「グラフィックボードの性能をもっと上げたい」「ゲームのフレームレートを向上させたい」と思ったことはありませんか?
オーバークロック(OC)は、グラフィックカードの性能を向上させる有効な方法ですが、間違った方法で行うとハードウェアに悪影響を与える可能性もあります。この記事では、GeForceグラフィックカードを安全にオーバークロックする方法を、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
オーバークロックとは?

オーバークロックとは、GPUやメモリの動作周波数(クロック)を、メーカーが設定した標準値(定格)よりも高く設定して、性能を向上させる技術のことです。
簡単な例え
定格クロックが1000MHzのグラフィックカードを1200MHzにオーバークロックすると、理論上は約20%の性能向上が期待できます。これは、車のエンジンの回転数を上げて速度を出すイメージに近いですね。
オーバークロックのメリットとデメリット
オーバークロックを始める前に、メリットとデメリットをしっかり理解しておきましょう。
メリット
ゲームパフォーマンスの向上
フレームレート(FPS)が上昇し、よりスムーズなゲームプレイが可能になります。特に、標準設定では60FPSギリギリだったゲームが、オーバークロックによって安定して60FPS以上を維持できるようになることがあるんです。
コストパフォーマンスの改善
新しいグラフィックカードを購入しなくても、今持っているカードの性能を引き出せます。数万円の投資を避けられる可能性があります。
カスタマイズの楽しさ
自分のシステムを最適化する過程自体が、PCの知識を深める良い機会になります。
デメリット
消費電力の増加
性能向上の割合以上に、消費電力が増加します。電気代が上がるだけでなく、電源ユニットへの負担も増えるんです。
発熱量の増加
クロックを上げると発熱量も増加します。適切な冷却ができないと、かえってパフォーマンスが低下する「サーマルスロットリング」という現象が起きてしまいます。
製品寿命の短縮
高温で動作させ続けると、半導体にダメージを与え、グラフィックカードの寿命を縮める可能性があります。
保証対象外
オーバークロックは基本的にメーカー保証の対象外となります。オーバークロック中に故障した場合、無償修理が受けられない可能性が高いです。
オーバークロックを始める前の確認事項
オーバークロックを安全に行うためには、事前の準備が重要です。
1. 冷却性能を確認する
空冷の場合
グラフィックカードに搭載されているファンの数と大きさを確認しましょう。デュアルファン以上のモデルが理想的です。
避けるべきモデル
外排気タイプのグラフィックカード(ブロワーファン)は冷却性能が控えめなので、オーバークロックにはあまり向いていません。NVIDIA Founder’s EditionやASUS Turboなどが該当します。
ケース内のエアフローも重要
グラフィックカード単体だけでなく、PCケース全体の空気の流れも確認してください。吸気ファンと排気ファンがバランスよく配置されているのが理想的です。
2. 電源ユニットの容量を確認する
オーバークロックすると消費電力が増加するため、電源ユニットに余裕がないと不安定になります。
必要な容量の目安
- RTX 4070クラス: 650W以上
- RTX 4080クラス: 750W以上
- RTX 4090クラス: 850W以上
さらに、80 PLUS認証(できればBronze以上)を取得した信頼性の高い電源を使用することをおすすめします。
3. 現在の温度を把握する
オーバークロック前に、通常使用時のGPU温度を確認しておきましょう。
適正温度の目安
- アイドル時(何もしていない時): 30〜50℃
- ゲーム中: 60〜80℃
- 警告レベル: 85℃以上
この温度を超える場合は、オーバークロック前にケースの掃除やファンの交換を検討してください。
必要なソフトウェア
オーバークロックには、いくつかのソフトウェアが必要です。すべて無料でダウンロードできます。
MSI Afterburner
最も人気のあるオーバークロックツール
MSI製のグラフィックカード以外でも使用できる、業界標準のオーバークロックソフトです。直感的なインターフェースで初心者にも使いやすいのが特徴なんです。
ダウンロード先
MSI公式サイトからダウンロードできます。
注意点: Google検索結果には偽サイトが表示されることがあるので、必ず公式サイトからダウンロードしてください。
ベンチマークソフト
オーバークロックの効果を測定し、安定性を確認するために使用します。
Unigine Heaven
無料で使える軽量なベンチマークソフトです。テスト時間が短く、不安定な設定だとすぐにクラッシュしてくれるので、テンポよく検証できます。
3DMark
より詳細なテストができる本格的なベンチマークソフトです。無料版でも基本的なテストが可能です。
Cinebench
CPU向けのベンチマークとして有名ですが、2024年版からGPUのテストも可能になりました。CPUとGPUを一つのソフトでテストできるので便利です。
HWiNFO64
温度や電圧などの詳細な情報をモニタリングできるソフトです。オーバークロック中の状態を確認するために必須のツールです。
MSI Afterburnerの設定方法
それでは、実際にMSI Afterburnerを使ってオーバークロックの準備をしていきましょう。
インストールと初期設定
- ダウンロードしたファイルを実行
- インストール中に言語選択画面が表示されるので「Japanese(日本語)」を選択
- RivaTuner Statistics Server(オンスクリーン表示ツール)も一緒にインストール
- インストール完了後、MSI Afterburnerを起動
インターフェースの見方
起動すると、中央に様々なスライダーが表示されます。
主要なスライダーの説明
- Core Voltage(コア電圧): デフォルトではロックされています
- Power Limit(電力制限): 消費電力の上限値
- Temp. Limit(温度制限): GPU温度の上限値
- Core Clock(コアクロック): GPUの動作周波数
- Memory Clock(メモリクロック): VRAMの動作周波数
- Fan Speed(ファン速度): 冷却ファンの回転数
便利な設定
スキンの変更
デフォルトの画面が小さくて見にくい場合は、スキンを変更できます。
- 右下の歯車アイコン(Settings)をクリック
- 「ユーザーインターフェイス」タブを選択
- 「ユーザーインターフェーススキンのプロパティ」から「Big Edition」や「MSI Cyborg」などを選択
NVIDIAの自動オーバークロック機能
GeForce RTX 16シリーズ以降のGPUには、自動でオーバークロックを設定してくれる便利な機能があります。
NVIDIA Appの自動チューニング
対応GPU
- GeForce GTX 16シリーズ
- GeForce RTX 20シリーズ以降
使い方
- NVIDIA Appを起動
- 左メニューから「システム」を選択
- 「パフォーマンスチューニング」の項目を探す
- 「自動チューニング」をクリック
- スキャンが開始される(20〜30分かかる)
- 完了すると自動的に最適な設定が適用される
特徴
NVIDIA公式の機能なので、比較的安全にオーバークロックができます。ただし、この機能で設定されるのはコアクロックのみで、メモリクロックは自分で調整する必要があります。
安全なオーバークロック手順
ここからが本番です。段階的に、慎重にオーバークロックを進めていきましょう。
ステップ1: ベースラインの測定
オーバークロック前の性能を記録しておきます。
- すべてのアプリケーションを閉じる
- Unigine Heavenを起動
- 設定を以下にする:
- API: DirectX 11
- Quality: Ultra
- Tessellation: Extreme
- Anti-aliasing: x8
- Full Screen: チェックを入れる
- Resolution: 1920 x 1080
- 「Benchmark」ボタンをクリックしてテストを実行
- 終了後に表示されるスコアと平均FPSをメモする
ステップ2: 電力と温度の上限を設定
オーバークロックの幅を広げるため、まず電力と温度の上限を引き上げます。
- MSI Afterburnerで「Power Limit」を最大値にする
- 「Temp. Limit」も最大値にする
- 右下のチェックマークボタンをクリックして適用
注意: ノートPCや一部のGPUでは、これらの値を100%以上に設定できない場合があります。
ステップ3: ファンカーブの設定
温度管理のために、ファンの回転数を調整します。
- 歯車アイコン(Settings)をクリック
- 「ファン」タブを選択
- 「ユーザー定義のソフトウェア自動ファン制御を有効にする」にチェック
- グラフ上でファンカーブを設定:
- 50℃で50%
- 60℃で60%
- 70℃で75%
- 80℃以上で100%
- 「OK」をクリック
ステップ4: コアクロックのオーバークロック
最も影響が大きいコアクロックから調整していきます。
重要な原則: 一度に大きく上げず、少しずつ調整する
- 「Core Clock」を+25MHz上げる
- チェックマークをクリックして適用
- Unigine Heavenでベンチマークを実行(ループモードで5〜10分)
- 以下を確認:
- 画面にノイズやちらつき(アーティファクト)が出ないか
- ソフトがクラッシュしないか
- HWiNFO64で温度が85℃を超えないか
- 問題なければ、さらに+25MHzずつ上げて同じテストを繰り返す
限界のサイン
- 画面にノイズやブロックノイズが表示される
- ベンチマークソフトがクラッシュする
- フレームレートが逆に下がる
- 温度が85℃を超える
これらの現象が起きたら、直前の安定していた値に戻します。
現実的な上限値
- 最新のRTX 40シリーズ: +100〜+200MHz
- RTX 30シリーズ: +100〜+150MHz
- GTX 16シリーズ: +100〜+200MHz
※カードの個体差により大きく異なります
ステップ5: メモリクロックのオーバークロック
コアクロックが安定したら、次はメモリクロックです。
- 「Memory Clock」を+100MHz上げる
- 適用してベンチマークテスト
- 問題なければ+100MHzずつ上げていく
- 不安定になったら、安定していた値に戻す
メモリクロックの注意点
メモリクロックを上げすぎると、エラー訂正機能が働いて逆にパフォーマンスが低下することがあります。ベンチマークスコアが下がり始めたら、それが上限のサインです。
現実的な上限値
- GDDR6Xメモリ(RTX 4090など): +500〜+1000MHz
- GDDR6メモリ(RTX 4070など): +500〜+800MHz
- GDDR5メモリ(GTX 1660など): +400〜+600MHz
ステップ6: 長時間安定性テスト
短時間のテストでは問題なくても、長時間使用すると不安定になることがあります。
推奨テスト方法
- Unigine Heavenをループモードで30分以上実行
- 実際にプレイするゲームを1〜2時間プレイ
- 温度、フレームレート、クラッシュの有無を確認
問題が発生したら、クロックを少し下げて再テストします。
ステップ7: 設定の保存
安定した設定が見つかったら、プロファイルとして保存しましょう。
- MSI Afterburnerの右側にある「1」「2」「3」などの数字ボタンをクリック
- 現在の設定がそのプロファイルに保存される
- 複数の設定を保存して、用途に応じて切り替えられる
例:
- プロファイル1: 最大性能設定
- プロファイル2: 静音重視設定
- プロファイル3: 省電力設定
トラブルシューティング
オーバークロック中によくある問題と解決方法を紹介します。
画面にノイズやちらつきが出る
原因: クロックが高すぎる
解決方法:
- コアクロックを25MHz下げる
- それでも直らない場合はさらに下げる
- メモリクロックも疑われる場合は、メモリクロックを下げてみる
ゲーム中にクラッシュする
原因: オーバークロックが不安定
解決方法:
- ベンチマークでは安定していても、特定のゲームで不安定になることがある
- コアクロックとメモリクロックを少し下げる
- ゲームごとにプロファイルを作成するのも有効
温度が高すぎる
原因: 冷却が追いついていない
解決方法:
- ファンカーブをより積極的に設定
- PCケース内のエアフローを改善
- クロックを下げる
- ケース内部の掃除
フレームレートが逆に下がる
原因: サーマルスロットリング、または設定ミス
解決方法:
- 温度を確認(85℃以上になっていないか)
- メモリクロックを上げすぎていないか確認
- 設定を一度リセットして、最初からやり直す
PCが起動しない、画面が映らない
原因: 起動時に適用される設定が不安定すぎる
解決方法:
- PCを再起動
- Windowsの読み込み中にCtrlキーを押し続ける
- MSI Afterburnerの自動起動がスキップされる
- Afterburnerを起動して設定をリセット
アンダーボルト(省電力化)という選択肢
オーバークロックとは逆に、電圧を下げて消費電力を削減する「アンダーボルト」という手法もあります。
アンダーボルトのメリット
- 消費電力が減る
- 発熱が減る
- ファンの騒音が小さくなる
- パフォーマンスはほぼ維持(場合によっては向上)
やり方
- MSI Afterburnerで「Ctrl + F」を押す
- 電圧/周波数カーブエディタが開く
- 目標とする電圧点(例: 900mV)を選択
- その点を上に引き上げて希望のクロック(例: 1900MHz)に設定
- 「適用」をクリックしてテスト
アンダーボルトは温度が下がるため、サーマルスロットリングが起きにくくなり、結果的にパフォーマンスが向上することもあるんです。
よくある質問
Q: オーバークロックすると保証は本当に切れますか?
A: 基本的に、オーバークロック自体がメーカー保証の対象外とされています。ただし、MSI Afterburnerで設定を変更しただけなら、設定をリセットすれば証拠は残りません。ただし、故障の原因がオーバークロックと判断された場合、保証修理を受けられない可能性があります。
Q: どのくらいの性能向上が期待できますか?
A: 一般的に、適切なオーバークロックで5〜15%のフレームレート向上が期待できます。ただし、ゲームによって効果は異なり、CPUがボトルネックになっている場合は、GPU をオーバークロックしても効果は限定的です。
Q: 常にオーバークロック設定で使うべきですか?
A: 必ずしもそうではありません。軽いゲームや動画視聴などでは、標準設定で十分です。用途に応じてプロファイルを切り替えるのが賢い使い方です。
Q: ノートPCでもオーバークロックできますか?
A: 技術的には可能ですが、ノートPCは冷却能力が限られているため、あまりおすすめしません。もし行う場合は、非常に控えめな設定(+25〜50MHz程度)に留めてください。
Q: 新しいグラフィックカードを買うのとどちらがいいですか?
A: オーバークロックで得られる性能向上は5〜15%程度です。もし現在のカードでは性能が全く足りない場合は、新しいカードを購入した方が費用対効果が高いことが多いです。オーバークロックは「ちょっと足りない」を補う手段と考えましょう。
Q: 毎日オーバークロックで使うと、どのくらい寿命が縮みますか?
A: 温度管理が適切であれば(常に85℃以下を維持)、寿命への影響は限定的です。ただし、高温(90℃以上)で長時間使用すると、数年単位で寿命が短くなる可能性があります。
まとめ
GeForceグラフィックカードのオーバークロックは、適切な知識と慎重な手順で行えば、安全にパフォーマンスを向上させることができます。
オーバークロック成功の鍵
- 段階的に進める: 一度に大きく上げず、少しずつ調整する
- テストを怠らない: 各段階でしっかりと安定性を確認する
- 温度管理を徹底: 85℃以下を目標にする
- 無理をしない: 不安定になったら、欲張らずに設定を下げる
初心者へのアドバイス
最初は控えめな設定から始めましょう。コアクロック+50MHz、メモリクロック+200MHz程度でも、十分に効果を実感できます。慣れてきたら、徐々に限界を探っていくのが安全です。
最も重要なこと
オーバークロックは「絶対にやらなければならない」ものではありません。現在の性能で満足しているなら、無理にオーバークロックする必要はないんです。リスクとリターンをよく考えて、自己責任で行いましょう。
GeForce RTX 16シリーズ以降のカードをお持ちなら、まずはNVIDIA Appの自動チューニング機能を試してみるのも良い選択です。手軽に、比較的安全にオーバークロックの効果を体験できますよ。

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