漫画の歴史|平安時代から現代まで日本漫画の歩みをわかりやすく解説

神話・歴史・文化

「漫画」といえば、今や日本を代表する文化のひとつ。
でも、漫画っていつ頃から存在していたか知っていますか?

実は、そのルーツは約800年前の平安時代まで遡るんです。
しかも、当時の絵巻物には現代の漫画と同じような表現技法が使われていたというから驚きですよね。

この記事では、平安時代の「日本最古の漫画」と呼ばれる鳥獣戯画から、手塚治虫の登場、週刊少年ジャンプの黄金期、そしてデジタル時代の現代まで、漫画の歴史をわかりやすく解説していきます。


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漫画の起源:平安時代の「鳥獣戯画」

日本最古の漫画といわれる国宝

漫画のルーツとして最も有名なのが、「鳥獣人物戯画」、通称「鳥獣戯画」です。

京都の高山寺に伝わるこの絵巻物は、平安時代末期から鎌倉時代初期(12世紀〜13世紀)にかけて描かれたとされています。
甲・乙・丙・丁の全4巻から成り、全長はなんと約44メートルにも及びます。

特に有名なのは甲巻に描かれた、カエルとウサギが相撲を取るシーン。
動物たちが擬人化されて遊んでいる姿は、まさに現代のギャグ漫画そのものです。

すでに使われていた「漫画の技法」

驚くべきことに、鳥獣戯画には現代の漫画でも使われている技法が見られます。

動きを表現するために線を何本も引く「効果線」や、キャラクターが声を出していることを示す「吹き出し」の原型のような表現がすでに存在していたんです。
800年以上前の絵師たちが、こうした技法を生み出していたと考えると、日本人の「絵で物語を伝える」能力は根っからのものなのかもしれません。

作者は鳥羽僧正覚猷という説が有力ですが、筆致の違いから複数の絵師が関わったとも考えられており、いまだに謎が多い作品です。


江戸時代:浮世絵と「北斎漫画」

大衆文化として広がった絵画

江戸時代に入ると、木版画技術の発達により、浮世絵が庶民の間にも広まりました。

歌川国芳や葛飾北斎といった絵師たちは、ユーモラスな戯画も数多く手がけています。
特に「鳥羽絵」と呼ばれるジャンルは、手足が細長くデフォルメされた人物を描くもので、現代のギャグ漫画に通じるものがあります。

北斎が生んだ「漫画」という言葉

「漫画」という言葉を広めたのは、あの葛飾北斎です。

1814年から出版された『北斎漫画』は、人物や風景、動物などを描いたスケッチ集。
「漫」は「そぞろ」とも読み、「気ままに描いた絵」という意味があります。

ただし、当時の「漫画」は現代のようなストーリー漫画ではなく、あくまで「自由に描いたスケッチ」という意味でした。
現代的な意味での「漫画」が確立するのは、もう少し先の話です。

「黄表紙」という娯楽本

江戸時代中期には、挿絵と文章を組み合わせた娯楽読み物「黄表紙」が流行しました。

これは現代のライトノベルや漫画の先駆けともいえる存在で、恋川春町の『金々先生栄花夢』では、なんと「吹き出し」のような表現も使われていたんです。
絵と文字で物語を伝えるという形式は、江戸時代にはすでに確立されていたんですね。


明治〜大正:近代漫画の誕生

西洋から来た「風刺画」

1862年、イギリス人のチャールズ・ワーグマンが横浜で『ジャパン・パンチ』という雑誌を創刊しました。
これが日本初の漫画雑誌とされています。

この雑誌をきっかけに、風刺画を「ポンチ絵」と呼ぶようになりました。
明治時代には『團團珍聞』などの風刺雑誌が次々と登場し、政治を批判する漫画が人気を集めます。

「近代漫画の父」北澤楽天

明治から大正にかけて活躍した北澤楽天は、「近代漫画の父」と呼ばれる人物です。

彼は新聞『時事新報』で連載を持ち、複数のコマを使って物語を展開する「コミック・ストリップ」形式を日本に定着させました。
そして、この形式の作品を「ポンチ絵」と区別するために「漫画」という言葉を使うよう提案したのも楽天なんです。

1905年には自ら『東京パック』という漫画雑誌を創刊。
これが現代的な意味での「漫画」の始まりといえるでしょう。


昭和戦前:漫画雑誌と児童漫画の発展

人気キャラクターの登場

1930年代になると、少年向け雑誌で漫画連載が盛んになりました。

田河水泡の『のらくろ』は『少年倶楽部』で1931年から連載を開始し、大人気に。
軍隊に入った野良犬「のらくろ」の物語は、子どもたちを夢中にさせました。

阪本牙城の『タンクタンクロー』も、丸いロボットのような主人公が活躍する作品として人気を博しています。
これらの作品は、現代につながるキャラクター漫画の先駆けとなりました。

新聞4コマ漫画の定着

家庭向けには、横山隆一の『フクちゃん』や麻生豊の『ノンキナトウサン』といった4コマ漫画が人気でした。

吹き出しでセリフを表現し、複数のコマで物語を展開する——現代の漫画の基本形式は、この時期にほぼ確立したといえます。


戦後〜1960年代:手塚治虫と漫画革命

「漫画の神様」の登場

戦後の漫画界に革命を起こしたのが、手塚治虫です。

1947年に発表した『新宝島』は、映画のようなカメラワークやコマ割りを漫画に持ち込み、読者に衝撃を与えました。
藤子不二雄(Ⓐ)は「止まった漫画なのに、車がすごいスピードで走っている。まるで映画を観ているみたい」と、その衝撃を振り返っています。

手塚は『鉄腕アトム』『ジャングル大帝』『リボンの騎士』『火の鳥』『ブラック・ジャック』など、生涯で約700もの作品を生み出しました。
SF、少年漫画、少女漫画、医療もの、歴史ものと、あらゆるジャンルを開拓したその功績から、「漫画の神様」と呼ばれています。

日本初のテレビアニメ

手塚は漫画だけでなく、アニメーションにも情熱を注ぎました。

1963年、手塚プロダクション(虫プロダクション)が制作した『鉄腕アトム』は、日本初の30分連続テレビアニメとして放送開始。
同年にはアメリカでも『Astro Boy』として放映され、日本アニメの海外進出の先駆けとなりました。

トキワ荘という伝説

1950年代、東京・豊島区のアパート「トキワ荘」に若き漫画家たちが集まりました。

手塚治虫を筆頭に、藤子・F・不二雄、藤子不二雄Ⓐ、石ノ森章太郎、赤塚不二夫といった、のちに巨匠となる漫画家たちがここで切磋琢磨したのです。
トキワ荘は「漫画家の梁山泊」と呼ばれ、日本漫画史における伝説的な場所となっています。


1960〜70年代:週刊誌時代と多様化

週刊少年漫画誌の創刊

1959年、『週刊少年マガジン』(講談社)と『週刊少年サンデー』(小学館)が相次いで創刊されました。

毎週発売される漫画雑誌の登場は、漫画の読まれ方を大きく変えます。
連載作品を毎週楽しみに待つという、現代につながる漫画文化がここで生まれたんですね。

1968年には『週刊少年ジャンプ』(集英社)も創刊。
後発ながら、読者アンケートによる人気投票制度を導入し、独自の路線を切り開いていきます。

劇画とストーリー漫画の発展

1960年代には「劇画」というジャンルも台頭しました。

白土三平の『カムイ伝』や、つげ義春の『ねじ式』など、大人向けのシリアスな作品が注目を集めます。
1964年創刊の『月刊漫画ガロ』は、こうした実験的・芸術的な漫画の発表の場となりました。

梶原一騎原作の『巨人の星』『あしたのジョー』といった「スポ根(スポーツ根性)」ものも大ブームに。
漫画は子どもだけでなく、若者や大人も楽しむものへと変化していったのです。

少女漫画の革新

1970年代には、少女漫画にも大きな変革が起こりました。

萩尾望都、竹宮惠子、大島弓子ら「花の24年組」と呼ばれる女性漫画家たちが、複雑な心理描写や革新的な表現技法を少女漫画に持ち込みます。
池田理代子の『ベルサイユのばら』は社会現象となり、宝塚歌劇での上演も大ヒットしました。


1980〜90年代:漫画の黄金期

『週刊少年ジャンプ』の躍進

1980年代から90年代にかけては、日本漫画の黄金期といえる時代です。

『週刊少年ジャンプ』は『ドラゴンボール』『北斗の拳』『キン肉マン』『SLAM DUNK』『幽☆遊☆白書』といった大ヒット作を次々と生み出し、1995年には発行部数653万部という驚異的な記録を達成しました。
これは漫画雑誌として世界最高記録です。

多様なジャンルの開花

この時期には、青年向け漫画誌も充実しました。

『週刊ヤングマガジン』『ビッグコミックスピリッツ』『モーニング』などが創刊され、より幅広いテーマの作品が描かれるようになります。
高橋留美子の『うる星やつら』『めぞん一刻』、あだち充の『タッチ』といったラブコメディも大人気でした。

メディアミックスの本格化

漫画のテレビアニメ化・映画化が本格化したのもこの時代です。

『ドラゴンボール』『聖闘士星矢』『美少女戦士セーラームーン』などがアニメ化され、世界中で人気を獲得。
漫画を原作とするコンテンツが、日本のポップカルチャーを代表する存在になっていきました。


2000年代〜現在:デジタル時代と世界への広がり

電子書籍とウェブ漫画

2000年代に入ると、インターネットの普及により漫画の読み方が大きく変わりました。

電子書籍やウェブ漫画が登場し、スマートフォンで手軽に漫画を読める時代に。
縦にスクロールして読む「縦スクロール漫画(ウェブトゥーン)」という新しい形式も生まれています。

一方で、紙の漫画雑誌の発行部数は減少傾向にあり、出版業界全体の変革期を迎えています。

世界に広がる「MANGA」

日本の漫画は今や世界中で「MANGA」として愛されています。

『ONE PIECE』『NARUTO』『進撃の巨人』『鬼滅の刃』『呪術廻戦』といった作品は、翻訳されて世界中で読まれ、アニメ化作品も大人気。
「MANGA」は英語の辞書にも載るほど、国際的に認知された日本文化となりました。

コミケという文化

同人誌即売会「コミックマーケット(コミケ)」も、漫画文化を語る上で欠かせない存在です。

1975年に参加者700人ほどで始まったイベントは、今では数十万人が参加する世界最大の漫画イベントに成長。
プロ・アマ問わず、漫画を愛する人々が集う場として、独自の文化を形成しています。


漫画史年表

年代出来事
12〜13世紀『鳥獣人物戯画』制作(日本最古の漫画とされる)
1814年葛飾北斎『北斎漫画』刊行開始
1862年日本初の漫画雑誌『ジャパン・パンチ』創刊
1905年北澤楽天『東京パック』創刊
1931年田河水泡『のらくろ』連載開始
1947年手塚治虫『新宝島』発表
1952年手塚治虫『鉄腕アトム』連載開始
1959年『週刊少年マガジン』『週刊少年サンデー』創刊
1963年テレビアニメ『鉄腕アトム』放送開始
1968年『週刊少年ジャンプ』創刊
1975年コミックマーケット第1回開催
1984年『ドラゴンボール』連載開始
1995年『週刊少年ジャンプ』発行部数653万部達成
1997年『ONE PIECE』連載開始
2010年代〜電子書籍・ウェブ漫画が普及

まとめ

  • 漫画のルーツは平安時代の『鳥獣戯画』まで遡り、約800年の歴史がある
  • 江戸時代には北斎が「漫画」という言葉を広め、明治時代に北澤楽天が近代漫画の基礎を築いた
  • 戦後、手塚治虫が映画的な表現を漫画に持ち込み、漫画界に革命を起こした
  • 週刊少年誌の登場で漫画は大衆文化として定着し、1990年代には黄金期を迎えた
  • 現在は電子書籍やウェブ漫画の時代となり、「MANGA」は世界共通語になっている

約800年にわたる歴史の中で、漫画は絵巻物から週刊誌、そしてデジタルへと姿を変えながら進化し続けてきました。
しかし、「絵と物語で人を楽しませる」という本質は、鳥獣戯画の時代から変わっていないのかもしれません。

これからの漫画がどんな進化を遂げるのか、とても楽しみですね。

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