ライトノベルの歴史|誕生から現代までの50年を振り返る

神話・歴史・文化

「ライトノベル」って、いつから存在するか知っていますか?

実は、今では当たり前のように使われているこの言葉、誕生したのは1990年のことなんです。
しかし、ライトノベルの「源流」となる作品は、さらに20年ほど遡ります。

この記事では、ライトノベルの誕生前夜から現代の「なろう系」全盛期まで、約50年にわたる歴史を振り返ります。


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ライトノベルとは?定義の曖昧さが生んだ自由

ライトノベルの定義って、実は今でもハッキリ決まっていません。
「アニメ調のイラストが付いた若者向け小説」という説明がよく使われますが、業界内でも明確な基準は確立されていないのが現状です。

よく挙げられる特徴としては、「ライトノベルレーベルから刊行されている」「マンガ・アニメ調のイラストが多用されている」「キャラクターを中心に物語が展開される」「中高生をメインターゲットにしている」といったものがあります。

ただ、どれも例外が存在するんですよね。
この「定義の曖昧さ」こそが、ライトノベルの自由さを生んでいるとも言えます。


前史:1970年代〜ジュブナイル小説の時代

ライトノベルという言葉が生まれる前、若者向けの娯楽小説は「ジュブナイル小説」や「ヤングアダルト小説」と呼ばれていました。

1960年代には筒井康隆『時をかける少女』や眉村卓『なぞの転校生』といった作品が中学生向け雑誌に連載され、後にNHK少年ドラマシリーズでドラマ化されています。
これらの作品は、ライトノベルの先駆け的存在と言えるでしょう。

1970年代に入ると、大きな転機が訪れます。

1975年 — ソノラマ文庫が創刊。
1976年 — コバルト文庫(集英社)が創刊。

この2つのレーベルが、それまでの小説とは異なる「マンガっぽい」「アニメっぽい」イラストを表紙に採用し始めたのです。
ソノラマ文庫からは高千穂遙『クラッシャージョウ』が登場し、アニメーターの安彦良和がイラストを担当。これが「アニメ風イラスト」を表紙に使った最初期の例とされています。


1980年代:SF・ファンタジーブームとアニメとの融合

1970年代後半から1980年代にかけて、日本はSF・アニメブームの真っ只中でした。

1977年の映画『宇宙戦艦ヤマト』、1979年のテレビアニメ『機動戦士ガンダム』の大ヒット。
これらの作品はノベライズ(小説化)され、アニメファンが小説を読むという流れが生まれました。

この時代に活躍した作家には、夢枕獏、菊地秀行、笹本祐一らがいます。
菊地秀行の『吸血鬼ハンターD』(1983年)は、SFとファンタジーを融合させた先駆的作品として、現在も長期シリーズが続いています。

1980年代後半になると、ファンタジーRPGの影響が強まります。
1986年にパソコンゲーム雑誌『コンプティーク』で『ロードス島戦記』が連載開始。これはTRPG(テーブルトークRPG)のリプレイ記事から生まれた作品で、ファンタジーライトノベルの原点とも言われています。


1988年〜1993年:主要レーベルの創刊ラッシュ

1980年代末から1990年代前半にかけて、現在のライトノベル市場を支える主要レーベルが次々と創刊されました。

創刊年レーベル名出版社
1988年富士見ファンタジア文庫富士見書房
1989年角川スニーカー文庫角川書店
1993年電撃文庫メディアワークス

富士見ファンタジア文庫は『ドラゴンクエスト』ブームに乗り、ヒロイックファンタジー路線で一躍トップシェアを獲得。
そして1990年、第1回ファンタジア長編小説大賞の準入選作として『スレイヤーズ!』(神坂一)が登場します。

『スレイヤーズ!』は「ライトノベルの元祖」と呼ばれることもある作品です。
15歳で最強の魔導師になった少女リナ・インバースが主人公で、シリアスな本編とギャグ満載の短編集を交互に出すスタイルを確立しました。


1990年:「ライトノベル」という名称の誕生

1990年12月、大手パソコン通信サービス「NIFTY-Serve」のSFファンタジー・フォーラムで、ある言葉が生まれました。

「ライトノベル」 です。

当時のフォーラムシスオペ(管理人)である神北恵太氏が、新しいタイプの小説を語るための会議室名として考案したとされています。
「ジュブナイル小説」は語感が硬い、「ヤングアダルト小説」は「ヤングのアダルト小説」と誤解されかねない——そんな問題を解決するために、「軽く読める」という意味を込めた造語でした。

ちなみに、当時は「ライト」以外にも「ニート(こざっぱりした)」「ファースト(速い・最初に読むのに良い)」といった候補もあったそうです。


1990年代:ファンタジー黄金期とアニメ化ブーム

1990年代は、ライトノベル=異世界ファンタジーというイメージが定着した時代です。

『スレイヤーズ!』『魔術士オーフェン』『フォーチュン・クエスト』といった作品が次々とヒットし、テレビアニメ化されました。
特に『スレイヤーズ!』は1996年に売り上げのピークを迎え、三度もアニメ化される大ヒットシリーズとなっています。

この時期には少女向けライトノベルも発展します。
1992年に『十二国記』(小野不由美)が講談社X文庫ホワイトハートから刊行。少女向けながら恋愛要素がほぼなく、異世界に放り込まれた少女の過酷な成長を描いた作品は、2000年に一般向け文庫でも刊行され、「ライトノベルと一般文芸の越境」の先駆けとなりました。


2000年代:第二次ブームと多様化

2000年代前半は一度ブームが落ち着きましたが、2000年代後半に第二次ライトノベルブームが到来します。

2006年 — 『涼宮ハルヒの憂鬱』がテレビアニメ化され大ヒット。
同年 — 『灼眼のシャナ』『ゼロの使い魔』などもアニメ化。

この時期、ライトノベルは「学園もの」「ラブコメ」といったジャンルが台頭し、ファンタジー一辺倒から多様化が進みました。
また、深夜アニメの増加とともに「ライトノベル原作のアニメ」が定番化していきます。

そして2009年、後のライトノベル市場を大きく変える2つの出来事がありました。

ひとつは『ソードアート・オンライン』(川原礫)の刊行。
もうひとつはメディアワークス文庫の創刊です。

前者はWeb小説発の作品で、「異世界」「ゲーム世界」を舞台にした物語の先駆けとなりました。
後者は10代だけでなく大人も読める「ライト文芸」という新ジャンルの誕生を告げるものでした。


2010年代:Web小説革命と「なろう系」の台頭

2010年代は、ライトノベル業界に革命的な変化が起きた時代です。

2010年、2chのスレッド発の『まおゆう魔王勇者』がバズり、書籍化。
同作の作者が「小説家になろう」で連載していた『ログ・ホライズン』や、同サイトの累計ランキング1位だった『魔法科高校の劣等生』に注目が集まりました。

2012年 — ヒーロー文庫(主婦の友社)が創刊し、「小説家になろう」のランキング上位作品を次々と書籍化。初期は全作品重版という驚異的な数字を記録します。

2013年 — 『この素晴らしい世界に祝福を!』刊行。
2014年 — 『Re:ゼロから始める異世界生活』刊行。

これらの作品が既存の大手レーベル(角川スニーカー文庫など)から刊行されたことで、「なろう系と従来のラノベは別物」という業界の認識が変化しました。

そして2014年、『転生したらスライムだった件』が「小説家になろう」累計ランキング1位に。
2010年代に関連書籍含め2000万部を売り上げ、同年代最大のヒット作となりました。


なろう系の特徴:なぜこれほど人気なのか?

「なろう系」と呼ばれる作品には、いくつかの共通パターンがあります。

異世界に転生または転移する主人公、チート級の特殊能力、ステータス画面やスキルといったゲーム的要素、そして主人公が圧倒的に強い「俺TUEEE」展開——。

なぜこれほど人気が出たのでしょうか?

理由のひとつは、読者によるテストマーケティングが先に済んでいる点です。
Web上で人気を獲得した作品だけが書籍化されるため、「目利き」である編集者が企画判断するより、実際にヒットする確率が高かったのです。

また、ファンタジーRPGやオンラインゲームの普及により、「レベル」「スキル」「ステータス」といった概念が読者に浸透していたことも大きいでしょう。


現代:市場の変化と新たな潮流

2010年代後半から2020年代にかけて、ライトノベル市場は大きく様変わりしました。

従来の文庫ライトノベル市場は縮小傾向にある一方、Web小説の書籍化(単行本)は成長を続けています。
2013年に約30億円だった単行本ラノベ市場は、2016年には約100億円市場に急成長しました。

ジャンルも多様化が進んでいます。
「悪役令嬢」もの、「追放ざまぁ」もの、グルメもの、聖女もの——2010年代前半から様々なサブジャンルが生まれ、定着しました。

また、海外への展開も進んでいます。
アニメ配信プラットフォームの普及により、ライトノベル原作アニメが世界中で視聴されるようになり、英語翻訳版の出版も増加。「クールジャパン」の一翼を担う存在となっています。


ライトノベル主要レーベル創刊年表

創刊年レーベル名出版社備考
1975年ソノラマ文庫朝日ソノラマライトノベルの源流的存在
1976年コバルト文庫集英社少女向けの先駆け
1988年富士見ファンタジア文庫富士見書房『スレイヤーズ!』で一世を風靡
1989年角川スニーカー文庫角川書店『涼宮ハルヒ』『ロードス島戦記』
1993年電撃文庫メディアワークス現在のライトノベル最大手
2006年GA文庫SBクリエイティブ『ダンまち』など
2009年メディアワークス文庫KADOKAWAライト文芸の先駆け
2012年ヒーロー文庫主婦の友社なろう系書籍化の火付け役
2013年MFブックスKADOKAWA30〜40代男性向け

まとめ

ライトノベルの歴史を振り返ると、常に「時代の変化」と歩みを共にしてきたことがわかります。

  • 1970年代:ジュブナイル小説から派生し、アニメ風イラストを採用
  • 1980年代:SFブーム、アニメブーム、TRPGブームと融合
  • 1990年代:「ライトノベル」命名、ファンタジー黄金期
  • 2000年代:アニメ化ブーム、ジャンルの多様化
  • 2010年代:Web小説革命、なろう系の台頭
  • 2020年代:グローバル展開、さらなる多様化

約50年の歴史の中で、ライトノベルは「若者向けの軽い読み物」から、アニメ・マンガ・ゲームと並ぶ日本のポップカルチャーの柱へと成長しました。

次にどんな潮流が生まれるのか——それは、今まさに「小説家になろう」や「カクヨム」で執筆している誰かが決めるのかもしれません。

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