数学の授業で「たすき掛け」という言葉を聞いたことはありませんか?
「なんだか難しそう…」「どうやって使うのか分からない」と感じる人も多いかもしれません。でも安心してください!たすき掛けは、コツさえ掴めば誰でも使いこなせる便利な計算方法なんです。
たすき掛けとは、二次式を因数分解するための計算テクニックのこと。特にx²の前に係数がついている式(例:3x²+5x+2)を因数分解する際に、すごく役立ちます。
この記事では、たすき掛けの基本から実際の解き方まで、分かりやすく解説していきますね。
たすき掛けの名前の由来

「たすき掛け」という名前、ちょっと変わっていますよね。
実はこれ、日本の伝統的な衣装で使う「襷(たすき)」から来ているんです。襷とは、着物の袖をたくし上げるときに使う帯のこと。肩から斜めに交差させて結ぶものです。
この計算方法では、数字を斜めに掛け算していくため、その様子が襷を交差させる形に似ていることから「たすき掛け」と呼ばれるようになりました。
ちなみに英語圏では「Cross Multiplication Method(交差掛け算法)」や「Diamond Method(ダイヤモンド法)」と呼ばれています。
どんなときにたすき掛けを使うの?
たすき掛けは、すべての因数分解で使うわけではありません。使うべき場面をしっかり理解しておきましょう。
たすき掛けを使う式の特徴
ax² + bx + c の形で、aが1ではない場合にたすき掛けを使います。
たとえば:
- 2x² + 5x + 3
- 3x² – 7x – 6
- 6x² + 11x + 4
これらの式は、x²の前に2や3といった係数がついていますよね。こういう式をスムーズに因数分解するために、たすき掛けが活躍するんです。
たすき掛けを使わない場合
逆に、次のような式では基本的な公式を使った方が簡単です:
- x² + 5x + 6 → 基本の因数分解(「かけて6、たして5」の組み合わせを探す)
- x² – 9 → 平方の差の公式(a² – b² = (a+b)(a-b))
- x² + 6x + 9 → 完全平方式((x+3)²)
x²の係数が1の場合は、わざわざたすき掛けを使わなくても簡単に解けることが多いです。
たすき掛けの基本的なやり方
それでは、実際にたすき掛けのやり方を見ていきましょう。
ここでは「3x² + 5x – 2」という式を例に、4つのステップで解説します。
ステップ1:x²の係数を分解する
まず、x²の係数(この場合は3)に注目します。
かけて3になる整数の組み合わせを考えましょう。
3 = 1 × 3
3 = 3 × 1
今回は「3」と「1」の組み合わせを使います。これを左側に縦に並べて書きます。
3
1
ステップ2:定数項を分解する
次に、定数項(この場合は-2)に注目します。
かけて-2になる整数の組み合わせを考えましょう。
-2 = 1 × (-2)
-2 = (-1) × 2
-2 = 2 × (-1)
-2 = (-2) × 1
複数の組み合わせがありますね。この中からうまくいくものを探していきます。
まずは「-1」と「2」の組み合わせを試してみましょう。これを右側に縦に並べます。
3 -1
1 2
ステップ3:斜めに掛け算する
ここが「たすき掛け」の名前の由来となる部分です!
図の数字を斜めに掛け算します:
- 3 × 2 = 6
- 1 × (-1) = -1
3 -1 → 3 × 2 = 6
×
1 2 → 1 × (-1) = -1
ステップ4:足し算して確認する
斜めに掛けた結果を足します:
6 + (-1) = 5
この答えが、元の式のxの係数(5)と一致しているかを確認します。
今回は5になったので、大成功!これでたすき掛けが成立しました。
答えを書く
最後に、たすき掛けの図から因数分解の答えを作ります。
縦に並んだ数字をそれぞれ1つのカッコにまとめます:
3 -1 → (3x - 1)
1 2 → (x + 2)
したがって、答えは (3x – 1)(x + 2) です!
もし計算が合わなかったらどうする?
たすき掛けをやってみて、足し算の結果がxの係数と合わない場合があります。その場合は、別の組み合わせを試す必要があります。
例:別の組み合わせを試す
さっきの例で、もし「1」と「-2」の組み合わせを選んでいたら:
3 1 → 3 × (-2) = -6
1 -2 → 1 × 1 = 1
足し算すると:-6 + 1 = -5
これは5ではないので、この組み合わせは不正解です。
こういう場合は、他の組み合わせを順番に試していくしかありません。何回か試行錯誤することで、正しい組み合わせが見つかります。
最初は時間がかかるかもしれませんが、練習を重ねれば、だんだんと早く正解を見つけられるようになりますよ!
実際に練習してみよう!例題3つ

理解を深めるために、いくつか練習問題をやってみましょう。
例題1:2x² + 7x + 3
ステップ1:x²の係数を分解
2 = 2 × 1
ステップ2:定数項を分解
3 = 3 × 1(または 1 × 3)
ステップ3:たすき掛けを試す
2 3 → 2 × 1 = 2
1 1 → 1 × 3 = 3
足し算:2 + 3 = 5 ← これは7ではない
別の組み合わせを試してみます。
2 1 → 2 × 1 = 2
1 3 → 1 × 1 = 1
あれ、まだ違いますね。数字の配置を変えてみましょう。
実は、2と1の位置を入れ替えると:
1 3 → 1 × 1 = 1
2 1 → 2 × 3 = 6
足し算:1 + 6 = 7 ← 成功!
答え:(x + 3)(2x + 1) または (2x + 1)(x + 3)
例題2:3x² – 10x + 8
ステップ1:x²の係数を分解
3 = 3 × 1
ステップ2:定数項を分解
8 = (-4) × (-2)(マイナスとマイナスをかけてプラス8)
ステップ3:たすき掛け
3 -4 → 3 × (-2) = -6
1 -2 → 1 × (-4) = -4
足し算:-6 + (-4) = -10 ← 成功!
答え:(3x – 4)(x – 2)
例題3:2x² – x – 6
ステップ1:x²の係数を分解
2 = 2 × 1
ステップ2:定数項を分解
-6 = (-3) × 2(または他の組み合わせ)
ステップ3:たすき掛け
2 -3 → 2 × 2 = 4
1 2 → 1 × (-3) = -3
足し算:4 + (-3) = 1 ← これは-1ではない
別の組み合わせを試します:
2 2 → 2 × (-3) = -6
1 -3 → 1 × 2 = 2
あれ、これも違いますね。配置を変えてみましょう:
2 -3 → 2 × 2 = 4
1 2 → 1 × (-3) = -3
うーん、まだ違う。もう一度:
1 -3 → 1 × 2 = 2
2 2 → 2 × (-3) = -6
これもダメですね。実は:
2 2 → 2 × (-3) = -6
×
1 -3 → 1 × 2 = 2
いや、正しくは:
2 -3
1 2
2×2=4、1×(-3)=-3なので、4-3=1
符号を調整して:
2 2
1 -3
2×(-3)=-6、1×2=2なので、-6+2=-4 ← まだ違う
実は正しい組み合わせは:
2 3
1 -2
たすき掛け:2×(-2)=-4、1×3=3
足し算:-4+3=-1 ← 成功!
答え:(2x + 3)(x – 2)
たすき掛けのコツとポイント
たすき掛けを上手に使いこなすためのコツをいくつか紹介します。
コツ1:必ず紙に書き出す
頭の中だけで考えようとせず、必ず紙に図を書いて計算しましょう。視覚的に確認することで、ミスを減らせます。
コツ2:マイナスの符号に注意
定数項がマイナスの場合、組み合わせの符号をしっかり考える必要があります。
- マイナス × マイナス = プラス
- プラス × マイナス = マイナス
この基本を忘れずに!
コツ3:複数の組み合わせを試す覚悟をする
最初の組み合わせで成功することもあれば、何回か試行錯誤が必要なこともあります。「失敗は成功のもと」です。根気よく試しましょう。
コツ4:検算を忘れずに
因数分解した答えを展開して、元の式に戻るか確認しましょう。これが最も確実な確認方法です。
たとえば(3x – 1)(x + 2)を展開すると:
3x × x + 3x × 2 + (-1) × x + (-1) × 2
= 3x² + 6x – x – 2
= 3x² + 5x – 2 ← 元の式に戻った!
コツ5:たくさん練習する
たすき掛けは、やればやるほど早く正解を見つけられるようになります。問題集などでたくさん練習して、経験値を積みましょう。
よくある質問:たすき掛けQ&A
Q1. たすき掛けと普通の因数分解、何が違うの?
A. 普通の因数分解(x²の係数が1の場合)は、「かけてc、たしてb」という組み合わせを探すだけで済みます。
しかし、x²の係数が1ではない場合(たとえば3x²)は、x²の係数と定数項の両方を分解して、さらに斜めに掛け算する必要があるんです。これがたすき掛けです。
Q2. なぜ斜めに掛け算するの?
A. 因数分解した結果(ax + b)(cx + d)を展開すると、acx² + (ad + bc)x + bd になります。
この「ad + bc」の部分、つまり斜めに掛けて足したものが、元の式のxの係数になるんです。だから斜めに掛け算して確認する必要があるわけですね。
Q3. 組み合わせが多すぎて、どれを試せばいいか分からない
A. 確かに、係数や定数項が大きい数だと、組み合わせがたくさんあって大変です。
コツとしては:
- まず小さい数の組み合わせから試す
- マイナスの符号に気をつける
- 慣れてくると「この組み合わせは無理そう」という勘が働くようになります
Q4. たすき掛けができません。他の方法はないの?
A. はい、あります!二次方程式の解の公式を使って因数分解する方法もあります。
ax² + bx + c = 0 の解を解の公式で求めて、その解をα、βとすると、
ax² + bx + c = a(x – α)(x – β) と因数分解できます。
ただし、この方法は計算が複雑になることが多いので、たすき掛けの方が早いことが多いです。
Q5. 因数分解できない式もあるの?
A. はい、あります!整数の範囲では因数分解できない式も存在します。
たとえば x² + x + 1 は整数の範囲では因数分解できません。こういう場合は「因数分解できない」と答えるか、解の公式を使って実数や複素数の範囲で考えることになります。
たすき掛けの応用:少し難しい問題に挑戦

基本をマスターしたら、少し難しい問題にも挑戦してみましょう。
応用例:6x² + 11x + 4
x²の係数が6なので、組み合わせが増えます。
6 = 6 × 1 または 3 × 2
4 = 4 × 1 または 2 × 2
試行錯誤が必要ですが、正解は:
3 4 → 3 × 1 = 3
2 1 → 2 × 4 = 8
足し算:3 + 8 = 11 ← 成功!
答え:(3x + 4)(2x + 1)
複雑な式でも基本は同じ
たとえ係数が大きくても、基本的なやり方は変わりません。ただ試す組み合わせが増えるだけです。焦らず、一つひとつ確認していけば必ず解けます。
まとめ:たすき掛けをマスターしよう!
たすき掛けは、最初は難しく感じるかもしれません。でも、基本的な手順を理解して、たくさん練習すれば必ずできるようになります。
たすき掛けの基本手順:
- x²の係数を分解して左側に書く
- 定数項を分解して右側に書く
- 斜めに掛け算する
- 足し算してxの係数と一致するか確認する
- 一致すれば因数分解完成!
大切なポイント:
- 必ず紙に図を書く
- マイナスの符号に注意
- 複数の組み合わせを試す覚悟を持つ
- 検算を忘れずに
- たくさん練習する
たすき掛けは、二次方程式や二次関数など、今後の数学学習でも頻繁に使う重要なテクニックです。
最初は時間がかかるかもしれませんが、練習を重ねるうちに、パッと正しい組み合わせが見つけられるようになります。焦らず、一歩ずつマスターしていきましょう!
数学は積み重ねが大切です。基本をしっかり身につければ、難しい問題も必ず解けるようになりますよ!

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