動画のエンコーディングとは?初心者でもわかる基礎知識と仕組みを徹底解説

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YouTubeに動画をアップロードしたり、SNSで動画を共有したりする時、「エンコード」という言葉を見たことはありませんか?

実は、私たちがインターネットで見ている動画は、すべて「エンコード」という作業を経ています。

この記事では、動画を扱うなら知っておきたい「エンコーディング」について、初心者にもわかりやすく解説していきます。

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動画のエンコーディングとは?

エンコーディング(エンコード)とは、簡単に言うと「動画データを圧縮して、再生しやすい形式に変換する作業」のことです。

英語の「encode(エンコード)」は、もともと「符号化する」「暗号化する」という意味。動画の世界では、大きなデータを小さく圧縮して、様々なデバイスで再生できる形式に変換することを指します。

身近な例で考えてみよう

パラパラ漫画を想像してみてください。

動画は、このパラパラ漫画のように、無数の静止画(写真)が連続して表示されることで動いて見えます。

一般的な動画は1秒間に30枚の写真(フレーム)を使うので、1分間の動画なら1,800枚もの写真が必要です。

これをそのまま保存すると、とんでもなく大きなファイルサイズになってしまいます。

そこで登場するのがエンコード。

エンコードは、これらの膨大なデータを「賢く圧縮」して、サイズを小さくしながらも画質をできるだけ保つ技術なんです。

なぜ動画にエンコードが必要なの?

動画にエンコードが必要な理由は、主に3つあります。

1. ファイルサイズが大きすぎる

生の動画データ(RAW動画)は、驚くほど大きなファイルサイズになります。

例えば、フルHD(1920×1080)の非圧縮動画は、1秒あたり約2.98ギガビット(約373メガバイト)ものデータ量になるんです。

これでは、保存するにも、インターネットで共有するにも、あまりにも不便。

エンコードを行うことで、動画データを100分の1以下にまで圧縮できます。

2. デバイスやプラットフォームの互換性

スマホ、パソコン、テレビなど、動画を見るデバイスは様々。

それぞれのデバイスやYouTube、TikTokなどのプラットフォームには、対応している動画形式が決まっています。

エンコードによって、これらのデバイスやサービスで再生できる形式に変換する必要があるんです。

3. スムーズな再生のため

エンコードされていない動画をインターネットで再生しようとすると、データ量が大きすぎて読み込みに時間がかかり、カクカクして止まってしまいます。

適切にエンコードされた動画なら、途切れることなくスムーズに再生できます。

視聴者にストレスを与えないためにも、エンコードは欠かせない作業なんです。

エンコードの仕組みを理解しよう

エンコードがどのように動画を圧縮しているのか、基本的な仕組みを見ていきましょう。

コーデック:圧縮のルール

コーデック(Codec)とは、「Coder(エンコーダー)」と「Decoder(デコーダー)」を組み合わせた言葉です。

動画を圧縮する時のルール、つまり「どうやってデータを小さくするか」を決めているのがコーデックです。

主なコーデックには以下があります。

  • H.264(AVC):最も広く使われている。YouTubeやNetflixでも採用
  • H.265(HEVC):H.264より高い圧縮率。4K動画に適している
  • VP9:Googleが開発した無料コーデック。YouTubeで使用
  • AV1:次世代の無料コーデック。高圧縮率で注目されている

コンテナ:データを入れる箱

コンテナ(Container)は、圧縮された映像データと音声データをまとめて入れる「箱」のようなものです。

よく見るファイル拡張子(.mp4、.movなど)は、このコンテナの種類を示しています。

主なコンテナには以下があります。

  • MP4:最も汎用性が高い。ほぼすべてのデバイスで再生可能
  • MOV:Apple製品で使われることが多い
  • AVI:Windowsの古い形式。ファイルサイズが大きめ
  • MKV:複数の音声トラックや字幕を含められる

圧縮技術の基本

エンコードでは、主に2つの圧縮技術を使います。

1つ目は「フレーム内予測」。

1枚の画像の中で、同じ色や似た色が並んでいる部分をまとめて圧縮します。

例えば「青青青赤赤赤赤赤黄黄」という情報を「青3、赤5、黄2」とまとめることで、データ量を減らすんです。

2つ目は「フレーム間予測」。

連続するフレーム(画像)を比較して、変化していない部分は省略します。

例えば、カメラが止まっていて背景が変わらない場面では、人物だけの動きだけを記録すればOK。背景のデータは前のフレームを参照することで、大幅にデータを削減できます。

デコードとは?エンコードとの関係

エンコードと対になる言葉が「デコード」です。

デコードは、エンコード(圧縮・変換)されたデータを元に戻して、再生できる状態にする作業のこと。

動画を見る時、あなたのスマホやパソコンは裏側でデコード処理を行っています。

つまり、動画を配信する側はエンコード、視聴する側はデコードを行っているんです。

エンコード:撮影した動画を圧縮して配信用に変換

デコード:圧縮された動画を解凍して画面に表示

ただし、デコードは完全に元のデータに戻せるわけではありません。

エンコード時に削除されたデータは失われたままなので、元の生動画よりは画質が劣ります。これを「非可逆圧縮(ロッシー圧縮)」と呼びます。

レンダリングとエンコードの違い

動画編集でよく聞く「レンダリング」という言葉。

これもエンコードと似ていますが、実は違う作業です。

レンダリングは、編集ソフト上で行ったカット、効果、テロップなどの編集作業を、1本の動画ファイルとして生成する作業。

エンコードは、そのレンダリングされた動画を、さらに圧縮・変換して配信に適した形式にする作業。

つまり、レンダリングで動画を作成し、エンコードでその動画を配信できる形に整える、という流れです。

実際には、多くの動画編集ソフトでは、レンダリングと同時にエンコードも行われるので、両方の作業が一度に完了します。

ソフトウェアエンコードとハードウェアエンコード

エンコードを行う方法には、大きく分けて2種類あります。

ソフトウェアエンコード

パソコンのCPU(中央処理装置)を使って、ソフトウェアでエンコードを行う方法です。

メリットは、専用の機器が不要で、パソコンとソフトがあればすぐに始められること。

デメリットは、処理に時間がかかることです。CPUの性能によっては、1時間の動画をエンコードするのに数時間かかることもあります。

ハードウェアエンコード

グラフィックカード(GPU)などの専用ハードウェアを使ってエンコードする方法です。

メリットは、処理速度が速いこと。ソフトウェアエンコードの数倍の速さで処理できます。

デメリットは、専用のグラフィックカードなどを購入する必要があり、初期費用がかかること。

最近のパソコンに搭載されているGPUの多くは、ハードウェアエンコードに対応しているので、設定を変えるだけで高速エンコードが可能になることもあります。

知っておきたい動画の基本用語

エンコードを理解するには、動画に関するいくつかの用語も知っておく必要があります。

フレームレート(fps)

1秒間に何枚の画像(フレーム)を表示するかを示す値です。

単位はfps(Frames Per Second)で表します。

  • 24fps:映画でよく使われる。映画的な雰囲気を出せる
  • 30fps:一般的な動画の標準。YouTubeでも多い
  • 60fps:滑らかな動き。ゲーム実況やスポーツ映像に適している

フレームレートが高いほど動きが滑らかになりますが、ファイルサイズも大きくなります。

解像度

動画の縦と横のピクセル数(画素数)のことです。

  • 1080p(フルHD):1920×1080。一般的な高画質
  • 1440p(2K):2560×1440。YouTubeで人気
  • 2160p(4K):3840×2160。超高画質

解像度が高いほど鮮明な映像になりますが、ファイルサイズも大きくなります。

ビットレート

1秒間に送受信できるデータ量のことで、bps(Bits Per Second)という単位で表します。

  • 500kbps:低画質
  • 2Mbps:標準画質
  • 10Mbps:高画質

ビットレートが高いほど画質・音質が良くなりますが、ファイルサイズも大きくなります。

エンコード時には、これらのバランスを考えて設定する必要があります。

エンコードの注意点

エンコードを行う際には、いくつか気をつけるべきポイントがあります。

1. 元のデータは必ず保存しておく

エンコードは非可逆圧縮なので、一度圧縮すると元の画質には戻せません。

失敗しても、やり直せるように、撮影した元のデータは別で保存しておきましょう。

2. 目的に合った設定を選ぶ

YouTubeにアップロードするのか、DVDに焼くのか、SNSで共有するのか。

目的によって、最適なコーデック、解像度、ビットレートは変わります。

各プラットフォームの推奨設定を確認してからエンコードしましょう。

3. 圧縮しすぎに注意

ファイルサイズを小さくしようと圧縮しすぎると、画質が著しく劣化します。

ぼやけたり、モザイクのようになったり(ブロックノイズ)、色がおかしくなったりします。

適度な圧縮率を見つけることが大切です。

4. 処理時間を考慮する

長い動画や高解像度の動画をエンコードする場合、かなりの時間がかかることがあります。

急ぎの場合は、事前にテストして処理時間を把握しておくと安心です。

主要なエンコードソフト

エンコードを行うためのソフトウェア(エンコーダー)は、無料・有料問わず数多く存在します。

無料のエンコードソフト

  • HandBrake:シンプルで使いやすい。初心者におすすめ
  • XMedia Recode:多機能で様々な形式に対応
  • FFmpeg:コマンドライン型。上級者向け

動画編集ソフトに搭載

多くの動画編集ソフトには、エンコード機能が標準で搭載されています。

  • Adobe Premiere Pro:プロ向け。詳細な設定が可能
  • Final Cut Pro:Mac専用。高速処理が魅力
  • PowerDirector:初心者でも使いやすく、AI機能も充実

これらのソフトを使えば、編集からエンコードまで一連の作業を行えます。

最適なエンコード設定の選び方

では、実際にどんな設定でエンコードすればいいのか、目的別に見ていきましょう。

YouTube向け

  • コーデック:H.264
  • コンテナ:MP4
  • 解像度:1080p(フルHD)
  • フレームレート:30fps または 60fps
  • ビットレート:8Mbps〜12Mbps(1080p時)

SNS(Instagram、TikTok)向け

  • コーデック:H.264
  • コンテナ:MP4
  • 解像度:1080p(縦向き:1080×1920)
  • フレームレート:30fps
  • ビットレート:5Mbps前後

保存用(高画質保存)

  • コーデック:H.265(HEVC)
  • コンテナ:MP4 または MKV
  • 解像度:元の解像度を維持
  • フレームレート:元のフレームレートを維持
  • ビットレート:高め(15Mbps以上)

容量節約(低画質でOK)

  • コーデック:H.264
  • コンテナ:MP4
  • 解像度:720p
  • フレームレート:24fps または 30fps
  • ビットレート:2Mbps〜4Mbps

最終的には、何度か試して自分にとってベストな設定を見つけることが大切です。

トランスコーディングとの違い

エンコードと似た言葉に「トランスコーディング(トランスコード)」があります。

この2つは、しばしば混同されますが、厳密には意味が異なります。

エンコードは、カメラで撮影した生の動画データ(RAW)を、初めてデジタル形式に圧縮・変換する作業。

トランスコーディングは、すでにエンコードされた動画を、別の形式に変換する作業。

例えば、MP4形式の動画をMOV形式に変換する、といった作業がトランスコーディングです。

ただし、実際には「エンコード」という言葉が、両方の意味で使われることが多いです。

動画を扱う人たちの間では、「変換作業全般」をエンコードと呼んでいます。

よくある質問

Q: エンコードにはどれくらい時間がかかりますか?

動画の長さ、解像度、パソコンのスペックによって大きく変わります。

一般的に、1時間の動画をソフトウェアエンコードする場合、30分〜数時間かかることが多いです。

ハードウェアエンコードを使えば、数分〜30分程度に短縮できます。

Q: エンコードすると必ず画質は落ちますか?

はい、エンコード(圧縮)を行うと、必ず元のデータからは劣化します。

ただし、適切な設定であれば、人間の目では違いがわからないレベルに抑えられます。

高いビットレートと品質の高いコーデックを使うことで、劣化を最小限にできます。

Q: MP4とMOVはどちらがいいですか?

互換性を重視するならMP4がおすすめです。

ほぼすべてのデバイスやプラットフォームで再生できます。

MOVはApple製品では最適ですが、Windows環境では再生できないこともあります。

Q: H.264とH.265、どちらを選べばいいですか?

互換性を重視するならH.264、圧縮効率を重視するならH.265です。

H.265は同じ画質でファイルサイズを約半分にできますが、古いデバイスでは再生できないことがあります。

また、H.265のエンコードには、H.264よりも処理時間がかかります。

Q: 無料のエンコードソフトで十分ですか?

個人利用なら、無料ソフトで十分な場合が多いです。

HandBrakeやXMedia Recodeなどの無料ソフトでも、高品質なエンコードが可能です。

ただし、仕事で使う場合や、高度な機能が必要な場合は、有料ソフトの方が便利です。

まとめ

動画のエンコーディングは、私たちがインターネットで快適に動画を見るために欠かせない技術です。

膨大なサイズの動画データを圧縮し、様々なデバイスで再生できる形式に変換することで、YouTubeやSNSでの動画視聴が可能になっています。

エンコードの基本的な仕組みを理解しておくことで、動画編集や動画配信がスムーズになり、トラブルが起きた時にも対処しやすくなります。

最初は難しく感じるかもしれませんが、実際にいくつかの設定を試してみることで、だんだんと理解が深まっていくはずです。

この記事で紹介した知識を参考に、目的に合った最適なエンコード設定を見つけてみてください。

きっと、あなたの動画制作・配信がもっと快適になるはずです。

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