「Cupcake」「KitKat」「Oreo」…これらはすべて、Androidのバージョンに付けられたコードネームです。Androidには、各バージョンにアルファベット順のお菓子の名前が付けられるという、ユニークで楽しい伝統がありました。
今回は、Android 1.0から最新バージョンまで、歴代のコードネームを完全網羅し、その由来や歴史、そして2019年に起きた大きな転換点について詳しく解説していきます。
- Androidコードネームとは
- コードネームの命名ルール
- 歴代コードネーム完全一覧
- Android 1.0 〜 1.1(2008年)
- Android 1.5 Cupcake(2009年)
- Android 1.6 Donut(2009年)
- Android 2.0 〜 2.1 Eclair(2009年)
- Android 2.2 Froyo(2010年)
- Android 2.3 Gingerbread(2010年)
- Android 3.0 〜 3.2 Honeycomb(2011年)
- Android 4.0 Ice Cream Sandwich(2011年)
- Android 4.1 〜 4.3 Jelly Bean(2012年)
- Android 4.4 KitKat(2013年)
- Android 5.0 〜 5.1 Lollipop(2014年)
- Android 6.0 Marshmallow(2015年)
- Android 7.0 〜 7.1 Nougat(2016年)
- Android 8.0 〜 8.1 Oreo(2017年)
- Android 9 Pie(2018年)
- Android 10以降: コードネームの転換点
- コードネームの変遷まとめ表
- イースターエッグ: 隠された楽しみ
- コードネームにまつわるトリビア
- APIレベルとの関係
- まとめ: Androidコードネームの意義
Androidコードネームとは

基本的な定義
Androidコードネームとは、Androidの各バージョンに付けられる開発コード名のことです。
特徴:
- 基本的にお菓子(デザート)の名前
- アルファベット順に命名
- 親しみやすく覚えやすい
コードネームの目的
なぜお菓子の名前?
- 覚えやすさ: バージョン番号より親しみやすい
- 楽しさ: ユーザーに楽しいイメージを与える
- 開発者の遊び心: Googleのカジュアルな企業文化を反映
誰が決めているのか
コードネームはGoogleのエンジニアチームが決定しています。
特に、GoogleエンジニアのBrian Swetlandが2009年に、お菓子の名前を使うことを提唱したのが始まりとされています。
コードネームの命名ルール
アルファベット順の原則
Android 1.5 Cupcake(C)から始まり、順番に:
- C → D → E → F → G → H → I → J → K → L → M → N → O → P…
と進んでいきます。
なぜCから?
疑問: 最初はAやBではないの?
答え: Android 1.0と1.1には公式コードネームが付けられませんでした。お菓子のコードネームをつける習慣が始まったのが1.5からだったため、3番目のアルファベットである「C」から開始されました。
1.0と1.1のコードネーム:
- Android 1.0: なし(社内では「Astro Boy」「Petit Four」)
- Android 1.1: なし(社内では「Petit Four」)
- Android 1.5: Cupcake(C)← ここから公式にスタート
Androidロボットも変身!
各バージョンのコードネームに合わせて、Androidのマスコットロボット(ドロイド君)が、そのお菓子に扮した姿になります。
例:
- Cupcake版: カップケーキの格好
- Donut版: ドーナツの格好
- KitKat版: KitKatチョコの格好
歴代コードネーム完全一覧
Android 1.0 〜 1.1(2008年)
Android 1.0(2008年9月23日)
- コードネーム: なし
- APIレベル: 1
- 特徴: 最初のAndroid OS、最初の端末HTC Dreamに搭載
Android 1.1(2009年2月9日)
- コードネーム: なし(内部的には「Petit Four」)
- APIレベル: 2
- 特徴: マイナーアップデート
Android 1.5 Cupcake(2009年)
コードネーム: Cupcake(カップケーキ)
- リリース: 2009年4月27日
- APIレベル: 3
- 由来: カップケーキ(アメリカの小さなケーキ)
主な新機能:
- 仮想キーボード
- 動画撮影・再生機能
- ウィジェット機能
- コピー&ペースト
- 韓国語サポート開始
意義: お菓子のコードネームが始まった記念すべきバージョン
Android 1.6 Donut(2009年)
コードネーム: Donut(ドーナツ)
- リリース: 2009年9月15日
- APIレベル: 4
主な新機能:
- 複数画面サイズのサポート
- 音声・テキスト検索の統合
- CDMAネットワークサポート
Android 2.0 〜 2.1 Eclair(2009年)
コードネーム: Eclair(エクレア)
- リリース: 2009年10月26日(2.0)、2010年1月12日(2.1)
- APIレベル: 5〜7
- 由来: エクレア(フランスの洋菓子)
主な新機能:
- Googleマップにナビ機能搭載(カーナビとして使用可能に)
- Bluetooth 2.1サポート
- ライブ壁紙
- マルチタッチサポート
意義: 初めてAndroidがカーナビとして実用化
Android 2.2 Froyo(2010年)
コードネーム: Froyo(フローズンヨーグルト)
- リリース: 2010年5月20日
- APIレベル: 8
- 由来: Frozen Yogurtの略
主な新機能:
- NFC(近距離無線通信)サポート(おサイフケータイ機能)
- USBテザリング
- パフォーマンス向上(JITコンパイラ)
Android 2.3 Gingerbread(2010年)
コードネーム: Gingerbread(ジンジャーブレッド)
- リリース: 2010年12月6日
- APIレベル: 9〜10
- 由来: ジンジャーブレッド(生姜を使った洋菓子)
主な新機能:
- UIの改善
- 電源管理の強化
- 前面カメラサポート
- NFC機能の拡充
Android 3.0 〜 3.2 Honeycomb(2011年)
コードネーム: Honeycomb(ハニカム)
- リリース: 2011年2月22日
- APIレベル: 11〜13
- 由来: 蜂の巣型のシリアル食品
特徴:
- タブレット専用バージョン
- スマートフォンには非対応
- ソースコードが当初非公開
主な新機能:
- タブレット最適化UI
- システムバーの導入
- マルチタスク改善
Android 4.0 Ice Cream Sandwich(2011年)
コードネーム: Ice Cream Sandwich(アイスクリームサンドイッチ)
- リリース: 2011年10月18日
- APIレベル: 14〜15
- 由来: アイスクリームをクッキーで挟んだお菓子
意義: スマートフォンとタブレットの統合
主な新機能:
- スマホとタブレットのUI統合
- 顔認証ロック解除
- データ使用量の管理
- スクリーンショット機能(電源+音量下)
Android 4.1 〜 4.3 Jelly Bean(2012年)
コードネーム: Jelly Bean(ジェリービーン)
- リリース: 2012年7月9日〜2013年7月24日
- APIレベル: 16〜18
- 由来: アメリカの砂糖菓子
主な新機能:
- Project Butter(滑らかな動作)
- Google Now登場
- 通知機能の拡張
- マルチユーザーサポート(タブレット)
Android 4.4 KitKat(2013年)
コードネーム: KitKat(キットカット)
- リリース: 2013年10月31日
- APIレベル: 19〜20
- 由来: ネスレのチョコレート菓子「Kit Kat」
特記事項: 初めて商標名を使用!
主な新機能:
- “OK Google”音声コマンド
- メモリ512MBでも動作(低スペック端末対応)
- フルスクリーン没入モード
- 印刷フレームワーク
裏話: 当初は「Key Lime Pie」の予定だったが、Nestléとのコラボでキットカットに変更
Android 5.0 〜 5.1 Lollipop(2014年)
コードネーム: Lollipop(ロリポップ)
- リリース: 2014年11月12日
- APIレベル: 21〜22
- 由来: 棒付きキャンディ
主な新機能:
- Material Design導入(デザイン大刷新)
- 64bitサポート開始
- バッテリーセーバーモード
- 複数ユーザーサポート(スマホでも)
意義: Androidデザインの大転換点
Android 6.0 Marshmallow(2015年)
コードネーム: Marshmallow(マシュマロ)
- リリース: 2015年10月5日
- APIレベル: 23
- 由来: マシュマロ(ふわふわのお菓子)
主な新機能:
- アプリ権限の細分化(個別に許可・拒否可能)
- Google Now on Tap
- 指紋認証API
- Doze(スリープ時の省電力)
Android 7.0 〜 7.1 Nougat(2016年)
コードネーム: Nougat(ヌガー)
- リリース: 2016年8月22日
- APIレベル: 24〜25
- 由来: ヌガー(ナッツ入りキャンディ)
主な新機能:
- マルチウィンドウ(画面分割)
- 通知のカスタマイズ強化
- データセーバー
- Vulkan APIサポート
Android 8.0 〜 8.1 Oreo(2017年)
コードネーム: Oreo(オレオ)
- リリース: 2017年8月21日
- APIレベル: 26〜27
- 由来: ナビスコのクッキー菓子「Oreo」
特記事項: 2度目の商標名使用
主な新機能:
- ピクチャー・イン・ピクチャー(動画を見ながら他の作業)
- 通知ドット
- オートフィル機能
- バックグラウンド制限強化
Android 9 Pie(2018年)
コードネーム: Pie(パイ)
- リリース: 2018年8月6日
- APIレベル: 28
- 由来: パイ(デザート)
主な新機能:
- ジェスチャーナビゲーション
- Adaptive Battery(AI学習による電池最適化)
- デジタルウェルビーイング
- 屋内位置測位の精度向上(RTT)
意義: お菓子コードネームの公式使用の最後のバージョン
Android 10以降: コードネームの転換点

2019年の大きな変更
Android 9 Pieまで続いてきたお菓子のコードネームが、Android 10で廃止されました。
理由:
- 国際化への配慮: 一部のお菓子は特定地域でしか知られていない
- 分かりやすさ: バージョン番号の方が明確
- アクセシビリティ: 色覚障害者にも見やすいロゴ・デザインへ変更
Android 10(2019年)
コードネーム: なし(公式には単に「Android 10」)
- 内部コードネーム: Quince Tart(キンス・タルト)
- リリース: 2019年9月3日
- APIレベル: 29
主な新機能:
- ダークテーマ
- ジェスチャーナビゲーション拡充
- プライバシー機能強化
Android 11(2020年)
コードネーム: なし(公式)
- 内部コードネーム: Red Velvet Cake(レッドベルベットケーキ)
- リリース: 2020年9月8日
- APIレベル: 30
主な新機能:
- 会話通知
- バブル通知
- 画面録画機能
Android 12(2021年)
コードネーム: なし(公式)
- 内部コードネーム: Snow Cone(スノーコーン)
- リリース: 2021年10月4日
- APIレベル: 31
主な新機能:
- Material You(大規模デザイン刷新)
- プライバシーダッシュボード
Android 13(2022年)
コードネーム: Tiramisu(ティラミス)
- リリース: 2022年8月15日
- APIレベル: 33
変更点: 開発者向けに再びコードネームが公開されるようになった
主な新機能:
- テーマカラーアイコン
- アプリごとの言語設定
Android 14(2023年)
コードネーム: Upside Down Cake(アップサイドダウンケーキ)
- リリース: 2023年10月4日
- APIレベル: 34
主な新機能:
- 超広帯域無線(UWB)サポート強化
- 健康フィットネス権限
Android 15(2024年)
コードネーム: Vanilla Ice Cream(バニラアイスクリーム)
- リリース: 2024年10月15日
- APIレベル: 35
主な新機能:
- プライバシーサンドボックス
- 衛星通信サポート
Android 16(2025年)
コードネーム: Baklava(バクラヴァ)
- 予定リリース: 2025年第2四半期
- APIレベル: 36(予定)
- 由来: トルコ・中東の層状ペストリー菓子
特記事項:
- 2025年から年2回リリース体制に変更
- 通常より早いリリース(従来は8〜10月、今回はQ2)
Bで始まるコードネーム: 初めて「B」で始まるコードネームが採用された(1.0、1.1をスキップしたため)
コードネームの変遷まとめ表
| バージョン | コードネーム | 意味 | リリース年 | API |
|---|---|---|---|---|
| 1.0 | なし | – | 2008 | 1 |
| 1.1 | なし | – | 2009 | 2 |
| 1.5 | Cupcake | カップケーキ | 2009 | 3 |
| 1.6 | Donut | ドーナツ | 2009 | 4 |
| 2.0/2.1 | Eclair | エクレア | 2009/2010 | 5-7 |
| 2.2 | Froyo | フローズンヨーグルト | 2010 | 8 |
| 2.3 | Gingerbread | ジンジャーブレッド | 2010 | 9-10 |
| 3.0-3.2 | Honeycomb | ハニカム | 2011 | 11-13 |
| 4.0 | Ice Cream Sandwich | アイスクリームサンドイッチ | 2011 | 14-15 |
| 4.1-4.3 | Jelly Bean | ジェリービーン | 2012-2013 | 16-18 |
| 4.4 | KitKat | キットカット | 2013 | 19-20 |
| 5.0/5.1 | Lollipop | ロリポップ | 2014 | 21-22 |
| 6.0 | Marshmallow | マシュマロ | 2015 | 23 |
| 7.0/7.1 | Nougat | ヌガー | 2016 | 24-25 |
| 8.0/8.1 | Oreo | オレオ | 2017 | 26-27 |
| 9 | Pie | パイ | 2018 | 28 |
| 10 | (Quince Tart) | キンス・タルト | 2019 | 29 |
| 11 | (Red Velvet Cake) | レッドベルベットケーキ | 2020 | 30 |
| 12 | (Snow Cone) | スノーコーン | 2021 | 31-32 |
| 13 | Tiramisu | ティラミス | 2022 | 33 |
| 14 | Upside Down Cake | アップサイドダウンケーキ | 2023 | 34 |
| 15 | Vanilla Ice Cream | バニラアイスクリーム | 2024 | 35 |
| 16 | Baklava | バクラヴァ | 2025 | 36 |
※10〜12のコードネームはGoogle内部のみで使用、公式には非公開
イースターエッグ: 隠された楽しみ
イースターエッグとは
Androidには、各バージョンに隠し機能(イースターエッグ)が用意されています。
表示方法
手順:
- 「設定」を開く
- 「デバイス情報」または「端末情報」をタップ
- 「Androidバージョン」を7回連続でタップ
- 隠し画面が表示される!
歴代のイースターエッグ例
Gingerbread: ゾンビジンジャーブレッド人形
Jelly Bean: ジェリービーンが飛び回る
KitKat: KitKatのロゴがクルクル回る
Lollipop: Flappy Bird風ゲーム
Marshmallow: Flappy Bird風ゲーム(改良版)
Nougat: 猫集めゲーム「Android Neko」
Oreo: タコが泳ぐ
Pie: 文字がカラフルに回転
ぜひ自分の端末で試してみてください!
コードネームにまつわるトリビア
1. KitKatの裏話
Android 4.4は当初「Key Lime Pie(キーライムパイ)」になる予定でした。
しかし、Googleがネスレと提携し、チョコレート菓子「Kit Kat」をコードネームに採用。初めて商標名が使われた歴史的バージョンになりました。
2. 候補になったが選ばれなかったお菓子
Nで始まるお菓子の候補:
- Nutella(ヌテラ)
- New York Cheesecake
- Neapolitan(ナポリタンアイス)
最終的に「Nougat」が選ばれました。
3. 地域による知名度の差
例えば「Nougat(ヌガー)」は、欧米では一般的なお菓子ですが、日本ではあまり馴染みがありません。
このような国際化の問題が、Android 10でのコードネーム廃止の一因となりました。
4. なぜOの次がPなのか?
Android 9は「Pie」ですが、実はGoogle内部では最初「Pistachio Ice Cream(ピスタチオアイスクリーム)」が候補だったとされています。
5. Androidロボットの秘密
Androidのマスコットロボットは、デザイナーのIrina Blokが「トイレのピクトグラム」からインスピレーションを得てデザインしたと言われています。
APIレベルとの関係
APIレベルとは
APIレベルは、Androidプラットフォームが提供するAPIのバージョンを示す整数値です。
コードネームとの対応
- Cupcake = API 3
- Donut = API 4
- KitKat = API 19-20
- Oreo = API 26-27
開発者は、このAPIレベルを指定してアプリを開発します。
重要性
古いAPIレベルのアプリは:
- 新しいAndroid端末で表示されない可能性
- セキュリティリスク
- 新機能が使えない
定期的なアップデートが重要です。
まとめ: Androidコードネームの意義
Androidコードネームについて、重要なポイントをまとめます。
歴史と変遷:
- 2009年Android 1.5 Cupcakeから開始
- 2018年Android 9 Pieまで公式使用
- 2019年Android 10で廃止(内部では継続)
- 2022年Android 13から開発者向けに再公開
命名ルール:
- アルファベット順(C〜)
- お菓子・デザートの名前
- 親しみやすく覚えやすい
特別なバージョン:
- KitKat、Oreo: 商標名使用
- Honeycomb: タブレット専用
- Lollipop: Material Design導入
- Pie: お菓子名公式使用の最後
現在の状況:
- 公式には単にバージョン番号
- 内部コードネームは継続
- Android 13以降は開発者向けに公開
- Android 16で初めてBから始まるコードネーム
楽しみ方:
- イースターエッグを探す
- コードネームの由来を調べる
- Androidロボットの変身を楽しむ
Androidのコードネームは、単なる開発用の記号ではなく、Googleの遊び心とユーザーへの配慮が込められた、Android文化の重要な一部です。お菓子の名前という親しみやすい命名により、技術的なバージョン番号よりもずっと覚えやすく、愛着が湧くものになっています。
次のAndroid 17のコードネームは、おそらく「C」で始まるお菓子になるでしょう。どんな名前になるのか、今から楽しみですね!

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