シシノケとは?三つ目の怪物が発する「イトッシャノウ」の意味と正体に迫る

神話・歴史・文化

深夜のキャンプ場で、突然聞こえてくる赤ん坊のような泣き声。

テントの外をうかがうと、そこには針のような毛に覆われた巨大なナメクジのような「何か」がいた——。

これは2010年にインターネット上で語られ始めた、ある怪物の目撃談です。その名は「シシノケ」。石川県の山中で最初に確認されたとされ、その不気味な姿と「イトッシャノウ」という謎の言葉で、今なお多くの人を恐怖させています。

この記事では、現代の怪異「シシノケ」の正体、名前の意味、そして各地での目撃談について詳しく解説していきます。

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シシノケの概要

シシノケは、2010年4月に2ちゃんねる(現5ちゃんねる)の怖い話系スレッドに投稿された怪談に登場する怪物です。

最初の目撃談は、石川県のとあるキャンプ場で愛犬とソロキャンプをしていた男性によるもの。深夜、テントの中にいると赤ん坊のような泣き声が聞こえ、普段は大人しい愛犬が激しく威嚇を始めたといいます。

様子を見に外へ出た投稿者は、そこで信じられないものを目にしました。巨大なナメクジのような生き物が、こちらを見ていたのです。

投稿者は慌てて逃げ出し、キャンプ場の管理人のもとへ駆け込みました。管理人と息を潜めていると、建物の周囲をうろつく怪物から不気味な声が発せられたそうです。

「イトッシャノウ……」

この声を聞いた管理人の顔色は変わり、すぐに地元の猟師たちへ連絡がなされました。その晩は何とか難を逃れたものの、投稿者はその後体調を崩し、後日談によれば意識不明になってしまったとも伝えられています。

シシノケの姿

シシノケの外見は、私たちの想像を超える異様なものです。

大きさは寝袋ほど、つまり長さ90センチ前後とされています。体型はナメクジや芋虫に似ており、手足はありません。現存する生物で最も近い見た目は「ムカデノウミウシ」だという指摘もあります。

特徴的なのは、全身を覆うヤマアラシのような長い針状の剛毛。そして顔と思われる部分には、大きな円形の口が開いています。

さらに不気味なのが「目」の構造です。口を取り囲むように3本の触角のようなものが伸びており、その先端にはそれぞれ眼球がぶら下がっているといいます。ナメクジの触角を思わせる構造ですが、そこに目玉がついているという点が、生理的な恐怖を掻き立てますよね。

ほかにも目撃談によって報告されている特徴として、通った場所にナメクジのような粘液が残る、獣臭い匂いがする、魚のように飛び跳ねて移動する、といったものがあります。

「シシノケ」という名前の意味

この怪物はなぜ「シシノケ」と呼ばれるのでしょうか?

最初の投稿では、地元の猟師や住職から聞いた話として「土俗の神」であると説明されています。しかし「シシノケ」という名前の由来については、いくつかの解釈が存在します。

有力なのは「シシ」が「獣」を意味するという説。日本では古くからイノシシやシカなど、狩猟の対象となる動物を「シシ」と呼んできました。つまりシシノケとは「獣の怪」「獣の化け物」という意味になります。

この解釈に従えば、シシノケは東北地方に伝わる「経立(ふったち)」の一種かもしれません。経立とは、野生動物が長く生き続けた結果、妖怪へと変化したものを指す言葉です。

別の説では、山で狩られた動物や、かつて山に捨てられた赤ん坊たちの怨念が集まって形を成したものだとも考えられています。

「イトッシャノウ」の意味

シシノケの話で最も印象的なのが、この怪物が発するという「イトッシャノウ」という言葉でしょう。

これは石川県の金沢弁で「かわいそうに」という意味を持つ方言です。一見すると同情や哀れみの言葉に聞こえますよね。

しかし、この言葉の真意について恐ろしい解釈があります。それは「(私と遭遇してしまって)かわいそうに」という、悪意に満ちた宣言だというもの。

つまり、シシノケに出会ってしまった時点で、その人には災いが訪れることが決まっている。だから「かわいそうに」と言っているのだ、という解釈です。

実際、多くの目撃談では、シシノケと遭遇した人物がその後何らかの災難に見舞われるパターンが繰り返されています。

シシノケの伝承と起源

最初の投稿には、シシノケの由来についても語られていました。

かつて山中に存在していた村の人々が、ある時生まれた奇形の子どもを山の神として崇め始めたといいます。山の村は里の村から長年迫害を受けており、村人たちは復讐のため、この「神」に里の村を荒らすよう祈りを捧げたのです。

しかし神は里の村だけでなく、山の村をも同様に荒らし始めました。困り果てた人々はこの存在を封印したとされています。

興味深いのは、シシノケを傷つけると祟りがあるとされている点です。複数の目撃談に共通するパターンとして、遭遇した人がガス銃や鉈などでシシノケを攻撃してしまい、結果として災難に遭うという展開があります。

一方で、シシノケに手出しをせずにその場を離れた人は、無事だったという話もあるのです。

各地での目撃談

最初の石川県での目撃以降、シシノケと思われる存在は日本各地で確認されています。

2013年には北海道で、登山者がシシノケらしき存在に追われたという話が報告されました。2015年には群馬県の山中で、シシノケのような生き物が横切っていくのを目撃したという投稿がありました。

ほかにも中部地方や新潟県と推測される地域での目撃談が存在します。

群馬県での目撃談には興味深いエピソードがあります。天体観測のため山を訪れた人物がシシノケと遭遇したのですが、この人は悪い存在という印象を受けなかったそうです。むしろシシノケは「ケエレヨ」「ナッカラ……オセエンナ……」と話しかけてきたといいます。

これは現地の方言で「帰れよ」「とても(夜が)遅いんだから」という意味。まるで人間を心配しているようにも聞こえます。その人物はシシノケに逆らわず帰宅し、何事もなく済んだとのことです。

類似する妖怪との関係

シシノケの姿は、日本に古くから伝わる妖怪「野槌(ノヅチ)」によく似ています。

野槌は『古事記』や『日本書紀』にも登場する存在で、もともとは草の女神・カヤノヒメの別名でした。しかし仏教の伝来とともに次第に妖怪視されるようになり、胴が太く目も鼻もない蛇のような姿で描かれるようになったのです。

野槌は近畿地方から北陸、中部、四国にかけて伝承されており、見ただけでも病気になって死ぬことがあるとされています。この特徴はシシノケの「遭遇すると災難に遭う」という性質と重なりますよね。

ちなみに、UMAとして有名なツチノコも野槌に由来する名前です。「槌の子」「土の子」という呼び名が変化したものとされています。

シシノケの正体とは

結局のところ、シシノケとは何なのでしょうか?

ネット上の怪談である以上、創作である可能性は否定できません。

実際、シシノケの外見がクトゥルフ神話に登場する邪神「グラーキ」に似ているという指摘もあります。
最初の投稿がなされた2010年時点で、グラーキの情報に触れる機会は存在していたため、神話ファンによる創作だった可能性も考えられます。

しかし、だからといってシシノケの話に価値がないわけではありません。

日本には古来より、山で命を落とした者や捨てられた者の魂が怪物となって現れるという信仰がありました。

シシノケの伝承は、そうした古い恐怖を現代的な形で蘇らせたものとも言えるでしょう。

また、シシノケの話が多くの人の心を捉えるのは、私たちの中にある「山への畏怖」が今も消えていない証拠かもしれません。都市化が進んだ現代でも、深い山の中には人知の及ばない何かが潜んでいる——そんな原始的な恐怖が、シシノケという存在を通じて表現されているのです。

まとめ

シシノケは、2010年にインターネット上で語られ始めた現代の怪異です。

石川県の山中で最初に目撃されたとされ、巨大なナメクジのような体、全身を覆う針状の毛、3本の触角の先についた目玉という異様な姿をしています。「イトッシャノウ(かわいそうに)」という言葉を発し、遭遇した者には災いが訪れるとされています。

その正体については、零落した土俗の神、山で死んだ者たちの怨念の集合体、古来の妖怪・野槌の現代版など、さまざまな解釈がなされています。

創作かもしれないし、実在するかもしれない。はっきりしないからこそ、シシノケは私たちの想像力を刺激し続けるのでしょう。

もしあなたが山でキャンプをすることがあったら、深夜に赤ん坊のような泣き声が聞こえても、決してテントの外を覗かないほうがいいかもしれません。

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