タウレッドの男とは?存在しない国から来た謎の旅行者の真相

神話・歴史・伝承

「1954年、羽田空港に、この世に存在しない国のパスポートを持った男が現れた」

そんな話を聞いたことはありませんか?

インターネット上で「パラレルワールドの証拠」として語り継がれてきた「タウレッドの男」の伝説。ホテルに宿泊させられた翌朝、その男は忽然と姿を消したという——。

しかし、この話には驚くべき真相が隠されていました。

この記事では、世界中で語り継がれる都市伝説「タウレッドの男」について、そのストーリーから元ネタとなった実際の事件、そして伝説がどのように生まれたのかまで、徹底的に解説していきます。


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タウレッドの男とは?都市伝説の概要

「タウレッドの男」は、英語圏では「The Man from Taured」として知られる有名な都市伝説です。日本では「トレドの男」「タウレッドから来た男」などとも呼ばれています。

この話は、パラレルワールド(並行世界)や次元移動の「証拠」として、オカルト愛好家の間で長年語り継がれてきました。

基本的なストーリー

都市伝説の内容は、おおむね以下のようなものです。

1954年7月のある暑い日、東京の羽田空港に一人のヨーロッパ人風の男性が到着しました。身なりのよいビジネスマン風の彼は、入国審査でパスポートを提示します。

しかし、審査官がパスポートを確認すると、そこには見たこともない国名が記載されていました。その国の名は「タウレッド(Taured)」。

なぜ話題になるのか

この都市伝説が人々を惹きつける理由は、いくつかあります。

まず、「存在しない国」という設定が想像力をかき立てます。パスポートは本物そっくりで、他国への入出国スタンプまで押されていたというのです。

次に、「アンドラ公国との関係」が謎を深めます。男が地図上で示した「タウレッド」の場所は、フランスとスペインの間にある小国アンドラと完全に一致していました。

そして何より、「密室からの消失」という結末がミステリアスです。監視付きのホテルに宿泊させられた男は、翌朝には跡形もなく消えていた——そう語られているのです。


都市伝説で語られるストーリーの詳細

現在インターネット上で広まっている「タウレッドの男」の物語を、詳しく見ていきましょう。

入国審査での混乱

物語は、羽田空港の入国審査から始まります。

フランス語を母国語とするその男性は、日本語を含む複数の言語を流暢に話せました。彼は自らをビジネスマンと名乗り、日本の企業との商談のために来日したと説明します。

ところが、彼のパスポートに記載された国名「タウレッド」は、審査官の誰も知らない国でした。困惑した審査官たちが世界地図を持ってきて「あなたの国はどこですか?」と尋ねると、男は迷わずフランスとスペインの国境付近を指差しました。

「ここです。タウレッドは1000年以上の歴史を持つ国ですよ」

しかし、その場所にあるのはアンドラ公国。男は「アンドラ」という国名を聞いたことがないと主張し、激しく困惑したといいます。

不可解な証拠の数々

話をさらに不思議にしているのは、男が所持していた品々です。

彼のパスポートには、日本を含む各国への入出国スタンプが押されていました。

つまり、以前にも同じパスポートで問題なく渡航していたことになります。
しかも日本への訪問は今回が3回目だと男は主張していたのです。

さらに、男は以下のものを所持していたとされます。

  • 複数のヨーロッパ諸国の通貨
  • 「タウレッド」の銀行が発行したとされる小切手帳
  • 「タウレッド」で発行された運転免許証
  • 商談相手の会社名と連絡先

しかし、当局が確認したところ、彼が働いているという会社は「そんな人物は知らない」と回答。
予約していたはずのホテルにも記録がなく、小切手帳に記載された銀行も存在しませんでした。

謎の消失

困り果てた当局は、男を空港近くのホテルに宿泊させ、部屋の外に警備員を2人配置しました。

翌朝、調査を再開しようとした当局者たちがホテルの部屋を訪れると、驚くべき光景が待っていました。

男は忽然と姿を消していたのです。

部屋は高層階にあり、バルコニーもない密室状態。
しかも、空港で押収したはずの男のパスポートや書類一式も、保管場所から消えていました。

男はまるで最初から存在しなかったかのように、すべての痕跡とともに消え去ったのです——。


この話は本当なのか?公式記録と矛盾

ここまで読んで「本当にそんなことがあったの?」と疑問に思った方は、正しい直感を持っています。

公式記録の不在

実は、この都市伝説には重大な問題があります。

1954年に日本の空港で「タウレッド」という国のパスポートを持った男が現れたという公式記録は、一切存在しません。

日本政府の記録にも、当時の新聞記事にも、この事件に関する記述は見つかっていないのです。

物語の詳細を最初に記したとされる文献を遡っても、最も古いものは1970年代のオカルト本であり、そこでも「1954年の事件」として言及されているだけで、信頼できる出典は示されていません。

物語の発展と変化

興味深いのは、この都市伝説が時代とともに「進化」してきたことです。

1970年代の文献では、男は「精神病院に収容された」と記されており、「消失」の要素はありませんでした。

「ホテルから消えた」というドラマチックな結末は、2010年代にインターネット上で付け加えられたと考えられています。

つまり、現在語られている「タウレッドの男」の物語は、何十年もの間に語り継がれる中で、どんどん脚色されていった可能性が高いのです。


元ネタの正体:ジョン・アレン・K・ジーグラス事件

では、この都市伝説はまったくの創作なのでしょうか?

実は、元ネタとなった「実際の事件」が近年の調査で明らかになっています。それがジョン・アレン・カッチャー・ジーグラス事件です。

ジーグラスとは何者か

1959年10月、ジョン・アレン・カッチャー・ジーグラス(John Allen Kuchar Zegrus)と名乗る白人男性が、韓国人の妻を伴って台湾経由で日本に入国しました。

彼が所持していたパスポートは、一般的なものとは明らかに異なる奇妙な代物でした。週刊誌ほどもある巨大なサイズで、見たこともない文字で書かれていたのです。

ジーグラスはこのパスポートについて、「ネグシ・ハベシ国」という国が発行したものだと主張しました。

「ネグシ・ハベシ国」という架空の国

ジーグラスは自らを「ネグシ・ハベシ国の移動大使」であり、「アメリカの諜報機関員」であると主張しました。

警察が世界地図を出して「ネグシ・ハベシ国はどこにあるのか」と尋ねると、彼はエチオピアの南あたりを指差したといいます。しかし、そのような国は当然ながら存在しません。

パスポートに記載された謎の文字について、ジーグラスは「アラビアのトワレック(Tuareg)地方の方言だ」と説明しました。トワレック(トゥアレグ族)とは、実際にサハラ砂漠周辺に住む遊牧民族のことです。

この「Tuareg」という綴りが、伝説の中で「Tuared」、そして最終的に「Taured」へと変化していったと考えられています。

詐欺罪での逮捕と裁判

ジーグラスは入国後しばらく日本に滞在していましたが、1960年1月に詐欺罪の容疑で逮捕されます。

逮捕の理由は、偽造小切手を使って複数の銀行から合計約35万円を詐取した容疑でした。これは当時の金額としてはかなりの大金です。

逮捕後、警察の調べに対してジーグラスは驚くべき経歴を語りました。

  • アメリカで生まれ、チェコスロバキア、ドイツを経てイギリスに渡った
  • 第二次世界大戦ではイギリス空軍のパイロットとして従軍
  • その後、中南米で暮らし、韓国で米軍の諜報員になった
  • アラブ連合の特殊任務につき、日本には「日本人義勇兵募集」という極秘任務で来た

しかし、関係各国に照会した結果、これらの経歴はすべて事実無根であることが判明。パスポートも彼自身が偽造したものと証明されました。

法廷での自殺未遂

1960年8月10日、東京地方裁判所でジーグラスに懲役1年の判決が言い渡されました。

しかし、判決を聞いたジーグラスは突然立ち上がり、「自殺する!」と叫んで、隠し持っていたガラス片で両手首を切りつけたのです。

この衝撃的な事件は、当時の読売新聞、朝日新聞、毎日新聞など主要紙で報道されました。「ミステリー・マン」と呼ばれたジーグラスの奇行は、メディアの注目を集めたのです。

その後の行方

ジーグラスは病院で治療を受けた後、刑期を務め、最終的に国外追放処分となりました。

しかし、彼の本当の国籍が不明だったため、どこに送還すべきか当局は困惑しました。結局、日本に入国した際の最終寄港地だった香港へ送還されることに。妻は韓国に送還されました。

この時点で、ジーグラスの足取りは途絶えています。彼が本当は何者だったのか、その正体は今も謎のままです。


都市伝説はどのように生まれたのか

ジーグラス事件が「タウレッドの男」という都市伝説に変化していった経緯は、以下のように推測されています。

伝説の発展段階

1960年代:事件の報道
ジーグラス事件は日本の新聞で報道され、「国籍不明の謎の男」「法廷で自殺未遂」という要素が人々の記憶に残りました。

1974年:フランスのオカルト作家による紹介
フランスのオカルト作家ジャック・ベルジエが、著書の中でこの事件を取り上げました。このとき、事件の年が「1954年」に変更され、国名が「Tuared」と記載されました。また、「男はホテルに収容された」という要素が追加されましたが、まだ「消失」の話はありませんでした。

1981年:『The Directory of Possibilities』への掲載
コリン・ウィルソンとジョン・グラントの著書『The Directory of Possibilities』に、「1954年、日本でパスポート検査の際に『タウレッド(Taured)』という国の書類を持った男が見つかった」という一文が掲載されました。このとき、綴りが「Tuared」から「Taured」に変化しています。

2013年頃:インターネットでの拡散
オカルト系のブログが「タウレッドの男」の物語を詳細に紹介。このとき、「ホテルから消失した」「書類も一緒に消えた」というドラマチックな結末が付け加えられました。この版がSNSやYouTubeで急速に拡散し、現在広く知られる形になったのです。

なぜ「Taured」は「アンドラ」と結びついたのか

都市伝説では、男が指差した場所がアンドラだったとされています。しかし、実際のジーグラス事件では、彼が指差したのはエチオピア南部でした。

この変化がいつ、どのように起こったのかは明確ではありません。

一つの仮説として、「Taured」という響きが中世ヨーロッパの「トレド王国」(現在のスペイン中部にあった国)を連想させ、それがスペイン・フランス国境にあるアンドラと結びついた可能性が指摘されています。

また、アンドラは1278年に成立した小国で、「1000年近い歴史を持つヨーロッパの小国」という設定が物語にフィットしたことも、この変化に影響したと考えられます。


なぜこの都市伝説は人気なのか

「タウレッドの男」は、パラレルワールドや次元移動を信じる人々の間で非常に人気のある話です。その理由を考えてみましょう。

パラレルワールドへの憧れ

この都市伝説が人々を惹きつける最大の理由は、「パラレルワールド(並行世界)は実在するかもしれない」という可能性を示唆しているからでしょう。

もし別の次元の地球が存在し、そこでは「アンドラ」ではなく「タウレッド」という国が栄えているとしたら? その世界の住人が何かの偶然で私たちの世界に迷い込んでしまったとしたら?

こうした「もしも」の想像は、SFや空想が好きな人々の心を強く捉えます。

「消えた」という結末の魅力

物語の結末で男が「消えた」という要素も重要です。

単なる詐欺師の話なら、逮捕されて終わりでしょう。しかし「密室から姿を消した」となれば、話はまったく変わってきます。「彼は元の世界に戻ったのではないか」という解釈の余地が生まれるからです。

実際には、ジーグラスは逮捕され、裁判を受け、国外追放されています。しかし、「国外追放された」という事実が伝聞の中で「行方不明になった」→「消えた」と変化していったのかもしれません。

検証しにくい時代設定

1954年(または1959年)という時代設定も、都市伝説の信憑性を「適度に曖昧」にしています。

この時代はまだインターネットがなく、国際的な情報共有も今ほど発達していませんでした。「記録が残っていない」と言われても、「当時はそういうこともあっただろう」と思わせる余地があるのです。


現代文化への影響

「タウレッドの男」は、様々なメディアやエンターテイメントに影響を与えています。

インターネットでの人気

YouTubeには「タウレッドの男」を解説する動画が数多くアップロードされており、再生回数は数百万回に達するものもあります。TikTokやRedditでも定期的に話題になる人気のトピックです。

日本でも、テレビ番組「世界の何だコレ!?ミステリー」などで取り上げられ、広く知られるようになりました。

創作作品のインスピレーション

この都市伝説は、小説や映画、ゲームの題材としても活用されています。

「別の世界から迷い込んだ旅行者」というコンセプトは、SF作品の定番モチーフの一つです。タウレッドの物語は、こうした作品のインスピレーション源として機能しています。

陰謀論との結びつき

残念ながら、この都市伝説は時として陰謀論や疑似科学の「証拠」として引用されることもあります。

しかし、これまで見てきたように、「タウレッドの男」は実在の詐欺事件がオカルト的に脚色されて生まれた都市伝説です。パラレルワールドの実在を示す証拠ではありません。


類似する都市伝説

「タウレッドの男」のような「存在しない場所から来た人」の話は、世界中に存在します。

グリーン・チルドレン伝説

12世紀のイングランドで、緑色の肌をした2人の子供が突然現れたという伝説があります。子供たちは見知らぬ言語を話し、太陽のない国から来たと主張したといいます。

ジョン・タイター事件

2000年代初頭にインターネット上に現れた「ジョン・タイター」は、2036年の未来から来たタイムトラベラーを自称しました。彼の「予言」は一部が外れたことで信憑性を失いましたが、今でもネット上で語り継がれています。

これらの話と「タウレッドの男」に共通するのは、「私たちの知る世界とは異なる場所からの訪問者」というモチーフです。こうした物語が繰り返し生まれるのは、人間が「未知の世界」に対して根源的な興味を持っているからかもしれません。


まとめ

「タウレッドの男」は、パラレルワールドや次元移動の証拠として語られてきた有名な都市伝説です。

この記事の重要ポイント

都市伝説の内容

  • 1954年、羽田空港に「タウレッド」という存在しない国のパスポートを持った男が現れた
  • 男はアンドラの位置を指し、「タウレッドは1000年の歴史がある」と主張
  • ホテルに監禁されたが、翌朝には書類ごと消失したとされる

実際の真相

  • 元ネタは1959年の「ジョン・アレン・K・ジーグラス事件」
  • ジーグラスは「ネグシ・ハベシ国」の偽造パスポートを持った詐欺師
  • 1960年に詐欺罪で逮捕され、法廷で自殺未遂を起こした
  • 最終的に香港へ国外追放された(消失していない)

都市伝説の発展経緯

  • 1974年:フランスのオカルト本で紹介(年代が1954年に変更)
  • 1981年:『The Directory of Possibilities』で「Taured」の綴りに
  • 2013年頃:インターネットで「ホテルからの消失」が追加され拡散

「タウレッドの男」の物語は、実際の詐欺事件が何十年もの間に脚色され、ドラマチックな都市伝説へと変化したものでした。

パラレルワールドの実在を示す証拠ではありませんが、この話がこれほど人気を集める理由は理解できます。私たちは皆、心のどこかで「もしかしたら、この世界以外にも別の世界があるかもしれない」という可能性にワクワクするものですから。

真相を知った今でも、この物語が持つ不思議な魅力は色あせません。むしろ、「一人の詐欺師の話がどのようにして世界的な都市伝説に発展したのか」という、もう一つのミステリーが浮かび上がってくるのです。

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