土左衛門とは?意味・語源・由来を徹底解説

スポンサーリンク

土左衛門の意味

「土左衛門」は、水死体や溺死体を意味する俗語です。

水中で死亡した人の遺体、特に腐敗が進んで体が膨れ上がった状態の水死体を指します。

現代ではほとんど使われなくなった古い表現ですが、落語や時代劇、歴史小説などで今でも時々耳にする言葉です。

読み方

「土左衛門」の読み方はどざえもんです。

「どさえもん」や「つちざえもん」と読むのは誤りです。

語源・由来

「土左衛門」という言葉の語源は、江戸時代に実在した大相撲の力士成瀬川土左衛門(なるせがわどざえもん)に由来します。

成瀬川土左衛門とは

成瀬川土左衛門は、享保年間(1716年〜1736年)に活躍した力士です。

出身地
陸奥の国(現在の宮城県加美郡加美町)

経歴
享保9年(1724年)に江戸深川の富岡八幡宮で行われた勧進相撲で、前頭筆頭として出場しました。

没年
延享5年6月6日(1748年7月1日)に病死。
墓は江戸深川の霊巌寺にあり、現在でも相撲や歌舞伎関係者によって参拝されています。

なぜ水死体の呼び名になったのか

成瀬川土左衛門は色白で非常に肥満した体型の力士として知られていました。

水死体は水中で腐敗が進むと、体内にガスが発生して体が大きく膨れ上がります。
また、血液が抜けることで肌が白っぽく見えます。

この膨れ上がって色白になった水死体の姿が、成瀬川土左衛門の体型にそっくりだったのです。

江戸の人々が水死体を見て「成瀬川土左衛門のようだ」と冗談めかして言ったことから、この表現が定着していきました。

山東京伝の記録

江戸時代の戯作者・山東京伝が著した『近世奇跡考』巻之一には、以下のように記されています。

「案(あんず)るに江戸の方言に溺死の者を土左衞門と云(いう)は成瀨川肥大の者ゆゑに水死して渾身暴皮(こんしんぼうひ)ふとりたるを土左衞門の如しと戲(たわむ)ゐひしがつひに方言となりしと云」

この記録により、水死体を「土左衛門」と呼ぶようになった経緯が確認できます。

「土左衛門」という四股名のその後

興味深いことに、「土左衛門」という四股名は成瀬川以降、一度も襲名されることがありませんでした。

相撲界には伝統的な四股名として何代にもわたって襲名されるものが多くありますが、「土左衛門」は水死体を連想させる縁起の悪い名前となってしまったため、誰も継承しなかったのです。

その他の語源説

主流の説は成瀬川土左衛門説ですが、他にもいくつかの説が存在します。

土仏(どぶつ)説

江戸時代には、体格の大きな人を土でできた仏像に見立てて「土仏」と呼ぶ慣習がありました。

この「土仏」が変化して「土左衛門」になったという説があります。

ただし、この説は成瀬川土左衛門説に比べると裏付けが少なく、主流とは言えません。

使用例と注意点

「土左衛門」は江戸時代には一般的に使われていた言葉ですが、現代では日常会話で使われることはほとんどありません。

落語や時代劇での使用例

落語や時代劇では、江戸の雰囲気を出すために「土左衛門」という表現が使われることがあります。

  1. 「川から土左衛門が上がった」
  2. 「土左衛門にならないように気をつけろ」
  3. 「土左衛門を引き上げる」

太った人への俗称としての使用

水死体だけでなく、太った人のあだ名としても使われていました。

河竹黙阿弥が脚本を書いた歌舞伎『三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)』には、土左衛門伝吉という太った登場人物が出てきます。

安政7年(1860年)に初演されたこの作品では、肥満体型の人物を「土左衛門」と呼ぶ慣習が反映されています。

現代での表現

現代では「土左衛門」という言葉はほとんど使われず、以下のような表現が一般的です。

水死体
最も標準的で中立的な表現です。

溺死体
溺れて死んだ遺体を指す医学的・法律的な用語です。

水死者
水死した人を指します。

遺体
最も丁寧で配慮のある表現です。

海運業界での言い伝え

昔から海運業、海洋土木、水産業、船業など海にまつわる業界では、土左衛門を発見して陸に上げ供養することは縁起が良いこととされていました。

これは水難事故で亡くなった方の魂を慰めることで、海の安全が守られるという信仰に基づいています。

類語・関連語

水死体

最も一般的で中立的な表現です。
「土左衛門」の標準語にあたります。

溺死体

法医学や警察用語として使われる正式な表現です。

変死体

死因が不明な遺体を指します。
水死体が発見された場合、最初は変死体として扱われることがあります。

浮き身

水面に浮いている遺体を指す言葉です。

水死者

水で死んだ人を指します。

英語表現

「土左衛門」を英語で表現する場合、以下のような言い方があります。

drowned body

「溺死した遺体」という意味です。
最も標準的な表現です。

使用例:

  • A drowned body was found in the river.
  • (川で水死体が発見された)

drowned person

「溺死した人」という意味です。
人を主体として表現する場合に使います。

corpse found in water

「水中で発見された遺体」という意味です。
より詳細に状況を説明する表現です。

body recovered from the water

「水中から回収された遺体」という意味です。
発見・回収の行為を含む表現です。

水死体の科学的説明

水死体が「土左衛門」と呼ばれるようになった背景には、水死体特有の変化があります。

水死体の特徴

体の膨張
水中で遺体が腐敗すると、腐敗ガスが体内に発生します。
このガスにより、体が大きく膨れ上がります。

色の変化
血液が水に溶け出すことで、肌が白っぽく変色します。
赤黒い血の色が抜けて、白っぽく見えるのです。

水分の吸収
組織が水分を吸収することで、皮膚がぶよぶよの状態になります。

これらの特徴が、色白で肥満体型だった成瀬川土左衛門の姿に似ていたため、「土左衛門」という呼び名が定着したのです。

文学作品での使用例

「土左衛門」という言葉は、江戸を舞台にした時代小説や落語でよく使われます。

落語

落語の演目では、江戸の雰囲気を出すために「土左衛門」という表現が今でも使われています。

特に怪談や人情噺で、隅田川などから遺体が発見される場面で登場します。

時代小説

池波正太郎や藤沢周平などの時代小説でも、江戸時代の雰囲気を出すために「土左衛門」という表現が使われることがあります。

歌舞伎

前述の『三人吉三廓初買』のように、歌舞伎の台詞にも登場します。

使用する際の注意点

「土左衛門」は俗語であり、やや不謹慎なニュアンスを含む言葉です。

避けるべき場面

公式な場面
ニュースや公式な発表では使用しません。

遺族の前
亡くなった方の遺族の前では絶対に使わないでください。

教育現場
子供に教える際は、「水死体」などの標準的な表現を使います。

使用が許容される場面

歴史的文脈
江戸時代の文化や言葉について説明する際。

フィクション作品
時代劇や時代小説で雰囲気を出すため。

言葉の由来を説明する際
日本語の語源や歴史を学ぶ教育的な文脈。

まとめ

「土左衛門」は水死体を意味する江戸時代の俗語で、読み方は「どざえもん」です。

語源は、享保年間に活躍した力士・成瀬川土左衛門の色白で肥満した体型が、水死体の姿に似ていたことに由来します。

水死体は腐敗によりガスが発生して体が膨れ上がり、血液が抜けて白っぽく見えます。
この様子が成瀬川土左衛門にそっくりだったため、江戸の人々が冗談めかして「土左衛門のようだ」と言ったことから、この呼び名が定着しました。

現代では「土左衛門」という言葉はほとんど使われず、「水死体」や「溺死体」という標準的な表現が一般的です。

ただし、落語や時代劇、歴史小説などでは、江戸時代の雰囲気を出すために今でも使われることがあります。

「土左衛門」という四股名は成瀬川以降、縁起が悪いとして誰も襲名せず、言葉の由来として歴史に名を残す特異な四股名となりました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました