数学で「数列」という言葉を聞いたとき、どんなイメージを持ちますか?「難しそう」「公式が多くて大変」そんな風に感じている人も多いかもしれませんね。
でも実は、数列は私たちの身の回りにたくさん存在しているんです。階段の段数、カレンダーの日付、銀行の利息計算など、規則的に並んだ数はすべて数列の考え方で説明できます。
この記事では、数列の基本から等差数列、等比数列、そして少し難しい漸化式まで、具体例をたっぷり使いながら丁寧に解説していきます。
最後まで読めば、「数列って意外と面白い!」と思えるはずですよ。
それでは、まず「数列とは何か」から見ていきましょう!
数列の基本:規則的に並んだ数の列

数列(すうれつ) とは、数が規則的に並んでいるもののことです。英語では “sequence” といいます。
数列の表し方
数列は、第1項、第2項、第3項…というように順番に並べて表現します。
説明:
それぞれの数を「項(こう)」と呼び、その位置を表す番号を添え字(そえじ)として付けます。
実例:
- 2, 4, 6, 8, 10, …
- これを a₁=2, a₂=4, a₃=6, a₄=8, a₅=10 と書きます
- aに小さく付いている数字(添え字)が、その項の番号です
一般項とは
一般項(いっぱんこう) とは、数列のn番目の項を表す式のことです。記号では「aₙ」と書きます。
説明:
一般項が分かれば、数列のどの項でも計算で求められます。これが数列を理解する上で最も重要なポイントです。
実例:
- 数列 2, 4, 6, 8, 10, … の一般項は aₙ = 2n
- n=1を代入すると a₁ = 2×1 = 2
- n=5を代入すると a₅ = 2×5 = 10
有限数列と無限数列
数列には、項の数が決まっている 有限数列 と、永遠に続く 無限数列 があります。
実例:
- 有限数列:1, 2, 3, 4, 5(5つの項で終わる)
- 無限数列:1, 2, 3, 4, 5, …(「…」は永遠に続くという意味)
等差数列:同じ数ずつ増える数列
等差数列(とうさすうれつ) は、数列の中で最も基本的なタイプです。英語では “arithmetic sequence” といいます。
等差数列の定義
隣り合う項の差が常に一定である数列を等差数列といいます。この一定の差を 公差(こうさ) と呼びます。
説明:
「次の項 = 前の項 + 公差」という関係が成り立ちます。
実例1:公差が正の場合
- 3, 7, 11, 15, 19, …
- 公差d = 4(毎回4ずつ増えている)
実例2:公差が負の場合
- 20, 15, 10, 5, 0, …
- 公差d = -5(毎回5ずつ減っている)
実例3:公差が0の場合
- 5, 5, 5, 5, 5, …
- 公差d = 0(すべての項が同じ)
等差数列の一般項
初項(最初の項)をa、公差をdとすると、等差数列の一般項は次の公式で表せます。
aₙ = a + (n-1)d
説明:
この公式は、「初項aに、公差dを(n-1)回足す」という意味です。なぜ(n-1)回かというと、第n項に到達するまでに差が生じる回数が(n-1)回だからです。
実例:
初項3、公差4の等差数列の第10項を求めます。
- a = 3, d = 4, n = 10を公式に代入
- a₁₀ = 3 + (10-1)×4
- = 3 + 9×4
- = 3 + 36
- = 39
等差数列の和の公式
等差数列の初項から第n項までの和を求める公式があります。これを 等差数列の和 といいます。
Sₙ = n(a + l)/2 または Sₙ = n{2a + (n-1)d}/2
説明:
- Sₙは初項から第n項までの和
- lは末項(最後の項)
- 最初の公式は「項数×(初項+末項)÷2」
- 2番目の公式は末項が分からないときに使います
実例:
1から100までの整数の和を求めます。
これは初項1、公差1、項数100の等差数列です。
- S₁₀₀ = 100(1 + 100)/2
- = 100×101/2
- = 5050
有名な数学者ガウスが小学生のときに一瞬で解いたという逸話がある問題です!
等比数列:同じ数を掛け続ける数列
等比数列(とうひすうれつ) は、掛け算の規則で成り立つ数列です。英語では “geometric sequence” といいます。
等比数列の定義
隣り合う項の比が常に一定である数列を等比数列といいます。この一定の比を 公比(こうひ) と呼びます。
説明:
「次の項 = 前の項 × 公比」という関係が成り立ちます。
実例1:公比が1より大きい場合
- 2, 6, 18, 54, 162, …
- 公比r = 3(毎回3倍になっている)
実例2:公比が0と1の間の場合
- 64, 32, 16, 8, 4, …
- 公比r = 1/2(毎回半分になっている)
実例3:公比が負の場合
- 3, -6, 12, -24, 48, …
- 公比r = -2(符号が交互に変わりながら2倍)
等比数列の一般項
初項をa、公比をrとすると、等比数列の一般項は次の公式で表せます。
aₙ = arⁿ⁻¹
説明:
「初項aに、公比rを(n-1)回掛ける」という意味です。
実例:
初項2、公比3の等比数列の第6項を求めます。
- a = 2, r = 3, n = 6を公式に代入
- a₆ = 2×3⁶⁻¹
- = 2×3⁵
- = 2×243
- = 486
等比数列の和の公式
等比数列の和には、公比rの値によって2つの場合があります。
r ≠ 1のとき:Sₙ = a(1 – rⁿ)/(1 – r) または Sₙ = a(rⁿ – 1)/(r – 1)
r = 1のとき:Sₙ = na
説明:
- 公比が1でない場合は上の公式を使います
- 公比が1の場合、すべての項がaなので、単純にn倍するだけです
実例:
初項2、公比3、項数5の等比数列の和を求めます。
- S₅ = 2(3⁵ – 1)/(3 – 1)
- = 2(243 – 1)/2
- = 2×242/2
- = 242
無限等比級数
公比rの絶対値が1より小さいとき(-1 < r < 1)、無限に項を足していっても和が一定の値に収束します。
無限等比級数の和:S = a/(1 – r) (ただし -1 < r < 1)
実例:
初項1、公比1/2の無限等比数列の和は:
- S = 1/(1 – 1/2) = 1/(1/2) = 2
Σ記号:数列の和を表す便利な記号

数列の和を表すとき、Σ(シグマ)記号 という便利な記号を使います。これはギリシャ文字の大文字で、「合計」を意味します。
Σ記号の読み方と意味
Σ(k=1からn)aₖ と書いて、「kが1からnまでのaₖの和」と読みます。
説明:
Σの下に書かれた「k=1」は「kの値を1から始める」という意味で、上に書かれた「n」は「nまで続ける」という意味です。
実例:
Σ(k=1から5)k = 1 + 2 + 3 + 4 + 5 = 15
よく使うΣの公式
計算を楽にする便利な公式があります。
1. Σ(k=1からn)k = n(n+1)/2
(1からnまでの整数の和)
2. Σ(k=1からn)k² = n(n+1)(2n+1)/6
(1²からn²までの和)
3. Σ(k=1からn)k³ = {n(n+1)/2}²
(1³からn³までの和)
実例:
1²+2²+3²+4²+5²を計算します。
公式2を使って:
- n = 5として
- 5(5+1)(2×5+1)/6
- = 5×6×11/6
- = 55
Σの性質
Σには便利な性質がいくつかあります。
定数倍:Σ(cak) = cΣak (cは定数)
和の分割:Σ(ak + bk) = Σak + Σbk
これらを使うと、複雑な和も分解して計算できます。
階差数列:数列の「差」から考える
階差数列(かいさすうれつ) は、もとの数列の隣り合う項の差を並べた数列のことです。
階差数列の定義
数列 a₁, a₂, a₃, a₄, … があるとき、差 a₂-a₁, a₃-a₂, a₄-a₃, … を並べた数列を階差数列といいます。
説明:
階差数列をbₙとすると、bₙ = aₙ₊₁ – aₙ です。
実例:
数列 1, 4, 9, 16, 25, … の階差数列は:
- b₁ = 4-1 = 3
- b₂ = 9-4 = 5
- b₃ = 16-9 = 7
- b₄ = 25-16 = 9
階差数列は 3, 5, 7, 9, …(これは等差数列!)
階差数列から一般項を求める
階差数列bₙが分かっているとき、もとの数列aₙの一般項は:
aₙ = a₁ + Σ(k=1からn-1)bₖ (n ≥ 2)
説明:
第n項は、初項a₁に階差をすべて足していった値です。
実例:
初項が1で、階差数列が2, 4, 6, 8, …(bₙ = 2n)のとき:
- a₁ = 1
- a₂ = 1 + 2 = 3
- a₃ = 1 + 2 + 4 = 7
- a₄ = 1 + 2 + 4 + 6 = 13
一般項は:
- aₙ = 1 + Σ(k=1からn-1)2k
- = 1 + 2×(n-1)n/2
- = 1 + n(n-1)
- = n² – n + 1
漸化式:前の項から次の項を作る
漸化式(ぜんかしき) は、前の項を使って次の項を表す式のことです。英語では “recurrence relation” といいます。
漸化式の基本
最もシンプルな漸化式の形は:
aₙ₊₁ = f(aₙ)
説明:
「次の項は、前の項を使った式で表される」という意味です。初項が与えられていれば、次々と項を計算できます。
実例:
a₁ = 2, aₙ₊₁ = 2aₙ + 1のとき:
- a₁ = 2
- a₂ = 2×2 + 1 = 5
- a₃ = 2×5 + 1 = 11
- a₄ = 2×11 + 1 = 23
等差数列型の漸化式
aₙ₊₁ = aₙ + d の形は等差数列です。
実例:
a₁ = 3, aₙ₊₁ = aₙ + 4のとき、一般項は aₙ = 3 + 4(n-1)
等比数列型の漸化式
aₙ₊₁ = raₙ の形は等比数列です。
実例:
a₁ = 2, aₙ₊₁ = 3aₙのとき、一般項は aₙ = 2×3ⁿ⁻¹
1次の漸化式
aₙ₊₁ = paₙ + q の形の漸化式は、特性方程式を使って解きます。
解き方:
α = pα + q を満たすαを求めて、aₙ – α = p(aₙ₋₁ – α)の形に変形すると、等比数列として扱えます。
実例:
a₁ = 1, aₙ₊₁ = 2aₙ + 3のとき:
特性方程式:α = 2α + 3
解くと:α = -3
変形すると:
- aₙ₊₁ – (-3) = 2(aₙ – (-3))
- aₙ₊₁ + 3 = 2(aₙ + 3)
bₙ = aₙ + 3とおくと、bₙ₊₁ = 2bₙの等比数列になります。
実生活での数列の応用
数列は理論だけでなく、実際の生活でもたくさん使われています。
銀行の利息計算
銀行預金の利息は等比数列で表現できます。
実例:
100万円を年利2%で預けたとき、n年後の金額は:
- aₙ = 100万×1.02ⁿ
これは初項100万、公比1.02の等比数列です。
階段や座席の配置
劇場の座席数を考えてみましょう。
実例:
1列目が20席、各列が前の列より2席ずつ増えていく劇場で、10列目の座席数は:
- a₁ = 20, d = 2の等差数列
- a₁₀ = 20 + (10-1)×2 = 38席
全体の座席数は:
- S₁₀ = 10(20 + 38)/2 = 290席
人口増加のモデル
人口の増加を等比数列でモデル化することがあります。
実例:
ある町の人口が毎年3%ずつ増加し、現在1万人の場合、10年後の人口は:
- a₁₀ = 10000×1.03¹⁰ ≈ 13439人
スポーツのトーナメント戦
トーナメント戦の試合数も数列で表現できます。
実例:
32チームのトーナメントでは:
- 1回戦:16試合(32→16チーム)
- 2回戦:8試合(16→8チーム)
- 3回戦:4試合(8→4チーム)
- 準決勝:2試合(4→2チーム)
- 決勝:1試合(2→1チーム)
試合数は 16, 8, 4, 2, 1(初項16、公比1/2の等比数列)
合計試合数:16 + 8 + 4 + 2 + 1 = 31試合
数列の問題を解くコツ
数列の問題を解くときに役立つポイントをまとめます。
まずは規則性を見つける
与えられた数列を見たら、まず規則性を探しましょう。
チェックポイント:
- 隣同士の差が一定? → 等差数列
- 隣同士の比が一定? → 等比数列
- 階差数列を作ってみると規則が見える? → 階差数列を利用
公式を正確に覚える
基本公式は確実に覚えておきましょう。
最低限覚えるべき公式:
- 等差数列の一般項:aₙ = a + (n-1)d
- 等差数列の和:Sₙ = n(a + l)/2
- 等比数列の一般項:aₙ = arⁿ⁻¹
- 等比数列の和:Sₙ = a(rⁿ – 1)/(r – 1)
具体的な値で確認する
計算結果が正しいか、実際にいくつかの項を計算して確認しましょう。
実例:
一般項 aₙ = 2n + 1が求まったら:
- n=1のとき a₁ = 3
- n=2のとき a₂ = 5
- n=3のとき a₃ = 7
数列3, 5, 7, …と一致するか確認します。
まとめ:数列は規則性の数学
数列は、規則的に並んだ数を扱う数学の重要な分野です。一見複雑に見えても、基本のパターンを理解すれば確実に解けるようになります。
等差数列の要点:
- 一定の差で増減する数列
- 一般項:aₙ = a + (n-1)d
- 和の公式:Sₙ = n(a + l)/2
- 実生活では階段の段数、座席配置などに応用
等比数列の要点:
- 一定の比で増減する数列
- 一般項:aₙ = arⁿ⁻¹
- 和の公式:Sₙ = a(rⁿ – 1)/(r – 1)
- 実生活では利息計算、人口増加などに応用
その他の重要概念:
- Σ記号を使って和を簡潔に表現できる
- 階差数列から一般項を求める方法がある
- 漸化式は前の項から次の項を作る規則
- 数列は実生活のさまざまな場面で活用されている
学習のコツ:
- まず規則性を見つけることから始める
- 基本公式を正確に覚える
- 具体的な数値で確認する習慣をつける
- いろいろな問題を解いてパターンに慣れる
最初は公式が多くて大変かもしれませんが、練習を重ねれば必ず使いこなせるようになります。
数列をマスターして、数学の世界をもっと楽しんでくださいね!

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