ガヘリスとは?母親を斬首した円卓の騎士の悲劇的な最期

神話・歴史・文化

アーサー王伝説に登場する円卓の騎士の中で、最も衝撃的な行動をとった人物は誰でしょうか?

その答えは、おそらくガヘリスです。
なんとこの騎士、自分の母親を斬首したというとんでもないエピソードを持っています。

しかも最期は、敬愛するランスロットの手にかかって命を落とすという皮肉な結末。
この記事では、そんなガヘリスの知られざる物語を紹介していきます。

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ガヘリスの基本情報

ガヘリス(Gaheris)は、アーサー王伝説に登場する円卓の騎士の一人です。

オークニーのロット王とモルゴース王妃の息子で、アーサー王の甥にあたります。
兄弟には円卓最強とも呼ばれるガウェインがおり、アグラヴェイン、ガレス、そして異父弟のモードレッドと合わせて「オークニー五兄弟」として知られています。

古フランス語では「Gaheriet(ガエリエ)」と表記され、ウェールズ語の「Gwalchafed(グワルハヴェド)」が語源とされています。
この名前は「夏の鷹」という意味を持っており、騎士らしい勇ましさが感じられますね。

家系図と兄弟関係

ガヘリスの家系は、アーサー王伝説の中でも重要な位置を占めています。

関係人物名備考
ロット王オークニーの王
モルゴースアーサー王の異父姉
伯父アーサー王ブリテンの王
長兄ガウェイン円卓最強の騎士
次兄アグラヴェインアーサー派の急先鋒
ガレスランスロットの親友
異父弟モードレッドアーサーを裏切る
リネットガレスの妻リオネスの妹

オークニー兄弟の中でも、ガヘリスの立ち位置は少し複雑です。
次兄のアグラヴェインは何があってもアーサー王に忠実な「アーサー派」。
一方でガヘリスと弟のガレスは、ランスロットを敬愛する「ランスロット派」でした。

そして長兄のガウェインが、この二つの派閥のバランスをとっていたんですね。

ガヘリスの人物像

『ランスロ=聖杯サイクル』によると、ガヘリスは次のような人物として描かれています。

勇敢で俊敏、そして美男子。
ただし普段は寡黙で、仲間の中では「最も口下手な騎士」だったとか。

興味深いのは、「右腕が左腕より長い」という身体的特徴が記されていること。
これは剣を振るうには有利だったのかもしれません。

性格的には普段は穏やかですが、一度怒ると過激になる傾向がありました。
兄ガウェインの従者を務めていた頃は、兄の激しい気性を和らげる役割を担っていたそうです。

衝撃のエピソード:母親斬首事件

ガヘリスを語る上で避けて通れないのが、自らの母モルゴースを殺害した事件です。

事の発端は、母モルゴースとラモラックという騎士の不倫でした。
このラモラックは、かつてガヘリスの父ロット王を殺したペリノア王の息子。

「父を殺した男の息子が、母と寝ている」

これはオークニー兄弟にとって、到底許せることではありませんでした。

ガヘリス達は二人の寝室に踏み込みます。
本来はラモラックを殺すつもりだったのですが、ガヘリスが斬りつけたのは——なんと自分の母親だったのです。

母の首を刎ねたガヘリス。
ラモラックは「非武装の者を斬るのは騎士道に反する」として追放処分となりましたが、ガヘリス自身も宮廷から追放されることになりました。

この事件は後々まで尾を引き、モードレッドとアグラヴェインがガヘリスを殺そうとする場面もあります。
しかし弟のガレスがガウェインを説得し、事なきを得ました。

妖精の女王からの予言

『後期流布本サイクル』の『マーリン』には、ガヘリスの将来を暗示する興味深いエピソードがあります。

妖精の島の女王からガヘリスに花が贈られ、こんな予言が告げられました。

「もしガヘリスが自分の罪によって母親を死なせなければ、円卓の騎士のうち2人を除く全員を善良さと勇敢さで凌ぐだろう」

この「2人」とは、おそらくガラハッドとランスロットのこと。
つまりガヘリスは、本来なら円卓で3番目に優れた騎士になれる器だったということです。

しかし母殺しの罪を犯したことで、その運命は変わってしまったんですね。

ガウェインとの冒険

ガヘリスは単独での活躍は少ないものの、兄ガウェインの冒険にはしばしば同行しています。

ガウェインとマーハウスが危機に陥った際には、救出の旅に出発。
その途中で嫉妬深い兄アグラヴェインに二度も襲われますが、どちらも完膚なきまでに打ち負かしています。

また、バグデマグス王の救出やペリノア王への復讐など、自身のクエストもこなしました。
兄の従者から始まり、やがて一人前の騎士として認められていったわけです。

悲劇の最期:ランスロットの手にかかる

ガヘリスの死は、円卓崩壊の引き金となった重大事件の一つです。

ランスロットとグィネヴィア王妃の不倫が発覚し、王妃は火あぶりの刑に処されることになりました。
アーサー王はオークニー兄弟全員に、処刑の警護を命じます。

しかしガヘリスとガレスは、敬愛するランスロットに敵対する立場を明確にしたくありませんでした。
そこで二人は「非武装」で刑場に立ち会うことを選びます。

これは「ランスロットが愛したグィネヴィア様の処刑に賛成したわけではない」という意思表示でした。

そこにランスロットが救出に現れます。
愛する女性を救おうと狂乱状態になったランスロットは、警護の騎士たちを片っ端から斬り殺していきました。

非武装だったガヘリスとガレスも、その刃から逃れることはできませんでした。
ランスロット自身、二人を殺すつもりはなかったと後に嘆いています。

円卓崩壊への影響

ガヘリスとガレスの死は、円卓の騎士たちに決定的な亀裂を生みました。

長兄ガウェインは、次兄アグラヴェインの死には怒りを見せませんでした。
しかしガヘリスとガレスの死を知ると激怒し、「何があってもランスロットを殺す」と誓いを立てます。

かくしてガウェインは反ランスロット派の急先鋒となり、アーサー王を焚きつけてフランスにあるランスロットの居城を攻撃することに。

この対立が、やがてモードレッドの反乱、そしてカムランの戦いでのアーサー王の死へとつながっていくのです。

主な出典作品

作品名時代特徴
エレクとエニード12世紀後半クレティアン・ド・トロワ作。初登場
ランスロ=聖杯サイクル13世紀初頭主要人物として登場
散文のトリスタン13世紀トリスタンの友人として活躍
後期流布本サイクル13世紀母殺しのエピソードを収録
アーサー王の死15世紀トマス・マロリー作。最も有名な版

現代作品への影響

ガヘリスは現代のゲームやフィクションにも登場しています。

『拡散性ミリオンアーサー』では、天秤を携えた執行者として登場。
「正義と自分の怒りを混同する」というキャラクター付けは、母殺しのエピソードに由来していると思われます。

『Fateシリーズ』では、サーヴァントとして存在が示唆されています。
円卓の騎士は同シリーズで人気が高いため、今後本格的に登場する可能性もあるでしょう。

映画『First Knight』(1995年)では俳優アレクシス・デニソフが演じ、アーサー王に忠実な騎士として描かれました。

まとめ

ガヘリスの物語から見えてくるのは、以下のポイントです。

  • オークニーのロット王とモルゴース王妃の息子で、アーサー王の甥
  • 本来は円卓で3番目に優れた騎士になれる器だった
  • 父の仇の息子と不倫していた母を斬首するという衝撃的な行動
  • ランスロットを敬愛していたが、その手にかかって命を落とす
  • 彼の死が円卓崩壊の引き金の一つとなった

華々しい武勲よりも、家族の悲劇に翻弄された騎士——それがガヘリスという人物です。
円卓の騎士の中では地味な存在かもしれませんが、彼なくしてアーサー王伝説の結末は語れません。

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