北欧神話「アース神族」とは?主要な神々を一覧で徹底解説

神話・歴史・伝承

映画やゲームで「オーディン」「トール」という名前を聞いたことはありませんか?

これらはすべて、北欧神話に登場するアース神族の神々の名前です。

「マイティ・ソー」や「ゴッド・オブ・ウォー」などの作品で北欧神話に興味を持った方も多いのではないでしょうか。でも「名前は知っているけど、どんな神様なの?」「たくさんいすぎてよくわからない」という声もよく聞きます。

北欧神話の神々は、ギリシャ神話の神々とはまた違った魅力を持っています。戦いと知恵を重んじ、最終的には世界の終末「ラグナロク」で滅びる運命を知りながらも、勇敢に戦い続ける姿が特徴的なんです。

この記事では、北欧神話の中心となるアース神族について、主要な神々を一覧形式でわかりやすく解説していきます。

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アース神族って何?

北欧神話の中心となる神々

アース神族とは、北欧神話における主要な神々の一族のことです。

古ノルド語では単数形を「アース(Áss)」、複数形を「エーシル(Æsir)」と呼びます。この言葉自体が「神」を意味していたんです。

彼らは世界樹ユグドラシルの上方にあるアースガルズという神々の国に住んでいました。人間の世界ミズガルズとは、虹の橋ビフレストでつながっています。

北欧神話にはもう一つの神族がいる

実は北欧神話には、アース神族の他にヴァン神族という別の神々のグループも存在します。

両者の違いを簡単にまとめると、次のようになります。

アース神族の特徴

  • 戦争と支配を司る
  • オーディン、トールなど戦いの神が多い
  • アースガルズに住む

ヴァン神族の特徴

  • 豊穣と平和を司る
  • フレイ、フレイヤなど自然に関わる神が多い
  • ヴァナヘイムに住む

この二つの神族は最初は戦っていましたが、やがて和解しました。その際、人質としてヴァン神族のニョルズ、フレイ、フレイヤがアースガルズに迎え入れられています。

そのため、現在では両神族をまとめて「アース神族」と呼ぶこともあるんです。

最も重要な男神たち

オーディン──万物の父にして知恵の神

基本情報

  • 別名:万物の父、戦父、放浪者
  • 司る分野:知恵、戦争、死、魔術、詩、ルーン
  • シンボル:グングニルの槍、2羽のワタリガラス、8本足の馬スレイプニル

オーディンはアース神族の長であり、北欧神話の最高神です。

知恵と戦いを司る神で、つば広の帽子で片目を隠し、青い外套をまとった老人の姿で描かれます。なぜ片目なのでしょうか?実は知恵を得るために、自らミーミルの泉に片目を差し出したからなんです。

さらにルーン文字の秘密を解き明かすため、自らの体に槍を突き刺し、世界樹ユグドラシルに9日9夜もの間、首を吊ったこともあります。知識への執念がすさまじいですね。

有名なエピソード

オーディンは2羽のワタリガラス「フギン(思考)」と「ムニン(記憶)」を世界中に飛ばし、あらゆる情報を集めています。また、戦場で勇敢に死んだ戦士たちの魂をヴァルハラ宮殿に集め、来たるラグナロクに備えて訓練させていました。

ラグナロクでは巨狼フェンリルと戦い、命を落とす運命にあります。

トール──雷神にして最強の戦士

基本情報

  • 別名:雷神、人間の守護者
  • 司る分野:雷、嵐、農耕、力
  • シンボル:ミョルニル(雷槌)、力帯メギンギョルズ、鉄の手袋

トールはアース神族で最も力の強い神として知られています。

オーディンと大地の女神ヨルズの息子で、赤いひげと大柄な体格が特徴です。豪快で短気だけれど、根は親切で情に厚い性格をしています。

主神オーディンよりも、一般の農民たちからは圧倒的に人気がありました。庶民を守り、法と秩序を象徴する存在だったからです。

有名なエピソード

トールの武器である雷槌ミョルニルは、投げれば必ず的に当たり、手元に戻ってくる魔法の武器です。この武器で数え切れないほどの巨人を倒してきました。

ラグナロクでは世界蛇ヨルムンガンドと死闘を繰り広げます。見事に蛇を倒しますが、その毒を受け、9歩歩いたところで息絶えたとされています。

バルドル──光と美の神

基本情報

  • 別名:輝く者
  • 司る分野:光、美、愛、平和
  • 特徴:神々の中で最も美しく、最も賢く、最も愛された存在

バルドルはオーディンとフリッグの息子で、アース神族の中で最も純粋で美しい神です。

誰からも愛され、賞賛される存在でした。まるでギリシャ神話のアポロンのような、光り輝く若き神といえるでしょう。

有名なエピソード

バルドルの死は北欧神話で最も悲しい出来事とされています。

母フリッグはあらゆるものに「バルドルを傷つけない」と誓わせましたが、小さなヤドリギだけは見落としていました。それを知ったトリックスター・ロキは、盲目の神ホズを騙してヤドリギの矢でバルドルを射させます。

この事件がラグナロクを早める原因の一つになったんです。

テュール──軍神にして正義の神

基本情報

  • 別名:片腕の神
  • 司る分野:戦争、法、正義、誓い
  • 特徴:右手がない

テュールはアース神族で最も勇敢な神とされています。

かつてはオーディンと同格、あるいはそれ以上に崇拝されていた古い神でした。英語の「Tuesday(火曜日)」は彼の名前に由来しています。

有名なエピソード

なぜテュールは片腕なのでしょうか?

巨狼フェンリルを縛るとき、神々は約束を守る証として誰かが口の中に手を入れる必要がありました。テュールだけが名乗り出たのです。

フェンリルは騙されたと知ると、テュールの右手を食いちぎりました。この犠牲によって、神々はラグナロクまでフェンリルを封じ込めることができたんです。

ヘイムダル──虹の橋の番人

基本情報

  • 別名:白い神、世界で最も注意深い神
  • 司る分野:守護、警戒、光
  • 特徴:9人の母から生まれた、驚異的な感覚の持ち主

ヘイムダルはアースガルズと他の世界をつなぐ虹の橋ビフレストの守護者です。

夜目がきき、草が伸びる音さえ聞くことができるほど鋭敏な感覚を持っています。眠りをほとんど必要とせず、常に警戒を怠りません。

有名なエピソード

ラグナロクの始まりを知らせるのがヘイムダルの役目です。巨人軍が攻めてくると、彼はギャラルホルンという角笛を吹き鳴らし、神々に戦いの時が来たことを告げます。

最終決戦では宿敵ロキと相討ちになる運命にあります。

その他の重要な男神たち

ブラギ

  • 詩と音楽の神
  • オーディンの息子で、長いひげが特徴
  • ハープを演奏しながら、訪問者をもてなす役割を持つ

ホズ

  • 盲目の神
  • ロキに騙されて兄バルドルを殺してしまった
  • ラグナロク後、バルドルとともに復活する

ヴィーザル

  • 沈黙の神、森の神
  • オーディンの息子で、トールに次ぐ怪力の持ち主
  • ラグナロクでフェンリルを倒し、父の仇を討つ

フォルセティ

  • 和解と正義の神
  • バルドルの息子
  • 争いごとの調停を司る

ウル

  • 狩猟、弓術、スキーの神
  • シヴの連れ子(トールの継子)
  • 決闘の神としても崇拝された

主要な女神たち(アーシュニャ)

フリッグ──神々の女王

基本情報

  • 別名:すべてを知る者
  • 司る分野:結婚、母性、家庭、予言
  • 特徴:オーディンの正妻で、アースガルズの女主人

フリッグはアース神族の女神の中で最も高い地位にある女神です。

未来を見通す力を持っていますが、その知識を誰にも語りません。愛する息子バルドルの死を予見していたにもかかわらず、防ぐことができなかった悲しみを抱えています。

特徴的なポイント

フリッグには多くの侍女がいて、それぞれが特定の役割を担っています。英語の「Friday(金曜日)」は彼女の名前に由来するという説もあります。

イズン──永遠の若さを守る女神

基本情報

  • 別名:若返りのリンゴの管理者
  • 司る分野:青春、不死
  • 特徴:無邪気でお人好しな性格

イズンは神々に永遠の若さをもたらす黄金のリンゴを管理する女神です。詩の神ブラギの妻でもあります。

このリンゴがなければ、神々も年老いてしまうんです。

有名なエピソード

ある日、イズンはロキに騙されて巨人スィアチに誘拐されてしまいます。リンゴを失った神々は急速に老い始めました。

慌てた神々はロキを脅し、イズン救出に向かわせます。ロキは鷹に変身し、イズンを木の実に変えて運び出すことに成功しました。

シヴ──黄金の髪を持つ女神

基本情報

  • 別名:輝く髪の女神
  • 司る分野:大地、収穫
  • 特徴:トールの妻、ウルの母

シヴはその美しい黄金の髪で知られる女神です。トールの妻として、彼の帰りを待つ献身的な妻として描かれています。

有名なエピソード

ある時、いたずら好きのロキがシヴの髪を切り取ってしまいました。激怒したトールに脅されたロキは、ドワーフたちに魔法の黄金の髪を作らせます。

この髪は頭につけると本物の髪として生えるという優れものでした。この事件をきっかけに、ミョルニルなど神々の宝物が次々と作られることになります。

その他の重要な女神たち

フレイヤ(ヴァン神族出身)

  • 愛と美、豊穣の女神
  • 魔法と予言に長け、アース神族の中で最も美しいとされる
  • 戦死者の半分を自分の館に迎える

ゲフィオン

  • 乙女と農耕の女神
  • フリッグの侍女の一人
  • 巨大な鋤でシェラン島を作ったという伝説を持つ

エイル

  • 医術の女神
  • 「最良の医者」として神々を癒す

ナンナ

  • バルドルの妻
  • 夫の死に際して悲しみのあまり命を落とした

ソール

  • 太陽の女神
  • 馬車に乗って毎日空を駆ける
  • ラグナロクで狼スコルに飲み込まれる

アース神族の世界と暮らし

アースガルズ──神々の住まう国

アースガルズはユグドラシルの最も高く、最も陽当たりの良い枝にある神々の国です。

ここにはオーディンのヴァルハラ宮殿をはじめ、それぞれの神々が自分の館を構えていました。神々は毎日ウルズの泉のそばにある集会所に集まり、世界のあらゆる事柄について裁きを下していたんです。

若さを保つ秘密

アース神族は不老不死というわけではありません。

彼らが若さを保っていられるのは、イズンが管理する黄金のリンゴを定期的に食べているからです。このリンゴがなくなれば、神々も人間と同じように老いてしまいます。

巨人族との戦い

アース神族の日常は常に平穏というわけではありませんでした。

ヨトゥンヘイムに住む巨人族が神々の世界を脅かすことがしばしばあったのです。そのたびにトールの怪力やロキの狡猾な知恵で危機を乗り越えてきました。

ラグナロク──神々の黄昏

避けられない運命

北欧神話の大きな特徴は、神々自身が自分たちの滅びを知っているという点です。

世界の終末「ラグナロク」では、巨人族や怪物たちがアースガルズに攻め込んできます。フェンリル、ヨルムンガンド、火の巨人スルトといった強大な敵に、神々は死力を尽くして立ち向かいます。

主な神々の最期

  • オーディン:巨狼フェンリルに飲み込まれる
  • トール:世界蛇ヨルムンガンドを倒すが、毒で死亡
  • ヘイムダル:ロキと相討ち
  • フレイ:スルトに敗れる

世界の再生

しかし、すべてが終わりではありません。

ラグナロク後、世界は海から再び浮かび上がり、生き残った神々が新しい世界を治めることになります。バルドルとホズも冥界から戻り、トールの息子マグニとモージも生き延びて父の槌ミョルニルを受け継ぐんです。

アース神族 完全一覧表

主要な男神(アース)

神名役割・司るもの特徴
オーディン知恵、戦争、死、魔術アース神族の長、片目の老神
トール雷、嵐、力、農耕最強の戦士、ミョルニルを持つ
バルドル光、美、平和最も愛された神、ヤドリギで死す
テュール戦争、法、正義片腕の軍神、最も勇敢な神
ヘイムダル守護、警戒虹の橋の番人、驚異的な感覚
ブラギ詩、音楽長いひげを持つ詩神
ホズ闘争盲目の神、バルドルを殺害
ヴィーザル森、復讐沈黙の神、フェンリルを討つ
ヴァーリ復讐ホズを討ってバルドルの仇を討つ
フォルセティ和解、正義バルドルの息子
ウル狩猟、弓術、スキーシヴの連れ子
ヘルモーズ使者バルドル救出に冥界へ向かった
ロキトリックスター巨人族出身だがオーディンの義兄弟

主要な女神(アーシュニャ)

女神名役割・司るもの特徴
フリッグ結婚、母性、予言神々の女王、オーディンの妻
フレイヤ愛、美、豊穣、魔法ヴァン神族出身、最も美しい女神
イズン青春、不死黄金のリンゴの管理者
シヴ大地、収穫トールの妻、黄金の髪を持つ
ゲフィオン乙女、農耕シェラン島を作った女神
エイル医術最良の医者と呼ばれる
サーガ歴史、物語フリッグと同一視されることも
フッラ秘密フリッグの侍女
ナンナ喜びバルドルの妻
シギュン献身ロキの妻、夫に献身的
ソール太陽太陽を運ぶ女神
ヨルズ大地トールの母

ヴァン神族出身でアース神族に加わった神々

神名役割・司るもの備考
ニョルズ海、風、富人質としてアースガルズへ
フレイ豊穣、平和、繁栄ニョルズの息子
フレイヤ愛、美、魔法ニョルズの娘

現代文化への影響

北欧神話、特にアース神族は現代のポップカルチャーに大きな影響を与え続けています。

映画・ドラマ

  • マーベルの「マイティ・ソー」シリーズ
  • 「ヴァイキング」シリーズ

ゲーム

  • 「ゴッド・オブ・ウォー」シリーズ
  • 「アサシンクリード ヴァルハラ」
  • 「原神」のモンドの神々

その他

  • 曜日の名前(Wednesday=オーディンの日、Thursday=トールの日、Friday=フリッグの日)
  • J・R・R・トールキン「指輪物語」への多大な影響

まとめ

アース神族は、北欧神話の中心となる神々の一族です。

オーディンを長とし、トール、バルドル、フリッグといった個性豊かな神々が所属しています。彼らの特徴は、自らの滅びを知りながらも勇敢に戦い続ける姿勢にあるでしょう。

ギリシャ神話の神々が人間くさい欠点を持ちながらも永遠の存在であるのに対し、アース神族は最終的に滅びる運命を受け入れています。その潔さと勇ましさが、今なお多くの人を惹きつけてやまないのかもしれません。

興味を持った神様がいたら、ぜひ「エッダ」などの原典にも触れてみてください。現代のアレンジとはまた違った、古代北欧の人々の世界観を感じることができるはずです。

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