「Slackのワークスペースを統合したい」
「別のツールに移行するから、データをバックアップしておきたい」
「会社が買収されて、Slackを移行することになった」
Slackを使っていると、データ移行が必要になる場面があります。でも、「どうやってデータを移行するの?」「全部のデータが移行できるの?」と不安になりますよね。
この記事では、Slackのデータ移行について、エクスポートからインポートまでの手順、プラン別の制限、注意点まで詳しく解説します。
Slackのデータ移行とは?

データ移行とは、Slackのメッセージやファイル、チャンネル情報などを別の場所に移すことです。
データ移行が必要になる主な場面
場面1:ワークスペースの統合
複数のワークスペースを1つにまとめたい時です。部署ごとに作ったワークスペースを、会社全体のワークスペースに統合するケースなどがあります。
場面2:他のツールへの移行
SlackからMicrosoft Teamsや他のチャットツールに移行する場合です。過去のやり取りを新しいツールでも見られるようにしたい時に必要です。
場面3:バックアップ
大切なメッセージやファイルを定期的にバックアップしたい場合です。コンプライアンス対応や万が一の事態に備えるために行います。
場面4:プラン変更による対応
フリープランから有料プランへのアップグレード、またはダウングレード時に、データを保存しておきたい場合です。
データエクスポートの基本
まずは、Slackからデータを取り出す「エクスポート」について説明します。
エクスポートできるデータ
基本的にエクスポートされるもの:
- メッセージの内容(テキスト)
- メッセージの送信者
- メッセージの送信日時
- チャンネル情報
- ユーザー情報
- ファイルへのリンク(ファイル本体ではない)
エクスポートされないもの:
- ファイル本体(リンクのみ)
- 絵文字のカスタム設定
- ユーザーグループ
- ワークスペースの設定
- アプリの設定
- ブックマーク
- 保存したアイテム(個人用)
プラン別のエクスポート範囲
エクスポートできる範囲は、契約プランによって大きく異なります。
フリープラン:
- エクスポート可能:パブリックチャンネルのみ
- 期間:過去90日分まで
- 形式:JSON形式
- 制限:ファイル本体は含まれない
Pro / Business+プラン:
- エクスポート可能:パブリックチャンネル(標準)
- 追加申請:プライベートチャンネル、DMも可能(条件付き)
- 期間:ワークスペースの全履歴
- 形式:JSON形式
Enterprise Gridプラン:
- エクスポート可能:全てのデータ
- カスタムエクスポート:特定のユーザーやチャンネルのみ選択可能
- 形式:JSONまたはTXT形式
- スケジュール機能:定期的な自動エクスポートが可能
データエクスポートの手順
パブリックチャンネルのエクスポート方法
手順:
- デスクトップアプリまたはブラウザでSlackを開く
- 左上のワークスペース名をクリック
- 「設定と管理」→「ワークスペースの設定」を選択
- ブラウザが自動で開く
- 画面右上の「データのインポート/エクスポート」をクリック
- 「エクスポート」タブを選択
- 「日付範囲をエクスポートする」でエクスポート期間を選択
- 「エクスポート開始」をクリック
エクスポート期間の選択肢:
- 全期間
- 過去30日間
- カスタム期間(開始日と終了日を指定)
エクスポートが完了すると、メールで通知が届きます。
エクスポートファイルのダウンロード
手順:
- Slackから届いたメールを開く
- 「ワークスペースのエクスポートページにアクセスする」をクリック
- 「ダウンロード」タブを選択
- 「ダウンロードを開始する」をクリック
- ZIPファイルがダウンロードされる
注意点:
- ダウンロードリンクには有効期限がある
- エクスポートの生成は1時間に1回まで
- ZIPファイルのサイズは、データ量によって数MBから数GBまで様々
全会話のエクスポート申請(有料プランのみ)
プライベートチャンネルやDMを含む全データのエクスポートには、特別な申請が必要です。
申請に必要なもの:
- 法的に有効な要求書類(政府機関や規制当局からの命令など)
- メンバーの同意書
- 適用法に基づく権利の証明
申請手順:
- Slackサポートに連絡
- 上記の必要書類を提出
- Slackが審査(通常数日〜数週間)
- 承認されたら、セルフサービスツールへのアクセス権が付与される
- ツールを使ってエクスポート
この機能は、法的対応やコンプライアンス目的でのみ使用できます。
データインポートの基本
エクスポートしたデータを、別のワークスペースに取り込む「インポート」について説明します。
インポートできるデータの種類
1. 他のSlackワークスペースからのデータ
- メッセージ
- チャンネル
- ユーザー情報
2. CSVファイル
- Microsoft TeamsやSkypeなど、他ツールからのデータ
- カスタム形式のデータ
3. サードパーティアプリからのエクスポートデータ
- HipChatなど、他のチャットツールからのデータ
インポートの制限事項
インポートできないもの:
- Enterprise GridからのデータをEnterprise Grid以外へ
- ワークスペースの設定(手動で再設定が必要)
- アプリの設定(インポート後に再インストールが必要)
- ユーザーグループ
- カスタム絵文字
- ユーザーの保存済みアイテム
- プロフィールフィールドのカスタム設定
Slackワークスペース間のデータ移行手順
2つのワークスペースを統合する、最も一般的なケースの手順です。
ステップ1:移行元ワークスペースからデータをエクスポート
前述の「データエクスポートの手順」に従って、移行元ワークスペースのデータをエクスポートします。
ポイント:
- 小規模なワークスペースから大規模なワークスペースへ移行するのがおすすめ
- エクスポートファイルが大きすぎる場合は、日付範囲で分割する
ステップ2:エクスポートファイルをアップロード準備
方法1:クラウドストレージを使う
- DropboxやGoogle Drive、Boxなどにエクスポートファイルをアップロード
- 公開ダウンロードリンクを生成
- リンクをメモしておく
方法2:直接アップロード
ファイルサイズが小さい場合は、この方法が簡単です。
ステップ3:移行先ワークスペースでインポートを開始
手順:
- 移行先ワークスペースにサインイン
- 左上のワークスペース名をクリック
- 「設定と管理」→「ワークスペースの設定」を選択
- 「データのインポート/エクスポート」をクリック
- 「インポート」タブを選択
- 「Slack」の横の「インポート」をクリック
- ガイドを確認して「次へ」
- エクスポートファイルのリンクを貼り付け、または直接アップロード
- 「ファイルをアップロード」をクリック
アップロードが完了すると、メールで通知が届きます。
ステップ4:ユーザーのマッピング
インポートするユーザーをどう扱うか選択します。
選択肢:
1. 既存のメンバーにマージ
- メールアドレスが一致するユーザーは、既存アカウントと統合される
- 過去のメッセージも既存ユーザーに紐付けられる
2. 新規ユーザーとして招待
- 新しいアカウントを作成
- 招待メールが送信される
3. 解除済みアカウントとして登録
- アカウントは作成されるが、無効化された状態
- 招待メールは送信されない
- 後で必要に応じて有効化できる
4. インポートしない
- 特定のユーザーを除外できる
ステップ5:チャンネルのマッピング
インポートするチャンネルをどう扱うか選択します。
選択肢:
1. 新しいチャンネルとして作成
- 移行先に同名のチャンネルがない場合、新規作成される
2. 既存のチャンネルにマージ
- 移行先に同名のパブリックチャンネルがある場合、統合される
- メッセージは日時順に並べ替えられる
3. インポートしない
- 特定のチャンネルを除外できる
注意:
- プライベートチャンネルは既存チャンネルにマージできない
- チャンネル名の変更はインポート前に行う必要がある
ステップ6:オプション設定
DMのインポート:
「インポートされたユーザー間のダイレクトメッセージ」にチェックを入れると、DMもインポートされます。
ファイルの扱い:
ファイル自体は含まれず、リンクのみがインポートされます。リンクが有効な限り、ファイルにアクセスできます。
ステップ7:インポート実行
手順:
- 設定内容を最終確認
- 「インポート」ボタンをクリック
- 進行状況バーで進捗を確認
- 完了するとメールで通知
所要時間:
- 小規模(数千メッセージ):数分〜数時間
- 中規模(数万メッセージ):数時間〜1日
- 大規模(数十万メッセージ以上):数日かかることも
CSVファイルからのインポート

他ツールからSlackに移行する場合の方法です。
CSVファイルの準備
必須の列(この順番で):
- タイムスタンプ(Unixタイムスタンプ形式)
- チャンネル名
- ユーザー名
- メッセージテキスト
例:
1357559471,team-marketing,田中,新しい広告いつ始まる?
1357559472,team-marketing,佐藤,来週です!
ルール:
- 複数行のメッセージは、ダブルクォーテーション(”)で囲む
- 列の区切りはカンマ(または指定した区切り文字)
- メッセージは古い順に並べる
CSVインポートの手順
手順:
- ワークスペース設定を開く
- 「データのインポート/エクスポート」をクリック
- 「CSV/テキストファイル」の横の「インポート」をクリック
- CSVファイルを選択
- 区切り文字を確認(デフォルトはカンマ)
- 「インポート開始」をクリック
- アップロード完了後、ユーザーとチャンネルをマッピング
- インポート実行
制限:
CSVインポートでは、基本的なデータ(チャンネル、メッセージ、ユーザー)のみインポートできます。
データ移行の注意点
注意点1:ファイル本体は含まれない
エクスポートには、ファイルへのリンクしか含まれません。
対処法:
- ファイルも移行したい場合は、サードパーティツールを使う
- または、手動でファイルをダウンロードして再アップロード
注意点2:アプリの設定は移行されない
連携しているアプリ(Google Drive、Trelloなど)の設定は、移行先で再設定が必要です。
対処法:
- 使用中のアプリリストを作成
- 移行後に1つずつ再インストール・再設定
注意点3:プライベートチャンネルの扱いに注意
プライベートチャンネルは、既存のチャンネルにマージできません。
対処法:
- 移行完了まではパブリックチャンネルにしておく
- 移行後にプライベートに変更
注意点4:エクスポートファイルは編集しない
エクスポートファイルを編集すると、インポートが失敗する可能性があります。
対処法:
- 必要なデータの選択は、インポート時に行う
- ファイルは編集せず、そのままアップロード
注意点5:インポートは取り消せない
一度インポートしたデータは、簡単には削除できません。
対処法:
- 本番環境で実行する前に、テスト用ワークスペースで試す
- フリープランで新しいワークスペースを作り、テストインポートを実行
注意点6:データサイズが大きいと時間がかかる
数十万、数百万のメッセージがある場合、インポートに数日かかることもあります。
対処法:
- 日付範囲を分割して、複数回インポート
- 必要なデータだけを選択してインポート
データ移行の事前準備チェックリスト
移行をスムーズに進めるため、事前に確認しておくべきことです。
確認1:移行の目的を明確にする
- なぜ移行が必要なのか
- どのデータが必要なのか
- いつまでに完了させるのか
確認2:プランの確認
- 現在のプランでエクスポート可能な範囲は?
- 追加申請が必要か?
確認3:データ量の確認
- エクスポートファイルのサイズは?
- インポートにかかる時間は?
確認4:ユーザーへの通知
- メンバーに移行予定を事前通知
- 移行中の注意事項を共有
- 移行後の手順を説明
確認5:バックアップ
- 移行前に現状のエクスポートを取得
- 万が一に備えて保管
確認6:テスト実施
- テスト用ワークスペースで事前に試す
- 問題がないか確認
トラブルシューティング
エクスポートが完了しない
原因:
- データ量が多すぎる
- ネットワークエラー
対処法:
- 日付範囲を短くして再試行
- 時間をおいて再度エクスポート
- Slackサポートに連絡
インポートが失敗する
原因:
- エクスポートファイルが編集されている
- ファイルサイズが大きすぎる
- ファイル形式が正しくない
対処法:
- 編集していないエクスポートファイルを使用
- ファイルを分割して複数回インポート
- CSVファイルの形式を再確認
ユーザーが正しくマッピングされない
原因:
- メールアドレスが一致しない
- ユーザー名が重複している
対処法:
- インポート時にマッピングを手動で確認
- メールアドレスを事前に統一
- 重複するユーザー名を変更
チャンネルが統合されてしまった
原因:
- 移行先に同名のパブリックチャンネルが存在した
対処法:
- エクスポート前にチャンネル名を変更
- または、移行先のチャンネル名を変更
ファイルが見られない
原因:
- ファイルへのリンクが切れている
- 移行元ワークスペースが削除された
対処法:
- 移行前にファイルをダウンロード
- 移行後に再アップロード
- または、サードパーティツールを使用
よくある質問
Q1. 無料プランでもデータ移行できる?
A. はい、できますが制限があります。
フリープランでは、パブリックチャンネルの過去90日分のデータのみエクスポートできます。プライベートチャンネルやDMは含まれません。
Q2. ファイルも一緒に移行できる?
A. 標準機能では、ファイル本体は移行できません。
エクスポートにはファイルへのリンクのみが含まれます。ファイル本体も移行したい場合は、サードパーティのツールを使うか、手動でダウンロード・再アップロードが必要です。
Q3. プライベートチャンネルやDMも移行できる?
A. 有料プランで、特別な申請をすれば可能です。
ただし、法的な要求や全メンバーの同意などが必要になります。通常の移行では、パブリックチャンネルのみが対象です。
Q4. 移行にどれくらい時間がかかる?
A. データ量によって大きく異なります。
数千メッセージなら数時間、数十万メッセージなら数日かかることもあります。事前にテストして、所要時間を確認するのがおすすめです。
Q5. 移行したデータは削除できる?
A. インポート後の一括削除は簡単ではありません。
チャンネルごとに削除するか、ワークスペース全体を削除する必要があります。そのため、本番前に必ずテストすることが重要です。
Q6. Enterprise Gridから通常プランに移行できる?
A. 直接は移行できません。
Enterprise Gridのデータは、通常のワークスペースにインポートできません。別のワークスペースにインポートしてから、それをOrganizationに移行する必要があります。
Q7. 他のツール(TeamsやChatworkなど)にも移行できる?
A. エクスポートしたデータを使えば可能です。
Slackからエクスポートしたデータを、移行先ツールの形式に変換する必要があります。多くのツールには、Slackからのインポート機能があります。
まとめ:計画的にデータ移行を進めよう
Slackのデータ移行は、手順を理解すれば難しくありません。
この記事のポイント:
- データ移行には、エクスポートとインポートの2つのステップがある
- フリープランはパブリックチャンネルのみ、有料プランはより広範囲をエクスポート可能
- ファイル本体は含まれず、リンクのみがエクスポートされる
- ワークスペース間の移行では、ユーザーとチャンネルのマッピングが重要
- CSVファイルからのインポートも可能だが、基本データのみ
- アプリの設定は移行されないので、再設定が必要
- 事前にテスト用ワークスペースで試すことが大切
- データ量が多いと時間がかかるので、余裕を持って計画する
データ移行は、一度始めると途中で止めるのが難しい作業です。
まずはエクスポートだけ試してみて、ファイルサイズや所要時間を確認しましょう。そして、テスト用のワークスペースで実際にインポートを試してみることをおすすめします。
本番の移行は、メンバーが少ない週末や休日を選び、事前に告知してから実施するのがベストです。
計画的に進めれば、スムーズにデータ移行ができますよ!

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