グラフィックボードの性能をもっと引き出したい、あるいは温度や消費電力を下げたい…
そんなときに活躍するのが、MSI AfterburnerのCurve Editor(カーブエディター)です。この機能を使えば、GPUの電圧と周波数の関係を細かく調整して、オーバークロックや低電圧化が可能になります。
この記事では、Curve Editorの基本から応用まで、初心者の方でもわかるように丁寧に解説していきます。
Curve Editor(カーブエディター)とは?

Curve Editorは、GPUの電圧と周波数(クロック)の関係を示すグラフを編集できる機能です。
基本的な仕組み
グラフィックボードは、「この電圧ではこのクロックで動く」という対応関係を持っています。例えば:
- 800mV(ミリボルト)→ 1500MHz
- 900mV → 1700MHz
- 1000mV → 1850MHz
Curve Editorを使うと、この関係を自分で調整できるんです。
できること
低電圧化(アンダーボルト):
同じ性能を保ちながら電圧を下げて、消費電力と温度を削減
オーバークロック:
電圧とクロックを上げて、GPUの性能を向上
効率化:
必要な性能だけを保ちつつ、無駄な消費電力を削減
Curve Editorを開く方法
まずはCurve Editorを起動しましょう。
起動方法
方法1: キーボードショートカット
MSI Afterburnerのメイン画面で「Ctrl + F」を押す
方法2: ボタンから
メイン画面の「Curve Editor」ボタン、または「OC」と書かれた虫眼鏡アイコンをクリック
グラフの見方
Curve Editorが開くと、電圧と周波数の関係を示すグラフが表示されます。
横軸(下):
電圧(mV = ミリボルト)
左側が低電圧、右側が高電圧
縦軸(左):
周波数(MHz = メガヘルツ)
下側が低クロック、上側が高クロック
点(マーカー):
グラフ上の四角い点が、各電圧での周波数を表しています
事前準備:電圧制御のロック解除
Curve Editorを使う前に、必ず以下の設定を行ってください。
ロック解除の手順
- MSI Afterburnerの設定画面を開く(歯車アイコンをクリック)
- 「全般」タブを選択
- 「安全上のプロパティ」欄を探す
- 「電圧制御のロック解除」にチェックを入れる
- 「電圧モニタリングのロック解除」にもチェックを入れる
- 「適用」→「OK」をクリック
重要:
この設定を有効にしないと、Curve Editorでの調整が制限されます。
低電圧化(アンダーボルト)の方法
まずは、最も人気のある低電圧化から解説します。温度と消費電力を下げつつ、性能を維持できる魅力的な設定です。
ステップ1: 現在の動作状況を確認
ベンチマークソフトを使って、GPUが現在どのように動作しているかを確認します。
準備するもの:
- ベンチマークソフト(3DMark、Unigine Heaven、FF15ベンチマークなど)
- MSI Afterburner(モニタリング用)
確認手順:
- ベンチマークソフトを起動
- MSI Afterburnerで以下の数値を確認
- GPU温度
- GPUクロック(周波数)
- GPU電圧
- 最大値をメモする
例えば、こんな感じの結果が出るはずです:
- 最大クロック: 1850MHz
- 最大電圧: 1000mV
- 最大温度: 78℃
ステップ2: 目標設定を決める
低電圧化の目標を決めましょう。
初心者向けの目安:
現在の最大クロックの95%を、現在の電圧より100〜150mV低い電圧で動かす
例:
- 現在: 1850MHz @ 1000mV
- 目標: 1750MHz @ 850mV(または900mV)
最初は控えめに設定して、徐々に詰めていくのが安全です。
ステップ3: Core Clockを調整
Curve Editorで作業する前に、メイン画面で準備します。
- MSI Afterburnerのメイン画面に戻る
- 「Core Clock (MHz)」のスライダーを左に動かす
- マイナス値に設定(例: -100MHz)
- チェックマークをクリックして適用
これは一時的な調整で、後でCurve Editorで上書きされます。
ステップ4: Curve Editorで調整
ここが本番です。Ctrl+FでCurve Editorを開きます。
基本的な調整手順:
A. 目標の電圧の点を探す
グラフの下部(横軸)で、目標とする電圧(例: 850mV)を見つけます。
B. その点をクリック
850mVに対応する点(四角いマーカー)をクリックして選択状態にします。
C. 周波数を調整
キーボードの「Shift + ↑(上矢印)」を押して、目標の周波数まで引き上げます。
1回押すと15MHz上がります(バージョンによって異なる場合あり)。
目標が1750MHzなら、それになるまで繰り返します。
D. 右側の点をすべて揃える
選択した点より右側のすべての点を、同じ高さに揃えます。
方法:
- 選択した点の1つ右の点付近にカーソルを移動
- 「Shift」を押しながら、右端までドラッグして選択(薄く色がつく)
- 選択した範囲の一番左の点(先ほど調整した点)が基準になっていることを確認
- 「Shift + Enter」を2回押す
- 選択範囲のすべての点が、基準の点と同じ高さに揃う
これで、850mVより高い電圧では、1750MHz以上のクロックにならないように制限されます。
ステップ5: 適用と保存
- Curve Editorのウィンドウを左に移動(閉じない)
- MSI Afterburnerのメイン画面のチェックマークをクリックして適用
- Core Clockの表示が「Curve」に変わることを確認
- 「保存」アイコンをクリック
- プロファイル番号(1〜5)を選択して保存
ステップ6: 安定性テスト
設定を適用したら、必ずテストしましょう。
テスト方法:
- ベンチマークソフトを30分〜1時間実行
- MSI Afterburnerで実際のクロックと電圧を確認
- 以下の問題がないかチェック
- 画面のチラつき
- 表示の乱れ(アーティファクト)
- ゲームやベンチマークのクラッシュ
- システムの再起動
問題が出た場合:
電圧を10〜20mV上げて(例: 850mV → 870mV)再テスト
問題がない場合:
さらに電圧を下げられる可能性があります(例: 850mV → 840mV)
ステップ7: 微調整
安定して動作する最低電圧を見つけるまで、以下を繰り返します。
- 電圧を10〜20mV下げる
- Curve Editorで調整
- 適用
- 30分テスト
- 安定性を確認
クラッシュしたら、そこが限界です。1段階戻して、その設定を最終版としましょう。
オーバークロックの方法

性能を上げたい場合は、オーバークロックを試してみましょう。
基本的な考え方
低電圧化とは逆に、より高い電圧でより高いクロックを狙います。
注意点:
- 温度が上がる
- 消費電力が増える
- 冷却能力が重要
- 安定性のテストが必須
手順
- 現在の最大クロックと電圧を確認(ベンチマーク実行)
- Curve Editorを開く(Ctrl + F)
- 現在の最大電圧の点を選択
- Shift + ↑で周波数を上げる(例: +50MHz)
- その点より右側をすべて同じ高さに揃える(Shift + Enter × 2)
- 適用してテスト
徐々に上げる:
一度に大きく上げず、+25〜50MHzずつテストするのが安全です。
OC Scanner機能
NVIDIA RTX 20シリーズ以降では、自動オーバークロック機能が使えます。
使い方:
- Curve Editorを開く
- 「Scan」ボタンをクリック
- 自動でテストが始まる(約20〜30分)
- テスト完了後、「Test」ボタンで安定性を確認
- 信頼レベルが60%以上なら使用可能
- 適用
これで、自動的に最適なカーブが作成されます。
キーボードショートカット一覧
Curve Editorでの作業を効率化するショートカットです。
基本操作
Tab:
次の点に移動
Shift + Tab:
前の点に移動
Shift + ↑ / ↓:
選択した点を上下に移動(周波数を調整)
Enter:
テキスト入力モードに切り替え(数値を直接入力)
Shift + Enter:
MHzモードに切り替え
Shift + Enter × 2:
選択範囲を、選択中の点の高さに揃える(フラット化)
応用操作
Ctrl + クリック&ドラッグ:
点をドラッグして曲線全体を調整
Shift + クリック&ドラッグ(空白部分):
複数の点を範囲選択
↑ / ↓(範囲選択中):
選択したすべての点を同時に上下移動
Delete:
選択した点を削除(デフォルト値に戻る)
よくある問題と解決方法
Curve Editorを使っていると、いくつかの問題に遭遇することがあります。
設定が保存されない
原因:
適用ボタンを押していない、またはプロファイルに保存していない
解決法:
- Curve Editorで調整後、必ずメイン画面のチェックマークをクリック
- 保存アイコンからプロファイルに保存
- 自動起動設定を有効にする
右側の点が勝手に戻る
原因:
グラフィックボードのBIOSによる制限(特にRTX 30/40シリーズ)
解決法:
完全にフラットにはできない場合があります。可能な限り低く調整しましょう。
クラッシュやフリーズが起こる
原因:
低電圧化しすぎ、またはオーバークロックしすぎ
解決法:
- パソコンを再起動
- MSI Afterburnerのメイン画面でリセットボタン(円形の矢印)をクリック
- より保守的な設定に戻す(電圧を上げる、クロックを下げる)
画面にノイズが出る
原因:
不安定な設定、特にメモリクロックのオーバークロック
解決法:
- GPUコアの設定を確認
- メモリクロックを下げる
- 電圧を少し上げる
起動時に設定が適用されない
原因:
自動起動が設定されていない、またはプロファイル管理の設定ミス
解決法:
- MSI Afterburnerの設定画面を開く
- 「全般」タブで「Windowsと一緒に起動する」にチェック
- 「プロファイル」タブで自動プロファイル管理を設定
- 2Dプロファイル、3Dプロファイル両方に使用するプロファイルを指定
低電圧化とオーバークロックの比較
どちらを選ぶべきか迷っている方へ、比較表を用意しました。
低電圧化(アンダーボルト)
メリット:
- 温度が下がる(10〜15℃程度)
- 消費電力が減る(50〜100W程度)
- ファンの騒音が減る
- GPUの寿命が延びる可能性
- 性能はほぼ維持できる
デメリット:
- 設定に時間がかかる
- 個体差があり、万能な設定はない
- テストが必須
おすすめの人:
- 温度や騒音が気になる人
- 電気代を節約したい人
- 夏場の熱対策をしたい人
- ノートPCユーザー
オーバークロック
メリット:
- 性能が上がる(5〜15%程度)
- FPSが向上
- ベンチマークスコアが上がる
デメリット:
- 温度が上がる
- 消費電力が増える
- 騒音が大きくなる
- 安定性のリスク
- 保証対象外になる可能性
おすすめの人:
- とにかく性能重視
- 冷却に自信がある人
- ベンチマークスコアを競いたい人
- 最新ゲームを最高設定でプレイしたい人
実例:RTX 3080の低電圧化
具体的な例を見てみましょう。
デフォルト設定
- 最大クロック: 1935MHz
- 最大電圧: 1050mV
- 最大温度: 78℃
- 消費電力: 340W
低電圧化後(850mV/1845MHz)
- 最大クロック: 1845MHz
- 最大電圧: 850mV
- 最大温度: 65℃
- 消費電力: 280W
結果
- クロック: -90MHz(-4.6%)
- 温度: -13℃
- 消費電力: -60W(-17.6%)
- ゲーム性能: ほぼ変わらず(-1〜2%程度)
効果:
ほとんど性能を犠牲にせず、大幅に温度と消費電力を削減できました。
推奨設定の目安
グラフィックボード別の、おおよその低電圧化の目安です。
注意:
個体差が大きいため、必ず自分の環境でテストしてください。
NVIDIA RTX 40シリーズ
RTX 4090:
- 目標: 2700MHz @ 950mV
- デフォルトより: -50〜100mV
RTX 4080:
- 目標: 2600MHz @ 900mV
- デフォルトより: -50〜100mV
RTX 4070 Ti:
- 目標: 2600MHz @ 900mV
- デフォルトより: -50〜100mV
NVIDIA RTX 30シリーズ
RTX 3090/3080 Ti:
- 目標: 1845MHz @ 850mV
- デフォルトより: -100〜150mV
RTX 3080:
- 目標: 1845MHz @ 850mV
- デフォルトより: -100〜150mV
RTX 3070:
- 目標: 1920MHz @ 875mV
- デフォルトより: -100〜125mV
AMD Radeon RX 7000シリーズ
AMD GPUの場合、AMD Software(旧Radeon Settings)のWattManでも調整可能ですが、MSI Afterburnerでも設定できます。
RX 7900 XTX:
- 目標: 周波数を維持、電圧を10〜15%削減
注意:
AMDの場合、NVIDIAと設定方法が若干異なることがあります。
ベンチマークソフトの選び方
安定性テストには、適切なベンチマークソフトが必要です。
無料で使えるベンチマーク
3DMark(Time Spy):
- 最もポピュラー
- 30分ループテストができる
- グラフィック負荷が高い
Unigine Heaven:
- 軽量で使いやすい
- ループ実行が簡単
- 設定が柔軟
FF15ベンチマーク:
- 日本語対応
- ゲーム実用性が高い
- 約6分で完了
FurMark:
- 極端な負荷テスト
- GPU温度を最大まで上げる
- 短時間テストに適している
テスト時間の目安
初期テスト:
10〜15分(クラッシュするかの確認)
安定性確認:
30分〜1時間(実用的な安定性)
最終確認:
2〜3時間、または実際のゲームプレイ(完全な安定性)
自動起動と自動適用の設定
設定を毎回手動で適用するのは面倒です。自動化しましょう。
Windows起動時の自動適用
- MSI Afterburnerの設定を開く
- 「全般」タブを選択
- 「Windowsと一緒に起動する」にチェック
- 「最小化の状態で起動」にもチェック(推奨)
プロファイルの自動適用
- 設定画面の「プロファイル」タブを開く
- 自動プロファイル管理を設定
- 「2Dプロファイル」と「3Dプロファイル」を選択
- 2D: デスクトップなど軽作業時
- 3D: ゲームなど高負荷時
- 両方に同じプロファイル(低電圧化設定)を指定してもOK
これで、パソコン起動時に自動的に設定が適用されます。
まとめ:Curve Editorを使いこなそう
MSI AfterburnerのCurve Editorは、GPUの電圧と周波数を細かく調整できる強力なツールです。
この記事のポイント:
基本操作:
- Ctrl+Fで起動
- 電圧制御のロック解除が必須
- グラフは電圧(横軸)と周波数(縦軸)の関係を表す
低電圧化のステップ:
- 現在の動作状況を確認
- 目標設定(95%のクロック、-100〜150mVの電圧)
- Curve Editorで調整
- 右側の点を揃える(Shift + Enter × 2)
- 適用と保存
- 30分〜1時間のテスト
- 微調整を繰り返す
キーボードショートカット:
- Shift + ↑/↓: 周波数調整
- Shift + Enter × 2: フラット化
- Shift + クリック&ドラッグ: 範囲選択
メリット:
- 温度が10〜15℃下がる
- 消費電力が50〜100W減る
- 騒音が減る
- 性能はほぼ維持
注意点:
- 必ずテストして安定性確認
- 個体差が大きい
- メーカー保証対象外の可能性
- 自己責任で実施
最初は時間がかかるかもしれませんが、一度設定してしまえば、あとは快適で効率的なGPU動作を楽しめます。
始めるステップ:
- まずは保守的な設定から(-100mV程度)
- ベンチマークで30分テスト
- 安定していたら-10〜20mVずつ下げる
- クラッシュしたら1段階戻す
- 最終設定をプロファイルに保存
ぜひCurve Editorを活用して、自分だけの最適な設定を見つけてください。静かで涼しく、効率的なゲーミング環境が待っていますよ!

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