SharePoint移行ツールとは
SharePoint移行ツールとは、SharePointのデータやコンテンツを別の環境へ移動させるためのソフトウェアです。
手作業での移行は膨大な時間がかかるだけでなく、データの欠落やエラーのリスクも高まります。
移行ツールを使用することで、これらの作業を自動化し、安全かつ効率的にデータ移転を実現できます。
たとえば、オンプレミスのSharePoint ServerからクラウドのSharePoint Onlineへ移行する際に、ファイルだけでなく権限設定やメタデータも一緒に移行できます。
SharePoint移行が必要になるケース
企業がSharePoint移行を検討する理由は様々です。
システムのバージョンアップ
古いバージョンのSharePointを使い続けることで、セキュリティリスクが高まります。
サポート終了が近づいたバージョンから、最新版やクラウド環境へ移行する必要があります。
SharePoint 2010や2013など、既にサポートが終了したバージョンを使用している場合は早急な対応が求められます。
クラウド化の推進
オンプレミス環境からクラウドへの移行は、現代の企業にとって重要な課題です。
クラウド化のメリット:
- 場所を選ばずアクセス可能
- インフラ管理コストの削減
- 自動バックアップと高い可用性
- リモートワークへの対応
働き方改革やテレワークの普及により、クラウド環境への移行ニーズが急増しています。
企業の合併・買収
企業の合併や買収が発生した際、複数のSharePoint環境を統合する必要があります。
異なるテナント間でのデータ統合や、重複コンテンツの整理が課題となります。
適切な移行ツールを使用することで、スムーズな統合が可能になります。
ファイルサーバーからの移行
従来のファイルサーバーからSharePointへデータを移行するケースも増えています。
SharePointに移行することで、バージョン管理や共同編集、高度な検索機能などを活用できます。
情報共有の効率化とセキュリティ強化を同時に実現できるのです。
主要なSharePoint移行ツール
市場には様々な移行ツールが存在します。
それぞれの特徴を理解し、自社に最適なツールを選択しましょう。
SharePoint Migration Tool(SPMT)
MicrosoftがSharePoint Online、OneDrive for Businessへの移行用に、無料で提供している公式ツールです。
対応する移行元:
- SharePoint Server 2010
- SharePoint Server 2013
- SharePoint Server 2016
- SharePoint Server 2019
- ファイル共有(ローカルドライブ、ネットワークドライブ)
主な機能:
- ファイル、フォルダ、リストアイテムの移行
- アクセス許可の設定移行
- バージョン履歴の保持
- 段階的移行のサポート
- 移行前スキャンと移行後レポート
適しているケース:
- 小規模から中規模の移行プロジェクト
- 標準的なSharePoint構成
- 予算が限られている場合
- シンプルな移行要件
制限事項:
- カスタムコードの移行に課題
- サードパーティ製ワークフローは移行不可
- 一括編集機能なし
- 複雑なカスタマイズには対応困難
SPMTは無料で使いやすいですが、複雑な環境には向きません。
基本的な移行には十分な機能を備えています。
Migration Manager
Microsoft 365管理センターから利用できる、クラウドベースの移行サービスです。
対応する移行元:
- ファイルサーバー
- Box
- Dropbox
- Google Drive
- Egnyte
主な機能:
- クラウドベースの集中管理
- エージェントを展開して移行を実施
- リアルタイムの進捗監視
- 大規模データの移行に対応
適しているケース:
- ファイルサーバーからの移行
- 複数のクラウドストレージからの統合
- 大容量データの移行
注意点:
- SharePoint Serverからの移行には非対応
- 高度なSharePoint要素(リスト、メタデータなど)の移行は限定的
Migration Managerは、主にファイル移行に特化したツールと考えるとよいでしょう。
ShareGate
SharePoint移行ツールの中で最も人気の高いサードパーティ製品の一つです。
対応する移行:
- SharePoint間の移行(オンプレミス、クラウド、テナント間)
- Google DriveからSharePoint/Microsoft 365
- ファイル共有からSharePoint/Microsoft 365
- OneDrive、Teams、Exchangeの移行にも対応
主な機能:
- 直感的なドラッグ&ドロップ操作
- 無制限のデータ移行
- メタデータ、バージョン、権限の保持
- Nintexワークフローとフォームの移行
- 詳細なレポート機能
- ガバナンス機能
移行速度:
- 通常モード
- Insaneモード(Azure Blob Storageを使用した高速移行)
適しているケース:
- 複雑なSharePoint環境
- テナント間移行
- 企業の合併・買収時の統合
- 高度なカスタマイズが必要な場合
料金体系:
サブスクリプション制で、複数のプランがあります。
年間ライセンスで無制限に使用できるため、大規模プロジェクトではコストパフォーマンスが高くなります。
ShareGateは機能が豊富で使いやすいため、多くの企業に選ばれています。
AvePoint
大規模な移行と継続的なガバナンスに強みを持つエンタープライズ向けソリューションです。
対応する移行:
- SharePoint(あらゆるバージョン)
- ファイル共有
- Google WorkspaceからMicrosoft 365
- HCL Notes、OpenTextなどのレガシーシステム
- SlackからTeamsへの移行
主な機能:
- 移行前のコンテンツスキャン
- リアルタイム監視とマッピング
- タームストア、サイト設定、カスタムビューの移行
- ファーム レベルの移行対応
- セキュリティとコンプライアンス機能
- 無制限の移行ボリューム
適しているケース:
- 大企業のエンタープライズ移行
- 厳格なコンプライアンス要件がある場合
- 複数フェーズにわたるプロジェクト
- 移行後のガバナンスも重視する場合
特徴:
移行だけでなく、移行後の運用管理も含めた総合的なソリューションを提供します。
AvePointは価格情報が公開されていないため、個別に見積もりが必要です。
Quest Content Matrix
高速移行と詳細なカスタマイズが可能な、プロフェッショナル向けツールです。
対応する移行:
- 旧バージョンのSharePoint Server
- Exchangeパブリックフォルダ
- オンプレミスファイル共有
- 最新SharePointまたはSharePoint Online
主な機能:
- 段階的アップグレード不要の直接移行
- ワークロードの自動分散による高速化
- 移行前・移行中のコンテンツ再構成
- メタデータ、カスタマイズ、権限の保持
- Nintexフォームとワークフローの移行
- 詳細なPowerShell API
適しているケース:
- 超大規模な移行プロジェクト
- 高速移行が求められる場合
- 複雑なカスタマイズが必要
- IT専門家による詳細な制御が必要
料金体系:
サブスクリプション制と永久ライセンスの両方を提供しています。
Content Matrixは技術的に高度なツールのため、経験豊富な管理者向けです。
Kernel Migration for SharePoint
幅広い移行シナリオに対応する、コストパフォーマンスに優れたツールです。
対応する移行:
- SharePoint間の移行
- OneDrive移行
- Google Drive移行
- Teams移行
- ファイルサーバーからSharePoint
料金体系:
基本パッケージは10サイトで399ドルからと、比較的手頃な価格設定です。
移行するデータ量やモジュールによって料金が変動します。
適しているケース:
- 予算が限られている中小企業
- 複数の移行タイプを組み合わせたい場合
機能と価格のバランスが取れたツールとして評価されています。
SharePoint移行ツールを選ぶポイント

適切なツール選択が、移行プロジェクトの成否を分けます。
移行規模に合わせて選ぶ
小規模移行(数GB~数十GB):
- SharePoint Migration Tool(SPMT)で十分
- 無料で手軽に実行可能
中規模移行(数百GB~数TB):
- ShareGateやKernel Migration
- 機能とコストのバランスが重要
大規模移行(数TB以上):
- AvePointやQuest Content Matrix
- 高速性と安定性が必須
データ量だけでなく、サイト数やユーザー数も考慮しましょう。
移行元・移行先の対応状況
すべてのツールがあらゆる環境に対応しているわけではありません。
確認すべき項目:
- SharePointのバージョン対応
- ファイルサーバーやクラウドストレージ対応
- テナント間移行の可否
- Google WorkspaceやBoxなど外部サービス対応
自社の移行元と移行先が確実にサポートされているか、事前に確認が必要です。
移行対象コンテンツの複雑さ
標準的なファイルとフォルダだけなら、どのツールでも対応できます。
しかし、以下のような要素がある場合は注意が必要です。
複雑な要素:
- カスタムワークフロー(特にサードパーティ製)
- 大量のカスタマイズされたWebパーツ
- 複雑な権限設定
- カスタム開発されたソリューション
- メタデータとタクソノミー
ShareGateやAvePointは、これらの複雑な要素にも対応できます。
予算の検討
無料:
- SharePoint Migration Tool(SPMT)
- Migration Manager
有料(サブスクリプション):
- ShareGate:年間ライセンス制
- AvePoint:個別見積もり
- Quest Content Matrix:ユーザー数ベース
- Kernel Migration:サイト数・容量ベース
初期費用だけでなく、移行に要する時間(人件費)も総コストとして計算しましょう。
高機能なツールで移行期間を短縮できれば、結果的にコスト削減になることもあります。
技術サポートと実績
重要な確認事項:
- 日本語サポートの有無
- ドキュメントの充実度
- 導入実績と評価
- コミュニティの活発さ
特に大規模プロジェクトでは、ベンダーのサポート体制が重要です。
実績が豊富なツールほど、トラブルシューティングの情報も充実しています。
SharePoint移行を成功させる手順
移行ツールを選んだら、計画的に進めることが成功の鍵です。
移行前の準備
現状分析
SharePoint移行評価ツール(SMAT)を使用して、現在の環境を評価します。
確認すべき内容:
- サイトコレクション数とサイズ
- 利用している機能
- カスタマイズされた機能
- ワークフローの有無
- IRMなどのセキュリティ設定
- チェックインされていないファイル
SMATは無料のコマンドラインツールで、潜在的な問題を事前に特定できます。
データのクリーンアップ
移行前に不要なデータを整理することで、移行作業を大幅に軽減できます。
整理すべき項目:
- 古い文書や使われていないサイト
- 重複ファイル
- 一時ファイルや作業用データ
- 不要なバージョン履歴
データ整理により、移行範囲を最大70%削減できた事例もあります。
移行計画の策定
計画に含めるべき事項:
- 移行スケジュール
- 移行の優先順位
- 担当者の割り当て
- リスク管理
- ロールバック計画
段階的移行か一括移行かを決定します。
通常は、重要度の低いサイトから段階的に移行することが推奨されます。
ユーザーへの周知
伝えるべき情報:
- 移行スケジュール
- システム停止時間(ある場合)
- 新環境へのアクセス方法
- 操作方法の変更点
- サポート窓口
ユーザーの不安を軽減し、スムーズな移行後運用につなげます。
テスト移行の実施
本番移行の前に、必ずテスト移行を実施します。
テストで確認すべきポイント:
- データの完全性
- 権限設定の正確性
- メタデータの保持
- リンクの動作
- ワークフローの機能
- 移行に要する時間
小規模なサイトやドキュメントライブラリで試験を行い、問題点を洗い出します。
本番移行の実施
テスト結果を踏まえて、本番移行を実行します。
実施時の注意点:
- 業務への影響が少ない時間帯を選ぶ(夜間や週末が推奨)
- 移行の進捗をリアルタイムで監視
- エラーが発生したらすぐに記録
- バックアップを確実に取得
多くの移行ツールは、移行済みのコンテンツをスキップする段階的移行機能を持っています。
これにより、エラー発生時も再移行が容易になります。
移行後の確認
移行完了後、徹底的な検証を行います。
確認項目:
- すべてのファイルとフォルダが移行されているか
- 権限設定は正しいか
- メタデータは保持されているか
- リンクは正常に動作するか
- 検索機能は問題ないか
移行レポートを詳細に確認し、エラーや警告に対処します。
ユーザートレーニング
新しい環境での操作方法をユーザーに教育します。
トレーニング内容:
- 新環境へのアクセス方法
- 基本的な操作(ファイルのアップロード、共有など)
- 変更点の説明
- よくある質問への回答
ShareGateなど一部のツールは、ユーザートレーニング機能も提供しています。
移行時によくある問題と対策
実際の移行では、様々な問題が発生する可能性があります。
ワークフローが正しく動作しない
原因:
カスタムワークフローやサードパーティ製ワークフロー(Nintexなど)は、移行後に動作しないことがあります。
対策:
- 移行前にワークフローを特定し、移行後の対応を計画
- 進行中のワークフロータスクは移行前に完了させる
- ShareGateやContent Matrixなど、ワークフロー対応ツールを使用
- 移行後に手動で設定し直す覚悟も必要
ワークフローの移行は技術的に難しいため、事前の十分な検証が必須です。
権限設定が正しく移行されない
原因:
- 移行元と移行先でユーザーアカウントが異なる
- グループ構成の違い
- ツールの権限マッピング機能の不足
対策:
- ユーザーマッピングを事前に定義
- グループベースの権限管理を活用
- 移行後に権限を個別確認
- 権限移行に強いツール(ShareGate、AvePointなど)を選択
権限の問題は情報漏洩につながるため、慎重に対応しましょう。
移行速度が遅い
原因:
- ネットワーク帯域幅の不足
- 移行元サーバーの性能不足
- 移行時間帯の問題(ピーク時間)
対策:
- 夜間や週末など、トラフィックが少ない時間に実施
- 高速移行モードを使用(ShareGateのInsaneモードなど)
- 並列処理に対応したツールを選択
- ネットワーク環境を最適化
公式ドキュメントでも、日中を避けて夕方以降や週末の移行が推奨されています。
チェックインされていないファイル
原因:
一部のツールは、チェックアウト状態のファイルを移行できません。
対策:
- 移行前にすべてのファイルをチェックイン
- ShareGateの一括チェックイン機能を使用
- ユーザーに事前通知して対応を依頼
未チェックインファイルの存在は、事前調査で把握できます。
カスタムコードの移行失敗
原因:
SPMTをはじめ、多くのツールはカスタムコードの移行に課題があります。
対策:
- カスタムコードは移行後に再実装することを前提に計画
- ShareGateやContent Matrixなど対応力の高いツールを検討
- 開発リソースを確保
カスタマイズが多い環境では、移行よりも再構築の方が効率的な場合もあります。
移行プロジェクト成功のコツ
確実な移行を実現するためのベストプラクティスです。
十分な準備期間を確保
移行は短期間で完了するものではありません。
推奨スケジュール:
- 計画・評価:1~2か月
- テスト移行:2~4週間
- 本番移行:データ量により異なる
- 検証・修正:2~4週間
大規模プロジェクトでは、半年以上かかることも珍しくありません。
余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
段階的な移行を検討
すべてを一度に移行するのではなく、段階的に進めます。
段階的移行のメリット:
- リスクの分散
- 問題発生時の影響範囲を限定
- ユーザーの段階的な慣れ
- フィードバックを次フェーズに活かせる
パイロット移行で知見を蓄積してから、本格展開すると安全です。
専門家の支援を活用
複雑な移行プロジェクトでは、専門家のサポートが有効です。
検討すべきケース:
- 社内にSharePointの専門知識がない
- 大規模・複雑な環境
- 限られた期間での完了が必要
- 過去に移行失敗の経験がある
移行サービスを提供する企業も多く、ノウハウを活用できます。
ドキュメント化を徹底
移行プロセスのすべてを記録します。
記録すべき内容:
- 移行計画と実績の差異
- 発生した問題と解決方法
- 設定変更の履歴
- カスタマイズの詳細
ドキュメントは、トラブル対応や将来の移行にも役立ちます。
コミュニケーションを重視
関係者との密な連携が成功のカギです。
重要なコミュニケーション:
- プロジェクトチーム内の定期ミーティング
- ユーザーへの進捗報告
- 経営層への状況共有
- ベンダーとの連絡
特にユーザーへの説明を怠ると、移行後の混乱につながります。
まとめ
SharePoint移行ツールは、効率的で安全なデータ移行に不可欠です。
重要なポイント:
- 移行規模と複雑さに応じてツールを選択
- 小規模ならSPMT、大規模ならShareGateやAvePoint
- 移行前の準備が成功の8割を決める
- テスト移行で問題を事前に把握
- 段階的移行でリスクを最小化
ツール選択の基準:
| 規模 | 複雑さ | 推奨ツール |
|---|---|---|
| 小規模 | シンプル | SPMT |
| 中規模 | 標準的 | ShareGate, Kernel |
| 大規模 | 複雑 | AvePoint, Content Matrix |
移行は一度きりのプロジェクトですが、その成否は長期的な業務効率に影響します。
適切なツール選択と綿密な計画により、スムーズな移行を実現しましょう。
まずは無料のSPMTやツールのトライアル版で評価を開始し、自社の環境に最適な選択肢を見つけてください。
移行評価ツール(SMAT)での現状分析から始めることをおすすめします。

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