メローとは?アイルランドに伝わる人魚の正体と伝承を解説

神話・歴史・文化

「人魚」と聞くと、ディズニーのアリエルのような可愛らしい姿を想像しませんか?
でも、アイルランドに伝わる人魚「メロー」は、ちょっと様子が違います。

美しい女性の姿をしている一方で、嵐を呼ぶ不吉な存在として漁師たちに恐れられていた。
しかも、男のメローはびっくりするほど醜いんです。

この記事では、そんなメローの正体や伝承をわかりやすく紹介していきます。


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メローとは

メロー(Merrow)は、アイルランドの民話や伝説に登場する人魚のこと。
上半身は人間、下半身は魚という、いわゆる「マーメイド」と同じ姿をしています。

ただし、ヨーロッパの一般的な人魚とは違う独特の特徴があります。

それが「コホリン・ドリュー」と呼ばれる魔法の赤い帽子。
メローはこの帽子がないと海に戻れないんですね。

この設定、どこかで聞いたことがありませんか?
そう、日本の「天女の羽衣」とそっくりなんです。

アイルランドの漁師たちは、メローを見かけると不安になったそうです。
「メローが現れると天気が悪くなる」という言い伝えがあり、嵐や不漁の前兆とされていました。


名前の意味

「メロー(Merrow)」という名前は、アイルランド語の「murúch(ムルーフ)」が英語化したもの。

語源には2つの説があります。

1つ目の説:「海の娘」
アイルランド語の「muir(海)」と「oigh(娘)」を組み合わせた言葉という解釈。
詩人のイェイツはこの説を採用しています。

2つ目の説:「海の歌い手」
古アイルランド語の「murdúchann」に由来するという説。
こちらは本来「セイレーン」を意味していて、催眠効果のある歌で船乗りを誘惑する怪物を指していました。

どちらの説も、メローが海に深く結びついた存在であることを示していますね。


メローの姿

メローの見た目は、男女でまったく違います。
そのギャップがなかなか面白いんです。

女性のメロー

女性のメローは、とにかく美しい。

緑色の長い髪が特徴で、朝日を浴びると「バターを塗ったキャベツのように輝く」と描写されています。
なんとも独特な表現ですが、アイルランドらしいユーモアを感じますね。

上半身は人間の女性そのもので、下半身は緑の鱗に覆われた魚の尾。
指と指の間には、アヒルのような水かきがあります。

そして最大の特徴が、赤い魔法の帽子「コホリン・ドリュー」。
この帽子を被ることで深い海の中を自由に移動できるんです。

男性のメロー

一方、男性のメローはかなり残念な見た目

緑色の髪と歯、豚のような小さな目、赤い鼻。
体はずんぐりとしていて、とても醜い姿だと伝えられています。

あまりにも見た目が悪いせいか、女性のメローは同族の男性を嫌い、人間の漁師を好むという話まであるほど。
なんだか男性のメローが気の毒になってきますね。


魔法の帽子「コホリン・ドリュー」

メローの伝承で欠かせないのが、この「コホリン・ドリュー(cohuleen druith)」。
アイルランド語で「小さな魔法のフード」という意味です。

赤い羽で覆われた帽子で、これを被ることでメローは海中を自由に行き来できます。
逆に言えば、この帽子を奪われると海に帰れなくなるんです。

この設定が、多くの悲しい物語を生み出しました。

人間の男がメローの帽子を隠し、仕方なく結婚させられる。
何年も経って帽子を見つけ、海に帰ってしまう——。

日本の天女の羽衣伝説や、スコットランドのセルキー(アザラシ女房)の話とそっくりですよね。
世界中に似たような物語があるのは、なんだか不思議な気がします。


メローの有名な伝承

メローにまつわる物語は、主に19世紀の民話集に収録されています。
中でも有名な2つの話を紹介しましょう。

ゴルラスの婦人

ケリー地方に住む漁師ディック・フィッツジェラルドは、ある朝、岩場で髪をとかす美しい女性を見かけます。
緑色の髪——間違いなくメローでした。

ディックは彼女の傍らに置かれた赤い帽子を素早く奪いました。
帽子がなければ海に帰れないことを知っていたからです。

最初は困惑していたメローでしたが、やがてディックと恋に落ち、2人は結婚。
3人の子供にも恵まれ、幸せな家庭を築きました。

ところが、ある日のこと。
ディックが出かけている間に、メローは家の中で隠されていた帽子を見つけてしまいます。

彼女は子供たちに別れを告げ、静かに海へと消えていきました。
ディックは生涯再婚せず、メローの帰りを待ち続けたといいます。

この物語のメローは「ゴルラスの婦人」と呼ばれ、アイルランドでは理想の妻の代名詞として語り継がれています。

魂の籠

漁師のジャック・ドガティーは、海で奇妙な老人と出会います。
緑色の髪と歯、醜い顔——男のメロー「クーマラ」でした。

意外にもクーマラは友好的で、ジャックを海底の自宅に招待します。
そこでジャックが見たのは、ロブスター籠のようなものに閉じ込められた光る球体。

それは溺れた船乗りたちの魂でした。

ジャックはクーマラを酒で酔い潰し、こっそり籠を開けて魂を解放。
船乗りたちの魂は天国へと昇っていったのです。

ちなみにこの話、実は純粋な民話ではなく、トーマス・キートリーという作家の創作だったことが後に判明しています。
でも、あまりにも面白かったので、今でもメローの代表的な物語として親しまれているんですね。


メローの子孫を名乗る一族

面白いことに、アイルランドにはメローとの混血を主張する家系がいくつもあります。

ケリー地方のオフラハティ家オサリバン家、クレア地方のマクナマラ家などがその代表。
先祖がメローと結婚したという伝承を持っているんです。

実際、19世紀の記録には「バントリー近くに、魚のような鱗で覆われた肌を持つ女性がいた」という報告もあります。
メローとの混血の子孫だったのかもしれません。

伝承によれば、メローと人間の間に生まれた子供は、手足に小さな水かきがあるとか。
そして成長すると海への憧れを抑えられなくなり、いつか海へ帰ってしまうのだそうです。


似ている存在との違い

メローとよく混同される存在がいくつかあります。
簡単に整理しておきましょう。

名前出身特徴
メローアイルランド赤い魔法の帽子を被る。嵐の前兆
セルキースコットランド・アイルランド北部アザラシの皮を脱いで人間になる
セイレーンギリシャ神話歌声で船乗りを誘惑する。元は鳥の姿
マーメイドヨーロッパ全般人魚の総称。鏡で髪をとかす姿が有名

メローの最大の特徴は「帽子がないと海に帰れない」という点。
セルキーの「アザラシの皮」と似ていますが、メローはあくまでアイルランド固有の妖精です。


まとめ

メローのポイント

  • アイルランドに伝わる人魚の妖精
  • 「コホリン・ドリュー」という赤い魔法の帽子が必須アイテム
  • 女性は美しく、男性は醜い(男女で見た目が全然違う)
  • 嵐や不漁の前兆として漁師に恐れられた
  • 帽子を奪われて人間と結婚する悲しい物語が多い
  • オフラハティ家など、メローの子孫を名乗る家系がある

メローの物語は、海と共に生きてきたアイルランドの人々の暮らしを映し出しています。
恵みをもたらすと同時に命を奪う海——その畏れと憧れが、美しくも悲しい人魚の伝説を生み出したのかもしれませんね。

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