モードレッドとは?アーサー王を死に追いやった「裏切りの騎士」を解説

神話・歴史・文化

アーサー王伝説で最も有名な「裏切り者」といえば、誰を思い浮かべますか?

おそらく多くの人がモードレッドの名前を挙げるのではないでしょうか。
父であり叔父でもあるアーサー王に反逆し、最終的に相打ちとなって伝説の王国を滅ぼした騎士——そんなイメージが定着しています。

でも実は、初期の伝説ではモードレッドは「勇猛で栄誉ある騎士」として讃えられていたんです。
裏切り者のイメージは、後世の創作によって作られたものかもしれません。

この記事では、モードレッドの出生から最期、そして「悪役」になった経緯まで詳しく解説していきます。


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モードレッドの基本情報

モードレッド(Mordred)は、アーサー王伝説に登場する円卓の騎士の一人です。
名前の表記にはいくつかのバリエーションがあります。

言語表記
英語Mordred / Modred
ウェールズ語Medraut / Medrawd
ラテン語Modredus
日本語モードレッド / モルドレッド / モウドリッド

名前の由来には諸説ありますが、ラテン語の「Moderātus(節度ある、穏健な)」から来ているという説が有力です。
皮肉なことに、伝説での彼の行動はまったく「穏健」ではありませんね。


呪われた出生——近親相姦で生まれた子

モードレッドの物語で最もドラマチックなのは、その出生の秘密でしょう。

トマス・マロリーの『アーサー王の死』(15世紀)によると、モードレッドはアーサー王と異父姉モルゴースの間に生まれた子供とされています。
つまり、近親相姦によって生まれた「不義の子」なんです。

なぜそんなことが起きたのか?

モルゴースはアーサーの父ウーサー・ペンドラゴンに深い恨みを抱いていました。
ウーサーに父親を殺され、母親も奪われたからです。

その復讐として、モルゴースは自分の美貌を武器にまだ少年だったアーサーを誘惑しました。
アーサーは相手が自分の姉だとは知らず、一夜を共にしてしまいます。

こうして生まれたのがモードレッドでした。

マーリンの予言と「5月1日の赤子」

魔術師マーリンはモードレッドの誕生後、アーサー王にこう予言します。

「5月1日に生まれた子供が、やがてアーサー王とその王国を滅ぼすだろう」

これを聞いたアーサー王は、王国中の5月1日生まれの赤子を集めて船に乗せ、海に流してしまいました。
聖書のヘロデ王による「幼児虐殺」を思わせる残酷な行為です。

しかし、モードレッドは奇跡的に岸に打ち上げられて生き延びます。
善良な男に拾われて育てられ、14歳になるとアーサー王の宮廷に入ったのでした。

生まれた直後に実の父親に殺されかけた——この事実が、後の反逆の伏線になっていると考えることもできますね。


円卓の騎士として

宮廷に入ったモードレッドは、円卓の騎士の一員となります。

彼には異父兄弟がいました。
ガウェイン、アグラヴェイン、ガヘリス、ガレスの4人です。
いずれもモルゴースとロット王の間に生まれた子供たちで、アーサー王伝説では重要な役割を果たす騎士たちです。

騎士としてのモードレッドは、決して無能ではありませんでした。
『ブリタニア列王史』では「最も果敢な男」「最も攻撃を仕掛けるのに素早い男」と描写されています。

問題は、その性格でした。
寡黙で内向的、激しやすく、怒ると手がつけられなくなる一面があったといいます。
自分の出生の秘密を知ってからは、父への複雑な感情——憧れと憎しみ——に苦しむようになりました。


裏切りへの道——ランスロット事件

モードレッドの反逆は、ある「スキャンダル」をきっかけに動き始めます。

不倫の暴露

円卓最強の騎士ランスロットと、アーサー王の妻グィネヴィア王妃が密かに愛し合っていることは、宮廷では公然の秘密でした。
アーサー王自身も薄々気づいていたようですが、見て見ぬふりをしていたんです。

モードレッドは異父兄アグラヴェインと組んで、この不倫関係を暴くことを計画します。
そして12人の騎士を連れて、二人の密会現場を押さえました。

しかしランスロットは武装して応戦。
モードレッド以外の13人の騎士を全員殺害して逃走してしまいます。

内戦の勃発

この事件によって、円卓の騎士団は分裂しました。

グィネヴィア王妃は処刑されそうになりますが、ランスロットが救い出します。
その際にガウェインの弟ガヘリスとガレスが殺されてしまい、ガウェインはランスロットへの復讐を誓うことに。

アーサー王はランスロット討伐のためにフランスへ遠征することになりました。
そして、留守の間の王国の統治をモードレッドに任せたのです。

これが致命的な判断ミスでした。


カムランの戦い——父子相打ちの最期

反逆の開始

アーサー王がフランスに渡ったのを見計らって、モードレッドは動き出します。

「アーサー王が出兵先で戦死した」という嘘の情報を流し、自ら王位に就きました。
さらにグィネヴィア王妃に結婚を迫りますが、王妃はロンドン塔に逃げ込んで拒否します。

モードレッドは反アーサー勢力を糾合し、帰国するアーサー王を迎え撃つ体制を整えました。

運命の戦い

アーサー王はランスロットと休戦し、急いでブリテンに戻ります。
両軍は何度か衝突し、最終決戦の地カムランへと向かいました。

戦いの前夜、アーサー王は不吉な夢を見たといいます。
そこで和平交渉が試みられましたが、マロリー版では偶然の事故で戦闘が始まってしまいます。

交渉中、騎士の一人が毒蛇を見つけて剣を抜いたところ、それが攻撃の合図と誤解されたのです。

相打ちの結末

カムランの戦いは凄惨を極めました。

両軍のほとんどの騎士が倒れ、最後に立っていたのはアーサー王とモードレッド、そして側近のベディヴィアだけだったといいます。

アーサー王は槍でモードレッドの胸を貫きました。
しかしモードレッドは死の間際、槍の柄を伝って父王に近づき、剣でアーサーの頭部に致命傷を負わせます。

こうして父と子は相打ちとなり、アーサー王の伝説は幕を閉じたのでした。


意外な真実——初期の伝説では「英雄」だった?

ここまで読んで「モードレッドは極悪人だ」と思ったかもしれません。
でも、初期の伝説では全く違う描かれ方をしていたんです。

最古の記録は曖昧

モードレッドの名前が初めて登場するのは、10世紀の『カンブリア年代記』です。
そこには537年の出来事としてこう記されています。

「カムランの戦いで、アーサーとメドラウトが倒れた」

これだけです。
二人が敵同士だったのか、味方同士だったのかすら書かれていません。

勇敢な騎士として讃えられていた

初期のウェールズ語文献では、モードレッド(メドラウト)は肯定的に描かれていました

12世紀の宮廷詩人は、グウィネズ王を讃える際に「メドラウトの気質を持っている」と表現しています。
つまり、モードレッドは「良い騎士」の代名詞だったんですね。

悪役化の始まり

モードレッドが明確な裏切り者として描かれるようになったのは、ジェフリー・オブ・モンマスの『ブリタニア列王史』(1136年頃)からです。

この作品は歴史書を装っていますが、実際には多くの創作が含まれています。
しかしドラマチックな内容が受けて広く読まれ、その後のアーサー王伝説の基礎となりました。

ダンテの『神曲』(14世紀)では、モードレッドは裏切り者が落ちる地獄の最下層コキュートスで苦しんでいると描写されています。
ここまで来ると、完全な「悪役」として定着していますね。


現代のモードレッド

現代でもモードレッドは様々な作品に登場し、その解釈も多様化しています。

主な登場作品

作品特徴
映画『エクスカリバー』(1981)古典的な悪役として登場
ドラマ『魔術師マーリン』(2008-2012)最初は善人だが闇堕ちする悲劇的な人物
『Fate』シリーズ女性キャラクターとして登場。父への複雑な感情が描かれる
小説『霧のアヴァロン』モードレッドの視点から物語が語られる

特に『Fate』シリーズのモードレッドは、アーサー王に認められたいという切実な願いと、それが叶わない苦しみを抱えたキャラクターとして人気を博しています。

「単純な悪役」から「悲劇的な人物」へ——現代の創作では、モードレッドの内面により深く切り込む傾向があるようです。


モードレッド一覧表

項目内容
名前モードレッド(Mordred)/ メドラウト(Medraut)
別名モルドレッド、モウドリッド、モドレドゥス
父親アーサー王
母親モルゴース(アーサーの異父姉)
異父兄弟ガウェイン、アグラヴェイン、ガヘリス、ガレス
所属円卓の騎士
誕生日5月1日(マロリー版)
死亡カムランの戦いでアーサー王と相打ち
初出『カンブリア年代記』(10世紀)537年の記述
主な出典『ブリタニア列王史』『アーサー王の死』
象徴銀と黒の縞模様の盾
性格勇敢だが激しやすい、内向的
役割アーサー王の反逆者、王国滅亡の引き金

まとめ

モードレッドについて、ポイントを整理しましょう。

  • アーサー王と異父姉モルゴースの近親相姦で生まれた「呪われた子」
  • 生後すぐに海に流されるも、奇跡的に生還
  • 円卓の騎士となり、勇敢な戦士として活躍
  • ランスロットとグィネヴィアの不倫を暴き、円卓分裂のきっかけを作る
  • アーサー王のフランス遠征中にクーデターを起こす
  • カムランの戦いでアーサー王と相打ちになって死亡
  • 初期の伝説では「英雄」として描かれていた可能性がある
  • 「裏切り者」のイメージは12世紀以降の創作で定着

モードレッドは単なる悪役ではなく、運命に翻弄された悲劇的な人物として見ることもできます。
父に認められたかったのか、それとも復讐だけが目的だったのか——その真意は、1500年以上経った今でも謎のままです。

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