iPhoneやMacのSafariで検索すると、自動的にGoogleの検索結果が表示されますよね。
「なぜSafariはGoogleなんだろう?」「AppleとGoogleって競合じゃないの?」そんな疑問を持ったことはありませんか?
実は、その裏には年間約3兆円という巨額の契約があります。この記事では、SafariとGoogleの関係、AppleがGoogleを選ぶ理由、そして独占禁止法の問題まで、詳しく解説します!
Safariのデフォルト検索エンジンはGoogle

まず基本から確認しましょう。
SafariとGoogle検索の関係
Safariは、AppleがiPhone、iPad、Macに標準搭載しているウェブブラウザです。
一方、Google検索は、Googleが提供する検索エンジンで、世界シェアの約92%を占めています。
Safariでキーワードを入力して検索すると、デフォルト(初期設定)では自動的にGoogle検索が使われます。
SafariとGoogleの違い
よく混同されますが、Safariは検索エンジンではありません。
Safariの役割:
- ウェブページを表示するためのブラウザ(閲覧ソフト)
- インターネット上のウェブサイトにアクセスする「窓」のような存在
- 他の例: Google Chrome、Microsoft Edge、Firefox
Google検索の役割:
- インターネット上の情報を探し出す検索エンジン
- キーワードに合ったウェブページを見つけて表示する
- 他の例: Bing、Yahoo!、DuckDuckGo
つまり、「Safariというブラウザの中で、Googleという検索エンジンを使っている」という関係です。
AppleはGoogleから年間3兆円を受け取っている
ここからが本題です。なぜSafariはGoogleをデフォルトにしているのでしょうか?
巨額の契約金
2024年の米国司法省の独占禁止法訴訟で明らかになった情報によると、GoogleはAppleに対して年間約200億ドル(約3兆円)以上を支払っています。
支払額の推移:
- 2021年: 約150〜180億ドル
- 2022年: 約200億ドル
- 2023年以降: 200億ドル以上と推定
契約の内容
この契約の中身は長年秘密にされていましたが、裁判で以下のことが明らかになりました。
契約の核心:
- GoogleがSafariのデフォルト検索エンジンになる
- Googleは、Safariでの検索から得られる広告収益の約36%をAppleに支払う
- 残りの64%はGoogleが受け取る
いつから続いている契約?
この契約は2002年から始まっています。つまり、20年以上の長期契約です。
当初は少額でしたが、iPhoneの普及とともに支払額は急増しました。2021年には月額10億ドル以上を支払っていたとされています。
Appleにとっての重要性
この200億ドルという金額は、Appleにとって非常に重要な収益源です。
重要な数字:
- AppleのServices(サービス部門)収入の約20%を占める
- 粗利益率100%の収益(ほぼすべてが利益)
- Macの年間売上(約300億ドル)の約3分の2に相当
Appleのサービス部門(AppleCare、Apple TV+、Apple Payなど)は成長分野であり、この200億ドルがなくなるとサービス部門全体が縮小してしまうほどの影響があります。
AppleがGoogleを選ぶ5つの理由
では、なぜAppleはGoogleを選び続けているのでしょうか?
実は、MicrosoftもAppleに対して「BingをSafariのデフォルト検索エンジンにしてほしい」と何度も交渉しています。しかしAppleは断り続けています。
2024年の裁判で、Appleがこの決断をした理由が明らかになりました。
理由1:Googleの検索品質が優れている
Appleの幹部エディー・キュー氏は裁判で次のように証言しました。
「Googleの検索エンジンは当社の顧客にとって素晴らしい製品です。Safariで利用できることを顧客に知ってもらいたかったのです」
つまり、ユーザー体験を最優先した結果、Googleを選んだということです。
Googleの検索エンジンは:
- 検索精度が高い
- 検索速度が速い
- 多様な機能(電卓、乗換案内、天気など)を提供
- ユーザーに慣れ親しまれている
理由2:Googleのブランド力
Googleの「検索エンジン」としてのブランド認知度は圧倒的です。
世界の検索エンジン市場シェア(2024年):
- Google: 約92%
- Bing: 約3%
- Yahoo!: 約1%
- その他: 約4%
ユーザーの多くは「検索する」ことを「ググる」と表現するほど、Googleが検索の代名詞になっています。
理由3:Googleからの収益が圧倒的に多い
MicrosoftはAppleに対して、Bingからの広告収益の100%を提供するという破格の条件を提示しました。
しかし、Appleの分析では:
Googleとの契約を継続した場合:
- 5年間で約400億ドル(約6.6兆円)の収益
Bingに切り替えた場合:
- 5年間で約200億ドル(約3.3兆円)の収益
つまり、Bingは広告収益化能力がGoogleに大きく劣るため、収益100%を提供しても実際の金額はGoogleの半分程度にとどまるのです。
理由4:ビジネスリスクが大きい
すでにユーザーがGoogleに慣れ親しんでいる状況で、BingやYahoo!に切り替えると:
- ユーザー満足度が低下する可能性
- 検索品質の低下により、iPhoneやMacの評判が悪化するリスク
- Appleデバイスの売上に悪影響が出る可能性
- Googleとの長年の協力関係を損なうリスク
これらのリスクは、Appleにとって受け入れがたいものでした。
理由5:長期的な収益の安定性
Googleとの契約は、Appleに長期的な収益の安定性を提供しています。
一方、Bingに切り替えた場合:
- 検索エンジン市場の動向次第で収益が変動
- Bingの将来的な成長や改善が不確実
- ユーザーの反応が予測できない
Appleの幹部キュー氏は、「仮にAppleがGoogleとの提携を解消するときは、Appleが『もうGoogleと取引したくない』と考えた場合のみ」と証言しています。
なぜAppleは自社の検索エンジンを作らないのか?
「Appleほどの大企業なら、自社で検索エンジンを作ればいいのでは?」と思いますよね。
実は、Appleが検索エンジン市場に参入しない理由がいくつかあります。
理由1:開発コストが膨大
検索エンジンを一から作るには、莫大な投資が必要です。
必要なもの:
- 世界中のウェブページをクロール(巡回)するシステム
- 検索アルゴリズムの開発
- 膨大なデータセンター
- 検索結果をランク付けするAI技術
- 広告配信システム
Googleは20年以上かけてこれらを構築してきました。
理由2:Googleから年間3兆円もらえる
年間200億ドルもの収益を、ほぼノーリスクで受け取れるのです。
自社で検索エンジンを作った場合:
- 膨大な開発コスト
- 運用コスト
- Googleとの対立
- 成功するかどうか不確実
これらを考えると、Googleからお金をもらい続ける方が合理的です。
理由3:プライバシー重視の姿勢と矛盾
Appleは「ユーザーのプライバシー保護」を強く打ち出しています。
しかし、検索エンジンビジネスは:
- ユーザーの検索履歴を収集
- データを分析して広告を配信
- プライバシーとのバランスが難しい
Appleのブランドイメージと矛盾する可能性があります。
理由4:Googleの検索品質は本当に優れている
Appleの幹部も認めるように、Googleの検索エンジンは本当に優れています。
自社で作っても、Googleを超えるものを作れる保証はありません。
SafariでGoogle以外の検索エンジンを使う方法

Safariのデフォルトは Google ですが、実は他の検索エンジンに変更できます。
選べる検索エンジン
Safariで選択できる検索エンジン(2024年時点):
- Google: 世界シェア92%、高精度、多機能
- Yahoo!: Googleの検索エンジンを採用、ヤフオク!やYahoo!ニュースと連携
- Bing: Microsoftが運営、ChatGPTと統合
- DuckDuckGo: プライバシー重視、ユーザー追跡なし
- Ecosia: 検索で得た収益の80%を植林活動に寄付
iPhone・iPadで検索エンジンを変更する方法
- 「設定」アプリを開く
- 下にスクロールして「Safari」をタップ
- 「検索エンジン」をタップ
- 使いたい検索エンジンを選択(Google、Yahoo!、Bing、DuckDuckGo、Ecosiaから選択)
Macで検索エンジンを変更する方法
- Safariを開く
- メニューバーから「Safari」→「環境設定(または設定)」をクリック
- 「検索」タブをクリック
- 「検索エンジン」のドロップダウンメニューから選択
それぞれの検索エンジンの特徴
Google:
- メリット: 圧倒的な検索精度、多機能、情報量が豊富
- デメリット: プライバシーへの懸念
Yahoo!:
- メリット: Googleと同等の検索精度、Yahoo!サービスと連携
- デメリット: Google検索を使っているため、実質的には同じ
Bing:
- メリット: ChatGPT統合、Microsoft Rewardsでポイントが貯まる
- デメリット: 日本語の検索精度がGoogleより劣る
DuckDuckGo:
- メリット: プライバシー保護が強い、ユーザー追跡なし
- デメリット: 日本語サイトの検索結果が少ない
Ecosia:
- メリット: 環境保護に貢献できる、プライバシー保護
- デメリット: 検索精度がGoogleより劣る
独占禁止法の問題:AppleとGoogleの契約は違法?
この巨額の契約は、米国で大きな問題になっています。
米国司法省の訴訟
2020年、米国司法省はGoogleを独占禁止法違反で提訴しました。
訴訟の内容:
- Googleは、Appleなどとの契約によって検索エンジン市場を独占している
- SafariやAndroidでデフォルト検索エンジンになることで、競合他社が参入できない
- これは反競争的な行為である
2024年の判決
2024年8月、連邦地裁のアミット・メータ判事は、Googleが違法な独占状態にあると判断しました。
判決のポイント:
- GoogleはAppleとの契約により検索市場を独占している
- これは競争を阻害している
- Googleは反トラスト法(独占禁止法)に違反している
2025年の救済措置判決
2025年9月、救済措置についての判決が下されました。
重要な判決内容:
- GoogleはAppleへの支払いを継続できる
- ただし、排他的契約は禁止
- 契約期間は1年ごとに限定(長期契約の禁止)
- Appleは他の検索エンジンとも契約できる
Appleへの影響
当初、「Googleの支払いが禁止されるのでは?」という懸念がありましたが、判決ではAppleへの支払いは継続可能となりました。
Appleにとっての意味:
- 年間200億ドルの収益は維持できる
- 毎年契約を見直すことで、より有利な条件を引き出せる可能性
- 他の検索エンジン(ChatGPTなど)とも契約を結べるようになった
Googleは控訴へ
Googleはこの判決を不服として控訴する意向を示しており、最終的な決着には数年かかる見込みです。
将来はどうなる?ChatGPT検索の台頭
検索エンジン市場は、AIの登場で大きく変わろうとしています。
ChatGPTなどAI検索の登場
2024年以降、ChatGPTをはじめとするAI検索が注目されています。
AI検索の特徴:
- 質問に対して、AIが直接回答を生成
- 複数のウェブページを要約して提示
- 会話形式で追加質問ができる
OpenAIは2024年に「ChatGPT Search」を発表し、従来の検索エンジンに挑戦しています。
Appleの動き
Appleも手をこまねいているわけではありません。
Apple Intelligence:
- 2024年、AppleはiOS 18で「Apple Intelligence」を発表
- ChatGPTとの統合を発表
- Siriの検索機能を強化
Appleは、Googleとの契約を維持しながら、同時にChatGPTとも提携することで、将来の選択肢を広げています。
Googleの対抗策:Gemini
Googleも対抗して「Gemini」という生成AIを開発しています。
AppleはGoogleのGeminiをiOS 18に統合することも検討していると報じられています。
検索の未来
今後の検索エンジン市場は:
- 従来のキーワード検索
- AI生成による回答
- 音声検索
- 画像検索
など、多様化していくと予想されます。
Appleがどの検索エンジンを選ぶかは、今後のAI技術の進化次第とも言えます。
よくある質問:SafariとGoogle検索
ここまでの内容で疑問に思いそうなポイントをまとめました。
Q: AppleとGoogleは競合じゃないの?なぜ協力しているの?
A: AppleとGoogleは一部で競合していますが、多くの分野で協力関係にあります。
競合している分野:
- スマートフォンOS(iOS vs Android)
- アプリストア(App Store vs Google Play)
- クラウドサービス(iCloud vs Google Drive)
- 地図(Apple Maps vs Google Maps)
協力している分野:
- Safari の検索エンジン
- YouTube(iOSアプリとして提供)
- Googleマップ(iOSアプリとして提供)
ビジネスでは、「競合しながらも協力する」ことは珍しくありません。
お互いにメリットがあるため、この関係は続いています。
Q: 200億ドルって高すぎない?Googleにとって元が取れるの?
A: 高額ですが、Googleにとっては十分に元が取れます。
Googleが Safari での検索から得る広告収益:
- Appleに支払う36% = 200億ドル
- Googleが受け取る64% = 約360億ドル
つまり、Googleは年間約360億ドル(約5.9兆円)の利益を得ています。
さらに、iPhoneユーザーは購買力が高く、広告価値が大きいため、Googleにとっては非常に重要な市場です。
Q: SafariでGoogle以外を使っている人はいるの?
A: ほとんどのユーザーはデフォルトのGoogleを使っています。
推定では:
- Google: 約90〜95%のユーザーがそのまま使用
- その他(Yahoo!、Bing、DuckDuckGoなど): 約5〜10%
デフォルト設定を変更するユーザーは少数派です。だからこそ、「デフォルトになること」の価値が高いのです。
Q: 日本でもGoogleとAppleの契約は適用されているの?
A: はい、世界中のほとんどの国で適用されています。
ただし、中国では例外です。
中国のiPhone では:
- デフォルト検索エンジンは百度(Baidu)
- Googleは中国で検閲問題により撤退しているため
Q: GoogleがAppleへの支払いをやめたらどうなるの?
A: Appleの収益に大きな打撃がありますが、いくつかのシナリオが考えられます。
シナリオ1: 別の検索エンジンと契約
- MicrosoftのBingと契約
- ただし収益は半減
シナリオ2: Appleが独自検索エンジンを開発
- 開発には数年かかる
- 成功するかは不透明
シナリオ3: 複数の検索エンジンから選択式にする
- ヨーロッパではすでに実施中
- 各社からの契約金を受け取れる可能性
Q: ヨーロッパではどうなっているの?
A: ヨーロッパでは、「デジタル市場法(DMA)」により、2024年からユーザーが検索エンジンを選べるようになりました。
ヨーロッパでの仕組み:
- iPhoneの初期設定時に、検索エンジン選択画面が表示される
- Google、Bing、DuckDuckGo、Ecosiaなど、複数の選択肢から選べる
- デフォルトでGoogleが選ばれているわけではない
日本でも2025年12月18日より、「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」により、デフォルト検索サービスを選択する画面が表示されるようになります。
Q: Safariの検索エンジンを変更したら、Googleは使えなくなるの?
A: いいえ、Googleは引き続き使えます。
検索エンジンを変更しても:
- Google.comにアクセスして検索できる
- Googleマップ、Gmail、YouTubeなどは通常通り使える
- Safariのデフォルトが変わるだけ
まとめ:SafariとGoogleの関係を理解しよう
今回は、SafariがなぜGoogleをデフォルト検索エンジンにしているのか、その裏側を詳しく解説しました。
重要なポイント:
契約の核心:
- GoogleはAppleに年間約200億ドル(約3兆円)を支払っている
- この契約は2002年から20年以上続いている
- Googleは Safari での広告収益の36%をAppleに、64%を自社で受け取る
AppleがGoogleを選ぶ理由:
- Googleの検索品質が優れている
- Googleのブランド力が圧倒的
- Googleからの収益が最も多い(Bingの2倍)
- ビジネスリスクが小さい
- 長期的な収益の安定性
Appleが独自検索エンジンを作らない理由:
- 開発コストが膨大
- Googleから年間3兆円もらえる
- プライバシー重視の姿勢と矛盾する可能性
- Googleの品質を超えるのが難しい
独占禁止法の問題:
- 2024年にGoogleは違法な独占状態と判断された
- 2025年の判決でAppleへの支払いは継続可能
- ただし排他的契約は禁止、契約は年単位に限定
ユーザーにできること:
- Safariの検索エンジンは自由に変更できる
- Google、Yahoo!、Bing、DuckDuckGo、Ecosiaから選択可能
- ただし90〜95%のユーザーはデフォルトのGoogleを使用
SafariとGoogleの関係は、ビジネス的な利益、ユーザー体験、法的な問題が複雑に絡み合った興味深いケースです。
今後、AI検索の台頭やChatGPTの普及により、この関係がどう変わっていくのか、注目していきたいですね!

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