仙人とは?不老不死を得た存在の種類・修行法・有名な八仙まで解説

神話・歴史・文化

「仙人」と聞いて、どんな姿を思い浮かべますか?
白い髭を蓄えた老人が、山奥で霞を食べて暮らしている——そんなイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。

実はこの仙人、ただの伝説上の存在ではありません。
中国では道教という宗教の中で、「人間が修行によって到達できる究極の境地」として真剣に研究されてきた概念なんです。

この記事では、仙人とは何か、どんな種類がいるのか、どうやってなるのか、そして有名な仙人たちについて、わかりやすく解説していきます。


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仙人とは?神とは違う「後天的な存在」

仙人とは、道教において修行によって不老不死を得た人間のことです。

ここで重要なのは、仙人は「神」とは異なるという点。
道教では「神」と「仙」を明確に区別しています。

神(しん)
天神や地祇など、最初から存在する先天的な存在。
生まれながらにして神聖な力を持っている。

仙(せん)
もともとは普通の人間。
厳しい修行を経て道(タオ)を体得し、不老不死と神通力を獲得した後天的な存在。

つまり、仙人は「努力次第で誰でもなれる可能性がある」という点で、私たち人間にとって身近な存在なんですね。
だからこそ、古代中国では多くの人々が仙人を目指して修行に励んだわけです。

「仙」という漢字は「人」と「山」を組み合わせた形をしています。
山の中に住む人——つまり俗世を離れて山で修行する隠者のイメージが、仙人の原型だったと考えられています。


仙人の種類|五等級と三分類

仙人にも実はランクがあります。
代表的な分類方法を2つ紹介しましょう。

五仙(五等級の分類)

道教の経典『鍾呂伝道集』などでは、仙人を5つの等級に分けています。

天仙(てんせん)
最高位の仙人。
修行を極め、天界に昇って永遠の存在となった者。
天地が崩壊しても滅びないとされ、神に匹敵する力を持つ。

神仙(しんせん)
天仙に次ぐ存在。
肉体を気に変え、「陽神」と呼ばれる霊的な体を完成させた者。
三神山(蓬莱山など)に住むとされる。

地仙(ちせん)
名山や秘境に住み、不老長生を得た仙人。
天に昇る力はまだないが、自然界の制約を超えた存在。

人仙(じんせん)
気の修行によって健康と長寿を得た者。
まだ仙人としては初歩段階だが、常人より遥かに長く生きられる。

鬼仙(きせん)
修行が不完全なまま肉体が死に、霊体として存在する者。
最下位の仙人で、天界には行けない。

三種類の分類

より簡潔な分類として、以下の3種類に分ける考え方もあります。

天仙
修行を完成させ、肉体ごと天に昇った者。
「白日飛昇」(真昼に空へ昇る)を達成した存在。

地仙
道を得てはいるが、まだ天に昇らず地上にとどまる者。
天仙になるには1200の善行が必要とされ、地仙は300の善行で到達できる。

尸解仙(しかいせん)
肉体の死後、魂が蝉の脱皮のように抜け出て仙人となる者。
死体が消失したり、剣や杖だけが残されるという伝承がある。


仙人になる方法|古代中国の修行法

では、どうすれば仙人になれるのでしょうか?
古代中国では様々な方法が研究されました。

内丹術(ないたんじゅつ)

最も重要視された修行法です。
自分の体を「炉」に見立て、体内の「精・気・神」を原料として「内丹」を練り上げます。

「精」を練って「気」に変え、「気」を練って「神」に変え、最終的に「虚」と一体化する——これが内丹術の基本プロセス。
現代の気功の源流ともいわれています。

外丹術(がいたんじゅつ)

鉱物を材料に不老不死の薬「金丹」を作る方法。
丹砂(硫化水銀)や黄金などを使って霊薬を調合しました。

ただし、これは非常に危険な方法でした。
唐の時代には複数の皇帝が金丹の水銀中毒で命を落としています。
そのため次第に廃れ、内丹術が主流になっていきました。

辟穀(へきこく)

五穀(米・麦・粟・黍・豆)を断つ修行法。
穀物は体内に濁った気を生むと考えられていたため、これを避けて清浄な気だけで生きようとしました。

代わりに松の実やドライフルーツ、乾燥肉などを食べたといいます。

胎息(たいそく)

胎児が母胎内で行う呼吸を模倣する技法。
鼻や口からの呼吸をできるだけ抑え、生まれながらに持っている清らかな気を凝集させます。

導引(どういん)

呼吸法を含めた体の屈伸運動。
現代でいうヨガや体操に近いイメージです。
馬王堆漢墓から発見された「導引図」には、様々なポーズが描かれています。

行気(こうき)

口から古い気を吐き出し、鼻から新しい気を取り込み、全身に巡らせる呼吸法。
流派によって技法は様々ですが、基本的な考え方は共通しています。


八仙|最も有名な仙人グループ

「中国で最も有名な仙人は?」と聞かれたら、ほとんどの人が「八仙」と答えるでしょう。

八仙は道教の仙人の中でも特に人気があり、日本でいう七福神のような存在です。
お祝いごとの絵柄や陶磁器のモチーフとしても広く使われています。

面白いのは、八仙のメンバーが貴賎・老若・男女を網羅している点。
皇族から乞食まで、あらゆる階層の人が含まれているんです。
「誰でも仙人になれる」という道教の教えを体現した構成といえますね。

八仙のメンバー

李鉄拐(りてっかい)
八仙の長老格。鉄の杖をついた乞食のような姿。
もとは美男子だったが、魂を飛ばして旅行中に弟子が誤って体を焼いてしまい、やむなく近くの餓死者の体に入ったという伝説がある。

鍾離権(しょうりけん)
漢の時代の人とされる。大きな扇を持つ。
呂洞賓の師匠であり、内丹術の祖師の一人。

呂洞賓(りょどうひん)
八仙の中で最も有名な存在。背に剣を負った書生の姿。
科挙に落第した後、鍾離権に出会い「黄粱の夢」(人生の儚さを悟る夢)を見て入門したという。
民間信仰では財神としても崇拝されている。

藍采和(らんさいか)
謎の多い人物で、性別さえ諸説ある。
花籃を持ち、歌を歌いながら乞食をして歩いたという。

韓湘子(かんしょうし)
唐の文人・韓愈の甥とされる。笛の名手。
花を咲かせる術を得意とし、芸術の守護者とされる。

何仙姑(かせんこ)
八仙の紅一点。蓮の花を持つ女性。
山で呂洞賓に出会い、雲母の粉を食べて仙人になったという。

張果老(ちょうかろう)
白いロバに後ろ向きに乗る老人の姿で知られる。
このロバは幻術で動いており、乗らないときは紙に戻せたという。

曹国舅(そうこくきゅう)
宋の皇族出身とされる唯一の貴人。
弟の悪行を恥じて世俗を捨て、修行の末に仙人となった。

「八仙、海を渡る」

八仙には有名な物語があります。

西王母の宴会の帰り、八仙たちは東海を渡ることになりました。
雲に乗るのではなく、それぞれの宝具(法器)を使って海を渡ろうということに。

ところが途中で龍王の太子とトラブルになり、大騒動に発展。
最後は天界まで巻き込んだ大戦争になってしまいます。

この物語から「八仙過海、各顕神通」(八仙が海を渡り、各自が神通力を発揮する)という諺が生まれました。
「それぞれが得意技を活かす」という意味で使われています。


日本の仙人|久米仙人の伝説

仙人の概念は日本にも伝わり、独自の伝説を生みました。
最も有名なのが「久米仙人」です。

色欲で墜落した仙人

久米仙人は大和国(現在の奈良県)の龍門寺で修行し、空を飛ぶ術を会得しました。

ある日、飛行中に吉野川で洗濯する若い女性を見下ろしたところ——
その白いふくらはぎに心を奪われ、神通力を失って墜落してしまいます。

結局、久米仙人はその女性と結婚し、普通の人として暮らすことになりました。

神通力の復活

しかし話はここで終わりません。

あるとき、天皇が都を造営するために人夫を徴収。
久米仙人も駆り出されることに。

「あいつは元仙人らしい」という噂を聞いた役人が、からかい半分で言いました。
「仙人なら神通力で材木を運んでみせてくれ」

久米仙人は7日7夜、道場に籠って断食しながら祈りました。
すると8日目の朝、雷鳴とともに山から材木が空を飛んできたのです。

この功績により、天皇から田を賜り、久米寺を建立したと伝えられています。

「亀仙人」の元ネタ?

ちなみに、『ドラゴンボール』の「亀仙人」は、この久米仙人がモデルではないかという説があります。
「亀」と「久米」の音の類似、そして女性に目がない好色な性格……確かに共通点が多いですね。


仙人一覧表

分類名前読み方特徴
八仙李鉄拐りてっかい鉄の杖、瓢箪。乞食の姿。八仙最古参
八仙鍾離権しょうりけん扇。漢代の人。呂洞賓の師
八仙呂洞賓りょどうひん剣。最も有名な八仙。財神としても信仰
八仙藍采和らんさいか花籃。性別不詳の謎多き存在
八仙韓湘子かんしょうし笛。韓愈の甥とされる
八仙何仙姑かせんこ蓮の花。八仙唯一の女性
八仙張果老ちょうかろう後ろ向きのロバ。長寿の象徴
八仙曹国舅そうこくきゅう玉板。宋の皇族出身
道教祖師老子ろうし道教の開祖。太上老君として神格化
道教祖師荘子そうし南華真人と尊称される
道教祖師張道陵ちょうどうりょう天師道の開祖。初代天師
伝説黄初平こうしょへい黄大仙。華僑に広く信仰される
伝説許遜きょそん許真君。浄明道の祖
伝説麻姑まこ女仙。長寿と美の象徴
伝説西王母せいおうぼ崑崙山に住む女仙の長。不死の桃を持つ
日本久米仙人くめのせんにん色欲で墜落した仙人。久米寺の開祖
日本役行者えんのぎょうじゃ修験道の開祖。神変大菩薩

まとめ

仙人について、ポイントを整理しておきましょう。

  • 仙人は道教における「修行で不老不死を得た人間」であり、先天的な「神」とは異なる
  • 等級は五仙(天仙・神仙・地仙・人仙・鬼仙)や三分類(天仙・地仙・尸解仙)がある
  • 修行法には内丹術・外丹術・辟穀・胎息・導引・行気などがある
  • 八仙は最も有名な仙人グループで、あらゆる階層を代表する8人で構成される
  • 日本にも久米仙人など独自の仙人伝説が存在する

仙人は単なるファンタジーではなく、「人間が修行によって高みに到達できる」という希望を体現した存在でした。
その思想は現代の気功や健康法にも受け継がれています。

もし興味を持ったなら、中国の道教寺院や日本の久米寺を訪れてみるのもいいかもしれませんね。

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