白雪姫、シンデレラ、赤ずきん——名前を聞くだけで物語が浮かんでくるキャラクターたち。
実は彼らの多くは、200年以上前にドイツで生まれた「グリム童話」が原点なんです。グリム兄弟が集めた200以上の物語には、勇敢なヒロインから恐ろしい魔女まで、個性豊かなキャラクターがたくさん登場します。
この記事では、グリム童話に登場する有名キャラクターを一覧でご紹介。あなたの知っているあのキャラ、実はこんな一面があったんです。
グリム童話とは?キャラクターの宝庫

グリム童話は、ドイツのグリム兄弟(ヤーコプとヴィルヘルム)が民間に伝わる昔話を集めて編纂した童話集です。正式名称は『子どもと家庭のメルヒェン集』。1812年に初版が出版され、現在では170以上の言語に翻訳されています。
驚くべきことに、グリム兄弟は物語を「創作」したわけではありません。農家の奥さんや貴族の娘たちから聞いた話を記録したんですね。だからこそ、キャラクターたちには庶民のリアルな願望や恐れが反映されています。
ちなみに初版はかなり残酷な内容でした。白雪姫を殺そうとしたのは継母ではなく実の母親だったり、悪役たちの末路がえげつなかったり。版を重ねるごとにマイルドになっていったんです。
グリム童話キャラクターの分類
グリム童話のキャラクターは、大きく4つのタイプに分けられます。
ヒロイン・主人公たちは、困難に立ち向かう勇気ある存在。白雪姫やシンデレラのように受け身のイメージが強いですが、実は知恵と行動力で運命を切り開いていくキャラが多いんです。
悪役・敵対者たちは、物語にスリルを与える存在。魔女、継母、狼などが代表的。興味深いのは、グリム童話の悪役はほとんどが「失敗する」こと。強大に見えて、実はどこか抜けているんですね。
助ける存在・協力者たちは、主人公をサポートするキャラクター。七人の小人やブレーメンの音楽隊の動物たちなど、意外な味方が登場します。
魔法の存在・不思議なキャラクターは、ルンペルシュティルツヒェンやかえるの王子など、超自然的な力を持つ者たち。良くも悪くも、物語の転換点を作る重要な役割を担っています。
有名ヒロイン・主人公たち
白雪姫(Schneewittchen)
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」——このセリフで有名な物語の主人公です。
雪のように白い肌、血のように赤い唇、黒檀のように黒い髪を持つ美少女として描かれています。継母(初版では実母)の嫉妬から逃れ、森の中で七人の小人と暮らすことに。
意外な事実として、グリム童話版では毒リンゴの前に2回も命を狙われています。腰紐で締め上げられたり、毒を塗った櫛を刺されたり。3度目の毒リンゴでようやく倒れるんですね。学習能力が……とは言わないでおきましょう。
シンデレラ/灰かぶり(Aschenputtel)
ディズニー版とグリム童話版では、かなり違います。
グリム童話のシンデレラを助けるのは、魔法使いではなく「鳥」。母親のお墓に植えたハシバミの木に止まる白い鳥が、願いを叶えてくれるんです。ガラスの靴も、実は「金の靴」。舞踏会も一晩ではなく三晩開催されます。
そして衝撃的なのが結末。継姉たちは靴に足を合わせるため、かかとや指を切り落とします。最後には目をハトにつつかれて失明するという……グリム童話、容赦ないですね。
ラプンツェル(Rapunzel)
塔に閉じ込められた長い髪の少女——ディズニー映画で知名度が爆上がりしたキャラクターです。
「ラプンツェル」という名前、実は野菜の名前なんです。妊娠中の母親がどうしても食べたくなった野菜で、父親が魔女の庭から盗んだことから物語が始まります。
髪の長さは「20エレ」と記載されています。1エレは約60cmなので、なんと12メートル。それを窓から垂らして、魔女が登ってくるわけです。首の筋肉、相当鍛えられそうですね。
赤ずきん(Rotkäppchen)
おばあさんの家に行く途中、狼に出会う少女。シンプルな物語ですが、世界中で愛されています。
グリム童話版では、狼に食べられた後、猟師がやってきてお腹を切り開き、赤ずきんとおばあさんを救出します。これ、実はペロー童話版にはない展開。ペロー版では食べられて終わり。救いがありません。
教訓は「知らない人についていくな」。200年前から言われていたんですね。
ヘンゼルとグレーテル(Hänsel und Gretel)
森で迷子になった兄妹が、お菓子の家に住む魔女と対決する物語。
このキャラクターたち、実はグリム兄弟のオリジナルに近い存在です。隣人のドルトヒェン・ヴィルト(後にヴィルヘルムの妻になる女性)から聞いた話がもとになっています。
注目すべきは、最後に魔女を倒すのが妹のグレーテルであること。かまどに押し込むという大胆な行動で兄を救います。見た目はか弱くても、いざというとき頼りになるのは女の子——そんなメッセージが込められているのかもしれません。
恐ろしい悪役たち
魔女(Hexe)
グリム童話全体で25以上の物語に魔女が登場します。
面白いのは、魔女たちの「能力」。人を動物や石に変える変身魔術が中心で、実はそこまで万能ではありません。しかも計画はだいたい失敗します。『ヘンゼルとグレーテル』の魔女も、子どもに出し抜かれてかまどで焼かれる始末。
当時のヨーロッパでは魔女狩りの記憶が生々しく残っていた時代。グリム童話の魔女は「社会的弱者である孤独な老婆」として描かれることが多く、現実の魔女裁判の犠牲者像と重なる部分があります。
狼(Wolf)
「赤ずきん」や「狼と七匹の子やぎ」でおなじみの悪役。
実は、グリム童話全体では狼が登場する話は意外と少ないんです。悪役の代表格は魔女、悪魔、巨人、竜のほうが多い。狼が強烈に印象に残るのは、それだけキャラが立っているということでしょう。
「狼と七匹の子やぎ」では、声を変えるために白墨を食べたり、足を白くするために粉屋に小麦粉をまぶしてもらったり。努力家なんですよね、この狼。
継母(Stiefmutter)
グリム童話で最も多く登場する悪役かもしれません。
白雪姫、シンデレラ、ヘンゼルとグレーテルなど、名作の多くに継母が登場します。興味深いのは、初版では「実の母親」だった設定が、後の版で「継母」に変更されていること。グリム兄弟は「母性」を神聖視していたため、実母が子どもをいじめる設定に抵抗があったようです。
助ける存在・協力者たち

七人の小人(Die sieben Zwerge)
白雪姫を助ける小人たち。グリム童話では個々の名前は付けられていません。
ディズニー版の「先生」「おこりんぼ」「てれすけ」などの名前と性格は、映画オリジナルの設定。原作では「小さな7人の山の住人」として描かれ、個性の描き分けはほとんどありません。
彼らは毎日山に鉱石を掘りに行く勤勉な働き者。白雪姫が家事をする代わりに、住まいと食事を提供するという、なかなか現実的な取り決めをしています。
ブレーメンの音楽隊(Die Bremer Stadtmusikanten)
年老いたロバ、犬、猫、鶏の4匹が主人公。飼い主に捨てられそうになった動物たちが、ブレーメンで音楽隊になろうと旅に出ます。
結局ブレーメンには到着しません。途中で泥棒の家を乗っ取り、そこで幸せに暮らすというオチ。目的地に着かなくても幸せになれる——なんだか励まされる話ですね。
実はドイツのブレーメン市には、この4匹の銅像があります。ロバの前足を触ると願いが叶うとか。
魔法の存在・不思議なキャラクター
ルンペルシュティルツヒェン(Rumpelstilzchen)
「名前を当てられたら負け」という独特の契約を結ぶ小人。
粉屋の娘が王に「藁を金に変えろ」と命じられ、困っているところに現れます。代わりに藁を金に変えてくれますが、報酬として「最初の子ども」を要求。ただし、3日以内に名前を当てたら契約は無効——というルール。
結末が強烈です。名前を当てられたルンペルシュティルツヒェンは、怒りのあまり自分の体を真っ二つに引き裂いてしまいます。自滅にもほどがある。
かえるの王子(Froschkönig)
「キスで人間に戻る」イメージが強いですが、グリム童話版は違います。
原作では、お姫様がかえるを壁に叩きつけて、その衝撃で王子に戻るんです。キスではなく暴力。しかもお姫様、最初はかえるとの約束を守ろうとせず、父親に叱られてしぶしぶ言うことを聞くという、あまり模範的とは言えない行動をとっています。
現代への影響
グリム童話のキャラクターたちは、現代のエンターテインメントに多大な影響を与えています。
ディズニー映画はもちろん、ドラマ『GRIMM/グリム』『ワンス・アポン・ア・タイム』、ミュージカル『イントゥ・ザ・ウッズ』など、グリム童話を題材にした作品は数えきれません。日本でもアニメ『グリム名作劇場』や、Sound Horizonのアルバム『Märchen』など、さまざまな形で再解釈されています。
面白いのは、現代作品では悪役に焦点を当てることが増えていること。『マレフィセント』のように、悪役の視点から物語を描き直す試みも人気です。200年前に生まれたキャラクターたちは、今も新しい命を吹き込まれ続けているんですね。
グリム童話キャラクター一覧表
| カテゴリ | キャラクター | 登場作品 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ヒロイン | 白雪姫 | 白雪姫 | 雪のように白い肌を持つ美少女。継母に命を狙われる |
| ヒロイン | シンデレラ(灰かぶり) | 灰かぶり | 継母にいじめられるが、鳥の助けで王子と結婚 |
| ヒロイン | ラプンツェル | ラプンツェル | 塔に閉じ込められた長髪の少女。髪の長さは約12m |
| ヒロイン | 赤ずきん | 赤ずきん | おばあさんの家に行く途中、狼に出会う少女 |
| 主人公 | ヘンゼル | ヘンゼルとグレーテル | 森に捨てられた兄妹の兄。パン屑で道しるべを作る |
| 主人公 | グレーテル | ヘンゼルとグレーテル | 機転を利かせて魔女をかまどに押し込む妹 |
| ヒロイン | いばら姫(眠り姫) | いばら姫 | 糸紡ぎの針に刺され100年眠る王女 |
| ヒロイン | 雪白と薔薇紅 | 雪白と薔薇紅 | 心優しい姉妹。熊を助けて王子を救う |
| ヒロイン | がちょう番の娘 | がちょう番の女 | 身分を奪われた王女。馬のファラダと話せる |
| ヒロイン | 千匹皮 | 千匹皮 | 父王から逃れ、千匹の毛皮のマントをまとう王女 |
| 悪役 | 白雪姫の継母/魔女 | 白雪姫 | 魔法の鏡を持つ美を追求する女王 |
| 悪役 | シンデレラの継母 | 灰かぶり | 実の娘を偏愛し、シンデレラを虐げる |
| 悪役 | ラプンツェルの魔女 | ラプンツェル | ラプンツェルを塔に閉じ込めた魔女(ゴーテル) |
| 悪役 | お菓子の家の魔女 | ヘンゼルとグレーテル | 子どもを食べる人食い魔女 |
| 悪役 | 狼 | 赤ずきん、狼と七匹の子やぎ | 人や動物を騙して食べようとする狡猾な存在 |
| 悪役 | 邪悪な妖精 | いばら姫 | 招待されなかった復讐で呪いをかける |
| 悪役 | 悪い小人 | 雪白と薔薇紅 | 欲深く恩知らずな小人。最後に罰を受ける |
| 助力者 | 七人の小人 | 白雪姫 | 山で鉱石を掘る勤勉な小人たち |
| 助力者 | ロバ | ブレーメンの音楽隊 | 年老いて捨てられそうになった動物のリーダー |
| 助力者 | 犬 | ブレーメンの音楽隊 | 狩りができなくなった老犬 |
| 助力者 | 猫 | ブレーメンの音楽隊 | ネズミを捕れなくなった老猫 |
| 助力者 | 鶏 | ブレーメンの音楽隊 | スープにされそうになった鶏 |
| 助力者 | 猟師 | 赤ずきん | 狼のお腹を切り開いて赤ずきんを救出 |
| 助力者 | 母やぎ | 狼と七匹の子やぎ | 狼のお腹を切り開いて子やぎを救出 |
| 魔法の存在 | ルンペルシュティルツヒェン | ルンペルシュティルツヒェン | 藁を金に変える小人。名前当てゲームを仕掛ける |
| 魔法の存在 | かえるの王子 | かえるの王さま | 魔法でかえるにされた王子。お姫様に救われる |
| 魔法の存在 | ホレおばさん | ホレおばさん | 勤勉な娘に金を、怠惰な娘にタールを与える |
| 魔法の存在 | 金の鳥 | 金の鳥 | 王の庭の金のリンゴを盗む不思議な鳥 |
| 魔法の存在 | 鉄のハンス | 鉄のハンス | 池に住む野生の男。王子を助ける |
| 動物 | 白い鳥 | 灰かぶり | シンデレラの願いを叶える母の化身 |
| 動物 | 金のがちょう | 金のがちょう | 触れた者がくっついてしまう不思議ながちょう |
| 動物 | 蜂の女王 | 蜂の女王 | 末っ子王子を助ける恩返しの蜂 |
| その他 | 勇敢なちびの仕立て屋 | 勇敢なちびの仕立て屋 | 「一撃で七匹」のベルトで自信満々の男 |
| その他 | 幸運なハンス | 幸運なハンス | 金塊を次々交換して「幸せ」になる青年 |
| その他 | 死神 | 死神の名付け親 | 名付け親になった死神。約束を破ると容赦ない |
| その他 | 漁師の妻 | 漁師とその妻 | 願いが次々エスカレートする強欲な妻 |
まとめ
グリム童話のキャラクターたちについて紹介しました。
- グリム童話は1812年に出版された、ドイツの民間伝承を集めた童話集
- キャラクターは「ヒロイン」「悪役」「助力者」「魔法の存在」の4タイプに分類できる
- ディズニー版と原作では、設定が大きく異なることが多い
- 初版は残酷な描写が多く、版を重ねるごとにマイルドになった
- 現代でも映画、ドラマ、音楽など様々な形で再解釈され続けている
200年以上前に生まれたキャラクターたちが、今も世界中で愛されている。それだけ普遍的な魅力があるということなんでしょうね。
気になるキャラクターがいたら、ぜひ原作を読んでみてください。ディズニー版とは違う、ちょっとダークで人間味あふれる物語が待っていますよ。


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