「サイコロを2回振るとき、1回目と2回目は独立って言うけど、どういうこと?」
「独立と排反って、何が違うの?」
確率を学ぶとき、必ず出てくる独立という概念。
実は、独立は「一方の結果が、もう一方の結果に影響を与えない」という、確率論の最も基本的で重要な考え方なんです。
この記事では、独立の意味や具体例、計算方法を分かりやすく解説していきます。混同しやすい「排反」との違いもしっかり説明しますので、最後までお読みください!
独立とは何か?基本的な意味を理解しよう

独立の直感的なイメージ
独立とは、簡単に言うと「お互いに影響し合わない」ということです。
たとえば、サイコロを2回振るとき:
- 1回目に6が出たからといって、2回目に6が出やすくなることはない
- 1回目に何が出ても、2回目の確率は変わらない
このように、一方の結果がもう一方の結果に全く影響を与えないとき、これらは独立であると言います。
日常生活での独立の例
独立な例
- コインを投げて、同時にサイコロを振る
- 東京の天気と、北海道の天気(一般的に)
- 今日のじゃんけんの結果と、明日のじゃんけんの結果
独立でない例(従属)
- トランプから1枚引いて、元に戻さずにもう1枚引く
- 気温と、アイスの売上
- 勉強時間と、テストの点数
事象の独立と試行の独立の違い
数学における独立には、大きく分けて2つの種類があります。
試行の独立
試行とは、サイコロを振る、コインを投げるなどの「実験や操作」のことです。
試行の独立とは、「ある試行の結果が、別の試行の結果に影響を与えない」ことを意味します。
例:サイコロを2回振る
1回目にどんな目が出ても、2回目の試行には何の影響もありません。
これらの試行は独立です。
事象の独立
事象とは、試行によって起こる「結果」のことです。
事象の独立とは、「ある事象が起こることが、別の事象が起こる確率に影響を与えない」ことを意味します。
例:サイコロを1回振ったときの2つの事象
事象A:偶数の目が出る(2、4、6)
事象B:3の倍数が出る(3、6)
この2つの事象は、同じ1回の試行における事象ですが、実は独立です。
独立の数学的定義
独立を正確に理解するために、数学的な定義を見ていきましょう。
事象の独立の定義
2つの事象AとBが独立であるとは、次の式が成り立つことです:
P(A ∩ B) = P(A) × P(B)
記号の意味:
- P(A):事象Aが起こる確率
- P(B):事象Bが起こる確率
- P(A ∩ B):事象AとBが両方起こる確率(積事象の確率)
条件付き確率による定義
独立は、条件付き確率を使って次のようにも表現できます:
P(A|B) = P(A)
これは「事象Bが起こったという条件のもとで事象Aが起こる確率」が、「事象Aが起こる確率」と等しいということです。
つまり、Bが起こったかどうかという情報が、Aが起こる確率に影響を与えないということです。
独立でない場合(従属)
2つの事象が独立でないとき、これらは従属であると言います。
従属の場合:
P(A ∩ B) ≠ P(A) × P(B)
具体例で独立を理解しよう

実際の例を使って、独立の概念を深めていきましょう。
例1:サイコロを2回振る(試行の独立)
問題
大きいサイコロと小さいサイコロを同時に振る。
事象A:大きいサイコロで偶数が出る
事象B:小さいサイコロで偶数が出る
AとBは独立か?
解答
まず各確率を計算します:
P(A) = 3/6 = 1/2 (偶数は2、4、6の3つ)
P(B) = 3/6 = 1/2
両方とも偶数が出る確率は:
P(A ∩ B) = 1/4 (全36通りのうち9通り)
独立の定義を確認:
P(A) × P(B) = 1/2 × 1/2 = 1/4
P(A ∩ B) = P(A) × P(B) が成り立つので、AとBは独立です。
例2:同じサイコロでの2つの事象(事象の独立)
問題
サイコロを1回振る。
事象A:偶数の目が出る(2、4、6)
事象B:3の倍数が出る(3、6)
AとBは独立か?
解答
各確率を計算:
P(A) = 3/6 = 1/2
P(B) = 2/6 = 1/3
両方が起こる確率(6の目が出る確率):
P(A ∩ B) = 1/6
独立の定義を確認:
P(A) × P(B) = 1/2 × 1/3 = 1/6
P(A ∩ B) = P(A) × P(B) が成り立つので、AとBは独立です。
これは意外に思えるかもしれませんが、同じサイコロの2つの事象でも独立になることがあります。
例3:トランプを引く(従属の例)
問題
トランプ52枚から1枚引き、元に戻さずにもう1枚引く。
事象A:1枚目がハートである
事象B:2枚目がハートである
AとBは独立か?
解答
1枚目がハートの確率:
P(A) = 13/52 = 1/4
1枚目がハートだった場合、2枚目もハートである確率は:
P(B|A) = 12/51 (残り51枚中、ハートは12枚)
一方、2枚目がハートである確率(1枚目の情報なし)は:
P(B) = 13/52 = 1/4
P(B|A) ≠ P(B) なので、AとBは従属です。
1枚目の結果が2枚目の確率に影響を与えています。
独立な事象の計算方法
独立な事象の確率計算には、便利な公式があります。
独立試行の乗法定理
事象AとBが独立であるとき、両方が起こる確率は:
P(A ∩ B) = P(A) × P(B)
これを独立試行の乗法定理と言います。
計算例1:コインとサイコロ
問題
コインを投げて、同時にサイコロを振る。
コインが表で、サイコロが6の目が出る確率は?
解答
コインとサイコロの試行は独立なので:
P(表) = 1/2
P(6の目) = 1/6
P(表かつ6の目) = 1/2 × 1/6 = 1/12
答え:1/12
計算例2:サイコロを3回振る
問題
サイコロを3回振って、すべて6の目が出る確率は?
解答
各試行は独立なので:
P(1回目が6) = 1/6
P(2回目が6) = 1/6
P(3回目が6) = 1/6
P(すべて6) = 1/6 × 1/6 × 1/6 = 1/216
答え:1/216
計算例3:複数の独立な事象
問題
AとBが独立な事象で、P(A) = 0.6、P(B) = 0.7 のとき、
少なくとも一方が起こる確率は?
解答
「少なくとも一方」は余事象を使うと簡単です:
P(AまたはB) = 1 - P(AもBも起こらない)
= 1 - P(A^c ∩ B^c)
AとBが独立なら、A^cとB^cも独立なので:
P(A^c ∩ B^c) = P(A^c) × P(B^c)
= (1 - 0.6) × (1 - 0.7)
= 0.4 × 0.3
= 0.12
したがって:
P(AまたはB) = 1 - 0.12 = 0.88
答え:0.88
排反と独立の違い
独立と混同しやすい概念に「排反」があります。この2つは全く違う概念です。
排反(互いに排反)とは
排反とは、「2つの事象が同時に起こらない」ことを意味します。
数学的には:
P(A ∩ B) = 0
排反の例
サイコロを1回振ったとき:
- 事象A:偶数が出る
- 事象B:奇数が出る
これらは同時に起こらないので排反です。
独立と排反の違い
| 項目 | 独立 | 排反 |
|---|---|---|
| 意味 | 一方が他方の確率に影響しない | 同時に起こらない |
| 数式 | P(A ∩ B) = P(A) × P(B) | P(A ∩ B) = 0 |
| 確率の計算 | 積を使う | 和を使う(P(AまたはB) = P(A) + P(B)) |
重要な注意点
独立と排反は両立しません(確率が0でない限り)
もし事象AとBが排反(P(A ∩ B) = 0)で、かつP(A) > 0、P(B) > 0 ならば:
P(A) × P(B) > 0
しかし、排反なので P(A ∩ B) = 0 です。
したがって、P(A ∩ B) ≠ P(A) × P(B) となり、独立ではありません。
つまり、確率が0でない排反事象は、必ず従属です。
独立性の判定方法
事象が独立かどうかを判定する手順をまとめます。
判定の手順
ステップ1:各事象の確率を求める
P(A) と P(B) を計算します。
ステップ2:積事象の確率を求める
P(A ∩ B) を計算します。
ステップ3:独立の定義式を確認する
P(A ∩ B) = P(A) × P(B) が成り立つか確認します。
- 成り立つ → 独立
- 成り立たない → 従属
判定例題
問題
袋の中に赤玉3個、白玉2個が入っている。
1個取り出して色を確認し、元に戻してからもう1個取り出す。
事象A:1回目が赤
事象B:2回目が赤
AとBは独立か?
解答
各確率を計算:
P(A) = 3/5
P(B) = 3/5 (元に戻すので同じ)
両方赤である確率:
P(A ∩ B) = (3/5) × (3/5) = 9/25
(元に戻すので、独立試行として計算できる)
独立の定義を確認:
P(A) × P(B) = 3/5 × 3/5 = 9/25
P(A ∩ B) = P(A) × P(B) が成り立つので、AとBは独立です。
独立の応用例
独立の概念は、さまざまな場面で活用されます。
応用例1:検査の精度
ある病気の検査を、独立した2つの機関で行う。
各検査の陽性判定率(正しく病気を検出する確率)が92%のとき、
両方とも陽性と判定される確率は?
解答
2つの検査は独立なので:
P(両方陽性) = 0.92 × 0.92 = 0.8464
約84.6%の確率で両方とも陽性と判定されます。
応用例2:システムの信頼性
3つの独立したサーバーがあり、各サーバーが正常に動作する確率が0.95。
少なくとも1つのサーバーが動作する確率は?
解答
余事象を使います:
P(少なくとも1つ動作) = 1 - P(すべて故障)
= 1 - (1 - 0.95)³
= 1 - 0.05³
= 1 - 0.000125
= 0.999875
約99.99%の確率で少なくとも1つは動作します。
応用例3:くじ引き
当たりくじ2本を含む10本のくじから、元に戻しながら2回引く。
2回とも当たる確率は?
解答
元に戻すので、試行は独立:
P(1回目当たり) = 2/10 = 1/5
P(2回目当たり) = 2/10 = 1/5
P(両方当たり) = 1/5 × 1/5 = 1/25
答え:1/25
よくある間違いと注意点
独立の理解でよくある間違いをまとめます。
間違い1:排反と独立を混同する
「同時に起こらない」は排反であって、独立ではありません。
排反な事象(確率が0でない)は、必ず従属です。
間違い2:「関係ない=独立」と考える
直感的に「関係なさそう」でも、数学的には従属のこともあります。
必ず P(A ∩ B) = P(A) × P(B) を確認する必要があります。
間違い3:独立の公式を無条件に使う
1つの試行における2つの事象について、安易に独立の公式を使わないこと。
まず独立性を確認してから公式を使いましょう。
間違い4:元に戻さない場合を独立と考える
トランプやくじ引きで、元に戻さない場合は従属です。
元に戻す場合のみ独立になります。
まとめ:独立を理解するための重要ポイント
独立の概念をしっかり理解するために、重要なポイントをまとめます。
ポイント1:独立の意味を正しく理解する
独立とは「一方の結果がもう一方の確率に影響を与えない」こと。
- 試行の独立:別々の操作が影響し合わない
- 事象の独立:ある事象が別の事象の確率に影響しない
ポイント2:独立の数学的定義
事象AとBが独立 ⇔ P(A ∩ B) = P(A) × P(B)
これは「両方起こる確率=それぞれの確率の積」を意味します。
ポイント3:独立と排反は違う
- 独立:お互いに影響しない(積を使う)
- 排反:同時に起こらない(和を使う)
確率が0でない排反事象は、必ず従属です。
ポイント4:独立の判定は計算で確認
直感だけで判断せず、必ず P(A ∩ B) = P(A) × P(B) が成り立つか計算で確認しましょう。
ポイント5:元に戻すかどうかが重要
くじ引きやカード引きでは:
- 元に戻す → 独立
- 元に戻さない → 従属
独立は確率論の基礎となる重要な概念です。
独立な事象では計算が簡単になり、積の法則が使えるようになります。
この記事で学んだ内容を、問題演習で繰り返し確認して、しっかりマスターしましょう!

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