最近の車を買うとき、「Android Automotive搭載」という言葉を見かけたことはありませんか?
「Android Auto」なら知ってるけど、「Android Automotive」って何が違うの?と思った方も多いはずです。
実はこの2つ、名前は似ていますが全く別物なんです。今回は、車の世界に革命を起こしつつあるAndroid Automotiveについて、わかりやすく解説していきますね。
Android Automotiveの基本:車に組み込まれたAndroid OS
Android Automotiveとは、車のインフォテインメントシステム(カーナビやオーディオなど)として車に直接組み込まれるAndroid OSのことです。
正式には「Android Automotive OS」(AAOS)と呼ばれています。
スマートフォンやタブレットで使われているAndroidと同じコードベースで作られていて、車専用の機能が追加されたバージョンなんですよ。
スマホのAndroidと同じ?
はい、基本的には同じです!
Android Automotiveは、Androidの「フォーク」(派生版)でも「別開発」でもありません。スマートフォンに搭載されているAndroidと同じリポジトリで管理されている、まさに「Androidそのもの」なんです。
ただし、車に特化した以下のような機能が追加されています:
- エアコンの温度調整
- ウィンドウの開閉
- シートヒーターの操作
- 車両情報の表示
- EVの場合は充電状態の管理
つまり、車のハードウェアと深く連携できるように拡張されたAndroidというわけですね。
Android AutoとAndroid Automotiveの違い
ここが一番混乱しやすいポイントです。
Googleが似たような名前をつけてしまったせいで、多くの人が混同しているんですよね。
Android Auto:スマホの画面を車に映す
Android Autoは、スマートフォンと車のディスプレイを接続して、スマホのアプリを車の画面に表示する仕組みです。
イメージとしては「スマホの画面を車のモニターに映している」感じですね。
特徴:
- スマホが必要(Android 9以降)
- USBケーブルまたはワイヤレスで接続
- 処理はスマホ側で行われる
- スマホのバッテリーを消費する
- 500以上の車種で対応
- Apple CarPlayと併用可能
Android Automotive:車自体がAndroid
一方、Android Automotiveは車に最初から組み込まれているOSです。
スマホは必要ありません。車そのものがAndroidデバイスとして動作するんです。
特徴:
- スマホ不要で動作
- 車のハードウェアに直接インストール
- 車の機能(エアコンなど)を直接操作可能
- Google Playストアからアプリをダウンロード可能(一部)
- OTA(Over The Air)でアップデート可能
わかりやすい比較
| Android Auto | Android Automotive | |
|---|---|---|
| 動力源 | スマホ | 車本体 |
| スマホの必要性 | 必須 | 不要 |
| 車の機能操作 | 限定的 | 深く連携 |
| アプリ数 | 多い | 限定的 |
| 対応車種 | 500以上 | 約15ブランド |
簡単に言うと:
- Android Auto = スマホのミラーリング
- Android Automotive = 車自体がAndroidデバイス
という違いなんですね。
Google Automotive Services(GAS)とは?
Android Automotiveには、もう1つ重要な概念があります。
それがGoogle Automotive Services(GAS)です。
GASの役割
GASは、Googleのアプリとサービスをまとめたパッケージのことです。
スマートフォンで言うところの「Google Mobile Services(GMS)」の車版ですね。
GASに含まれる主なサービス:
- Google Maps(地図・ナビゲーション)
- Google Assistant(音声アシスタント)
- Google Playストア
- YouTube Music
- その他Googleアプリ
GASあり/なしの違い
重要なのは、Android Automotiveを搭載していても、必ずしもGASが使えるわけではないということです。
Android Automotive自体はオープンソースなので、自動車メーカーは無料で使えます。しかし、GASを使うにはGoogleとライセンス契約を結ぶ必要があるんです。
「Google built-in」という表示は、GASに対応した車であることを示すブランドマークとして使われています。
つまり:
- GASあり = Google built-in = Google Playやマップが使える
- GASなし = Android Automotiveのみ = メーカー独自のアプリのみ
GASなしの例としては、Lucid AirやUconnect 5(クライスラー・ダッジ)などがあります。これらの車はAndroid Automotiveを使っていますが、Google Playストアにはアクセスできません。
Android Automotiveのアーキテクチャ
もう少し技術的な話をしましょう。
Android Automotiveは、車専用の機能を実現するために特別な仕組みを持っています。
VHAL(Vehicle Hardware Abstraction Layer)
車のハードウェアとソフトウェアをつなぐ重要な層がVHALです。
VHALは、CANバスなど車内ネットワークと通信して、以下のような情報をやり取りします:
- 速度情報
- エンジン回転数
- 燃料残量(EVの場合はバッテリー残量)
- エアコンの設定
- ドアの開閉状態
これによって、Androidアプリから車の状態を読み取ったり、操作したりできるようになるんですね。
Car API
開発者向けにはCar APIという専用のAPIが用意されています。
これを使うことで、アプリ開発者は車特有の機能を活用したアプリを作れるわけです。
例えば:
- 運転中は操作を制限する
- 速度に応じて表示を変える
- 駐車中のみ動画を再生できるようにする
このような車ならではの制御が可能になります。
搭載車種とメーカー
Android Automotiveを搭載した車は、年々増えています。
主な採用メーカー(2024-2025年時点)
Googleと提携している主なメーカー:
- Volvo(ボルボ):Polestar 2が2020年に初搭載
- Polestar(ポールスター):ボルボのEVブランド
- Honda(ホンダ):2023年のAccord Touringから搭載
- GM(ゼネラルモーターズ):Cadillac、Chevrolet、GMC
- Ford(フォード):2023年から段階的に導入
- Renault(ルノー):日産・三菱アライアンスも予定
- Audi(アウディ)
- Lincoln(リンカーン)
- Maserati(マセラティ)
- Rivian(リビアン):EV専業メーカー
日本での状況
日本市場では、ホンダが日系メーカーとして初めてAndroid Automotiveを採用しました。
2023年発表のAccord Touringに「Google built-in」として搭載されています。
また、Volvoの車両は日本でも購入可能で、EX30などの最新モデルにはAndroid Automotiveが搭載されているんですよ。
一方、トヨタは独自OS「Arene(アリーン)」を開発中で、Android Automotiveとは異なる道を歩んでいます。
Android Automotiveのメリット
なぜ自動車メーカーはAndroid Automotiveを採用するのでしょうか?
メーカー側のメリット
開発コストの削減
一から車載OSを開発する必要がありません。基本機能はAndroidが提供してくれるので、メーカーは独自の機能やデザインに集中できます。
Androidエコシステムの活用
世界中の数十万人のAndroid開発者が作ったアプリやツールを活用できます。
定期的なアップデート
スマートフォンと同じように、セキュリティパッチや新機能をOTA(無線)で配信できます。
ユーザー側のメリット
スマホ不要
Android Autoと違って、スマホを接続する必要がありません。車だけで完結するので、スマホのバッテリーを気にする必要もなくなります。
統合された操作性
ナビ、音楽、エアコン、すべてが同じインターフェースで操作できます。メニューを行ったり来たりする必要がありません。
音声アシスタント
「OK Google、エアコンを22度に設定して」といった音声操作が可能です。
継続的な進化
購入後もOTAアップデートで新機能が追加されたり、性能が向上したりします。
Android Automotiveのデメリットと課題
もちろん、完璧なシステムというわけではありません。
アプリの数が少ない
2022年末時点で、Android Automotive対応アプリは約38個しかありませんでした。
Android Autoと比べると、圧倒的に少ないんです。
理由は2つ:
- Googleの承認が必要:安全性などの審査があり、承認プロセスに時間がかかる
- メーカーの制限:自動車メーカーが独自に使用可能アプリを制限している場合がある
ただし、搭載車種が増えるにつれて、対応アプリも徐々に増えていくと予想されています。
プライバシーの懸念
車がインターネットに常時接続され、Googleのサービスと統合されることで、データ収集に関する懸念があります。
ただし、Googleは「ユーザーがプライバシー設定を管理できる」としており、スマートフォンと同様の仕組みが用意されているとのことです。
メーカーの独立性
一部の自動車メーカーは、GoogleのエコシステムにあまりにDepending(依存)することを警戒しています。
これが、トヨタなどが独自OSを開発する理由の1つでもあります。
OTAアップデート:ソフトウェアで進化する車
Android Automotiveの大きな特徴の1つがOTA(Over The Air)アップデートです。
OTAアップデートとは?
スマートフォンのように、インターネット経由でソフトウェアを更新する仕組みです。
これによって:
- セキュリティパッチの適用
- 新機能の追加
- バグ修正
- UIの改善
こうしたことが、ディーラーに行かなくてもできるようになります。
「売り切り」から「サービス」へ
従来の自動車は「売ったら終わり」のビジネスモデルでした。
しかし、OTAアップデートにより、車を販売した後も継続的にサービスを提供し、収益を上げる「サブスクリプションモデル」が可能になります。
これは自動車業界にとって大きなビジネスモデルの転換なんです。
実際の使い心地はどう?
実際にAndroid Automotive搭載車を使っているユーザーの声をまとめてみました。
良い点
スマホなしで完結
「車に乗り込めば、スマホをポケットから出さなくても全部使える」という声が多いです。
Googleマップの統合
特にEV車では、充電スポットを含めたルート計算が優秀だと評価されています。
音声操作の快適さ
「OK Google、家のエアコンをつけて」といった、車外のデバイスも操作できる点が便利だという意見もあります。
気になる点
アプリの少なさ
「使いたいアプリが対応していない」という不満はやはり多いですね。
メーカーによる制限
面白いことに、一部のメーカーはAndroid Automotiveを搭載しながら、Android Autoアプリをブロックしているケースがあります。
これにより、むしろiPhoneユーザーの方が(Apple CarPlayを使えるので)快適、という皮肉な状況も発生しているようです。
今後の展開:SDV(Software-Defined Vehicle)への道
Android Automotiveは、単なるインフォテインメントシステムを超えて、SDV(Software-Defined Vehicle:ソフトウェア定義車両)の基盤としても注目されています。
SDVとは?
車の機能や性能を、ハードウェアではなくソフトウェアで定義・制御する考え方です。
スマートフォンのように、ソフトウェアのアップデートで車の性能や機能が向上する未来が見えてきています。
競合との比較
Android Automotiveの主な競合は:
- QNX/BlackBerry:すでに1億5000万台以上の車に搭載
- Tesla独自OS:テスラは完全に独自のシステム
- 各メーカー独自OS:トヨタのArene、フォルクスワーゲンのVW.OSなど
ただし、ABI Researchによれば、「Android Automotiveはオープンソースで柔軟性が高く、大衆市場向け車両に理想的」として、今後10年でQNXなどを追い抜くと予測されています。
まとめ:車のスマホ化を実現するAndroid Automotive
ここまで、Android Automotiveについて詳しく見てきました。
重要なポイントをおさらいしましょう:
- Android Automotiveは車に組み込まれるAndroid OS
- Android Auto(スマホのミラーリング)とは全く別物
- Google Automotive Services(GAS)があればGoogle Playなども使える
- ボルボ、ホンダ、GMなど多くのメーカーが採用
- スマホ不要で、車の機能と深く連携できる
- アプリ数はまだ少ないが、今後増えていく見込み
- OTAアップデートで継続的に進化する
Android Automotiveは、車を「移動手段」から「スマートデバイス」へと変える大きな一歩です。
スマートフォンがガラケーを置き換えたように、車のインフォテインメントシステムも大きな転換期を迎えているんですね。
これから車を買う予定がある方は、「Android Automotive搭載」や「Google built-in」という表示に注目してみてください。
車の中でもスマホのような快適な体験ができる時代が、すでに始まっているんですよ。


コメント