お寿司屋さんの湯呑みに並ぶ、あの難しそうな漢字たち。「鮪」「鯛」「鰤」……なんとなく見たことはあるけど、全部読める人は少ないのではないでしょうか?
実はこれらの漢字、中国から伝わったものではなく日本で独自に作られたものが大半なんです。「国字」と呼ばれる日本オリジナルの漢字で、その数なんと200種類以上。しかも由来を調べてみると、思わず「へぇ〜」と言いたくなるエピソードが満載でした。
この記事では、魚へんの漢字の読み方一覧はもちろん、特に面白い由来を持つ漢字をピックアップしてご紹介します。
魚へんの漢字が「日本オリジナル」になった理由
漢字といえば中国からやってきたもの。でも魚の漢字に関しては、ちょっと事情が違います。
日本は島国。周りを海に囲まれているため、中国にはいない魚がたくさんいました。「この魚を表す漢字がない!」となった日本人は、自分たちで新しい漢字を作ることにしたわけです。
作り方はシンプルで、「魚」に魚の特徴を表す漢字をくっつけるスタイル。たとえば「弱い」をくっつけて「鰯(いわし)」、「春」をくっつけて「鰆(さわら)」といった具合ですね。
こうして生まれた日本オリジナルの漢字を「国字(こくじ)」といいます。魚へんの漢字は国字の宝庫で、なんと8世紀の奈良時代からすでに使われていた記録が残っているとか。
季節を感じる魚の漢字
日本人らしいセンスが光るのが、季節を表す漢字を使った魚の名前です。
鰆(さわら)|春の魚
魚へんに「春」で「さわら」。そのまんまですね。
瀬戸内海では春になると産卵のために沿岸にやってくることから、この名前がつきました。ただし面白いことに、関東では冬の「寒鰆」が旬とされています。脂がのっておいしいのは冬なのに、名前は春。なんだかややこしい話です。
鰍(かじか)|秋の魚
魚へんに「秋」で「かじか」。川に棲む小さな魚で、秋に旬を迎えます。
味は鹿肉のように濃厚だといわれ、山間部では貴重なタンパク源として大切にされてきました。「河鹿(かじか)」と書くこともありますが、これはカエルの名前でもあるのでちょっとややこしいですね。
鮗(このしろ)|冬の魚
魚へんに「冬」で「このしろ」。お寿司の「コハダ」の親です。
ただ、実際には一年中獲れる魚。なぜ「冬」なのかは諸説あって、はっきりしていません。瀬戸内海では秋冬に鮗寿司を食べる習慣があったから、という説が有力です。
鱈(たら)|雪の魚
魚へんに「雪」で「たら」。北の海で雪の降る季節に獲れることから、この字があてられました。
もうひとつ面白い説があって、「身が雪のように白いから」ともいわれています。ちなみに「鱈腹(たらふく)食べる」という言葉は、何でも貪欲に食べるタラの習性に由来するんですって。
鱪(しいら)|暑い夏の魚
魚へんに「暑」で「しいら」。夏においしくなる魚ということで、この字が使われています。
「魚へんに夏」という漢字は存在しないので、代わりに「暑」が採用されたようです。四季の漢字で唯一の例外ですね。
神様と雷の魚|ハタハタの漢字がカッコよすぎる
魚の漢字で最もカッコいいのは、間違いなくハタハタでしょう。
鰰(はたはた)|神の魚
魚へんに「神」で「はたはた」。なんとも神々しい字面です。
秋田県では11月頃、雷がゴロゴロ鳴る時期にハタハタが大量に獲れます。「雷が鳴ると魚がやってくる」ということで、「雷の神様が連れてきた魚」という意味でこの字が生まれました。
鱩(はたはた)|雷の魚
魚へんに「雷」で「はたはた」。同じ魚なのに漢字が2つあるという珍しいケースです。
こちらは「雷が鳴る季節に獲れる」という意味をストレートに表しています。秋田では「カミナリウオ」という別名もあるくらい、雷との結びつきが強い魚なんですね。
魚の特徴がそのまま漢字になったパターン
鰯(いわし)|弱い魚
魚へんに「弱」で「いわし」。読めば読むほど切ない漢字です。
いわしは他の魚に食べられやすく、水揚げするとすぐに弱ってしまいます。「弱し」から「いわし」になったという説が有力。他の魚の餌になりがちという、ちょっとかわいそうな由来ですね。
鮪(まぐろ)|囲むように泳ぐ魚
魚へんに「有」で「まぐろ」。「有」には「広い範囲を囲む」という意味があり、マグロが海を囲むように大きく回遊することを表しているといわれます。
名前の由来は別説もあって、「目が黒い」から「真黒(まぐろ)」になったとも。船の上から見ると真っ黒に見えることからついた名前だそうです。
鰻(うなぎ)|長く伸びる魚
魚へんに「曼」で「うなぎ」。「曼」には「長く伸びる」という意味があり、うなぎの細長い体を表現しています。
見たままの由来でわかりやすいですね。
鯱(しゃち)|海の虎
魚へんに「虎」で「しゃち」。実はシャチは哺乳類なので魚ではないのですが、魚へんがついています。
「海の中で虎のように獰猛な存在」という意味を込めてこの字があてられました。名古屋城の屋根にいるのも、この「鯱」ですね。
鯨(くじら)|丘のように大きい魚
魚へんに「京」で「くじら」。「京」には「高い丘」という意味があり、「丘のように大きな魚」を表しています。
こちらも実際は哺乳類ですが、昔の人には「とにかく大きい海の生き物」だったわけです。
天皇陛下が愛した魚|鰉(ひがい)
魚へんに「皇」で「ひがい」。琵琶湖水系に生息する小さな淡水魚です。
この漢字には面白いエピソードがあります。明治天皇が滋賀県から献上されたヒガイを大変気に入り、その後も何度も取り寄せたそうです。「天皇が愛した魚」ということで、魚へんに「皇」という漢字があてられたといわれています。
よく見かける魚へんの漢字一覧
最後に、日常でよく目にする魚へんの漢字をまとめておきます。
| 漢字 | 読み | 由来のポイント |
|---|---|---|
| 鮭 | さけ | 身が裂けやすいから「裂け」→「さけ」説あり |
| 鯛 | たい | 日本の周囲どこでも獲れるから「周」 |
| 鰤 | ぶり | 年を取った魚=「師」(老魚の意) |
| 鯖 | さば | 歯が小さいから「小歯(さば)」説あり |
| 鰹 | かつお | 身が「堅い」ことから |
| 鮃 | ひらめ | 体が「平ら」なことから |
| 鰈 | かれい | 体が葉っぱのように薄い「葉」から |
| 鯵 | あじ | 「参」は旬が旧暦3月だからという説 |
| 鮒 | ふな | どこにでも「付」いている身近な魚 |
| 鰻 | うなぎ | 「曼」は長く伸びるの意味 |
| 鮎 | あゆ | 中国では「占」は大きなナマズの意 |
| 鱒 | ます | 産卵期に腹が赤くなる=「鱒」(赤い魚) |
| 鮫 | さめ | 「交」は交わる=よく人と出会う魚? |
| 鱸 | すずき | 「盧」は黒いの意味(出世すると黒くなる) |
| 鮨 | すし | 古代中国では魚の酢漬けや塩辛の意味 |
まとめ
魚へんの漢字についてご紹介しました。ポイントをおさらいしましょう。
- 魚へんの漢字は200種類以上あり、多くが日本で作られた「国字」
- 季節を表す漢字(春・秋・冬・雪)を使った魚の名前が多い
- 「神」や「雷」がつくハタハタ、「皇」がつくヒガイなど、由来が面白い漢字も
- 「弱い」から鰯、「長い」から鰻など、魚の特徴がそのまま漢字になっている
お寿司屋さんや魚屋さんで魚の漢字を見かけたら、ぜひ由来を思い出してみてください。「この魚は弱いからこの字なんだ」なんて考えながら食べると、また違った味わいがあるかもしれませんね。


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