オープンソースソフトウェア(OSS)とは?基礎知識から活用方法まで徹底解説

プログラミング・IT

「オープンソースソフトウェア」という言葉、聞いたことはありますか?

実は、あなたが毎日使っているスマートフォンやパソコンの中にも、オープンソースソフトウェア(以下、OSS)が入っているかもしれません。AndroidスマートフォンやWordPressで作られたWebサイト、さらにはインターネットそのものを支える技術の多くがOSSで成り立っているんです。

この記事では、OSSの基本的な仕組みから、どんなメリット・デメリットがあるのか、さらに実際の活用例まで、わかりやすく解説していきます。

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オープンソースソフトウェアの基本

OSSの定義

オープンソースソフトウェアとは、ソースコードが公開されていて、誰でも自由に使ったり、改良したり、配布したりできるソフトウェアのことです。

ここで「ソースコード」という言葉が出てきましたね。ソースコードとは、プログラマーがソフトウェアを作るときに書く「設計図」のようなものです。料理で例えると、完成した料理がソフトウェアで、そのレシピがソースコードにあたります。

普通の商用ソフトウェア(プロプライエタリソフトウェアといいます)では、このレシピは企業の秘密として厳重に守られています。一方、OSSでは、このレシピを誰でも見ることができるんです。

Open Source Initiative(OSI)の定義

OSSと呼ばれるためには、単にソースコードが公開されているだけでは不十分です。1998年に設立されたOpen Source Initiative(OSI)という非営利団体が定めた「オープンソースの定義」に従う必要があります。

この定義には10の条件があり、主なポイントは次のとおりです。

自由な再配布
ソフトウェアを自由に配布できること。販売も含めて制限してはいけません。

ソースコードの公開
ソースコードが公開されていて、無料または実費程度で入手できること。

派生物の作成を許可
元のソフトウェアを改変して、新しいバージョンを作ることができます。

差別の禁止
特定の個人やグループを差別してはいけません。

利用分野の制限禁止
ビジネス用途でも研究用途でも、どんな目的でも使えます。

「フリーソフト」との違い

「無料のソフト」と「オープンソース」は違います。ここを混同している人も多いんですね。

フリーソフト(フリーウェア)は、無料で使えるソフトウェアのことです。ただし、ソースコードは公開されていないことがほとんど。つまり、中身がどうなっているのか見ることができません。

オープンソースソフトウェアは、ソースコードが公開されていて、自由に改変や再配布ができます。無料で使えることが多いですが、「オープンソース」の本質は「無料」ではなく「自由」にあるんです。

OSSの歴史

コンピューター黎明期のソフトウェア文化

意外かもしれませんが、1950年代から1970年代にかけて、ソフトウェアを共有するのは当たり前のことでした。研究者やエンジニアの間で、「みんなでソフトウェアを改良していこう」という文化が根付いていたんです。

ソフトウェアの商業化

1970年代後半から、ソフトウェア業界が大きく変わります。ソフトウェアに著作権が認められるようになり、企業がソースコードを秘密にして販売するビジネスモデルが生まれました。

フリーソフトウェア運動

1983年、プログラマーのリチャード・ストールマン氏が「フリーソフトウェア運動」を始めます。彼は「ソフトウェアは自由であるべきだ」と考え、1985年にフリーソフトウェア財団(FSF)を設立しました。

ストールマン氏は「ソフトウェアはフリー(自由)であるべきだ。ビール(無料)のフリーではなく、言論の自由のフリーだ」という有名な言葉を残しています。

「オープンソース」という言葉の誕生

1998年、エリック・レイモンド氏とブルース・ペレンズ氏によってOpen Source Initiative(OSI)が設立されました。これは、フリーソフトウェアの理念をより実用的で、ビジネスにも受け入れやすい形で表現するためでした。

ちょうどこの頃、Netscape社がブラウザのコードをオープンソースとして公開し、オープンソース運動が本格化しました。

OSSのライセンス

OSSには様々な「ライセンス」があります。ライセンスとは、そのソフトウェアをどう使っていいか定めたルールのことです。

コピーレフト型ライセンス

コピーレフトとは、「ソフトウェアの自由を守るために、改変版も同じ条件で公開することを求める」考え方です。

GPL(GNU General Public License)

最も有名なコピーレフト型ライセンスです。GPLのソフトウェアを使って新しいソフトウェアを作った場合、その新しいソフトウェアもGPLで公開しなければなりません。

主なバージョン:

  • GPL v2.0:1991年にリリース。Linuxカーネルなどが採用しています。
  • GPL v3.0:2007年にリリース。特許権やデジタル著作権管理(DRM)に関する条項が追加されました。

代表的なソフトウェア:Linuxカーネル、WordPress、GIMP

AGPL(GNU Affero General Public License)

GPL v3をベースにしたライセンスで、Webサービスやクラウドアプリケーション向けに強化されています。通常のGPLでは、Webサービスとして提供する場合、ソースコードを公開する義務がありませんでした。AGPLでは、ネットワーク経由でサービスを提供する場合でも、ソースコードの公開が必要です。

準コピーレフト型ライセンス

改変した部分だけソースコード公開を求める、中間的なライセンスです。

LGPL(GNU Lesser General Public License)

GPLより緩やかなライセンスです。LGPLのライブラリを使うだけなら、自分のソフトウェアをオープンソースにする必要はありません。ただし、ライブラリ自体を改変した場合は、その部分を公開する必要があります。

MPL(Mozilla Public License)

Mozilla Foundationが策定したライセンスです。改変したファイルは公開する必要がありますが、それ以外の部分は非公開でも構いません。MozillaのFirefoxなどが採用しています。

非コピーレフト型(寛容型)ライセンス

改変版を公開する義務がない、最も自由度の高いライセンスです。

MIT License

非常にシンプルで制限の少ないライセンスです。商用利用も自由で、改変したソフトウェアをオープンソースにする義務もありません。ただし、著作権表示とライセンス文を含める必要があります。

代表的なソフトウェア:React、jQuery、Ruby on Rails

BSD License

カリフォルニア大学バークレー校で開発された、柔軟性の高いライセンスです。MIT Licenseと同様に制限が少なく、商用利用も自由です。

主なバージョン:

  • 2-Clause BSD:著作権表示と免責事項の記載のみ必要
  • 3-Clause BSD:上記に加えて、広告での名前使用の制限

代表的なソフトウェア:FreeBSD、NetBSD

Apache License 2.0

企業での利用を想定した、バランスの取れたライセンスです。特許権の扱いが明確に規定されており、企業が安心して使えるようになっています。また、改変内容を明示する義務があります。

代表的なソフトウェア:Apache HTTP Server、Android、Kubernetes

ライセンスの互換性

異なるOSSライセンス同士は、条件によっては両立できない場合があります。

たとえば、Apache License 2.0とGPL v2は互換性がありません。Apache License 2.0は特許ライセンスの付与を義務付けていますが、GPL v2にはそのような規定がないため、両方の条件を同時に満たせないのです。

一方、GPL v3はApache License 2.0と互換性があります。OSSを組み合わせて使う場合は、ライセンスの互換性を確認することが大切です。

OSSのメリット

コスト削減

多くのOSSは無料で使えます。企業にとっては、ライセンス料を支払う必要がないため、大幅なコスト削減につながります。

Linux FoundationによるDと、ソフトウェアコードベースの70〜90%がOSS要素で構成されているそうです。もしOSSを使わずにすべて自社開発するとしたら、現在の3.5倍のコストがかかると推定されています。

透明性とセキュリティ

ソースコードが公開されているため、誰でも中身を確認できます。「多くの目で見る」ことで、バグやセキュリティの脆弱性が早期に発見される傾向があります。

もちろん、OSSだから絶対に安全というわけではありません。しかし、問題が見つかったときに、世界中の開発者が協力して素早く修正できるという強みがあります。

カスタマイズの自由

自分のニーズに合わせて、ソフトウェアを改変できます。企業の特殊な要件にも柔軟に対応できるんです。

商用ソフトウェアの場合、カスタマイズは開発元に依頼する必要があり、高額な費用がかかることもあります。OSSなら、自社で改変することも、外部の開発者に依頼することもできます。

ベンダーロックインの回避

特定の企業の製品に依存せずに済みます。もし、あるベンダーがサポートを終了したり、価格を大幅に値上げしたりしても、代替手段を見つけやすいです。

コミュニティのサポート

世界中の開発者が参加するコミュニティがあり、フォーラムやチャット、メーリングリストなどで活発な議論が行われています。質問や問題解決のサポートを受けやすいんです。

技術革新の促進

多くの開発者が協力することで、革新的な機能が素早く追加されます。一つの企業だけでは実現できない速度で進化していきます。

近年では、生成AI分野でもOSSが重要な役割を果たしています。2023年にリリースされた大規模言語モデル(LLM)の3分の2がオープンソースだったというデータもあります。

OSSのデメリット

サポート体制の不確実性

無料のOSSには、公式のサポート窓口がないことが多いです。問題が起きたときに、誰に聞けばいいのか分からないことがあります。

ただし、Red Hat、Canonical、SUSEなど、有償のサポートサービスを提供している企業もあります。

導入・運用の難しさ

専門的な知識がないと、インストールや設定が難しい場合があります。特に企業で大規模に導入する場合は、専門のエンジニアが必要になることも。

商用ソフトウェアのような丁寧なセットアップウィザードがないこともあり、初心者には敷居が高く感じられるかもしれません。

ドキュメントの品質のばらつき

使い方のマニュアル(ドキュメント)が不十分だったり、最新版に対応していなかったりすることがあります。特に日本語のドキュメントが少ない場合、英語での情報収集が必要になります。

互換性の問題

頻繁にアップデートされるため、バージョン間で互換性がなくなることがあります。古いバージョン用に作ったプログラムが、新しいバージョンでは動かないといったことも起こりえます。

プロジェクトの継続性

有志によって開発されているプロジェクトの場合、突然開発が止まってしまうリスクがあります。人気のないプロジェクトでは、メンテナンスが行われなくなることもあるんです。

代表的なOSS

私たちの身近にあるOSSを見てみましょう。

オペレーティングシステム

Linux

世界中のサーバーやスーパーコンピューターで使われているOSです。スマートフォンのAndroidもLinuxカーネルをベースにしています。

主なディストリビューション(派生版):

  • Ubuntu:初心者にも使いやすい
  • Fedora:最新技術を取り入れる
  • Debian:安定性重視
  • CentOS/Rocky Linux:企業向け

Android

Googleが開発したスマートフォン用のOSで、世界中のスマートフォンの大半がAndroidを使っています。

Webサーバー・データベース

Apache HTTP Server

世界中のWebサイトで使われている、最も人気のあるWebサーバーソフトウェアの一つです。

NGINX

Apacheと並ぶ人気のWebサーバーです。高速処理が得意で、大規模サイトでよく使われています。

MySQL / MariaDB

データベース管理システムです。企業のシステムから個人のブログまで、幅広く使われています。WordPressのデータベースとしても採用されています。

PostgreSQL

高機能で信頼性の高いデータベースシステムです。複雑なデータ処理が必要な場合に選ばれることが多いです。

プログラミング言語・開発ツール

Python

データ分析や機械学習の分野で人気の高いプログラミング言語です。初心者にも学びやすく、強力なライブラリが豊富にあります。

Ruby

日本人のまつもとゆきひろ氏が開発したプログラミング言語です。Ruby on Railsというフレームワークが有名で、クックパッドやAirbnbなどのWebサービスで使われています。

Git

ソースコードのバージョン管理システムです。GitHubやGitLabといったサービスの基盤となっています。開発者にとって必須のツールといえるでしょう。

ブラウザ・デスクトップアプリケーション

Firefox

Mozilla Foundationが開発するWebブラウザです。プライバシー保護を重視しています。

LibreOffice

Microsoft Officeに似た、文書作成・表計算・プレゼンテーションソフトのパッケージです。無料で使える強力な代替ソフトとして人気があります。

GIMP

画像編集ソフトウェアで、Adobe Photoshopの代替として使われることもあります。

Inkscape

ベクター画像編集ソフトウェアです。ロゴやイラストの作成に適しています。

Blender

3DCG制作ソフトウェアです。アニメーション制作やゲーム開発にも使われています。

コンテンツ管理システム(CMS)

WordPress

世界中のWebサイトの約40%が使用していると言われるブログ・CMSです。初心者でも簡単にWebサイトを作れるため、非常に人気があります。

Drupal

高度なカスタマイズが可能なCMSです。NASAや経済産業省などの政府機関でも採用されています。

Joomla

WordPressとDrupalの中間的な位置づけのCMSです。拡張性と使いやすさのバランスが取れています。

クラウド・コンテナ技術

Kubernetes

コンテナオーケストレーションツールです。大規模なクラウドアプリケーションの管理に使われています。

Docker

アプリケーションをコンテナとして実行するためのプラットフォームです。開発環境と本番環境の違いを最小化できます。

AI・機械学習

TensorFlow

Googleが開発した機械学習フレームワークです。ディープラーニングの研究や開発で広く使われています。

PyTorch

Metaが開発した機械学習フレームワークです。研究者に人気があり、最近では産業界でも使われています。

OSSの活用方法

個人での活用

学習ツールとして

プログラミングを学ぶ際に、実際のソースコードを読むことで、プロの技術を学べます。GitHubには無数のOSSプロジェクトがあり、素晴らしい学習材料になります。

日常の作業に

文書作成にLibreOffice、画像編集にGIMP、動画編集にOpenShotなど、無料で高機能なソフトウェアを使えます。

趣味のプロジェクトに

自分でWebサイトを作る場合、WordPressなどのOSS CMSを使うと簡単です。プログラミングの趣味プロジェクトでも、様々なOSSライブラリを活用できます。

企業での活用

インフラの構築

サーバーやネットワーク機器にLinuxを使うことで、コストを抑えられます。大手IT企業のほとんどがLinuxサーバーを使用しています。

システム開発

OSSのフレームワークやライブラリを使うことで、開発期間を短縮できます。ゼロから開発するよりも、既存のOSSを活用した方が効率的です。

カスタマイズによる差別化

自社の特殊なニーズに合わせて、ソフトウェアを改変できます。競合他社との差別化にもつながります。

OSSコミュニティへの貢献

OSSは、多くの人々の協力で成り立っています。あなたもコミュニティに参加して貢献することができます。

貢献の方法

コードの提供

バグ修正や新機能の追加など、プログラムコードを提供できます。GitHubでプルリクエストを送るのが一般的な方法です。

ドキュメントの作成・翻訳

使い方のマニュアルを書いたり、他の言語に翻訳したりすることも重要な貢献です。プログラミングの知識がなくてもできます。

バグ報告

問題を見つけたら報告することで、ソフトウェアの品質向上に役立ちます。詳細な報告ほど、開発者にとって助かります。

質問への回答

フォーラムやStack Overflowで他のユーザーの質問に答えることも、立派な貢献になります。

寄付

多くのOSSプロジェクトは、寄付を受け付けています。金銭的なサポートも重要な貢献の一つです。

GitHubの役割

GitHubは、OSSプロジェクトのホスティングサービスとして最も人気があります。ここでは、世界中の開発者が協力してソフトウェアを開発しているんです。

プロジェクトの進捗管理、コードレビュー、議論など、開発に必要な機能が揃っています。GitHubでの活動は、開発者としてのポートフォリオにもなります。

OSSの未来

クラウドとの融合

クラウドサービスの基盤技術として、OSSが広く使われています。Amazon Web Services(AWS)、Google Cloud、Microsoft Azureなど、主要なクラウドプロバイダーもOSSを積極的に活用しています。

Kubernetesなど、クラウドネイティブな技術の多くがOSSです。

AI・機械学習の分野

TensorFlow、PyTorchなど、人工知能や機械学習の主要なフレームワークは、ほとんどがOSSです。この分野の急速な発展は、OSSの力によるところが大きいんです。

企業の積極的な参加

Google、Microsoft、Meta(旧Facebook)など、大手IT企業も積極的にOSSプロジェクトに参加しています。企業が開発したソフトウェアをオープンソース化する事例も増えているんです。

Microsoft(かつてOSSに批判的だった)も、現在ではGitHubを買収し、多くのプロジェクトをOSS化しています。Visual Studio Codeや.NET Coreなどが代表例です。

政府のOSS採用

世界各国の政府機関でも、OSSの採用が進んでいます。

  • ブラジル:2003年から行政でのOSS利用を促進
  • インド:2015年にOSS採用に関する政策を発表
  • EU諸国:多くの国でOSSを優先的に検討する方針

コスト削減、セキュリティ、技術主権の確保などが理由です。

まとめ

オープンソースソフトウェアは、「みんなで作り、みんなで使う」という協力の精神で成り立っています。

無料で高機能なソフトウェアが使えるだけでなく、透明性が高く、誰でも改良に参加できる仕組みは、テクノロジーの民主化を進めているともいえるでしょう。

私たちが毎日使っているスマートフォン、Webサイト、様々なサービスの裏側では、多くのOSSが活躍しています。意識していなくても、私たちの生活はOSSに支えられているんですね。

OSSには様々なライセンスがあり、それぞれに特徴があります。GPL、MIT、Apache、BSDなど、用途に応じて適切なライセンスを選ぶことが大切です。

企業でOSSを活用する場合は、ライセンスの条件を守ること、セキュリティ管理をしっかり行うこと、必要に応じて有償サポートを検討することなどが重要です。

プログラミングに興味がある人は、OSSプロジェクトに参加してみるのも良い経験になります。コードを書くだけでなく、ドキュメントの作成やバグ報告など、様々な形で貢献できますよ。

OSSという選択肢を知ることで、あなたのデジタルライフがより豊かになるかもしれません。

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