わるかもしれませんね。

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