「シンデレラ」「眠れる森の美女」「赤ずきん」——これらの童話、実はグリム童話より100年以上前に書かれていたことをご存知でしょうか?
17世紀フランスの詩人シャルル・ペローがまとめた「ペロー童話集」こそ、これらの物語の原点なんです。ディズニー映画でおなじみのあのシーンも、もとをたどればペローの手によるもの。
この記事では、ペロー童話の全11編を一覧で紹介しながら、それぞれの物語の魅力や意外な裏話もお伝えしていきます。
ペロー童話集とは?

ペロー童話集は、フランスの詩人シャルル・ペロー(1628〜1703年)が編纂した童話集です。
ヨーロッパ各地に伝わる民間伝承を集め、当時の宮廷サロンの女性たちが楽しめるよう、洗練された形に整えました。グリム兄弟の「グリム童話集」(1812年)より100年以上も前に発表されており、ヨーロッパ童話の先駆けといえる存在です。
ペロー童話集の大きな特徴は、各物語の最後に「教訓」が添えられていること。単なる子ども向けの物語ではなく、大人が読んでも考えさせられる「寓話」としての側面も持っているんですね。
韻文童話と散文童話の違い
ペロー童話集は、実は2つのパートで構成されています。
韻文童話集(1694年刊行)は、詩のようなリズムのある形式で書かれた3編。「グリゼリディス」「ロバの皮」「おろかな願い」の3作品が収められています。ペローが自身の名前で発表したのは、こちらの韻文童話だけでした。
散文童話集(1697年刊行)は、普通の物語形式で書かれた8編。「眠れる森の美女」「シンデレラ」など、私たちがよく知る作品はほとんどこちらに収録されています。
面白いことに、散文童話集のほうは、ペロー本人の名前ではなく、息子ピエールの名前で出版されました。当時のアカデミー会員にとって、「子ども向けの物語」を書くことは恥ずかしいことだったのかもしれません。
有名作品をピックアップ!
眠れる森の美女
ディズニー映画でもおなじみの物語ですが、ペロー版には驚きの展開があります。
王女が目覚めて王子と結婚するまでは、グリム版とほぼ同じ。ところが、ペロー版はそこで終わりません。王子の母親が実は「人食い」で、王女と生まれた子どもたちを食べようとするという、かなりショッキングな後半部分があるんです。
ちなみに、王女が目覚めるきっかけも違います。グリム版では王子のキスで目覚めますが、ペロー版では「100年経ったから自然に目が覚めた」という設定。なんだか夢がないような、でもリアルなような……。
赤ずきん
実は、ペロー版の「赤ずきん」には、猟師が助けに来るシーンがありません。おばあさんを食べた狼は、赤ずきんもそのまま食べてしまい、物語は終了。救いのない結末なんです。
これには理由があって、ペローは最後にこんな教訓を書いています。「見知らぬ男には気をつけなさい。特に優しそうに近づいてくる狼が一番危険です」——つまり、若い女性への警告として書かれた物語だったわけですね。
シンデレラ(サンドリヨン)
「ガラスの靴」が登場するシンデレラは、ペロー版が元祖。グリム版では金の靴なので、私たちがイメージするシンデレラ像は、ほぼペローが作ったといっても過言ではありません。
かぼちゃの馬車、ネズミが馬に変身するシーン、12時になると魔法が解けるという設定——全部ペローのアイデアです。
ただし、グリム版にある「継姉たちが足を切り落とす」といった残酷なシーンはありません。ペロー版では、シンデレラは優しい心で継姉たちを許し、彼女たちも立派な貴族と結婚させてあげるという、ハートフルな結末になっています。
長靴をはいた猫
粉屋の三男が相続したのは、たった1匹の猫。ところがこの猫、ただものではありません。長靴を履いて知恵を働かせ、主人を「カラバ侯爵」に仕立て上げ、最終的には王女と結婚させてしまいます。
賢い猫のおかげで出世する物語ですが、教訓は「世渡り上手になれ」という、なかなか現実的な内容。ペローの童話は、どこか大人向けの皮肉が効いているんですね。
青ひげ
ペロー童話の中でも特に「怖い話」として有名な作品。青い髭を持つ金持ちの男と結婚した若い妻が、開けてはいけないと言われた部屋を開けてしまい、そこには過去の妻たちの死体が……。
ホラー映画さながらの展開ですが、最後は妻の兄たちが駆けつけて青ひげを倒します。「好奇心は身を滅ぼす」という教訓付き。
現代文化への影響

ペロー童話は、300年以上経った今でも世界中で愛されています。
ディズニーの「眠れる森の美女」(1959年)や「シンデレラ」(1950年)は、ペロー版をベースにしたもの。
東映動画の「長靴をはいた猫」シリーズも、ペローの物語が原作です。
音楽の世界でも、チャイコフスキーのバレエ曲「眠れる森の美女」、ラヴェルの組曲「マ・メール・ロワ(がちょうおばさんの話)」など、ペロー童話から着想を得た名作が数多くあります。
「マザー・グース」という言葉も、実はペロー童話集の副題「がちょうおばさんの話(Contes de ma mère l’Oye)」が由来だといわれています。
ペロー童話 全11編一覧
| 作品名 | 原題 | 形式 | 刊行年 | 概要 |
|---|---|---|---|---|
| グリゼリディス | Griselidis | 韻文 | 1691年 | 夫である大公から試練を与えられ続ける貞淑な妻の物語。忍耐と誠実さがテーマ |
| おろかな願い | Les Souhaits ridicules | 韻文 | 1693年 | 3つの願いを授かった木こりが、愚かな使い方をしてしまう滑稽な話 |
| ロバの皮 | Peau d’Âne | 韻文 | 1694年 | 父王の求婚から逃れるため、ロバの皮をかぶって逃亡する王女の物語 |
| 眠れる森の美女 | La Belle au bois dormant | 散文 | 1697年 | 仙女の呪いで100年眠る王女と、目覚めた後の恐ろしい試練を描く |
| 赤ずきん | Le Petit Chaperon rouge | 散文 | 1697年 | おばあさんの家へ向かう少女が狼に騙される警告の物語 |
| 青ひげ | La Barbe Bleue | 散文 | 1697年 | 禁じられた部屋を開けてしまった若妻が直面する恐怖 |
| 長靴をはいた猫 | Le Chat botté | 散文 | 1697年 | 賢い猫が主人を侯爵に仕立て上げ、王女と結婚させる出世物語 |
| 仙女たち | Les Fées | 散文 | 1697年 | 優しい妹と意地悪な姉の運命が分かれる因果応報の物語 |
| サンドリヨン(シンデレラ) | Cendrillon | 散文 | 1697年 | 継母にいじめられる娘がガラスの靴で王子と結ばれる |
| 巻き毛のリケ | Riquet à la houppe | 散文 | 1697年 | 醜いが賢い王子と、美しいが愚かな王女の恋物語 |
| 親指小僧 | Le Petit Poucet | 散文 | 1697年 | 小さな末っ子が知恵で兄たちを人食い鬼から救う冒険譚 |
まとめ
ペロー童話集のポイントをおさらいしましょう。
- 17世紀フランスでシャルル・ペローが編纂した、ヨーロッパ童話の先駆け
- 韻文3編+散文8編の全11作品で構成
- 「シンデレラ」「眠れる森の美女」「赤ずきん」などの原型はペローが整えた
- 各物語に教訓が付いており、大人向けの皮肉や警告が込められている
- ディズニー映画やバレエなど、現代文化に多大な影響を与えている
グリム童話と比べると、ペロー童話は「洗練された大人の物語」という印象があります。残酷なシーンもあれば、皮肉の効いた教訓もある。子どもの頃に読んだ絵本とは違う、オリジナルのペロー童話を読んでみると、また新しい発見があるかもしれませんね。


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