「GeForce RTX 4090は何nmプロセス?」
「プロセスルールって何のこと?」
GeForce GPUのスペックを見ると、「7nm」「5nm」「4nm」といった表現を目にすることがありますよね。これはプロセスルール(製造プロセスノード)と呼ばれるもので、GPUの性能や消費電力に大きく関わる重要な要素です。
この記事では、プロセスルールの基本から、歴代GeForceシリーズで採用されているプロセスノード、そして最新RTX 50シリーズの製造技術まで、詳しく解説します。
プロセスルール(製造プロセス)とは?

<プロセスルール(Process Rule)またはプロセスノード(Process Node)は、半導体チップを製造する際の「配線の細かさ」を示す指標です。
プロセスルールの単位:
- nm(ナノメートル) = 10億分の1メートル
- 1nm = 0.001マイクロメートル(μm)
わかりやすく例えると:
プロセスルールとは、「GPUという設計図を、どれだけ細い鉛筆で描くか」のようなものです。
- 14nmプロセス = 太めの鉛筆で描く(回路が大きい)
- 7nmプロセス = 細い鉛筆で描く(回路が小さい)
- 4nmプロセス = 極細の鉛筆で描く(回路がさらに小さい)
プロセスルール微細化のメリット
プロセスルールが小さくなる(微細化する)と、以下のメリットがあります。
1. トランジスタ数の増加
同じ面積に、より多くのトランジスタ(電子回路の基本素子)を詰め込めます。
具体例:
- 14nmプロセス:トランジスタ4個
- 7nmプロセス(半分):トランジスタ16個(4倍!)
トランジスタが多いほど、GPUの演算能力が向上します。
2. 消費電力の低減
配線が細く短くなることで、電気が流れる距離が短くなり、消費電力が減ります。
具体例:
- RTX 3090(Samsung 8nm):TDP 350W
- RTX 4090(TSMC 4N/5nm改良版):TDP 450W
※RTX 4090は性能が大幅に向上しているため、消費電力は増えていますが、同じ性能で比較すると大幅に低減されています。
3. 発熱の抑制
消費電力が減ることで、発熱も抑制されます。
4. 動作クロックの向上
配線が細く短いと、電気信号が速く伝わるため、より高いクロック周波数で動作できます。
5. ダイサイズ(チップ面積)の縮小
同じトランジスタ数なら、プロセスが微細化するとチップ面積が小さくなり、製造コストが下がります。
歴代GeForceシリーズのプロセスルール一覧
GeForceシリーズの歴史を、製造プロセスの観点から振り返ります。
最新世代(2024年~)
GeForce RTX 50シリーズ(Blackwell)
- プロセス:TSMC 4N(実質5nm改良版)
- 製造元:TSMC(台湾)
- トランジスタ密度:RTX 40シリーズより約30%向上
- 特徴:RTX 40と同じプロセスノードだが、カスタマイズにより密度が向上
代表モデル:
- RTX 5090
- RTX 5080
- RTX 5070 Ti
- RTX 5070
現行世代(2022年~)
GeForce RTX 40シリーズ(Ada Lovelace)
- プロセス:TSMC 4N(実質5nm改良版)
- 製造元:TSMC(台湾)
- トランジスタ数:最大760億個(RTX 4090)
- 特徴:TSMC 5nmファミリーのNVIDIA専用カスタムプロセス
代表モデル:
- RTX 4090:760億トランジスタ
- RTX 4080
- RTX 4070 Ti
- RTX 4070
- RTX 4060 Ti
- RTX 4060
前世代(2020年~)
GeForce RTX 30シリーズ(Ampere)
- プロセス:Samsung 8nm
- 製造元:Samsung(韓国)
- トランジスタ数:最大283億個(RTX 3090)
- 特徴:Samsung 10nmの改良版、NVIDIA初のSamsung製GPUメインストリーム採用
代表モデル:
- RTX 3090:283億トランジスタ
- RTX 3080
- RTX 3070
- RTX 3060 Ti
- RTX 3060
- RTX 3050
注意点:
RTX 30シリーズは、当初TSMC 7nmで製造される予定でしたが、TSMC生産能力の逼迫により、Samsung 8nmに変更されました。
RTXシリーズ第1世代(2018年~)
GeForce RTX 20シリーズ(Turing)
- プロセス:TSMC 12nm FFN
- 製造元:TSMC(台湾)、一部Samsung
- トランジスタ数:最大186億個(RTX 2080 Ti)
- 特徴:レイトレーシング対応の初代RTX、12nmプロセス
代表モデル:
- RTX 2080 Ti:186億トランジスタ
- RTX 2080
- RTX 2070
- RTX 2060
GTX 10シリーズ(2016年~)
GeForce GTX 10シリーズ(Pascal)
- プロセス:TSMC 16nm FinFET
- 製造元:TSMC(台湾)
- トランジスタ数:最大120億個(GTX 1080 Ti)
- 特徴:FinFET技術採用、大幅な性能向上と電力効率改善
代表モデル:
- GTX 1080 Ti:120億トランジスタ
- GTX 1080
- GTX 1070
- GTX 1060
- GTX 1050 Ti
- GTX 1050
GTX 900シリーズ(2014年~)
GeForce GTX 900シリーズ(Maxwell)
- プロセス:TSMC 28nm
- 製造元:TSMC(台湾)
- トランジスタ数:最大82億個(GTX 980 Ti)
- 特徴:電力効率が大幅に向上したアーキテクチャ
代表モデル:
- GTX 980 Ti
- GTX 980
- GTX 970
- GTX 960
GTX 700シリーズ(2013年~)
GeForce GTX 700シリーズ(Kepler)
- プロセス:TSMC 28nm
- 製造元:TSMC(台湾)
- トランジスタ数:最大71億個(GTX 780 Ti)
代表モデル:
- GTX 780 Ti
- GTX 780
- GTX 770
- GTX 760
GTX 600シリーズ(2012年~)
GeForce GTX 600シリーズ(Kepler)
- プロセス:TSMC 28nm
- 製造元:TSMC(台湾)
- トランジスタ数:最大71億個(GTX 680)
古い世代(2000年代)
GeForce 8000/9000シリーズ(Tesla/G80)
- プロセス:90nm ~ 65nm
GeForce 6000/7000シリーズ
- プロセス:110nm ~ 90nm
GeForce 5000シリーズ
- プロセス:130nm ~ 150nm
GeForce 3/4シリーズ
- プロセス:150nm
GeForce 2シリーズ
- プロセス:180nm(0.18μm)
TSMC vs Samsung:製造メーカーの違い

GeForce GPUは、主に2つのファウンドリ(半導体製造会社)で製造されています。
TSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング)
特徴:
- 世界最大の半導体ファウンドリ
- 最先端プロセス技術のリーダー
- Apple、AMD、NVIDIAなど主要顧客
GeForceでの採用:
- RTX 50シリーズ:4N
- RTX 40シリーズ:4N
- RTX 20シリーズ:12nm
- GTX 10シリーズ:16nm
- GTX 900シリーズ以前:28nm以降
メリット:
- 最先端プロセス技術
- 高い歩留まり率
- 安定した品質
デメリット:
- 製造コストが高い
- 生産能力の逼迫
Samsung(サムスン電子)
特徴:
- 韓国の大手半導体メーカー
- メモリから製造まで幅広く展開
- 独自のGAA技術を開発中
GeForceでの採用:
- RTX 30シリーズ:8nm
メリット:
- TSMCより製造コストが安い
- 生産キャパシティに余裕
デメリット:
- TSMCより歩留まり率がやや低い
- 最先端プロセスで若干遅れ
TSMC 4Nとは?「4nm」ではない理由
RTX 40シリーズとRTX 50シリーズで採用されている「TSMC 4N」について、詳しく解説します。
TSMC 4Nの正体
TSMC 4Nは、実質「5nm改良版」です。
TSMCのプロセスファミリー:
- N5(5nm):基本プロセス
- N5P:5nmの改良版(性能向上)
- N4:5nmの改良版(密度向上)
- N4P:N4の改良版
- N4X:高性能版
- 4N:NVIDIA専用カスタムプロセス
4Nの特徴:
- ベースは5nmプロセス(N5ファミリー)
- NVIDIAの要求に合わせてカスタマイズ
- 「4」という数字はマーケティング的な意味合いが強い
なぜ「4nm」と呼ぶのか?
現代のプロセスノードの「nm」は、実際の物理的な寸法ではなく、性能や密度の世代を示すマーケティング用語になっています。
実際の物理的な寸法:
- 5nmプロセス:ゲート長は約18nm、ゲートピッチは約51nm
- つまり、「5nm」という名称は実際の寸法ではない
プロセスノードの命名規則:
- TSMC:N5(5nm)、N3(3nm)
- Samsung:5LPE(5nm)、3GAA(3nm)
- Intel:Intel 4、Intel 3
各社で基準が異なるため、単純な数値比較はできません。
RTX 50とRTX 40は同じプロセス?
はい、基本的には同じ「TSMC 4N」プロセスです。
しかし、RTX 50では改良されています:
- トランジスタ密度が約30%向上
- 同じプロセスノードでも、設計の最適化により性能が向上
- SMアーキテクチャの刷新により、効率が大幅改善
つまり:
同じプロセスルールでも、アーキテクチャ設計とプロセスの最適化により、大幅な性能向上が可能です。
RTX 30がTSMC 7nmではなくSamsung 8nmになった理由
RTX 30シリーズは、当初TSMC 7nmで製造される予定でしたが、最終的にSamsung 8nmに変更されました。
変更の理由:
- TSMCの生産能力逼迫
- Apple(iPhone、Mac)
- AMD(Ryzen、Radeon)
- その他多数の顧客
- コスト削減
- Samsung 8nmはTSMC 7nmより安価
- 十分な性能
- Samsung 8nmでも、Ampereアーキテクチャの性能を実現可能
結果:
Samsung 8nmでも、RTX 30シリーズは前世代(RTX 20)から大幅な性能向上を達成しました。
次世代RTX 60シリーズは3nmプロセス?
将来のGeForceについて、現時点での予想をまとめます。
TSMC 3nm(N3)プロセス
特徴:
- 5nmプロセスより約30%高密度
- 消費電力15%削減、または性能18%向上
- ウエハー価格が5nmより25%高い(約2万ドル/枚)
課題:
- 製造コストが非常に高い
- 歩留まりの向上に時間がかかる
RTX 60シリーズの予想
プロセス:TSMC 3nm(N3またはN3E)
- 発売時期:2026年~2027年頃
- アーキテクチャ:Rubin(仮)
- トランジスタ数:1000億個以上?
ただし、NVIDIAはコストパフォーマンスを重視するため、3nmプロセスの採用は慎重に検討されるでしょう。
プロセスルールの限界は?
半導体プロセスの微細化には、物理的な限界があります。
現在の最先端:
- TSMC:3nm(N3、量産中)
- Samsung:3nm GAA(量産開始)
- Intel:Intel 3(旧称7nm)
将来のロードマップ:
- TSMC:2nm(2025年量産開始予定)
- TSMC:1.4nm(2027年計画)
- TSMC:1nm以下(2030年頃?)
物理的な限界:
- シリコン原子の大きさ:約0.2nm
- 量子トンネル効果の問題
- リーク電流の増大
次世代技術:
- GAA(Gate-All-Around)技術:Samsung 3nmから採用
- カーボンナノチューブ:将来の可能性
- 3Dチップ積層技術:すでに一部で採用
よくある質問
Q1. プロセスルールが小さいほど性能が高いのですか?
A. 一般的には、プロセスルールが小さいほど、同じ面積に多くのトランジスタを詰め込めるため、性能が高くなる可能性があります。しかし、アーキテクチャ設計も重要で、古いプロセスでも優れた設計なら高性能を実現できます。RTX 50とRTX 40は同じ4Nプロセスですが、RTX 50の方が性能が高いのは設計の改良によるものです。
Q2. RTX 4090は何nmプロセスですか?
A. RTX 4090は「TSMC 4N」プロセスで製造されています。これは実質的に5nm改良版プロセスです。「4nm」という表記はマーケティング的な呼称で、ベースは5nmファミリーになります。
Q3. RTX 30がSamsung 8nmなのに、RTX 40がTSMC 4Nになった理由は?
A. NVIDIAは、より高い性能と電力効率を求めて、RTX 40シリーズからTSMCの先端プロセスに戻りました。TSMC 4N(5nm改良版)は、Samsung 8nmより約30%高密度で、電力効率が大幅に向上しています。TSMCの生産能力も改善され、NVIDIAの需要に対応できるようになったことも理由の一つです。
Q4. TSMC 4Nと4nmは違うのですか?
A. はい、異なります。「TSMC 4N」はNVIDIA専用にカスタマイズされた5nm改良版プロセスです。一方、一般的な「TSMC 4nm(N4)」も5nmファミリーの一部ですが、4Nとは別のプロセスです。4Nは主にGPUに最適化されており、N4とは若干異なる特性を持っています。
Q5. Samsung 8nmとTSMC 7nmではどちらが優れていますか?
A. 一般的に、TSMC 7nmの方が高密度で電力効率が良いとされています。Samsung 8nmはTSMC 10nmに近い性能と言われています。ただし、実際の性能はアーキテクチャ設計にも大きく依存するため、プロセスルールだけでは単純比較できません。
Q6. プロセスが微細化すると、なぜ消費電力が減るのですか?
A. 配線が細く短くなることで、電気が流れる距離が短くなり、抵抗が減少するためです。また、トランジスタのスイッチング時に必要な電力も減少します。ただし、トランジスタ数が増えると全体の消費電力は増える可能性があるため、最新GPUでは必ずしも消費電力が減るとは限りません。
Q7. RTX 50は3nmプロセスではないのですか?
A. いいえ、RTX 50シリーズはTSMC 3nmプロセスではなく、RTX 40と同じ4N(5nm改良版)プロセスで製造されています。TSMC 3nmは製造コストが非常に高く、歩留まりの問題もあるため、NVIDIAは慎重にプロセス移行を進めています。次世代(RTX 60?)で3nmプロセスに移行する可能性があります。
Q8. 古いプロセスのGPUは買わない方がいいですか?
A. プロセスルールだけで判断すべきではありません。性能、価格、消費電力、自分の用途を総合的に考えて選ぶべきです。例えば、GTX 1650(TSMC 12nm)は古いプロセスですが、ライトゲーマーや予算重視のユーザーには今でも良い選択肢です。最新プロセスのハイエンドGPUは高価なので、コストパフォーマンスを考慮しましょう。
まとめ
GeForce GPUのプロセスルール(製造プロセス)について解説しました。
重要ポイント:
- プロセスルールとは:半導体チップの配線の細かさを示す指標(単位:nm)
- 微細化のメリット:トランジスタ増加、消費電力低減、性能向上
- 最新世代:RTX 50/40はTSMC 4N(実質5nm改良版)
- 前世代:RTX 30はSamsung 8nm、RTX 20はTSMC 12nm
- TSMC 4N:「4nm」と呼ばれるが実質5nm改良版、NVIDIA専用カスタム
- 同じプロセスでも性能向上:RTX 50とRTX 40は同じ4Nだが、設計改良で性能大幅向上
歴代GeForceのプロセス変遷:
- RTX 50(2025年):TSMC 4N
- RTX 40(2022年):TSMC 4N
- RTX 30(2020年):Samsung 8nm
- RTX 20(2018年):TSMC 12nm
- GTX 10(2016年):TSMC 16nm
- GTX 900(2014年):TSMC 28nm
プロセスルールは性能を判断する一つの指標ですが、アーキテクチャ設計、メモリ帯域幅、クロック周波数なども重要です。GPU選びの際は、プロセスルールだけでなく、総合的な性能とコストパフォーマンスを考慮しましょう!

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