有界とは?数学で重要な「範囲内に収まる」という概念を徹底解説

数学

数学の授業や教科書で「有界」という言葉を見たことはありませんか?

「ゆうかい」と読むこの言葉、なんだか難しそうですよね。でも実は、私たちの日常でも使っている「ある範囲内に収まっている」という、とてもシンプルな概念なんです。

たとえば、体温計は通常35℃から42℃くらいまでしか測れません。これは体温計が「35℃から42℃という範囲に有界」ということです。

この記事では、数学における「有界」の意味から、具体例、そして実際の使われ方まで、分かりやすく解説していきます。


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有界の基本的な意味

有界(ゆうかい)とは、英語で「bounded」と言い、数や点が無限に大きくならず、ある範囲内に収まっている状態を指します。

シンプルに言うと?

有界とは「無限遠に飛んでいかないこと」です。

有界なもの

  • ある範囲内に収まっている
  • 上限と下限がある
  • 有限のサイズ

非有界(有界でない)なもの

  • どこまでも大きくなる、または小さくなる
  • 上限または下限がない
  • 無限に広がっている

身近な例で理解しよう

有界な例

  • 学校のテストの点数(0点〜100点)
  • 気温の測定値(-50℃〜50℃くらい)
  • 教室の机の数(0個〜40個くらい)

非有界な例

  • すべての自然数(1, 2, 3, 4, …とどこまでも続く)
  • すべての整数(…、-2, -1, 0, 1, 2, …と両方向に無限)
  • y = x という直線(xがどんどん大きくなる)

上界と下界

有界を理解するには、「上界」と「下界」という概念を知っておく必要があります。

上界(じょうかい)とは?

上界とは、集合のすべての要素よりも大きい(または等しい)数のことです。

たとえば、集合 {1, 3, 5, 7, 9} があったとします。

  • 9は上界です(すべての要素が9以下)
  • 10も上界です(すべての要素が10以下)
  • 100も上界です(すべての要素が100以下)

つまり、最大の要素以上の数は、すべて上界になります。

ただし、特に重要なのは最小の上界です。
この例では9が最小の上界で、これを上限(supremum、略してsup)と呼びます。

下界(かかい)とは?

下界とは、集合のすべての要素よりも小さい(または等しい)数のことです。

同じ集合 {1, 3, 5, 7, 9} で考えると:

  • 1は下界です(すべての要素が1以上)
  • 0も下界です(すべての要素が0以上)
  • -10も下界です(すべての要素が-10以上)

つまり、最小の要素以下の数は、すべて下界になります。

そして、最大の下界下限(infimum、略してinf)と呼びます。この例では1が下限です。

有界の定義

集合が上界と下界の両方を持つとき、その集合は有界であると言います。

言い換えると:

  • 上に有界:上界がある
  • 下に有界:下界がある
  • 有界:上界と下界の両方がある

有界集合の具体例

実際にいくつかの例を見ていきましょう。

例1:閉区間 [0, 10]

0以上10以下のすべての実数からなる集合です。

  • 上界:10(またはそれより大きい数)
  • 下界:0(またはそれより小さい数)
  • 判定:有界

この集合は明確に0から10という範囲に収まっています。

例2:開区間 (0, 1)

0より大きく1より小さいすべての実数からなる集合です。

  • 上界:1(またはそれより大きい数)
  • 下界:0(またはそれより小さい数)
  • 判定:有界

注意:0と1は含まれませんが、それでも上界・下界として機能します。

例3:自然数の集合 {1, 2, 3, 4, …}

すべての自然数からなる集合です。

  • 上界:なし(どこまでも大きくなる)
  • 下界:1(またはそれより小さい数)
  • 判定:非有界(下に有界だが、上に有界でない)

例4:すべての整数 {…, -2, -1, 0, 1, 2, …}

  • 上界:なし
  • 下界:なし
  • 判定:非有界

両方向に無限に広がっているため、有界ではありません。

例5:集合 {-5, -3, 0, 2, 4}

有限個の要素からなる集合です。

  • 上界:4(またはそれより大きい数)
  • 下界:-5(またはそれより小さい数)
  • 判定:有界

重要なポイント:有限集合は常に有界です。


有界数列

数列についても有界という概念があります。

有界数列とは?

数列 {a₁, a₂, a₃, …} が有界であるとは、すべての項がある範囲内に収まっていることを意味します。

具体的には、ある実数 M が存在して、すべての n について |aₙ| ≤ M となるとき、この数列は有界です。

例:有界な数列

例1:数列 {1, -1, 1, -1, 1, -1, …}

この数列は1と-1を繰り返します。

  • すべての項は -1 ≤ aₙ ≤ 1 の範囲に収まる
  • 判定:有界

例2:数列 {1/2, 1/3, 1/4, 1/5, …}

この数列は徐々に0に近づいていきます。

  • すべての項は 0 < aₙ ≤ 1/2 の範囲に収まる
  • 判定:有界

例:非有界な数列

例3:数列 {1, 2, 3, 4, 5, …}

自然数の列です。

  • どんどん大きくなり、上界がない
  • 判定:非有界

例4:数列 {1, -2, 3, -4, 5, -6, …}

絶対値がどんどん大きくなります。

  • 上にも下にも限界がない
  • 判定:非有界

収束数列と有界の関係

数学において重要な定理があります:

定理:収束する数列は必ず有界である

たとえば、数列 {1/n} = {1, 1/2, 1/3, 1/4, …} は0に収束します。そして、この数列は有界です(0 < aₙ ≤ 1)。

ただし、逆は必ずしも真ではありません。有界だからといって収束するとは限りません。

例:{1, -1, 1, -1, …} は有界ですが、収束しません。


有界関数

関数についても有界という概念があります。

有界関数とは?

関数 f(x) が有界であるとは、その関数の値がある範囲内に収まっていることを意味します。

具体的には、ある実数 M が存在して、すべての x について |f(x)| ≤ M となるとき、この関数は有界です。

例:有界な関数

例1:正弦関数 f(x) = sin(x)

正弦関数は、どんな x に対しても -1 ≤ sin(x) ≤ 1 です。

  • 判定:有界

例2:余弦関数 f(x) = cos(x)

余弦関数も、どんな x に対しても -1 ≤ cos(x) ≤ 1 です。

  • 判定:有界

例3:f(x) = 1/(x² + 1)

この関数は、x がどんな値でも 0 < f(x) ≤ 1 の範囲に収まります。

  • 判定:有界

例:非有界な関数

例4:f(x) = x

この関数は、x がどんどん大きくなれば f(x) もどんどん大きくなります。

  • 判定:非有界

例5:f(x) = x²

この関数も、x が大きくなれば f(x) は無限に大きくなります。

  • 判定:非有界

例6:f(x) = 1/x (x > 0)

x が0に近づくと、f(x) は無限に大きくなります。

  • 判定:非有界

有界の重要性

なぜ有界という概念が重要なのでしょうか?

1. 極限を考える際の基準

数列が収束するかどうかを調べる際、まず有界かどうかをチェックすることがあります。非有界な数列は発散する可能性が高いです。

2. 実用的な意味

現実世界では、多くの量が有界です:

  • 温度(絶対零度以下にはならない、ある上限もある)
  • 速度(光速を超えられない)
  • 確率(0以上1以下)

有界かどうかを知ることで、実際の現象を理解しやすくなります。

3. 数学的な性質の証明

多くの数学の定理で、「有界であること」が重要な条件になっています。

たとえば:

  • ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理:有界な数列は収束する部分列を持つ
  • 最大値・最小値の定理:閉区間上の連続関数は有界で、最大値と最小値を持つ

距離空間における有界

より高度な数学では、距離空間における有界という概念もあります。

距離空間とは?

距離空間とは、2点間の「距離」が定義されている空間のことです。

距離空間での有界の定義

距離空間 (M, d) において、部分集合 S が有界であるとは、ある実数 r > 0 が存在して、S のすべての2点 s, t について d(s, t) < r となることを意味します。

簡単に言えば、集合のすべての要素が有限の半径の球の中に収まっているということです。

例:平面上の点の集合

平面(2次元空間)上の点の集合を考えます。

例1:円の内部

原点を中心とする半径5の円の内部にあるすべての点の集合は有界です。どの2点間の距離も10より小さいからです。

例2:すべての整数座標の点

(1, 0), (2, 0), (3, 0), … のような点の集合は非有界です。どんどん遠くに離れていくからです。


よくある質問:有界Q&A

Q1. 有界と境界って違うの?

A. はい、まったく異なる概念です!

有界(bounded):ある範囲内に収まっているかどうか
境界(boundary):集合の端っこにあたる部分

たとえば、開区間 (0, 1) は有界ですが、境界(0と1)を含んでいません。

Q2. 有限集合は必ず有界?

A. はい、必ず有界です。

有限個の要素しかないので、その中で最大のものより大きい数が上界に、最小のものより小さい数が下界になります。

Q3. 無限集合は必ず非有界?

A. いいえ、そうとは限りません。

たとえば、区間 (0, 1) は無限個の実数を含みますが、有界です。

逆に、自然数の集合 {1, 2, 3, …} は無限集合で、かつ非有界です。

Q4. 有界だけど最大値がない集合ってあるの?

A. はい、あります!

開区間 (0, 1) がその例です。1に限りなく近い数はありますが、1自体は含まれないので最大値はありません。でも上界(1やそれより大きい数)は存在するので有界です。

このような場合、最大値は存在しませんが、上限(supremum)という概念を使います。(0, 1) の上限は1です。

Q5. 関数が有界かどうか、どうやって判定するの?

A. いくつかの方法があります:

  1. グラフを描く:視覚的に範囲を確認
  2. 値の範囲を調べる:関数の最大値・最小値を求める
  3. 極限を調べる:x → ∞ や x → -∞ のときの挙動を見る

たとえば、f(x) = 1/(x² + 1) の場合:

  • グラフを描くと、0より大きく1以下の範囲に収まっている
  • x = 0 のとき最大値1
  • x → ±∞ のとき f(x) → 0
  • よって有界

Q6. 収束しない数列でも有界なことはある?

A. はい、あります。

数列 {1, -1, 1, -1, …} は振動していて収束しませんが、すべての項が -1 ≤ aₙ ≤ 1 の範囲にあるので有界です。

「収束する ⇒ 有界」は真ですが、「有界 ⇒ 収束する」は偽です。


有界の判定練習

いくつかの例で、有界かどうかを判定してみましょう。

練習1:集合 {-10, -5, 0, 5, 10}

解答:有界

  • 上界:10(またはそれより大きい数)
  • 下界:-10(またはそれより小さい数)

有限集合なので必ず有界です。

練習2:区間 [1, ∞)

解答:非有界

  • 下界:1がある
  • 上界:ない(無限に大きくなる)

下に有界ですが、上に有界でないので、全体としては非有界です。

練習3:関数 f(x) = arctan(x)

解答:有界

逆正接関数は、どんな x に対しても -π/2 < arctan(x) < π/2 の範囲に収まります。

練習4:数列 {1/n²} = {1, 1/4, 1/9, 1/16, …}

解答:有界

  • すべての項は 0 < aₙ ≤ 1
  • 0に収束する数列でもある

練習5:関数 f(x) = e^x

解答:非有界

指数関数は、x が大きくなると無限に大きくなります。上界がないので非有界です。


まとめ:有界を理解しよう!

有界は、数学の様々な分野で登場する基本的で重要な概念です。

有界の重要ポイント:

  1. 意味:ある範囲内に収まっていること、無限遠に飛んでいかないこと
  2. 上界と下界:集合の要素を上から・下から抑える値
  3. 有界の条件:上界と下界の両方を持つこと
  4. 適用範囲:集合、数列、関数など様々な対象に適用できる
  5. 重要な性質:収束する数列は必ず有界(逆は真でない)

覚えておくべきこと:

  • 有限集合は必ず有界
  • 有界でも最大値・最小値があるとは限らない
  • 有界と境界は別の概念
  • 有界かどうかは、極限や収束を考える上で重要な情報

有界という概念を理解することで、数列の収束、関数の性質、集合の大きさなど、様々な数学的な問題をより深く理解できるようになります。

最初は抽象的に感じるかもしれませんが、「ある範囲内に収まっているかどうか」というシンプルな考え方だと捉えれば、徐々に慣れていきます。
具体例をたくさん見て、有界の感覚を身につけましょう!

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