数学で突然出てくる「3乗の公式」。2乗の公式は覚えたけど、3乗になると急に複雑に見えて戸惑いますよね。
でも安心してください!3乗の公式にはちゃんとした規則性があって、その仕組みを理解すれば暗記も計算もグッと楽になるんです。
この記事では、3乗の公式の基本から実践的な使い方、覚えやすいコツまで、具体例をたっぷり使いながら丁寧に解説していきます。
最後まで読めば、「あれ、意外と簡単かも!」と思えるはずですよ。
それでは、まず基本の展開公式から見ていきましょう!
(a+b)³の展開公式:基本中の基本

3乗の展開公式 とは、3乗された式をカッコを外して展開する(広げる)ときに使う公式のことです。
まずは最も基本的な (a+b)³ の公式から見ていきましょう。
公式の形
(a+b)³ = a³ + 3a²b + 3ab² + b³
この公式を使えば、(a+b)を3回かける計算を一発で展開できます。
公式の意味を理解しよう
説明:
(a+b)³は、(a+b)(a+b)(a+b)という意味です。これを全部展開すると、上の公式になります。
係数(数字の部分)に注目すると、1、3、3、1という並びになっていますね。これには理由があるんです。
具体例で確認してみよう
実例1:
(x+2)³を展開してみます。
a=x、b=2として公式に当てはめると:
- (x+2)³ = x³ + 3x²×2 + 3x×2² + 2³
- = x³ + 6x² + 12x + 8
実例2:
(2x+1)³を展開してみます。
a=2x、b=1として:
- (2x+1)³ = (2x)³ + 3(2x)²×1 + 3×2x×1² + 1³
- = 8x³ + 12x² + 6x + 1
(a-b)³の展開公式:符号に注意!
次は引き算バージョンの (a-b)³ です。
公式の形
(a-b)³ = a³ – 3a²b + 3ab² – b³
プラスとマイナスが交互に並んでいるのが特徴です。
符号のパターンを覚えよう
説明:
係数の並びは(a+b)³と同じで1、3、3、1ですが、符号が「+、-、+、-」と交互になります。
bの次数(b、b²、b³)が奇数の項がマイナスになる、と覚えると分かりやすいですよ。
具体例で確認
実例1:
(x-3)³を展開します。
a=x、b=3として:
- (x-3)³ = x³ – 3x²×3 + 3x×3² – 3³
- = x³ – 9x² + 27x – 27
実例2:
(3x-2)³を展開します。
a=3x、b=2として:
- (3x-2)³ = (3x)³ – 3(3x)²×2 + 3×3x×2² – 2³
- = 27x³ – 54x² + 36x – 8
3乗の公式を楽に覚えるコツ
3乗の公式を丸暗記するのは大変ですよね。でも、覚え方のコツを知れば簡単になります。
係数は1-3-3-1のパターン
どちらの公式も、係数は 1、3、3、1 です。これは「パスカルの三角形」という規則から来ています。
2乗の公式が1-2-1だったことを思い出してください。3乗になると1-3-3-1になるんです。
次数(指数)の変化に注目
説明:
次数とは、文字の右上に付く小さな数字のことです。x²なら次数は2、x³なら次数は3です。
(a+b)³の各項を見てみましょう:
- a³:aの次数3、bの次数0(bがない)
- 3a²b:aの次数2、bの次数1
- 3ab²:aの次数1、bの次数2
- b³:aの次数0(aがない)、bの次数3
aの次数は3→2→1→0と減り、bの次数は0→1→2→3と増えています。そして、各項の次数の合計は常に3です。
語呂合わせで覚える方法
「さんじょう いち・さん・さん・いち」と、リズムで覚える人も多いです。
また、「aの3乗、a2乗b3個、ab2乗3個、bの3乗」という流れで覚えるのも効果的ですよ。
因数分解の公式:a³+b³とa³-b³

ここからは 因数分解(いんすうぶんかい) の公式です。因数分解とは、展開の逆で、式をカッコの形にまとめることを指します。
a³+b³の因数分解公式
a³ + b³ = (a+b)(a² – ab + b²)
説明:
3乗の和を因数分解するときに使います。右辺は「1次式×2次式」の形になっていますね。
a³-b³の因数分解公式
a³ – b³ = (a-b)(a² + ab + b²)
説明:
3乗の差を因数分解するときに使います。こちらも「1次式×2次式」の形です。
2つの公式の違いに注目
和の公式と差の公式で、2次式の部分の符号が違います:
- 和(+)のとき:a² – ab + b²(真ん中がマイナス)
- 差(-)のとき:a² + ab + b²(真ん中がプラス)
これを覚えるコツは、「和のときは仲が悪い(マイナス)、差のときは仲が良い(プラス)」というイメージです。
具体例で理解を深めよう
実例1:a³+b³の因数分解
x³ + 8を因数分解します。
8 = 2³なので、a=x、b=2として:
- x³ + 8 = x³ + 2³
- = (x+2)(x² – 2x + 4)
実例2:a³-b³の因数分解
27x³ – 1を因数分解します。
27x³ = (3x)³、1 = 1³なので:
- 27x³ – 1 = (3x)³ – 1³
- = (3x-1)(9x² + 3x + 1)
パスカルの三角形との関係
実は、3乗の係数1-3-3-1は パスカルの三角形 という数の並びから来ているんです。
パスカルの三角形とは
説明:
上の2つの数を足すと下の数になる、という規則で作られる三角形の数の配置です。フランスの数学者パスカルにちなんで名付けられました。
1
1 1
1 2 1
1 3 3 1
1 4 6 4 1
この4段目(下から2番目)の1-3-3-1が、3乗の係数になっているんですね。
n乗の係数に使える
パスカルの三角形を使えば、4乗、5乗の展開係数も予測できます。
実例:
- (a+b)⁰:1(0段目)
- (a+b)¹:1a + 1b(1段目)
- (a+b)²:1a² + 2ab + 1b²(2段目)
- (a+b)³:1a³ + 3a²b + 3ab² + 1b³(3段目)
- (a+b)⁴:1a⁴ + 4a³b + 6a²b² + 4ab³ + 1b⁴(4段目)
実際に計算してみよう:練習問題
理論が分かったら、実際に手を動かして練習してみましょう。
展開の練習
問題1:(x+4)³を展開してください
公式に当てはめると:
- (x+4)³ = x³ + 3x²×4 + 3x×4² + 4³
- = x³ + 12x² + 48x + 64
問題2:(2a-3)³を展開してください
- (2a-3)³ = (2a)³ – 3(2a)²×3 + 3×2a×3² – 3³
- = 8a³ – 36a² + 54a – 27
因数分解の練習
問題3:x³+27を因数分解してください
27 = 3³なので:
- x³ + 27 = x³ + 3³
- = (x+3)(x² – 3x + 9)
問題4:8y³-1を因数分解してください
8y³ = (2y)³、1 = 1³なので:
- 8y³ – 1 = (2y)³ – 1³
- = (2y-1)(4y² + 2y + 1)
よくある間違いと注意点
3乗の公式で、多くの人がつまずくポイントを確認しておきましょう。
間違い1:単純に各項を3乗してしまう
間違った考え方:
(a+b)³ = a³ + b³ ← これは間違い!
正解:
(a+b)³ = a³ + 3a²b + 3ab² + b³
中間の項(3a²bと3ab²)を忘れないようにしましょう。
間違い2:係数を間違える
間違った例:
(a+b)³ = a³ + 2a²b + 2ab² + b³ ← 係数が違う!
正解:
係数は1-3-3-1です。2乗の公式(1-2-1)と混同しないように注意しましょう。
間違い3:因数分解の符号ミス
a³+b³とa³-b³の公式で、2次式の真ん中の項の符号を間違えることが多いです。
覚え方のコツ:
- a³+b³ = (a+b)(a² – ab + b²):和なのに真ん中はマイナス
- a³–b³ = (a-b)(a² + ab + b²):差なのに真ん中はプラス
「逆になる」と覚えておくと良いですよ。
間違い4:(a-b)³の符号を全部マイナスにしてしまう
間違った例:
(a-b)³ = a³ – 3a²b – 3ab² – b³ ← 符号が違う!
正解:
(a-b)³ = a³ – 3a²b + 3ab² – b³
符号は「+、-、+、-」と交互になります。
応用:3乗の公式を使った計算テクニック
3乗の公式は、複雑な計算を簡単にすることもできます。
数値計算に応用する
実例1:103³を計算する
103 = 100 + 3と考えて:
- 103³ = (100+3)³
- = 100³ + 3×100²×3 + 3×100×3² + 3³
- = 1,000,000 + 90,000 + 2,700 + 27
- = 1,092,727
電卓なしでも計算できますね!
実例2:99³を計算する
99 = 100 – 1と考えて:
- 99³ = (100-1)³
- = 100³ – 3×100²×1 + 3×100×1² – 1³
- = 1,000,000 – 30,000 + 300 – 1
- = 970,299
式の値を求める問題
実例:x+y=5、xy=6のとき、x³+y³の値を求めよ
直接計算するのは難しいですが、因数分解の公式を使うと簡単です。
x³ + y³ = (x+y)(x² – xy + y²)
x² + y² を求めます:
- x² + y² = (x+y)² – 2xy = 5² – 2×6 = 25 – 12 = 13
したがって:
- x³ + y³ = (x+y)(x² – xy + y²)
- = 5(13 – 6)
- = 5×7
- = 35
他の公式との関係を知ろう
3乗の公式は、他の公式と組み合わせて使うこともあります。
2乗の公式との比較
2乗の展開公式:
- (a+b)² = a² + 2ab + b²
- (a-b)² = a² – 2ab + b²
3乗の展開公式:
- (a+b)³ = a³ + 3a²b + 3ab² + b³
- (a-b)³ = a³ – 3a²b + 3ab² – b³
係数が1-2-1から1-3-3-1に変わり、項の数が3個から4個に増えています。
2乗と3乗の組み合わせ
実例:
(a+b)³ = (a+b)(a+b)²として計算することもできます。
- (a+b)³ = (a+b)(a² + 2ab + b²)
- = a(a² + 2ab + b²) + b(a² + 2ab + b²)
- = a³ + 2a²b + ab² + a²b + 2ab² + b³
- = a³ + 3a²b + 3ab² + b³
同じ結果になりますね。この方法で公式を導くこともできます。
まとめ:3乗の公式をマスターしよう
3乗の公式は最初は複雑に見えますが、規則性を理解すれば確実に使いこなせるようになります。
展開公式の要点:
- (a+b)³ = a³ + 3a²b + 3ab² + b³
- (a-b)³ = a³ – 3a²b + 3ab² – b³
- 係数は1-3-3-1のパターン
- 次数の合計は常に3
因数分解公式の要点:
- a³ + b³ = (a+b)(a² – ab + b²)
- a³ – b³ = (a-b)(a² + ab + b²)
- 真ん中の項の符号に注意(和なら-、差なら+)
覚えるコツ:
- パスカルの三角形を活用する
- 次数の変化(aは減少、bは増加)を意識する
- 具体的な数字で練習して体で覚える
よくある間違いを防ぐために:
- 中間の項を忘れない
- 符号のパターンを確認する
- 単純に3乗するだけではないことを意識する
最初は公式を見ながらでOKです。何度も練習して、自然に使えるようになりましょう。
3乗の公式をマスターすれば、数学の計算力が大きくアップしますよ!


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