極端の回避性とは?真ん中を選ぶ心理「松竹梅の法則」を徹底解説

心理学

お寿司屋さんで「松・竹・梅」の3つのメニューがあると、なぜか真ん中の「竹」を選んでしまう。

カフェで「S・M・L」のドリンクサイズがあると、ついつい「M」を頼んでしまう。

こうした経験、ありませんか?

これは偶然ではなく、「極端の回避性」という人間心理が働いているからです。

この記事では、極端の回避性の仕組みと、私たちの日常やビジネスでどのように使われているかを詳しく解説します。

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極端の回避性の基本

極端の回避性とは

極端の回避性(きょくたんのかいひせい)とは、選択肢が複数ある時に、極端なものを避けて真ん中を選ぶ心理現象のことです。

英語では「Extremeness Aversion」と呼ばれます。

行動経済学の分野で研究されている、人間の意思決定に関する重要な概念です。

いつ提唱されたのか

極端の回避性は、1992年にイタマー・サイモンソン(Itamar Simonson)とエイモス・トヴェルスキー(Amos Tversky)によって提唱されました。

彼らの論文「Choice in Context: Tradeoff Contrast and Extremeness Aversion(選択と文脈:トレードオフの対比と極端の回避)」で体系的に説明されています。

この研究は、消費者の選択行動を理解する上で画期的なものでした。

別名・関連用語

極端の回避性は、状況や文脈によってさまざまな呼び方があります。

松竹梅の法則
日本ではお寿司屋さんの「松・竹・梅」メニューが典型例として知られています。
真ん中の「竹」が最も選ばれることから、この名前が付けられました。

ゴルディロックス効果
欧米では「ゴルディロックスと三匹のくま」という童話にちなんで呼ばれます。
主人公が「ちょうどいい」ものを選ぶ話から名付けられました。

妥協効果
「妥協」という側面を強調した呼び方です。
極端を避けて中間を取る行為を妥協ととらえています。

なぜ真ん中を選ぶのか

人が真ん中を選んでしまう背後には、いくつかの心理的要因があります。

損失回避の心理

人間は「得をする喜び」よりも「損をする痛み」の方を強く感じる生き物です。

これを損失回避性といいます。

最も高い選択肢の場合
一番高い商品を選ぶと、お金をたくさん使うので損した気持ちになります。
「もし期待外れだったら、大きな損失だ」という不安が働きます。

最も安い選択肢の場合
一番安い商品を選ぶと、品質が低くて損した気分になるかもしれません。
「安物買いの銭失いになったら嫌だ」という心配があります。

そのため、どちらの損失も避けられる真ん中を選びたくなるのです。

世間体や見栄の心理

一番安いものを選ぶことへの抵抗感もあります。

貧乏だと思われたくない
最も安い選択肢を選ぶと、「ケチだと思われないか」と気にする人がいます。

妥当性の証明
真ん中を選べば、「常識的な判断をした」と自分も他人も納得しやすくなります。

こうした社会的な要因も、真ん中を選ぶ行動を後押しします。

品質への思い込み

価格と品質の関係についても、無意識の思い込みがあります。

価格=品質という認識
「安い商品は品質が悪く、高い商品は品質が良い」と考える傾向があります。

安全な選択
真ん中を選べば、「ある程度の品質は保証されている」と感じられます。

この思い込みは必ずしも正しくありませんが、判断の基準として働いています。

失敗リスクの最小化

極端な選択をすることで起こりうる失敗を避けたいという心理も働きます。

リスク回避
極端な選択肢は「何か問題があるかもしれない」と感じさせます。
中間を選ぶことでリスクを最小化しようとします。

後悔の最小化
選択を間違えた時の後悔を、できるだけ小さくしたいと考えます。
真ん中なら「まあ妥当だった」と納得しやすいのです。

極端の回避性の実験

サイモンソンとトヴェルスキーの有名な実験を紹介します。

カメラの実験

この実験では、ミノルタのカメラを使って消費者の選択行動を調べました。

2つの選択肢の場合
169.99ドルのカメラと239.99ドルのカメラを提示しました。

結果、安い方のカメラが選ばれる割合が高くなりました。

3つの選択肢の場合
さらに469.99ドルの高価格帯カメラを追加しました。

すると、真ん中の239.99ドルのカメラが最も選ばれるようになったのです。

実験から分かること

この実験は重要な発見をもたらしました。

選択肢の構成が選択に影響する
同じ商品でも、他にどんな選択肢があるかで選ばれ方が変わります。

相対的な判断
人は絶対的な価値ではなく、他の選択肢との比較で判断します。

売りたい商品を真ん中に配置する
販売側は、この心理を利用して商品ラインナップを組むことができます。

ビジネスでの活用例

極端の回避性は、さまざまなビジネスシーンで活用されています。

飲食店のメニュー

レストランやカフェでよく見られる活用法です。

お寿司屋さんの松竹梅

  • 松コース:5,000円
  • 竹コース:3,000円
  • 梅コース:1,000円

多くの人が真ん中の竹コース(3,000円)を選びます。

ドリンクサイズ

  • L(ラージ):500円
  • M(ミディアム):400円
  • S(スモール):300円

ほとんどの人がM(400円)を注文します。

ソフトウェアの料金プラン

SaaSやサブスクリプションサービスでも活用されています。

Adobe Creative Cloudの例
複数の料金プランを提供し、中間プランの契約率を高めています。
個人向けプラン、ビジネスプラン、エンタープライズプランのように階層化されています。

一般的な3段階プラン

  • プレミアムプラン:月額3,000円
  • スタンダードプラン:月額1,500円
  • ベーシックプラン:月額500円

多くのユーザーがスタンダードプラン(1,500円)を選択します。

家電量販店

家電製品の販売でも使われています。

掃除機の例

  • 高性能モデル:40,000円
  • 中級モデル:20,000円
  • 入門モデル:10,000円

真ん中の中級モデル(20,000円)が最も売れやすくなります。

店員さんが3つのモデルを並べて説明するのは、この心理を利用しているのです。

ホテルの部屋タイプ

宿泊施設でも極端の回避性が働きます。

客室の種類

  • スイートルーム:30,000円
  • デラックスルーム:15,000円
  • スタンダードルーム:8,000円

宿泊客の多くがデラックスルーム(15,000円)を予約します。

効果的に使うためのポイント

ビジネスで極端の回避性を活用する際の注意点を紹介します。

選択肢は3つまで

選択肢が多すぎると、逆効果になります。

3つが最適
松竹梅の3段階が、人間の判断に最も適しています。
これ以上増やすと、決定回避が起こります。

決定回避の法則
選択肢が多すぎると、人は選ぶこと自体をやめてしまいます。
「悩むくらいなら、一旦持ち帰ろう」となってしまうのです。

4つ以上の選択肢は避けるべきです。

価格設定のバランス

単純に3つ並べればいいわけではありません。

適切な価格差
価格差が小さすぎると、極端の回避性が働きにくくなります。
価格差が大きすぎると、一番安いものが選ばれやすくなります。

理想的な比率
一般的に、下位:中位:上位の価格比率は、1:2:3から1:3:5程度が効果的とされています。

例えば、1,000円、2,000円、4,000円のような設定です。

売上比率の目安

3つの選択肢がある場合、一般的な売上比率があります。

20%:50%:30%

  • 最も安い選択肢:20%
  • 真ん中の選択肢:50%
  • 最も高い選択肢:30%

このような比率になることが研究で示されています。

真ん中が圧倒的に選ばれることが分かります。

売りたい商品を真ん中に配置

戦略的な商品配置が重要です。

利益率の高い商品を真ん中に
最も売りたい商品を真ん中に配置することで、売上を最大化できます。

上位商品は比較対象として
最も高い商品は、必ずしも売ることが目的ではありません。
真ん中の商品を「お手頃」に見せるための役割もあります。

この手法を「おとり効果」と組み合わせることもあります。

アンカリング効果との組み合わせ

極端の回避性は、他の心理効果と組み合わせることでより強力になります。

アンカリング効果とは

最初に見た数字が基準になる現象です。

先に大きな数字を見ると、その後の判断がその数字に引っ張られます。

例えば、最初に10,000円の商品を見せてから5,000円の商品を見せると、5,000円が安く感じられます。

組み合わせの効果

極端の回避性とアンカリング効果を同時に使う方法があります。

高価格帯を先に提示
まず高価格の選択肢を見せることで、価格の基準(アンカー)を高く設定します。

真ん中を選ばせる
その後、3つの選択肢を提示することで、真ん中が選ばれやすくなります。

両方の効果が重なることで、より高い価格帯での購入を促せます。

具体例

寄付フォームでの活用例を見てみましょう。

従来の提示方法

  • 1,000円
  • 3,000円
  • 5,000円

改善した提示方法
最初に10,000円の選択肢を表示してから、上記の選択肢を見せます。

すると、3,000円や5,000円が「妥当な金額」に感じられやすくなります。

極端の回避性が働かない場合

すべての状況で極端の回避性が働くわけではありません。

価格差が大きすぎる場合

価格の開きが極端だと、逆効果になります。

悪い例

  • 高級品:50,000円
  • 中級品:3,000円
  • 入門品:1,000円

この場合、多くの人が入門品(1,000円)を選びます。

中級品と高級品の差が大きすぎるためです。

選択肢が多すぎる場合

4つ以上の選択肢があると、効果が薄れます。

決定回避が起こる
選択肢が増えると、人は決断できなくなります。
「後で決めよう」と先延ばしにしてしまいます。

最適な数は3つ
人間の短期記憶や判断能力を考えると、3つが最も適しています。

商品の違いが明確な場合

性能や機能の違いがはっきりしている場合、必ずしも真ん中が選ばれません。

明確なニーズがある
「絶対にこの機能が必要」という場合、価格に関わらずその商品を選びます。

専門知識がある
商品知識が豊富な人は、価格ではなく性能で判断します。

極端の回避性は、判断材料が少ない時に強く働く傾向があります。

消費者として知っておくべきこと

極端の回避性を理解することで、賢い買い物ができます。

無意識の選択を意識する

自分が真ん中を選んでいることに気づくことが大切です。

立ち止まって考える
「なぜ真ん中を選ぼうとしているのか?」と自問してみましょう。
本当に自分に必要なものは何かを考え直してください。

価格ではなく価値で判断
真ん中が必ずしもベストとは限りません。
自分のニーズに合った選択肢を選ぶべきです。

必要な機能を明確にする

購入前に、自分が本当に必要とするものを整理しましょう。

必要最小限を考える
一番安い選択肢でも、自分のニーズを満たせる場合があります。

オーバースペックに注意
真ん中や高級品が、必要以上の機能を持っている場合もあります。

お金を無駄にしないために、冷静な判断が必要です。

比較の罠を避ける

店側が用意した選択肢だけで判断しないことも重要です。

他の店も見る
別の店では、異なる価格帯の商品が揃っているかもしれません。

オンラインで調べる
インターネットで価格や評価を調べることで、より広い視野で判断できます。

極端の回避性に操られないための自衛策です。

極端の回避性の研究

学術的な観点からも興味深い研究が続けられています。

メタ分析の結果

2016年の研究では、142の実験データを分析しました。

ロバストな現象
極端の回避性は、非常に頑健(ロバスト)な現象であることが確認されています。
多くの状況で一貫して観察されます。

効果の大きさにはバラつき
ただし、状況によって効果の大きさは最大3倍の差があります。

実験の設計や商品の種類によって、効果の強さが変わるのです。

効果を強める要因

どんな条件で極端の回避性が強くなるのかも研究されています。

強くなる条件

  • トレードオフの次元が多い場合
  • 数値以外の属性を比較する場合
  • 実用的な商品の場合

弱くなる条件

  • 価格と品質のトレードオフが明確な場合
  • 消耗品の場合
  • 2つと3つの選択肢を単純比較する場合

これらの知見は、マーケティング戦略を立てる上で役立ちます。

選択肢のサイズと極端の回避性

最近の研究では、選択肢の数が極端の回避性に与える影響も調べられています。

大きな選択肢セット
選択肢が多い場合、客観的により極端なオプションが選ばれることがあります。

理由
大きな選択肢セットでは、各階層に複数の極端な選択肢があるため、客観的に極端でも主観的には極端に感じにくくなります。

選択肢の提示方法によって、消費者の認識が変わるのです。

フレーミング効果との関係

極端の回避性は、フレーミング効果の一例として説明されることがあります。

フレーミング効果とは

同じ内容でも見せ方で印象が変わる現象です。

例えば、「成功率90%の手術」と「失敗率10%の手術」では、前者の方が好印象を与えます。

内容は同じでも、表現方法が違うだけで判断が変わるのです。

極端の回避性はフレーミング効果の一種

極端の回避性も、選択肢の見せ方(フレーミング)によって選択が変わる現象です。

同じ商品でも
単独で見せるか、他の商品と並べて見せるかで、魅力度が変わります。

文脈依存性
選択は、絶対的な価値だけでなく、周囲の選択肢との関係で決まります。

この理解は、行動経済学の核心的な洞察の一つです。

まとめ

極端の回避性について詳しく解説しました。

極端の回避性とは、複数の選択肢がある時に極端なものを避けて真ん中を選ぶ心理現象です。

損失回避、世間体、リスク最小化などの心理が働いています。

ビジネスでは「松竹梅の法則」として広く活用されており、飲食店、ソフトウェア、家電など多くの分野で見られます。

効果的に使うには、選択肢を3つに絞り、適切な価格設定にすることが重要です。

消費者としては、この心理を理解して、本当に必要なものを選ぶ意識が大切です。

極端の回避性を知ることで、賢い選択ができるようになるでしょう。

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