「3 + 5」と「5 + 3」、どちらも答えは8ですよね。
当たり前すぎて気にしたことがない人も多いかもしれませんが、これは「交換法則」という大切な数学のルールなんです。今回は、計算の基礎となる交換法則について、分かりやすく解説していきます。
交換法則って何?

交換法則とは、足し算や掛け算で数の順序を入れ替えても、答えが同じになるという法則のこと。
数学では「可換法則」や「可換性」とも呼ばれます。英語では「commutative law」といい、この「commutative」は「交換できる」「入れ替え可能な」という意味です。
なぜ「交換」というの?
「交換」という言葉は、数を行ったり来たり入れ替えられることから来ています。まるで通勤する人(commuter)が行き来するように、数も自由に位置を交換できるんですね。
加法の交換法則
足し算の交換法則を見ていきましょう。
文字式で表すと、こうなります。
a + b = b + a
どんな数でも、足す順序を変えても答えは同じです。
具体例で確認
例1: 簡単な計算
2 + 3 = 5
3 + 2 = 5
順序を変えても、どちらも答えは5になります。
例2: もう少し大きい数
15 + 27 = 42
27 + 15 = 42
大きい数でも同じように成り立ちますね。
例3: 負の数を含む場合
(-5) + 8 = 3
8 + (-5) = 3
負の数が混ざっていても、交換法則は成り立ちます。
乗法の交換法則
掛け算でも、同じように交換法則が成り立ちます。
文字式で表すと、こうなります。
a × b = b × a
具体例で確認
例1: 基本の掛け算
2 × 4 = 8
4 × 2 = 8
どちらから掛けても答えは同じです。
例2: 計算を楽にする活用法
5 × 16 × 4 という計算を考えてみましょう。
交換法則を使えば、計算しやすい順序に並び替えられます。
5 × 4 × 16 = 20 × 16 = 320
先に「5 × 4 = 20」を計算することで、16に20を掛けるだけになり、計算が簡単になりました。
引き算と割り算では成り立たない!
ここが重要なポイントです。
交換法則が成り立つのは足し算と掛け算だけ。引き算と割り算では順序を変えると答えも変わってしまいます。
引き算の場合
5 – 2 = 3
2 – 5 = -3
答えが違いますね。3と-3では、符号(プラスとマイナス)まで変わってしまいます。
割り算の場合
10 ÷ 2 = 5
2 ÷ 10 = 0.2
こちらも、全く違う答えになってしまいます。
だから、引き算や割り算では数の順序を勝手に入れ替えてはいけません。
古代から使われていた交換法則
実は交換法則、人類は昔から無意識に使っていました。
古代エジプト人は、掛け算の計算を簡単にするために交換法則を利用していたことが分かっています。また、古代ギリシャの数学者ユークリッドも、著書『原論』で掛け算の交換法則を当然のものとして使っていました。
正式な名前がついたのはいつ?
「交換法則」という名前が正式に使われるようになったのは、18世紀後半から19世紀初頭のこと。
フランスの数学者フランソワ・セルヴォワが、1814年に「commutatives」という言葉を初めて使いました。それまでは当たり前すぎて、わざわざ名前をつける必要がなかったんですね。
結合法則・分配法則との違い
交換法則と混同しやすい法則に、「結合法則」と「分配法則」があります。
結合法則とは?
結合法則は、どこから計算しても答えが同じになるという法則です。
(a + b) + c = a + (b + c)
(a × b) × c = a × (b × c)
例: (2 + 3) + 5 = 2 + (3 + 5) = 10
交換法則が「順序」に関する法則なのに対し、結合法則は「計算する順番」に関する法則です。
分配法則とは?
分配法則は、カッコの中の計算を外に分配できるという法則。
a × (b + c) = a × b + a × c
例: 3 × (4 + 5) = 3 × 4 + 3 × 5 = 12 + 15 = 27
足し算と掛け算が同時に登場するのが特徴です。
交換法則が役立つ場面
交換法則は、単なる理論ではなく実際の計算でも大活躍します。
暗算が楽になる
98 + 15 という計算があったら、どうしますか?
交換法則を使って「15 + 98」と考え直すと、「15に100を足して2を引く」と考えられるので、計算がスムーズになります。
計算ミスが減る
自分が計算しやすい順序に並び替えられるので、間違いを防げます。
25 × 17 × 4 という計算なら、25 × 4 × 17 と並び替えて「100 × 17 = 1700」とすれば簡単ですよね。
方程式を解くときに便利
文字式の計算でも、交換法則を使って整理することで見通しが良くなります。
x + 5 + 3 + x = 2x + 8
のように、同じ文字をまとめて整理できるんです。
交換法則の応用範囲
交換法則は、普通の数の計算だけでなく、いろいろな分野で使われています。
集合論での交換法則
集合の和(合併)や積(共通部分)でも、交換法則が成り立ちます。
A ∪ B = B ∪ A(和集合)
A ∩ B = B ∩ A(積集合)
論理演算での交換法則
コンピュータの世界で使われるAND(論理積)やOR(論理和)という演算でも、交換法則が成り立ちます。
A AND B = B AND A
A OR B = B OR A
ベクトルの内積
数学や物理で出てくるベクトルの内積(ドット積)も、交換法則を満たしています。
a・b = b・a
交換法則が成り立たない例
すべての計算で交換法則が成り立つわけではありません。
行列の掛け算
高校数学で習う行列の掛け算は、交換法則が成り立たないことで有名です。
一般的には AB ≠ BA となってしまいます。
ベクトルの外積
ベクトルの外積(クロス積)も、交換法則が成り立ちません。
a × b = -(b × a)
逆向きのベクトルになってしまうんです。
よくある間違い
交換法則を理解していても、うっかりこんな間違いをしがちです。
間違い1: 引き算で交換法則を使う
10 – 3 を計算するとき、「3 – 10 でも同じ」と思ってしまう間違い。引き算では使えません!
間違い2: 割り算で交換法則を使う
12 ÷ 3 を「3 ÷ 12」と入れ替えてしまう間違い。割り算でも使えません!
間違い3: 結合法則と混同する
「順序を変える」交換法則と「計算する順番を変える」結合法則を混同してしまうケース。それぞれ違う法則だということを覚えておきましょう。
まとめ:交換法則は計算の基本ルール
交換法則は、数学の最も基本的で重要なルールの1つです。
重要ポイント
- 足し算と掛け算では、数の順序を入れ替えても答えは同じ
- 引き算と割り算では、交換法則は使えない
- 古代から使われてきた、当たり前だけど大切な性質
- 計算を楽にしたり、ミスを防ぐのに役立つ
普段何気なく使っている交換法則ですが、この法則のおかげで私たちは自由に計算の順序を工夫できているんです。
次に計算するときは、「これが交換法則だな」と意識してみると、数学がもっと面白く感じられるかもしれませんね。

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