中国神話のおすすめ本9選|初心者から上級者まで読みやすい書籍を厳選

神話・歴史・伝承

中国神話に興味を持ったものの、
「どの本から読めばいいかわからない」
「神様の数が多すぎて混乱しそう」
と悩んでいませんか?

実は、中国神話には他の神話にはない独特の難しさがあります。

まず、まとまった「神話集」がほとんど存在しないんです。
ギリシャ神話のように体系だった物語ではなく、『山海経』『封神演義』『西遊記』など、さまざまな書物に断片的に散らばっています。
さらに歴史上の人物が神格化されたり、道教・仏教の影響で神々が増えたりと、かなり複雑。

いきなり原典から読み始めると、「誰が誰だかわからない」「話がつながらない」と挫折しがちです。

この記事では、初心者でも楽しく読める入門書から、本格的に学びたい人向けの専門書まで、レベル別に詳しくご紹介します。


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学習方法の基本:入門書からステップアップしよう

なぜ段階的に学ぶべきなのか

中国神話には、他の神話と比べて独特の特徴があります。

  • 神話が体系化されていない(儒家によって多くが失われた)
  • 神様の数が膨大(約200柱以上の神々が存在)
  • 歴史・宗教・民間信仰が複雑に絡み合っている
  • 西遊記や封神演義などの物語が神話のベースになっている

いきなり『山海経』のような原典を読もうとするのは、古文を習っていないのに『源氏物語』の原文を読むようなもの。
読むこと自体が苦痛になってしまいます。

おすすめの学習ステップ

  1. イラストや図解が豊富な入門書で全体像をつかむ
  2. やさしい解説書で主要な神々や物語を学ぶ
  3. 古典文学(西遊記・封神演義など)のダイジェスト版を読む
  4. 専門書や原典でより深く学ぶ

この順序で進めれば、無理なく知識を積み重ねていけます。

入門書や解説書は現代人にも読みやすい形になっているので、「自分がこの神話に興味を持てるか?」を確認する意味でも最適です。


初心者向け:最初の一冊におすすめの入門書

まずはここから始めましょう。
イラストが豊富で、活字が苦手な人でも読み進められる本を厳選しました。

『ゼロからわかる中国神話・伝説』かみゆ歴史編集部

  • おすすめ度:★★★★★
  • こんな人におすすめ:中国神話を初めて学ぶ人、全体像を把握したい人
  • 特徴:文庫サイズで手軽、イラスト豊富で読みやすい

盤古や女媧といった創世神話から、関羽や岳飛など神格化された歴史上の英雄、さらには『西遊記』や『封神演義』のキャラクターまで幅広くカバー。

5章構成で、中国神話の成り立ち、道教の神々、伝奇小説の人物、歴史上の英雄、霊獣・妖怪まで網羅しています。

「中国神話って何から手をつければいいの?」という人に最適な一冊。


『[ヴィジュアル版]中国神話物語百科』シュエティン・C・ニー著

  • おすすめ度:★★★★★
  • こんな人におすすめ:ビジュアル重視で学びたい人、図版を楽しみたい人
  • 特徴:160点以上の図版収録、4000年の歴史を網羅

2025年に発売された新しい本で、美麗な図版とともに中国神話の世界を視覚的に理解できます。

道教や仏教、陰陽五行、民間伝承など、中国神話を構成する多様な要素を丁寧に解説。
宇宙の始まりから伝説の怪物まで、幅広いトピックを収録しています。

神話をビジュアルで楽しみながら学びたい人におすすめ。

思ったよりも余白大きめで読みやすい印象。


中級者向け:もっと詳しく学びたい人に

入門書を読んで「もっと深く知りたい!」と思ったら、次のステップへ進みましょう。

『山海経』高馬三良 訳(平凡社ライブラリー)

  • おすすめ度:★★★★★(最もおすすめ!)
  • こんな人におすすめ:中国神話の原典に触れたい人、妖怪・霊獣好きな人
  • 特徴:中国最古の地理書にして神話の宝庫、水木しげるによる解説付き

『山海経』は中国神話研究において最も重要な原典の一つ

紀元前4世紀頃から徐々に成立したとされるこの書物には、異形の神々、怪物、霊獣が膨大に記録されています。
西王母や崑崙山の伝説、九尾の狐のルーツなど、中国神話のエッセンスが詰まった一冊。

小野不由美の『十二国記』が参考にした本としても有名で、ファンタジー好きにもおすすめ。

ただし、物語というより「図鑑」的な構成なので、ストーリーを楽しみたい人は入門書と併読するのがベター。


『中国の神話伝説』上下巻 袁珂 著、鈴木博 訳(青土社)

  • おすすめ度:★★★★★
  • こんな人におすすめ:体系的に中国神話を学びたい人
  • 特徴:中国神話学の大家による決定版、上下巻で詳細に解説

著者の袁珂は、断片的にしか残っていなかった中国神話を系統立てて「中国神話学」を確立した人物。

天地開闢、洪水伝説、黄帝と炎帝の戦争、牽牛と織女の物語など、中国神話の主要なエピソードを網羅的に収録。
道教や仏教以前の原始的な神話から、民間信仰に至るまで幅広くカバーしています。

下巻には索引や著者の自伝もあり、研究用途にも対応。


『中国神話史』袁珂 著、佐々木猛 訳(集広舎)

  • おすすめ度:★★★★☆
  • こんな人におすすめ:学術的に正確な情報を求める人、研究者
  • 特徴:2023年に翻訳が完成した決定版、詳細な訳注と索引付き

袁珂の代表作『中国神話史』の日本語完訳版。
原始社会の神話から明清時代、さらには少数民族の神話まで、中国神話の全体像を歴史的に追跡しています。

18章構成で、『山海経』の神話、仙話と仏教の影響、歴史上の人物の神話化など、専門的なトピックを詳しく解説。

ただし学術書なので、入門書を読んでからがおすすめ。


『中国神話・伝説大事典』袁珂 著(大修館書店)

  • おすすめ度:★★★★★
  • こんな人におすすめ:辞書として使いたい人、調べ物用途
  • 特徴:収録項目数3000以上、図版370点以上収録

中国神話・伝説に関して初めて編まれた大事典。

『山海経』『淮南子』『楚辞』『呂氏春秋』など、典拠となる文献の章句を明示し、書き下し文や現代語訳も併記。
九尾の狐が玉藻前に、河伯が河童になるなど、日本への影響についても言及しています。

辞書として手元に置いておくと、創作や研究に非常に便利。


古典文学を読みたい人向け:物語として楽しむ

中国神話は、『西遊記』や『封神演義』といった古典小説と深く結びついています。
これらを読むことで、神々や仙人たちの物語を楽しみながら理解できます。

『封神演義』安能務 編訳(講談社文庫)全3巻

  • おすすめ度:★★★★☆
  • こんな人におすすめ:物語として中国神話を楽しみたい人
  • 特徴:読みやすい文体、全3巻でコンパクト

殷周革命を舞台に、仙人や道士、妖怪たちが人界と仙界を二分して大戦争を繰り広げる壮大な物語。
太公望(姜子牙)や哪吒、楊戩といったキャラクターは、現代の漫画やゲームにも多大な影響を与えています。

注意点:安能版は独自の改変が多く、「翻案」に近い内容です。
「なたく」「ようぜん」などの読み方も安能版オリジナル(本来は「ナタ」「ヨウセン」)。

原作に忠実なものを読みたい場合は、後述の『全訳 封神演義』がおすすめ。


『全訳 封神演義』二階堂善弘 監訳(勉誠社)全4巻

  • おすすめ度:★★★★★
  • こんな人におすすめ:原典に忠実な翻訳を読みたい人
  • 特徴:全100回を完訳、神仙・民間信仰の専門家チームによる翻訳

中国文学・神仙研究・民間信仰の専門家たちが手がけた、本格的な完訳版。
安能版とは異なり、原典に忠実な翻訳になっています。

各巻末には「図像化」「演劇」など、物語にまつわる多面的なコラムも収載。
『封神演義』を学術的にも楽しみたい人に最適。


『西遊記』(岩波文庫)全10巻

  • おすすめ度:★★★★☆
  • こんな人におすすめ:孫悟空や三蔵法師の物語を原典で読みたい人
  • 特徴:中国四大奇書の一つ、完訳版

三蔵法師がインドへ経典を取りに行く旅を描いた、中国を代表する神怪小説。
孫悟空、猪八戒、沙悟浄といったキャラクターは日本でもおなじみですね。

封神演義と西遊記の楽しみ方
封神演義を先に読んでおくと、西遊記がより楽しめます。
封神演義で強敵として描かれた仙人たちが、西遊記では悟空にあっさりやられてしまう場面は、ある意味ギャグとして読めます。

調べるときは漢字に注意。
『最遊記』で調べると漫画が出てくる。


レベル別・目的別の本選びガイド

あなたはどのタイプ?

目的おすすめの本
とにかく手軽に始めたいゼロからわかる中国神話・伝説
ビジュアル重視で学びたい[ヴィジュアル版]中国神話物語百科
原典に触れたい山海経』(平凡社ライブラリー)
辞典として使いたい中国神話・伝説大事典
物語を楽しみたい封神演義』『西遊記
学術的に学びたい中国神話史』『中国の神話伝説

おすすめの読む順序

ステップ1:まずは1冊読み切る

イラスト豊富な入門書でOK。
とりあえず楽しむことを優先しましょう。

ステップ2:興味のある分野を深掘り

  • 特定の神様(西王母、関羽、媽祖など)
  • 特定の物語(封神演義、西遊記)
  • 霊獣・妖怪(四神、麒麟、九尾狐など)

ステップ3:体系的に学ぶ

袁珂の著作などで正確な知識を身につける。
神々の関係性や物語の背景を整理する。

ステップ4:原典に挑戦

『山海経』や『封神演義』の完訳版で、原典の世界に触れてみましょう。

西遊記などは漫画もあるので、そちらから入るのも良いかも。


よくある疑問と回答

Q: 中国神話とギリシャ神話の違いは?

A: 体系化の度合いが大きく異なります。

ギリシャ神話は比較的体系的にまとめられているのに対し、中国神話は断片的に散らばっています。
これは儒家が「怪力乱神を語らず」と神話を排斥したためと言われています。

また、中国神話は歴史上の人物が神格化される傾向が強いのも特徴です。

Q: 日本の神仏と中国神話の関係は?

A: 多くの神様がルーツを同じくしています。

  • 帝釈天 = インドラ(中国経由で日本へ)
  • 弁財天 = サラスヴァティー
  • 毘沙門天 = クベーラ
  • 関帝 = 関羽(三国志の武将)

仏教や道教とともに、中国の神々も日本に伝わりました。

Q: 現代でも役立つ知識?

A: 想像以上に役立ちます!

  • ゲーム・アニメ:FGO、モンスト、メガテンなど多くの作品で中国神話のキャラクターが登場
  • 映画:最近の中国映画(『封神』シリーズなど)は中国神話が題材
  • サブカルチャー:漫画やライトノベルでも頻繁に引用される
  • 美術鑑賞:中国美術や東アジアの寺院彫刻の理解が深まる

まとめ

学習のポイント

  1. 無理をしない
    いきなり難しい本から始めず、自分のレベルに合った本を選びましょう。
  2. 楽しむことを最優先
    「勉強」と思わず、「物語」として楽しみましょう。
    神々の人間臭さやスケールの大きさを味わってください。
  3. 完璧を求めない
    神様の名前をすべて覚えようとしなくて大丈夫。
    最初は名前を気にせず、ストーリーを追うことを優先しましょう。
  4. 関連する文化も楽しむ
    映画、ゲーム、美術館なども活用して、多角的に神話を楽しみましょう。

おすすめの最初の3冊

超初心者の方

  1. ゼロからわかる中国神話・伝説』かみゆ歴史編集部
  2. [ヴィジュアル版]中国神話物語百科

ある程度読書に慣れている方

  1. 山海経』高馬三良 訳(平凡社ライブラリー)
  2. 中国の神話伝説』袁珂 著(青土社)
  3. 封神演義』安能務 編訳 または『全訳 封神演義』二階堂善弘 監訳

最後に

中国神話は、約4000年以上の歴史を持つ人類の貴重な文化遺産です。

他の神話と比べて体系化されておらず、情報が散らばっているため「難しそう」と感じるかもしれません。
でも、一度その世界に足を踏み入れれば、スケールの大きさと神々の人間臭さに魅了されるはず。

ぜひ、自分に合った一冊から中国神話の世界に触れてみてください。


紹介した書籍一覧

初心者向け入門書

  1. ゼロからわかる中国神話・伝説』かみゆ歴史編集部(文庫ぎんが堂)
  2. [ヴィジュアル版]中国神話物語百科』シュエティン・C・ニー著(原書房)

中級者向け

  1. 山海経』高馬三良 訳(平凡社ライブラリー)
  2. 中国の神話伝説』上下巻 袁珂 著(青土社)
  3. 中国神話史』袁珂 著(集広舎)
  4. 中国神話・伝説大事典』袁珂 著(大修館書店)

古典文学

  1. 封神演義』安能務 編訳(講談社文庫)全3巻
  2. 全訳 封神演義』二階堂善弘 監訳(勉誠社)全4巻
  3. 西遊記』(岩波文庫)全10巻

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