数学を勉強していると、たくさんの法則や公式が出てきて「これ全部覚えなきゃいけないの?」と圧倒されますよね。
でも安心してください。数学の法則には規則性があり、関連する法則をまとめて理解すれば、記憶の負担はグッと減ります。さらに、基本的な法則を理解していれば、複雑な法則も導き出せることが多いんです。
この記事では、数学の重要な法則を分野別に整理して、それぞれを具体例とともに分かりやすく解説していきます。
法則の丸暗記ではなく、「なぜそうなるのか」「どう使うのか」という視点を大切にしながら説明していきますね。
それでは、最も基本的な演算の法則から見ていきましょう!
演算の基本法則:計算のルールを決める3つの法則

数学の計算には、基本となる3つの法則があります。これらは算数の段階から使っているので、実は皆さんすでに知っているはずですよ。
交換法則(こうかんほうそく)
交換法則 とは、計算する順番を入れ替えても答えが変わらないという法則です。英語では “commutative law” といいます。
足し算の交換法則:a + b = b + a
掛け算の交換法則:a × b = b × a
実例:
- 3 + 5 = 5 + 3 = 8
- 4 × 7 = 7 × 4 = 28
説明:
足し算と掛け算では順番を変えても結果は同じです。ただし、引き算と割り算には交換法則は成り立ちません(5 – 3 ≠ 3 – 5)。
結合法則(けつごうほうそく)
結合法則 とは、3つ以上の数を計算するとき、どこから先に計算しても答えが変わらないという法則です。英語では “associative law” といいます。
足し算の結合法則:(a + b) + c = a + (b + c)
掛け算の結合法則:(a × b) × c = a × (b × c)
実例:
- (2 + 3) + 4 = 2 + (3 + 4) = 9
- (2 × 3) × 4 = 2 × (3 × 4) = 24
説明:
カッコの位置を変えても答えは同じです。これも引き算と割り算には成り立ちません。
分配法則(ぶんぱいほうそく)
分配法則 とは、カッコの外にある数を、カッコの中の各項に掛けることができるという法則です。英語では “distributive law” といいます。
a × (b + c) = a × b + a × c
実例:
- 3 × (4 + 5) = 3 × 4 + 3 × 5 = 12 + 15 = 27
- 2 × (10 – 3) = 2 × 10 – 2 × 3 = 20 – 6 = 14
説明:
分配法則は展開や因数分解の基礎になる重要な法則です。掛け算を足し算や引き算に「分配」するイメージですね。
指数法則:累乗の計算を簡単にする法則
指数(しすう) とは、aⁿのnの部分のことで、「aを何回掛けるか」を表します。指数の計算には便利な法則があります。
基本的な指数法則
同じ底の掛け算:aᵐ × aⁿ = aᵐ⁺ⁿ
実例:
- 2³ × 2² = 2³⁺² = 2⁵ = 32
- x⁴ × x³ = x⁷
説明:
同じ数の累乗を掛けるときは、指数を足します。
同じ底の割り算:aᵐ ÷ aⁿ = aᵐ⁻ⁿ
実例:
- 2⁵ ÷ 2² = 2⁵⁻² = 2³ = 8
- x⁷ ÷ x³ = x⁴
説明:
同じ数の累乗を割るときは、指数を引きます。
累乗の累乗:(aᵐ)ⁿ = aᵐⁿ
実例:
- (2³)² = 2³ˣ² = 2⁶ = 64
- (x²)⁴ = x⁸
説明:
累乗をさらに累乗するときは、指数を掛けます。
積と商の指数法則
(ab)ⁿ = aⁿbⁿ
実例:
- (2 × 3)² = 2² × 3² = 4 × 9 = 36
- (xy)³ = x³y³
(a/b)ⁿ = aⁿ/bⁿ
実例:
- (2/3)² = 2²/3² = 4/9
- (x/y)⁴ = x⁴/y⁴
特殊な指数
a⁰ = 1(ただしa ≠ 0)
実例:
- 5⁰ = 1
- 100⁰ = 1
説明:
0乗は、どんな数でも必ず1になります。
a⁻ⁿ = 1/aⁿ
実例:
- 2⁻³ = 1/2³ = 1/8
- x⁻² = 1/x²
説明:
マイナスの指数は、分数の形で表現できます。
対数法則:指数の逆演算の法則

対数(たいすう) は、指数の逆の操作です。英語では “logarithm” といいます。
基本的な対数法則
対数の積:log(ab) = log a + log b
実例:
- log(2 × 8) = log 2 + log 8
- log₁₀(100 × 1000) = log₁₀ 100 + log₁₀ 1000 = 2 + 3 = 5
説明:
積の対数は、対数の和になります。
対数の商:log(a/b) = log a – log b
実例:
- log(8/2) = log 8 – log 2
- log₁₀(1000/10) = log₁₀ 1000 – log₁₀ 10 = 3 – 1 = 2
対数の累乗:log(aⁿ) = n log a
実例:
- log(2³) = 3 log 2
- log₁₀(10⁵) = 5 log₁₀ 10 = 5 × 1 = 5
説明:
累乗の対数は、指数を前に出せます。
底の変換公式
logₐ b = logc b / logc a
実例:
- log₂ 8を常用対数で表すと:log₂ 8 = log₁₀ 8 / log₁₀ 2
説明:
底を変換したいときに使う便利な公式です。電卓で計算するときなどに役立ちます。
三角関数の法則:角度と比の関係を表す法則
三角関数(さんかくかんすう) は、直角三角形の辺の比や円周上の点の座標を表す関数です。
基本的な三角比の関係
sin²θ + cos²θ = 1
説明:
これは ピタゴラスの定理 から導かれる、最も基本的な三角関数の関係式です。どんな角度θでも必ず成り立ちます。
実例:
- θ = 30°のとき:sin 30° = 1/2、cos 30° = √3/2
- (1/2)² + (√3/2)² = 1/4 + 3/4 = 1
tan θ = sin θ / cos θ
説明:
タンジェントは、サインをコサインで割った値です。
1 + tan²θ = 1/cos²θ
説明:
これも基本的な三角関数の関係式から導かれます。
加法定理
sin(α + β) = sin α cos β + cos α sin β
sin(α – β) = sin α cos β – cos α sin β
cos(α + β) = cos α cos β – sin α sin β
cos(α – β) = cos α cos β + sin α sin β
説明:
2つの角度の和や差の三角関数を、それぞれの角度の三角関数で表す公式です。三角関数の計算で非常によく使われます。
2倍角の公式
sin 2θ = 2 sin θ cos θ
cos 2θ = cos²θ – sin²θ = 2cos²θ – 1 = 1 – 2sin²θ
tan 2θ = 2tan θ / (1 – tan²θ)
説明:
加法定理でα = β = θとすると導けます。角度が2倍になったときの三角関数の値を求める公式です。
半角の公式
sin²(θ/2) = (1 – cos θ)/2
cos²(θ/2) = (1 + cos θ)/2
説明:
2倍角の公式を変形すると得られます。角度が半分になったときの三角関数を求めるのに使います。
微分の法則:変化率を求める法則

微分(びぶん) は、関数の変化の割合(傾き)を求める操作です。英語では “differentiation” といいます。
基本的な微分公式
定数の微分:(c)’ = 0(cは定数)
実例:
- (5)’ = 0
- (100)’ = 0
説明:
定数は変化しないので、微分すると0になります。
べき関数の微分:(xⁿ)’ = nxⁿ⁻¹
実例:
- (x³)’ = 3x²
- (x⁵)’ = 5x⁴
説明:
指数を前に出して、指数を1減らします。これは微分の最も基本的な公式です。
微分の線形性
(af(x) + bg(x))’ = af'(x) + bg'(x)(a、bは定数)
説明:
定数倍や和の微分は、それぞれ微分してから定数倍したり足したりできます。
実例:
- (3x² + 2x)’ = 3(x²)’ + 2(x)’ = 3×2x + 2×1 = 6x + 2
積の微分法則(ライプニッツの法則)
(f(x)g(x))’ = f'(x)g(x) + f(x)g'(x)
実例:
- (x² × x³)’ = (x²)’×x³ + x²×(x³)’ = 2x×x³ + x²×3x² = 2x⁴ + 3x⁴ = 5x⁴
説明:
2つの関数の積を微分するときは、それぞれ片方ずつ微分して足します。
商の微分法則
(f(x)/g(x))’ = (f'(x)g(x) – f(x)g'(x)) / (g(x))²
説明:
分数の微分は少し複雑で、「分子の微分×分母 – 分子×分母の微分」を「分母の2乗」で割ります。
合成関数の微分法則(連鎖律)
(f(g(x)))’ = f'(g(x)) × g'(x)
実例:
- ((x² + 1)³)’ を求める
- 外側の関数 u³ の微分は 3u²
- 内側の関数 x² + 1 の微分は 2x
- よって 3(x² + 1)² × 2x = 6x(x² + 1)²
説明:
関数の中に関数が入っている場合の微分法則です。外側を微分して、内側を微分したものを掛けます。
積分の法則:微分の逆演算の法則
積分(せきぶん) は、微分の逆の操作です。英語では “integration” といいます。
基本的な積分公式
∫xⁿ dx = xⁿ⁺¹/(n+1) + C(n ≠ -1、Cは積分定数)
実例:
- ∫x² dx = x³/3 + C
- ∫x⁴ dx = x⁵/5 + C
説明:
微分の逆なので、指数を1増やして、その数で割ります。Cは積分すると消えてしまう定数です。
積分の線形性
∫(af(x) + bg(x)) dx = a∫f(x) dx + b∫g(x) dx
実例:
- ∫(3x² + 2x) dx = 3∫x² dx + 2∫x dx = 3×(x³/3) + 2×(x²/2) + C = x³ + x² + C
説明:
定数倍や和の積分は、それぞれ積分してから定数倍したり足したりできます。
特殊な関数の積分
∫(1/x) dx = ln|x| + C
∫eˣ dx = eˣ + C
∫sin x dx = -cos x + C
∫cos x dx = sin x + C
説明:
これらは覚えておくべき基本的な積分公式です。
不等式の法則:大小関係を扱う法則
不等式(ふとうしき) は、等号ではなく不等号(>、<、≥、≤)を使った式のことです。
不等式の基本性質
a > b のとき、a + c > b + c
説明:
両辺に同じ数を足しても、大小関係は変わりません。引き算も同様です。
a > b かつ c > 0 のとき、ac > bc
説明:
両辺に正の数を掛けても、大小関係は変わりません。
a > b かつ c < 0 のとき、ac < bc
説明:
両辺に負の数を掛けると、不等号の向きが逆になります。これは重要なポイントです!
実例:
- 3 > 2に対して、両辺に-1を掛けると:-3 < -2
平均値の不等式
相加平均と相加幾何平均の関係:(a + b)/2 ≥ √(ab)(a、b ≥ 0)
説明:
正の数の 相加平均(そうかへいきん)(普通の平均)は、相乗平均(そうじょうへいきん)(幾何平均)以上になるという法則です。等号はa = bのときに成り立ちます。
実例:
- a = 4、b = 16のとき
- 相加平均:(4 + 16)/2 = 10
- 相乗平均:√(4×16) = √64 = 8
- 10 ≥ 8 が成り立つ
コーシー・シュワルツの不等式
(a² + b²)(c² + d²) ≥ (ac + bd)²
説明:
ベクトルや数列の問題でよく使われる重要な不等式です。高校数学の範囲でも登場します。
確率の法則:偶然を数学的に扱う法則

確率(かくりつ) は、ある事象が起こる可能性を0から1の数で表したものです。英語では “probability” といいます。
確率の基本性質
0 ≤ P(A) ≤ 1
説明:
確率は必ず0以上1以下の値になります。0は「絶対起こらない」、1は「必ず起こる」を意味します。
P(全体) = 1
説明:
すべての可能性を合わせると、確率は必ず1になります。
P(A または B) = P(A) + P(B) – P(A かつ B)
説明:
これを 加法定理 といいます。AとBが同時に起こる場合を2回数えてしまうので、1回分引きます。
実例:
サイコロを振って、「3以下の目」または「偶数の目」が出る確率:
- P(3以下) = 3/6 = 1/2
- P(偶数) = 3/6 = 1/2
- P(3以下かつ偶数) = 1/6(2だけ)
- P(3以下または偶数) = 1/2 + 1/2 – 1/6 = 5/6
条件付き確率
P(A|B) = P(A かつ B) / P(B)
説明:
「Bが起こったという条件のもとでAが起こる確率」を 条件付き確率(じょうけんつきかくりつ) といいます。
独立事象の確率
P(A かつ B) = P(A) × P(B)(AとBが独立のとき)
説明:
2つの事象が互いに影響しないとき(独立のとき)、両方が起こる確率はそれぞれの確率の積になります。
実例:
コインを2回投げて、両方とも表が出る確率:
- P(1回目が表) = 1/2
- P(2回目が表) = 1/2
- P(両方とも表) = 1/2 × 1/2 = 1/4
組み合わせと順列の法則
順列(じゅんれつ) は順番を考えた並べ方、組み合わせ(くみあわせ) は順番を考えない選び方のことです。
順列の公式
ₙPᵣ = n!/(n-r)!
説明:
n個のものからr個を選んで並べる方法の数です。「n個から順番にr個取る」というイメージですね。
実例:
5人から3人を選んで並べる方法:
- ₅P₃ = 5!/(5-3)! = 5!/2! = 120/2 = 60通り
組み合わせの公式
ₙCᵣ = n!/(r!(n-r)!)
説明:
n個のものからr個を選ぶ方法の数です。順番は関係ありません。
実例:
5人から3人を選ぶ方法:
- ₅C₃ = 5!/(3!×2!) = 120/(6×2) = 10通り
組み合わせと順列の関係
ₙPᵣ = ₙCᵣ × r!
説明:
組み合わせで選んだr個を並べると順列になります。つまり、順列は「組み合わせ×並べ方」です。
パスカルの三角形の法則
ₙCᵣ = ₙ₋₁Cᵣ₋₁ + ₙ₋₁Cᵣ
説明:
パスカルの三角形を作るときの基本法則です。上の2つの数を足すと下の数になります。
ベクトルの法則:大きさと向きを持つ量の法則
ベクトル(vector) は、大きさと向きを持つ量のことです。矢印で表現されます。
ベクトルの演算法則
交換法則:a + b = b + a
結合法則:(a + b) + c = a + (b + c)
説明:
ベクトルの足し算にも、普通の数と同じような法則が成り立ちます。
内積の法則
a・b = |a||b|cos θ
説明:
2つのベクトルの 内積(ないせき) は、それぞれの大きさとなす角のコサインの積です。
交換法則:a・b = b・a
分配法則:a・(b + c) = a・b + a・c
外積の大きさ
|a × b| = |a||b|sin θ
説明:
2つのベクトルの 外積(がいせき) の大きさは、それぞれの大きさとなす角のサインの積です。これは平行四辺形の面積を表します。
数列の法則:規則的に並んだ数の法則
数列に関する重要な法則をいくつか紹介します。
等差数列の一般項
aₙ = a + (n-1)d
説明:
初項a、公差dの等差数列のn番目の項を求める公式です。
等差数列の和
Sₙ = n(a + l)/2 = n(2a + (n-1)d)/2
説明:
等差数列の初項から第n項までの和を求める公式です。lは末項です。
等比数列の一般項
aₙ = arⁿ⁻¹
説明:
初項a、公比rの等比数列のn番目の項を求める公式です。
等比数列の和
Sₙ = a(rⁿ – 1)/(r – 1)(r ≠ 1)
説明:
等比数列の初項から第n項までの和を求める公式です。
無限等比級数の和
S = a/(1 – r)(|r| < 1)
説明:
公比の絶対値が1より小さいとき、無限に足していっても一定の値に収束します。
幾何学の法則:図形に関する法則
図形に関する重要な法則もいくつか押さえておきましょう。
ピタゴラスの定理
a² + b² = c²
説明:
直角三角形において、直角を挟む2辺の長さをa、b、斜辺の長さをcとすると、この関係が成り立ちます。図形の法則の中で最も有名なものの一つです。
三角形の面積公式
S = (1/2)ab sin C
説明:
2辺a、bとその間の角Cが分かっているとき、三角形の面積を求める公式です。
正弦定理
a/sin A = b/sin B = c/sin C = 2R
説明:
三角形の辺と角の関係を表す法則です。Rは外接円の半径を表します。
余弦定理
c² = a² + b² – 2ab cos C
説明:
ピタゴラスの定理を一般化したような法則です。角度が90度でない三角形でも使えます。
まとめ:法則を体系的に理解しよう
数学の法則は膨大に見えますが、体系的に整理すると理解しやすくなります。
演算の基本法則:
- 交換法則、結合法則、分配法則が基礎
- これらは数学のあらゆる場面で使われる
- 演算によって成り立つ法則が異なることに注意
指数と対数の法則:
- 指数法則は累乗計算の基本
- 対数法則は指数法則と対応している
- 両者は逆の関係にある
三角関数の法則:
- 基本的な関係式を押さえる
- 加法定理から多くの公式が導ける
- 2倍角、半角の公式は加法定理の応用
微分と積分の法則:
- 微分と積分は逆の操作
- 線形性が成り立つ
- 積、商、合成関数にはそれぞれ専用の法則がある
確率と組み合わせの法則:
- 加法定理と乗法定理が基本
- 組み合わせと順列の違いを理解する
- 独立性の概念が重要
その他の重要法則:
- 不等式の性質(特に符号が変わる場合)
- 数列の一般項と和の公式
- 幾何学的な定理
法則は道具です。使いこなせるようになれば、数学の問題解決がずっと楽になりますよ!


コメント