1月7日の朝、緑の葉が入った「七草粥」を食べたことはありますか?
「せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ、これぞ七草」──この歌を、学校で習った方も多いでしょう。リズムよく覚えやすいので、今でもすらすら言える人もいるかもしれませんね。
でも、「なぜ1月7日なの?」「どうしてこの7つの草なの?」「食べるとどんな良いことがあるの?」と疑問に思ったことはありませんか。
実は春の七草は、平安時代から千年以上も続く日本の伝統行事です。単なる健康食というだけでなく、季節の移り変わりを感じ、一年の無病息災を願う、日本人の心が詰まった風習なんです。
この記事では、春の七草の種類と特徴、七草粥の由来と歴史、そして現代に受け継がれる意味について詳しくご紹介します。
春の七草とは?

基本的な説明
春の七草は、1月7日の「人日の節句(じんじつのせっく)」に食べる7種類の野草のことです。
この7種類を刻んでお粥に入れた「七草粥(ななくさがゆ)」を食べることで、一年の無病息災(病気をせず健康に過ごすこと)を願います。お正月のごちそうで疲れた胃腸を休め、冬に不足しがちな栄養を補う意味もあるんですね。
人日の節句は「五節句」の一つとされ、江戸時代に幕府が公式行事として定めてから、庶民の間にも広く定着しました。
七草の名前
春の七草は、室町時代の文献に記された和歌のリズムで覚えられてきました。
「せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ、これぞ七草(春の七草)」
この7つが春の七草。5・7・5・7・7の短歌のリズムなので、口ずさむうちに自然と覚えられます。
ただし、現代の呼び名とは少し違うものもあるので、詳しく見ていきましょう。
秋の七草との違い
よく混同されるのが「秋の七草」です。
春の七草は食べるものですが、秋の七草は観賞するもの。萩、尾花(すすき)、葛、撫子、女郎花、藤袴、桔梗の7つで、食用ではありません。
実は、もともと「七草」という言葉は秋の七草を指していました。万葉集の歌人・山上憶良が詠んだ歌が起源とされ、秋の野に咲く美しい花々を愛でる風習だったんです。目的がまったく違うんですね。
春の七草の種類と特徴
それぞれの草について、名前の由来や特徴、栄養価を詳しく見てみましょう。
芹(せり)
基本情報
- 現代名:セリ
- 英語名:Water dropwort(ウォータードロップワート)、Japanese parsley
- 科:セリ科
- 特徴:湿地や水辺に生える多年草
名前の由来
セリという名前には、「競り合って生える」という意味があります。
セリは一箇所から何本もの茎が密集して生えるため、まるで競り合っているように見えるんです。この様子から「競り勝つ」という縁起の良い意味も込められています。
古くから食用とされており、『日本書紀』にもセリの名が登場するほど、日本人に親しまれてきた野草なんですね。
特徴と効能
独特の香りと爽やかな味わいが特徴。鍋物や和え物にも使われる春を代表する野菜の一つです。
栄養面では:
- ビタミンC、ビタミンA(カロテン)が豊富
- カルシウム、鉄分、カリウムも含む
- 香り成分に食欲増進効果
- 解熱や整腸作用があるとされる
- 高血圧の予防にも効果的
生薬名は「水芹(すいきん)」と呼ばれ、神経痛やリウマチ、貧血予防に用いられてきました。
注意点
セリは有毒な「ドクゼリ(water hemlock)」と見た目が似ているため、自然採取する際は十分な注意が必要です。
薺(なずな)
基本情報
- 現代名:ナズナ(別名:ペンペングサ)
- 英語名:Shepherd’s purse(羊飼いの財布)
- 科:アブラナ科
- 特徴:道端や畑でよく見かける一年草
名前の由来
「撫でて汚れを取り除く」という意味の「撫菜(なでな)」が転じて「なずな」になったとされています。この名前から、「撫でることで穢れを払う」という縁起の良い意味も込められているんですね。
江戸時代には、冬の貴重な青菜として広く食べられていました。現在では道端の雑草と思われがちですが、昔は大切な冬の野菜だったんです。
特徴と効能
ペンペングサという愛称は、実(種子)の形が三味線のバチ(ペンペン)に似ていることから。子供の遊びでも親しまれてきました。
栄養と効能:
- ビタミンA、ビタミンC、カルシウムが豊富
- タンパク質、鉄分も含む
- 止血作用があるとされる
- 利尿作用や解毒作用も
- 高血圧予防
- 肝臓の働きを助ける
実は、江戸時代には薬草として、また虫よけとしても使われていた多機能な植物だったんです。
御形(ごぎょう)
基本情報
- 現代名:ハハコグサ(母子草)
- 英語名:Cudweed(カドウィード)
- 科:キク科
- 特徴:全体に白い毛が生えた草
名前の由来
「御形(ごぎょう)」は「仏様の体」を意味し、古くは草餅(よもぎ餅)の材料として使われていました。仏様に見立てて厄を払う意味があったんですね。
現代の呼び名「ハハコグサ」は、白い綿毛に包まれた姿が母が子を包む様子に似ていることから名付けられました。古くから春の季語として、俳句や短歌にも詠まれてきた植物です。
明治時代ごろまでは、草餅の材料として実際に使われていましたが、後にヨモギに取って代わられました。
特徴と効能
全体が白っぽい綿毛で覆われているのが特徴。春に黄色い小さな花を咲かせます。
効能として:
- のどの痛みを和らげる
- 咳止め効果
- 痰切り
- 風邪予防
- 利尿作用
- むくみの軽減
生薬名は「鼠麹草(そきくそう)」と呼ばれ、薬草として重宝されてきました。
繁縷(はこべら)
基本情報
- 現代名:ハコベ
- 英語名:Chickweed(チックウィード)
- 科:ナデシコ科
- 特徴:小さな白い花を咲かせる一年草
名前の由来
「繁る」という言葉から来ており、地面を這うように広がって繁茂する様子から名付けられました。「繁栄が広がる」という縁起の良い意味も込められています。
「はこべら」の「ら」は接尾語で、親しみを込めた呼び方。現代では単に「ハコベ」と呼ばれることが多いです。
現代の七草について
実は、市販されている七草セットに含まれる「はこべら」は、コハコベが使われることが一般的です。
ただし、コハコベは幕末から明治初頭に日本に持ち込まれた帰化植物ではないかという指摘もあり、2000年頃には「帰化植物で偽物では?」という議論がありました。一方、ミドリハコベはもともと日本に生育していた種とされ、こちらを春の七草とする文献もあるんです。
いずれにせよ、長年の風習として定着しているのが現状ですね。
特徴と効能
春から初夏にかけて、小さな白い花を咲かせます。ひよこなどの小鳥の餌としても知られていますね。
栄養価が高く:
- ビタミンA、ビタミンCが豊富
- ミネラル類も多い
- 歯槽膿漏の予防
- 産後の回復を助けるとされた
- 止血作用
生薬名は「繁縷(はんろう)」と呼ばれ、特に歯茎の薬として使われてきました。
仏の座(ほとけのざ)
基本情報
- 現代名:コオニタビラコ(小鬼田平子)
- 英語名:Nipplewort(ニップルワート)
- 科:キク科
- 特徴:黄色い花を咲かせる小さな草
【重要】注意が必要なポイント
ここで大切な注意点があります。
春の七草の「ほとけのざ」はコオニタビラコのことで、道端に咲く紫色の花の「ホトケノザ(シソ科)」とはまったく別の植物なんです。
紫の花のホトケノザ(シソ科)は食べられませんので、絶対に間違えないでください。七草セットを買わずに自分で摘む場合は、特に注意が必要です。
名前の由来
コオニタビラコの葉が地面にロゼット状(放射状)に広がる様子が、仏様の座る蓮華座に似ていることから「仏の座」と呼ばれました。「安座」という、仏様が安心して座っている姿を表しているとも言われます。
特徴と効能
地面に張り付くように葉を広げ、黄色い小さな花を咲かせます。田んぼなどの湿地を好む野草で、春先に田んぼで見つけることができます。
効能として:
- 健胃作用
- 食欲増進
- 胃腸に良い働き
- 高血圧予防の効果があるとされる
コオニタビラコという名前は、葉が平らに広がる様子から「田平子(タビラコ)」と呼ばれ、それに「小さい鬼のような」という意味の「小鬼」がついたもの。少し怖い名前に聞こえますが、実は可愛らしい小さな野草なんです。
菘(すずな)
基本情報
- 現代名:カブ(蕪)
- 英語名:Turnip(ターニップ)
- 科:アブラナ科
- 特徴:丸い根を持つ野菜
名前の由来
「すずな」は「鈴菜」とも書かれ、丸い根の形が鈴に似ていることから名付けられました。「神を呼ぶ鈴」として縁起物とされてきたんですね。
古くは「かぶら」とも呼ばれ、現代では単に「カブ」と呼ばれています。日本には弥生時代にはすでに伝わっていたとされる、歴史の古い野菜なんです。中国から伝来し、日本人の食生活に深く根付いてきました。
特徴と効能
七草の中で唯一、スーパーで一年中手に入る野菜。根だけでなく、葉も七草粥に使われます。
栄養面では:
- 根の部分:ビタミンC、カリウム、食物繊維、消化酵素ジアスターゼ(アミラーゼ)
- 葉の部分:ビタミンC、β-カロテン、カルシウム、葉酸、カリウム
効能として:
- 消化促進
- 胃もたれ解消
- 整腸作用
- 貧血予防(葉酸)
- 高血圧予防(カリウム)
根と葉のどちらにも栄養が豊富なため、七草粥では両方を使うのが一般的です。
蘿蔔(すずしろ)
基本情報
- 現代名:ダイコン(大根)
- 英語名:Daikon / Japanese radish
- 科:アブラナ科
- 特徴:白く長い根を持つ野菜
名前の由来
「すずしろ」は「清白」とも書き、汚れのない白さを意味します。「汚れなき清白」という縁起の良い意味が込められており、大根の白い根の美しさを表現した名前なんですね。
「蘿蔔」という漢字は中国から伝わった表記で、もともと大根を指す言葉でした。
特徴と効能
七草の中でもっとも身近な野菜の一つ。カブと同じく、根だけでなく葉も使います。
豊富な栄養:
- 根の部分:ビタミンC、消化酵素(アミラーゼ、プロテアーゼ)、辛味成分イソチオシアネート
- 葉の部分:ビタミンC、β-カロテン、カルシウム、葉酸
効能として:
- 消化促進
- 胃もたれ解消
- 殺菌作用
- 二日酔いにも効果的
- 抗酸化作用
大根に含まれる消化酵素は熱に弱いため、本来は生で食べるのが最も効果的。ただし七草粥では、さっと火を通す程度にすることで、ある程度の酵素を残すことができます。
お正月のごちそうで疲れた胃腸を休めるには、まさにぴったりの食材なんです。
七草粥の由来と歴史

中国からの伝来
七草粥の起源は、古代中国の風習にあります。
中国の「人日」の風習
六朝時代(3~6世紀)の中国で書かれた『荊楚歳時記(けいそさいじき)』という書物には、興味深い風習が記録されています。
唐の時代、正月の1日から7日まで、それぞれの日に動物や人を当てはめる占いがありました。
- 1月1日:鶏の日
- 1月2日:犬(狗)の日
- 1月3日:豚(猪)の日
- 1月4日:羊の日
- 1月5日:牛の日
- 1月6日:馬の日
- 1月7日:人の日(人日)
- 1月8日:穀物の日
人日には「七種菜羹(ななしゅさいのかん)」という7種類の若菜を入れた汁物を食べて、無病息災や立身出世を願う習慣がありました。これが日本に伝わったんです。
この風習は台湾では清朝中期まで、中国南部の広東省の一部では現在でも続いているそうです。
日本での発展
日本に七草の風習が伝わったのは、平安時代の初期(奈良時代末期とも)とされています。
平安時代の宮中行事
当初は宮中行事として行われ、貴族たちが若菜を摘んで祝う優雅な行事でした。
『枕草子』には「正月六日、七日の若菜を、人の持て来しを…」という記述があり、1月6日に七草を用意し、7日に食べる習慣があったことがわかります。
平安時代の光孝天皇(830~887年)は、若菜摘みの風習を和歌に詠んでいます。
「君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪は降りつつ」
百人一首にも収録されているこの歌は、「あなたのために春の野原に出て若菜を摘んでいると、春だというのに着物の袖に雪が降ってきた」という意味。若菜摘みが古くから親しまれていたことがわかりますね。
日本の元々の風習
実は、中国の風習が伝わる前から、日本には「若菜摘み」という独自の風習がありました。春の野原で新しく芽吹いた若菜を摘んで食べることで、新しい生命力を体に取り入れるという考え方です。
また、1月15日の小正月には、米・粟・稗・黍・ミノ・胡麻・小豆の7種類の穀物を入れた「七種粥(ななくさがゆ)」を食べ、五穀豊穣を願う朝廷行事もありました。
現在の七草粥の誕生
平安時代になると、中国の「七種菜羹」の風習、日本の「若菜摘み」、そして「七種粥(穀物)」の三つが結びつき、現代の「七草粥」の原型が生まれました。
現在の七草が定着した時期
平安時代には、まだ7種類の草の内容は固定されていませんでした。地域や時代によって、様々な若菜が使われていたようです。
鎌倉時代から室町時代にかけて、徐々に現在知られる7種類の草が定まっていきました。
室町時代の書物『河海抄(かかいしょう)』(1362年頃)には、「芹、薺、御形、はこべら、仏座、菘、蘿蔔、此即七種也」と記されており、すでに現在と同じ七草が登場しています。
この頃から、庶民の間にも七草粥を食べる習慣が広がっていったんですね。
江戸時代の定着
江戸幕府が五節句の一つとして人日の節句を制定すると、1月7日に七草粥を食べることが公式行事となりました。
五節句とは、一年の節目となる重要な日で、以下の5つがあります:
- 1月7日:人日の節句(七草の節句)
- 3月3日:上巳の節句(桃の節句、ひな祭り)
- 5月5日:端午の節句(菖蒲の節句)
- 7月7日:七夕の節句
- 9月9日:重陽の節句(菊の節句)
江戸時代には、征夷大将軍をはじめ、すべての武士が七草粥を食べる公式行事が行われました。
この時代には、七草を売り歩く商人も現れ、庶民の間で完全に定着したとされています。江戸の浮世絵にも、若菜摘みの様子が描かれており、人々の身近な風習だったことがうかがえます。
なぜ1月7日なのか
1月7日が選ばれた理由には、いくつかの要素が重なっています。
中国の人日思想
前述の通り、中国では1月7日を「人の日」として特別視していました。人間の運命や健康を占い、長寿や無病息災を願う日だったんです。
お正月明けの意味
日本では、松の内(1月7日まで)が明けるタイミング。お正月のごちそうで疲れた胃腸を休め、日常に戻る区切りとして最適だったんです。
正月料理であるおせちは保存食として塩分や糖分が多く、また餅なども胃に負担がかかります。七日目にあっさりとした粥を食べることで、体を労わる知恵だったんですね。
春の芽吹きの力
旧暦の1月7日は、現在の2月初旬頃にあたります。
まだ寒い時期ですが、地面には新しい命が芽吹き始めています。この若い生命力をいただくことで、一年の活力を得るという考えがありました。
ただし、現在の新暦1月7日は真冬で野草はほとんど生えていないため、実際に自然採取する場合は2月中旬以降が適しています。江戸時代の人々は、寒い時期に七草を集めるのに大変苦労したと考えられています。
冬に不足する栄養の補給
冬は新鮮な野菜が手に入りにくい季節。春の七草は寒さに強く、冬でも育つ野草です。
緑黄色野菜が不足しがちな季節に、ビタミンやミネラルを補給できる貴重な食材だったんですね。七草の緑が食卓に彩りを添え、新年の気分を盛り上げる役割もありました。
七草粥の作り方と伝統的な習わし
基本的な作り方
七草粥は、シンプルながら丁寧に作られてきました。
材料
- 米:1合(炊いたご飯を使う場合もある)
- 水:7~8カップ
- 春の七草:1パック(セット販売されている)
- 塩:少々
作り方の手順
- 米を研いで水に浸す(30分~1時間)
- 鍋に米と水を入れて強火にかける
- 沸騰したら弱火にして、30~40分コトコト煮る
- 七草は細かく刻む(後述の「七草囃子」の習わしもある)
- 粥が柔らかくなったら、刻んだ七草を加える
- さっと火を通したら、塩で味を調えて完成
現代風アレンジ
伝統的には塩味だけですが、現代では:
- 鶏ガラスープで炊く
- 餅を入れる
- 鮭フレークをトッピング
- 梅干しを添える
など、食べやすくアレンジする家庭も増えています。
七草囃子(ななくさばやし)
七草を刻む際、昔は特別な唱え言葉を言いながら行う風習がありました。
七草囃子の文句
地域によって違いますが、代表的なものは:
「七草なずな 唐土(とうど)の鳥が 日本の土地に 渡らぬ先に ストトントン(合わせてバタクサバタクサ)」
この言葉を唱えながら、まな板の上で七草を包丁やすりこぎで叩いて刻みます。「ストトントン」や「バタクサバタクサ」の部分で実際に刻むんですね。
唱え言葉の意味
「唐土の鳥」とは、中国から疫病や災いを運んでくるとされた想像上の鳥。その鳥が日本に来る前に、七草の力で邪気を払おうという意味が込められています。
この囃子は、もともと害鳥を追い払う歌が起源だと言われています。七草粥の行事と、豊作を祈る風習が一緒になって生まれたものなんです。
地域による違い
七草囃子の歌詞は地域ごとに異なります。例えば:
- 関東地方:「七草なずな、唐土の鳥が、日本の国に、渡らぬ先に、ストトントン」
- 関西地方:「七草なずな、唐土の鳥と、日本の鳥と、渡らぬ先に、合わせてバタクサ」
- 九州地方:「七草なずな、唐土の鳥が、日本の土地に、渡らぬうちに、ストトントン」
歌詞は違っても、「唐土」「鳥」「渡らぬ」という共通の言葉が含まれているのが特徴です。
いつ刻むのか
伝統的には1月6日の夜に、家族が集まって七草を刻みました。翌朝7日の朝食として食べるためです。
この儀式的な準備も、七草粥の大切な伝統の一部だったんですね。現代では6日の夜ではなく、7日の朝に刻むことが多くなっていますが、この囃子を歌いながら刻む習慣は、今も一部の地域や家庭で続いています。
現代における春の七草
スーパーでの販売
現代では、1月上旬になると多くのスーパーで「七草セット」が販売されます。
市販のセットの特徴
- 7種類すべてがパックに入っている
- 価格は300~500円程度
- すでに洗浄されている
- 説明書やレシピ付きのものも多い
- フリーズドライ製品もある
これなら、野草を摘みに行く必要もなく、気軽に伝統行事を楽しめますね。
最近では、フリーズドライ(真空凍結乾燥)された七草セットも販売されています。インターネットで購入でき、指定日に自宅に届けてもらえるので便利です。
海外でも買える?
日本国外でも、日系スーパーマーケットで七草セットを扱っている店舗があります。アメリカやヨーロッパの大都市圏では、1月上旬に限定販売されることも。
海外在住の日本人にとっては、懐かしい日本の風習を感じられる貴重な機会になっているようです。
地域による違い
七草粥は地域により違いがあり、入れる具材や名称が異なります。
寒い地方の工夫
雪深い地方では、1月7日に春の七草を採取することは困難です。そのため、独自の工夫が生まれました。
青森県・津軽地方
- 小正月(1月15日)に「けの汁」を食べる
- 大根、にんじん、わらび、ぜんまい、凍み豆腐など保存できる食材を使用
- 七草の代わりに、冬でも手に入る野菜で健康を願う
山形県
- 「納豆汁」を食べる習慣
- 納豆、いもがら、豆腐、油揚げなどタンパク質豊富な具材
- 納豆のとろみで冷めにくく、体を温める
その他の地域
- 春の七草が採れない地域では、手に入る野草や野菜を七種類使って七草粥を作る
- 地域によっては、魚を入れた汁物やおしるこを食べるところも
このように、七草粥は地域の気候や食材に合わせて変化してきたんですね。
学校や保育園での行事
七草粥作りは、教育の場でも大切にされています。
教育的な意義
- 日本の伝統文化を学ぶ
- 季節の移り変わりを感じる
- 食育の一環として
- 地域の伝統を継承する
- 野草の名前や特徴を覚える
多くの学校や保育園で、1月7日前後に七草について学び、実際に粥を作って食べる活動が行われています。
子供たちは七草の歌を覚え、実際に七草を見て触れることで、日本の伝統行事に親しむことができます。先生たちが七草を持参したり、地域の方が七草を提供してくださったりと、地域ぐるみで伝統を守る取り組みも見られます。
健康食としての再評価
近年、七草粥の栄養価が科学的に見直されています。
現代人にも嬉しい効果
- 暴飲暴食後の胃腸のリセット
- ビタミン・ミネラルの補給
- デトックス効果
- 低カロリーで栄養豊富
- 消化酵素による消化促進
- 食物繊維で腸内環境改善
お正月のごちそうで疲れた体に優しい、理にかなった食事なんです。
現代風アレンジ
伝統的な塩味だけの七草粥も良いですが、現代では様々なアレンジも楽しまれています:
- 鶏ガラスープで炊く
- 餅を入れる
- 鮭フレークをトッピング
- 梅干しを添える
- 卵を落とす
- 味噌仕立てにする
健康志向の高まりとともに、七草粥はデトックス食としても注目されています。正月太りを解消したい人にとっても、理想的なメニューと言えるでしょう。
春の七草 完全一覧表

| 和歌での名 | 現代名 | 英語名 | 科 | 主な特徴 | 主な効能 | 生薬名 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| せり | セリ | Water dropwort / Japanese parsley | セリ科 | 水辺に群生する | 食欲増進、解熱、整腸、高血圧予防 | 水芹(すいきん) |
| なずな | ナズナ(ペンペングサ) | Shepherd’s purse | アブラナ科 | ハート型の実 | 止血、利尿、解毒、高血圧予防 | ― |
| ごぎょう | ハハコグサ(母子草) | Cudweed | キク科 | 白い綿毛、黄色い花 | 咳止め、痰切り、のどの痛み緩和、風邪予防 | 鼠麹草(そきくそう) |
| はこべら | ハコベ | Chickweed | ナデシコ科 | 小さな白い花 | 歯槽膿漏予防、産後回復、止血 | 繁縷(はんろう) |
| ほとけのざ | コオニタビラコ | Nipplewort | キク科 | 地面に広がる葉、黄色い花 | 健胃、食欲増進、高血圧予防 | ― |
| すずな | カブ(蕪) | Turnip | アブラナ科 | 丸い根、食用野菜 | 消化促進、胃もたれ解消、貧血予防 | ― |
| すずしろ | ダイコン(大根) | Daikon / Japanese radish | アブラナ科 | 白く長い根、食用野菜 | 消化促進、殺菌作用、二日酔い解消 | ― |
重要な注意
- 「ほとけのざ」はキク科のコオニタビラコであり、シソ科のホトケノザ(紫の花)とは別物です
- 「せり」は有毒なドクゼリ(water hemlock)と似ているため、自然採取には注意が必要です
まとめ
春の七草は、千年以上も前から日本人に親しまれてきた伝統行事です。
重要なポイント
- 時期:1月7日の人日の節句に七草粥を食べる風習
- 七草:芹、薺、御形、繁縷、仏の座、菘、蘿蔔の7種類
- 起源:六朝時代の中国の『荊楚歳時記』に記録された風習が伝来
- 日本での発展:平安時代に中国の風習と日本の若菜摘みが融合
- 定着:室町時代に現在の7種類が確立、江戸時代に幕府が公式行事として制定
- 意味:
- 無病息災を願う
- お正月のごちそうで疲れた胃腸を休める
- 冬に不足しがちな栄養を補給する
- 春の若い生命力をいただく
- 栄養:それぞれの草にビタミン、ミネラル、消化酵素などの栄養価と薬効がある
- 現代:スーパーでセット販売され、家庭や学校で受け継がれている
特に注意すべきこと
「ほとけのざ」はキク科のコオニタビラコであり、道端に咲く紫の花のホトケノザ(シソ科)とは別物です。間違えると大変ですので、自然採取する際は十分注意してください。
日本の心が詰まった風習
七草粥は単なる健康食ではありません。季節の移り変わりを感じ、自然の恵みに感謝し、家族の健康を願う、日本人の心が詰まった文化なんです。
古代中国から伝わった風習が、日本の風土や文化と融合し、独自の形で千年以上も受け継がれてきました。貴族の優雅な行事から始まり、武士の公式行事となり、やがて庶民の間にも広がって、現代まで続いているんですね。
江戸時代の人々が寒い冬に七草を集めるために苦労したように、先人たちはこの風習を大切に守ってきました。それは単なる形式ではなく、家族の健康を願い、季節を感じ、自然と調和して生きる知恵だったからです。
現代に生きる伝統
現代の忙しい生活の中でも、年に一度、1月7日の朝に七草粥を食べることで、先人たちの知恵と、四季のある日本の美しさを改めて感じることができるでしょう。
スーパーで手軽に七草セットが買える時代になりましたが、それによってこの伝統がより多くの人々に親しまれるようになったとも言えます。
子供たちが学校で七草の歌を覚え、家族で七草粥を囲む。そんな光景は、千年前の貴族たちも、江戸時代の庶民も、同じように楽しんでいたことでしょう。
今年の1月7日は、ぜひ七草粥を食べて、一年の健康を願ってみてはいかがでしょうか。緑の若菜を口にしながら、日本の長い歴史と文化に思いを馳せる──それもまた、春の七草が持つ大切な意味なのです。


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