「3、5、9、15、23、33…」このような数列を見たとき、規則性がすぐにわかりますか?
一見バラバラに見える数列でも、「階差数列」という考え方を使うと、隠れたパターンが見えてくることがあります。
高校数学で習う階差数列は、数列の問題を解く強力な武器の一つです。でも、初めて学ぶときは「なんだか難しそう…」と感じる人も多いかもしれません。
今回は、階差数列の基本から一般項の求め方、注意点、そして実際の問題の解き方まで、わかりやすく解説していきます。
階差数列とは何か?

階差数列とは、ある数列の隣り合う項の差を順に並べてできる新しい数列のことです。
英語では「difference sequence(差分数列)」や「finite difference(有限差分)」と呼ばれます。
具体例で理解しよう
最初に挙げた数列で考えてみましょう。
元の数列
3, 5, 9, 15, 23, 33, ...
この数列の隣り合う項の差を取ってみます。
5 - 3 = 2
9 - 5 = 4
15 - 9 = 6
23 - 15 = 8
33 - 23 = 10
すると、2, 4, 6, 8, 10, … という新しい数列ができました。
これが元の数列の「階差数列」です。見てください!こちらは規則的に2ずつ増える等差数列になっていますね。
数学的な定義
数列{aₙ}があるとき、隣り合う2つの項の差
bₙ = aₙ₊₁ - aₙ
を項とする数列{bₙ}を、数列{aₙ}の階差数列といいます。
記号Δ(デルタ)を使って、階差数列を Δaₙ と表すこともあります。
なぜ階差数列が役に立つのか?
元の数列の規則性が見えにくくても、階差数列にすると規則性が見えてくることがあります。
パターン1:階差が等差数列
先ほどの例のように、階差が等差数列になるパターンです。
元の数列
1, 3, 7, 13, 21, 31, ...
階差数列
2, 4, 6, 8, 10, ...(等差数列!)
このとき、元の数列の一般項は2次式で表せます。
パターン2:階差が等比数列
階差が等比数列になるパターンもあります。
元の数列
2, 5, 11, 23, 47, ...
階差数列
3, 6, 12, 24, ...(等比数列!)
このときは、階差数列の和を求めることで、元の数列の一般項がわかります。
パターン3:複雑な数列も階差でシンプルに
一見複雑に見える数列でも、階差を取ることで規則性が見えることがあります。
これが階差数列の最大の魅力なんです。
階差数列から一般項を求める公式
階差数列を使って元の数列の一般項を求める、重要な公式があります。
基本公式
数列{aₙ}の階差数列を{bₙ}とすると、
n ≧ 2 のとき
aₙ = a₁ + (b₁ + b₂ + ... + bₙ₋₁)
シグマ記号(Σ)を使うと、
aₙ = a₁ + Σ(k=1からn-1まで) bₖ
と表せます。
公式の意味を理解しよう
この公式は実は、とてもシンプルな考え方から来ています。
階差数列の定義から、
a₂ - a₁ = b₁
a₃ - a₂ = b₂
a₄ - a₃ = b₃
...
aₙ - aₙ₋₁ = bₙ₋₁
これらを全部縦に足し算すると、
左辺 = -a₁ + (a₂ – a₂) + (a₃ – a₃) + … + (aₙ₋₁ – aₙ₋₁) + aₙ
途中の項が全部消えて、残るのは
aₙ - a₁
だけです。
右辺 = b₁ + b₂ + … + bₙ₋₁
したがって、
aₙ - a₁ = b₁ + b₂ + ... + bₙ₋₁
両辺にa₁を足せば、
aₙ = a₁ + (b₁ + b₂ + ... + bₙ₋₁)
となります。小学生でもわかる簡単な仕組みですね!
重要な注意点:n=1のときの扱い
公式には「n ≧ 2 のとき」という条件がついています。
これを忘れると、間違った答えになってしまうことがあるので注意が必要です。
なぜn≧2なのか?
n=1のとき、シグマ記号は「k=1から0までの和」となってしまいます。
これは意味をなさない(和が定まらない)ので、公式が使えないんです。
正しい手順
階差数列を使って一般項を求めるときは、次の手順を踏みます。
ステップ1:n≧2のとき、公式を使ってaₙを求める
ステップ2:求めたaₙにn=1を代入して、a₁と一致するか確認する
ステップ3:
- 一致する場合 → その式がすべてのnで成り立つ
- 一致しない場合 → 場合分けが必要
実際の例
例えば、階差数列が bₙ = 2n + 1 で、a₁ = 5 の場合を考えましょう。
n≧2のとき
aₙ = a₁ + Σ(k=1からn-1まで) bₖ
= 5 + Σ(k=1からn-1まで) (2k + 1)
= 5 + 2×(1+2+...+(n-1)) + (n-1)
= 5 + 2×(n-1)n/2 + (n-1)
= 5 + n(n-1) + (n-1)
= 5 + n² - n + n - 1
= n² + 4
n=1のとき確認
a₁ = 1² + 4 = 5 ✓(一致!)
したがって、すべてのnに対して aₙ = n² + 4 となります。
階差数列の階差数列(高階差数列)
階差数列をさらに階差数列にすることもできます。
第2階差数列
元の数列{aₙ}の階差数列を{bₙ}、{bₙ}の階差数列を{cₙ}とすると、{cₙ}を第2階差数列といいます。
記号では Δ²aₙ と表します。
階差と多項式の次数の関係
ここに面白い規則性があります。
等差数列(1次式)
- 第1階差:定数
2次式の数列
- 第1階差:1次式
- 第2階差:定数
3次式の数列
- 第1階差:2次式
- 第2階差:1次式
- 第3階差:定数
一般に、n次式の数列は第n階差で定数になります。
階差表の例
数列 1, 4, 10, 20, 35, … を階差表にしてみましょう。
1 4 10 20 35 ... ← 元の数列
3 6 10 15 ... ← 第1階差
3 4 5 ... ← 第2階差
1 1 ... ← 第3階差(定数!)
第3階差が定数になったので、この数列は3次式で表せることがわかります。
階差数列を使った問題の解き方
実際の問題を解きながら、階差数列の使い方をマスターしましょう。
例題1:階差が等差数列の場合
問題
数列 5, 11, 21, 35, 53, … の一般項を求めよ。
解答
まず、階差数列を作ります。
11 - 5 = 6
21 - 11 = 10
35 - 21 = 14
53 - 35 = 18
階差数列は 6, 10, 14, 18, … となり、初項6、公差4の等差数列です。
したがって、bₙ = 6 + (n-1)×4 = 4n + 2
n≧2のとき、
aₙ = a₁ + Σ(k=1からn-1まで) bₖ
= 5 + Σ(k=1からn-1まで) (4k + 2)
= 5 + 4×(n-1)n/2 + 2(n-1)
= 5 + 2n(n-1) + 2(n-1)
= 5 + 2n² - 2n + 2n - 2
= 2n² + 3
n=1のとき、2×1² + 3 = 5 = a₁ ✓
したがって、aₙ = 2n² + 3
例題2:階差が等比数列の場合
問題
数列 1, 4, 10, 28, 82, … の一般項を求めよ。
解答
階差数列を作ります。
4 - 1 = 3
10 - 4 = 6
28 - 10 = 18
82 - 28 = 54
階差数列は 3, 6, 18, 54, … となり、初項3、公比3の等比数列です。
bₙ = 3×3ⁿ⁻¹ = 3ⁿ
n≧2のとき、
aₙ = a₁ + Σ(k=1からn-1まで) bₖ
= 1 + Σ(k=1からn-1まで) 3ᵏ
= 1 + 3(3ⁿ⁻¹ - 1)/(3 - 1)
= 1 + 3(3ⁿ⁻¹ - 1)/2
= 1 + (3ⁿ - 3)/2
= (2 + 3ⁿ - 3)/2
= (3ⁿ - 1)/2
n=1のとき、(3¹ – 1)/2 = 1 = a₁ ✓
したがって、aₙ = (3ⁿ – 1)/2
階差数列と漸化式
階差数列は、漸化式の形でも表されることがあります。
階差型の漸化式
aₙ₊₁ = aₙ + f(n)
この形の漸化式は、階差数列が bₙ = f(n) であることを意味しています。
解き方
例:a₁ = 1、aₙ₊₁ = aₙ + 2ⁿ – 2n で定義される数列の一般項を求めよ。
この漸化式から、階差数列は bₙ = 2ⁿ – 2n とわかります。
n≧2のとき、
aₙ = a₁ + Σ(k=1からn-1まで) (2ᵏ - 2k)
= 1 + Σ(k=1からn-1まで) 2ᵏ - 2Σ(k=1からn-1まで) k
= 1 + 2(2ⁿ⁻¹ - 1)/(2-1) - 2×(n-1)n/2
= 1 + (2ⁿ - 2) - n(n-1)
= 2ⁿ - n² + n - 1
n=1のとき、2¹ – 1² + 1 – 1 = 1 = a₁ ✓
したがって、aₙ = 2ⁿ – n² + n – 1
よくある間違いと注意点

階差数列を使うときに、よくある間違いを確認しておきましょう。
間違い1:n=1の確認を忘れる
公式で求めたaₙが、n=1のときにa₁と一致するか必ず確認しましょう。
一致しない場合は、場合分けが必要です。
間違い2:階差数列の項番号を間違える
階差数列の項番号は、元の数列の小さい方の番号と同じです。
b₁ = a₂ - a₁
b₂ = a₃ - a₂
bₙ = aₙ₊₁ - aₙ
これを間違えると、すべてがズレてしまいます。
間違い3:等比数列の和を間違える
階差数列が等比数列のとき、和の公式を正しく使いましょう。
初項a、公比r、項数nの等比数列の和
S = a(rⁿ - 1)/(r - 1) (r ≠ 1のとき)
階差数列の応用
階差数列の考え方は、高校数学だけでなく、さまざまな分野で応用されています。
数値解析への応用
有限差分法という数値計算の手法では、階差の考え方を使って微分方程式を解きます。
微分(連続的な変化)を、階差(離散的な変化)で近似するんです。
パターン発見への応用
規則性が見えにくいデータでも、階差を取ることでパターンが見えることがあります。
例えば、次のような応用があります:
- 時系列データの傾向分析
- 多項式関数の推定
- 数列の次の項の予測
Newton の前進差分公式
階差数列を使うと、Newton の前進差分公式という美しい公式が導けます。
これを使えば、いくつかの点の値から多項式関数を推定できます。
階差数列の見つけ方のコツ
数列を見たときに、階差数列を使えばいいかどうか、どう判断すればいいでしょうか?
階差数列が有効なサイン
以下のような場合は、階差数列を試してみましょう:
サイン1:等差数列でも等比数列でもない
規則性がはっきりしない数列は、階差を取ってみる価値があります。
サイン2:項が2乗や3乗に関係していそう
1, 4, 9, 16, 25, … のような数列は、階差が等差数列になります。
サイン3:増え方が加速している
項が急激に大きくなっている場合、階差が等比数列になることがあります。
実践のコツ
コツ1:まず3〜4項の階差を計算してみる
階差に規則性があるかどうか、すぐにわかります。
コツ2:等差か等比かを見極める
階差が等差数列か等比数列かで、解き方が変わります。
コツ3:階差の階差も考えてみる
第1階差で規則性が見えなければ、第2階差も試してみましょう。
練習問題にチャレンジ
最後に、理解度を確認する練習問題を用意しました。
問題1
数列 2, 5, 10, 17, 26, … の一般項を求めよ。
ヒント:階差を取ってみましょう。
問題2
a₁ = 3、aₙ₊₁ = aₙ + 3n + 1 で定義される数列の一般項を求めよ。
ヒント:これは階差型の漸化式です。
問題3
数列 1, 2, 4, 8, 16, … の階差数列を求めよ。また、この場合に階差数列を使って一般項を求めることは効率的か考えよ。
ヒント:元の数列が等比数列の場合はどうなるでしょうか?
まとめ:階差数列をマスターしよう
階差数列について、重要なポイントをまとめます。
階差数列の本質
- 定義:隣り合う項の差を順に並べた数列
- 記号:bₙ = aₙ₊₁ – aₙ または Δaₙ
- 目的:規則性が見えにくい数列のパターンを発見する
一般項を求める公式
n ≧ 2 のとき
aₙ = a₁ + Σ(k=1からn-1まで) bₖ
必ず n=1 のときも確認すること!
階差と多項式の関係
- n次式の数列 → 第n階差が定数
- 等差数列(1次式) → 第1階差が定数
- 2次式 → 第2階差が定数
使い分けのポイント
階差数列が有効
- 規則性が不明瞭な数列
- 階差が等差数列や等比数列になる場合
階差数列が不要
- 元の数列が等差数列または等比数列(そのまま公式を使う方が簡単)
- 明らかな規則性がある数列
実践での注意点
- 階差数列の項番号を間違えない
- n=1の確認を忘れない
- シグマの計算を正確に行う
- 等比数列の和の公式を正しく使う
階差数列は、一見複雑に見える数列の規則性を見つけ出す強力なツールです。
最初は難しく感じるかもしれませんが、何問か解いていくうちに、パターンが見えてきます。
「隣り合う項の差を取ってみる」というシンプルな発想が、数学の深い理解につながるんですね。
ぜひ練習問題にチャレンジして、階差数列をマスターしてください!


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