「Slackで流れていく情報を整理したい」「重要な資料をチーム全体で共有・編集したい」
そんな悩みを解決してくれるのがSlack Canvas(スラック キャンバス)です。
2022年9月に発表され、2023年4月から正式提供が開始されたこの新機能は、Slackでの情報共有のあり方を大きく変えました。
今回は、Slack Canvasの基本から実践的な活用方法、そして注意点まで徹底的に解説していきます。
Slack Canvasとは?基本を理解しよう

Slack Canvasとは、Slack内で情報を作成・整理・共有するための新しいスペースのこと。
簡単に言えば、「Slackに組み込まれたドキュメント作成・共有機能」というイメージです。
Canvasの誕生背景
Slackはリアルタイムのコミュニケーションには優れていますが、重要な情報がチャットの流れの中に埋もれてしまうという課題がありました。
「あの議事録、どこだっけ?」
「プロジェクトの概要を確認したい」
「チームのルールをまとめておきたい」
こうしたニーズに応えるために生まれたのがCanvasです。
QuipとCanvasの関係
Canvasは、Salesforceが2016年に買収したQuipの技術を基盤としています。
QuipのコラボレーションツールとしてのノウハウがSlackにネイティブ統合され、より使いやすく進化したのがCanvasなのです。
Canvasの2つのタイプ
Slack Canvasには、用途に応じて2種類の使い方があります。
チャンネル・DM組み込み型Canvas
すべてのチャンネルとDM(ダイレクトメッセージ)に自動的に組み込まれているCanvas
- 各チャンネル・DMに1つずつ存在
- チャンネルメンバー全員がアクセス可能
- チャンネルのヘッダーから簡単にアクセス
利用例:
- チャンネルの運用ルール
- プロジェクト概要
- よくある質問(FAQ)
- 重要なリンク集
独立したCanvas(スタンドアロン)
チャンネルやDMに紐づかない、独立したCanvas
- 有料プラン限定の機能
- 個人メモや下書きに最適
- 自由に共有範囲を設定可能
利用例:
- 個人のタスク管理
- アイデアのメモ
- 複数チャンネルで共有する資料
Canvasでできること:主な機能一覧
Canvasには、情報共有を効率化する多彩な機能が搭載されています。
1. リッチテキスト編集
書式設定バーを使って、見やすいドキュメントを作成:
- 見出し(H1、H2、H3)
- 太字、斜体、取り消し線
- 箇条書き・番号付きリスト
- 引用ブロック
- コードブロック
- リンク
Markdownにも対応しているので、慣れている人は素早く編集できますよ。
2. チェックリスト機能
タスクやToDoリストを簡単に管理:
- チェックボックス付きリスト
- 完了したタスクは自動で下部に移動(設定可能)
- 進捗が一目で分かる
会議の議事録や行動計画に最適です。
3. 表の作成と編集
情報を整理して視覚的に表示:
- ツールバーから簡単に表を挿入
- 行・列の追加・削除が自由
- 各セルに任意の情報を入力
タスクの担当者や期限を管理するのに便利ですね。
4. ファイルとメディアの埋め込み
さまざまなコンテンツをCanvasに統合:
- 画像・動画・音声ファイル
- PDFやドキュメント
- Slackメッセージへのリンク
- 外部リンクのプレビュー表示
必要な情報を1箇所にまとめられるので、探す手間が省けます。
5. ワークフローの埋め込み
自動化されたプロセスをCanvasに配置:
Slackワークフローのリンクを貼り付けるだけで、ボタンとして表示されます。
例:
- 出張申請フォーム
- 会議室予約システム
- 経費精算の開始ボタン
チームメンバーが簡単にアクセスできるようになります。
6. メンバープロフィールカードの挿入
チームメンバーの情報を視覚的に表示:
@ユーザー名でメンバーを追加し、「カードとして表示」を選択すると、プロフィール写真と情報が表示されます。
プロジェクトメンバー一覧やチーム紹介に活用できますね。
7. リアルタイム共同編集
複数メンバーで同時に編集可能:
- Google Docsのように、同時編集ができる
- 編集履歴が自動保存される
- コメント機能でフィードバックを残せる
会議中にリアルタイムで議事録を作成する場合などに便利です。
8. AI機能の統合
Slack AIを使ってCanvas作成を効率化:
- プロジェクト計画の下書き自動生成
- アイデア出しのサポート
- 重要ポイントの要約
- 会話からCanvasへの自動変換
AI機能を使えば、白紙の状態から始める必要がなくなります。
Canvasの使い方:基本操作ガイド
実際にCanvasを作成・編集する手順を見ていきましょう。
チャンネル/DMからCanvasを開く方法
デスクトップ版:
- 対象のチャンネルまたはDMを開く
- 画面右上の「Canvas」アイコンをクリック
- Canvasが右側に表示される
初めて開く場合は、新規作成画面が表示されます。
モバイル版:
- チャンネルまたはDMを開く
- 画面上部の「Canvas」タブをタップ
- Canvasが表示される
独立したCanvasを作成する方法(有料プラン)
デスクトップ版:
- サイドバーの「+」(プラス)ボタンをクリック
- 「Canvas」を選択
- 新しいCanvasが作成される
または:
- サイドバーの「ファイル」をクリック
- 左サイドバーで「Canvas」を選択
- 右上の「新しいCanvas」ボタンをクリック
Canvasに内容を追加する方法
基本的な入力:
- テキストを直接入力
- 書式設定バーで見出しやリストを選択
- Markdownも使用可能
ファイルの追加:
- 書式設定バーのクリップアイコンをクリック
- ファイルを選択してアップロード
表の追加:
- 書式設定バーから「表」を選択
- 行・列を調整
- 各セルに情報を入力
Canvasを共有する方法
チャンネルに共有:
- Canvas画面右上の「…」をクリック
- 「Slackで共有」を選択
- 共有先のチャンネルを選択
リンクをコピー:
- 「…」メニューから「リンクをコピー」を選択
- 任意の場所に貼り付け
権限管理の設定
Canvas所有者は、アクセス権限を細かく設定できます:
- 閲覧のみ:内容を見ることだけ可能
- 編集権限:内容の変更・コメント追加が可能
- 所有者権限:権限管理を含むすべての操作が可能
チャンネルのCanvasは、チャンネルで投稿権限を持つメンバー全員が編集可能です。
便利なテンプレート機能
Canvasには、用途別のテンプレートが15種類以上用意されています。
主なテンプレート一覧
プロジェクト管理系:
- プロジェクト概要
- プロダクトブリーフ
- マーケティングプロジェクト
会議・議事録系:
- 会議の議事録
- ミーティングアジェンダ
タスク管理系:
- やることリスト
- チェックリスト
チーム運営系:
- 従業員オンボーディング
- チーム紹介
- FAQ(よくある質問)
その他:
- 月次ニュースレター
- 不在時の対応計画
テンプレートの使い方
- Canvasを開く
- テンプレート選択画面が表示される
- 目的に合ったテンプレートを選択
- 内容をカスタマイズ
一から作るより大幅に時間を節約できますね。
Canvasの実践的な活用事例
実際にどのように使われているか、具体例を見ていきましょう。
活用例1:朝会の効率化
課題:
毎朝SlackbotがメッセージをポストSwift、スレッドで各自が報告していたが、複数の議論が同時進行すると煩雑になる。
Canvas活用後:
- 1つのCanvasに全員が記入
- 進捗・共有・相談を構造化
- スレッドで議論が残る
- 会議時間が効率化
ビザスク社の事例では、朝会運用をCanvas化したことで、一覧性が向上し、議論が加速したそうです。
活用例2:プロジェクト概要の共有
使い方:
- プロジェクトの目的・目標
- スケジュールとマイルストーン
- チームメンバー一覧(プロフィールカード)
- 関連リンクとドキュメント
- タスクリスト
新しいメンバーが参加しても、Canvasを見れば全体像が把握できます。
活用例3:従業員オンボーディング
含める内容:
- 初日のスケジュール
- 必読資料へのリンク
- 参加すべきチャンネルリスト(ワンクリックで参加可能)
- トレーニング動画
- チームメンバー紹介
- よくある質問
新入社員が必要な情報にすぐアクセスできるようになります。
活用例4:チャンネル運用ルール
記載例:
- このチャンネルの目的
- 投稿する内容のガイドライン
- 緊急時の連絡方法
- 関連チャンネルへのリンク
チャンネルが大きくなっても、秩序を保つことができますね。
活用例5:営業チームのアカウント管理
Salesforce連携の活用:
- 顧客情報の表示(Sales Cloud)
- サポートチケット(Service Cloud)
- 商談データの可視化
- 重要ファイルの集約
システム間を行き来する必要がなくなり、効率が大幅に向上します。
無料プランと有料プランの違い
Canvasの機能は、プランによって異なります。
無料プラン(Free)
利用可能な機能:
- チャンネル組み込み型Canvasのみ
- 各チャンネルに1つのCanvas
- 基本的な編集機能
- テンプレート利用可能
制限:
- 独立したCanvasは作成不可
- 一部の高度な機能に制限あり
有料プラン(Pro / Business+ / Enterprise Grid)
追加される機能:
- 独立したCanvasを無制限に作成可能
- DMでのCanvas作成
- より高度な権限管理
- データ保持ポリシーの設定
- API経由でのCanvas操作
個人用メモやプロジェクト横断的なドキュメントを作りたい場合は、有料プランが必要です。
ポスト機能からCanvasへの移行
以前Slackには「ポスト」という機能がありましたが、2024年3月以降はCanvasに統合されました。
主な変更点
ポスト機能(旧):
- 独立したドキュメント作成が可能
- 無料プランでも複数作成可能
Canvas(新):
- チャンネル組み込み型が基本
- 無料プランでは独立したCanvas作成不可
- より多くの機能を搭載
既存ポストの扱い:
2023年9月18日以降、すべてのポストは自動的にCanvasに変換されました。
内容は保持されるので安心してください。
Canvasを使う上での注意点
便利な機能ですが、いくつか気をつけたいポイントもあります。
1. Canvasのエクスポートはできない
重要:Slack公式機能として、個別のCanvasをエクスポートする機能はありません。
将来的にSlack外で使う可能性がある情報は、Google DocsやNotionなど他のツールを検討しましょう。
有料プランの管理者は、ワークスペース全体のエクスポートを行えますが、個別のCanvasエクスポートは不可です。
2. モバイルでの機能制限
モバイルアプリでできないこと:
- Canvasの削除
- 編集権限のリクエスト
- 削除したCanvasの復元
本格的な編集はデスクトップ版で行うのがおすすめです。
3. 権限設定の確認
チャンネルのCanvasは、チャンネルで投稿権限を持つ全員が編集できます。
機密情報を含む場合は、独立したCanvasを作成し、アクセス権限を適切に設定してください。
4. 検索性の確保
Canvasの内容は検索可能ですが、適切なタイトルや見出しを付けることで、より見つけやすくなります。
命名規則を決めておくと良いでしょう。
5. 情報の重複に注意
Canvasと他のツール(Google Docs、Notionなど)で同じ情報を管理すると、どちらが最新か分からなくなります。
「情報はCanvasに集約する」というルールを決めておくことをおすすめします。
よくある質問と回答
Q1. Canvasは誰でも使えますか?
はい、無料プランでも使えます。
ただし、無料プランではチャンネル組み込み型のCanvasのみ利用可能です。
Q2. 一つのチャンネルに複数のCanvasを作れますか?
いいえ、各チャンネル・DMには1つの組み込み型Canvasのみです。
ただし、そのCanvas内に別のCanvasへのリンクを埋め込むことは可能です。
Q3. 削除したCanvasは復元できますか?
はい、30日以内であれば復元可能です。
デスクトップ版で、削除したCanvasの一覧から「復元」を選択してください。
Q4. Canvasの編集履歴は確認できますか?
はい、編集履歴が自動保存されています。
Canvas右上の「…」メニューから「バージョン履歴」を確認できます。
Q5. 外部ツールとの連携はできますか?
はい、以下のような連携が可能です:
- Salesforce Customer 360
- Jira
- Figma
- Google Drive
- その他、Slackアプリとして提供されているツール
リンクを貼り付けるだけで、プレビューが表示されます。
Q6. Canvasのデータ保持期間は?
ワークスペースの設定に従います。
デフォルトでは永続的に保存されますが、管理者が保持ポリシーを設定している場合は、その設定が適用されます。
CanvasとNotionやGoogle Docsとの違い
他のドキュメントツールと比較してみましょう。
Slack Canvas
メリット:
- Slack内で完結(アプリ切り替え不要)
- チャンネルと連動
- リアルタイム通知との統合
- ワークフローの埋め込みが簡単
デメリット:
- エクスポート機能が限定的
- Slack外からのアクセス不可
Notion
メリット:
- 高度なデータベース機能
- カスタマイズ性が高い
- Slack外でもアクセス可能
デメリット:
- アプリを切り替える必要がある
- 学習コストが高め
Google Docs
メリット:
- 広く普及している
- Officeとの互換性
- 強力なコメント機能
デメリット:
- Slackとの統合は限定的
- アプリ切り替えが必要
結論:
Slackを主なコミュニケーションツールとして使っているなら、Canvasが最も効率的です。
まとめ:Slack Canvasで情報管理を効率化しよう
Slack Canvasについて、重要なポイントをまとめました。
この記事の要点:
- CanvasはSlack内で情報を作成・共有するための新機能
- チャンネル組み込み型と独立型の2種類
- リッチテキスト、チェックリスト、表、ファイル埋め込みなど多彩な機能
- 15種類以上のテンプレートで素早く作成可能
- リアルタイム共同編集で会議やプロジェクト管理が効率化
- 無料プランでも基本機能は利用可能
- 有料プランでは独立したCanvasを無制限に作成できる
- エクスポート機能に制限があるため、用途に応じて使い分けが必要
Slack Canvasを活用すれば、チャットで流れていく情報を整理し、チーム全体で共有・編集できるようになります。
議事録、プロジェクト計画、オンボーディング資料、FAQ――あらゆる情報をCanvasにまとめることで、業務効率が大幅に向上します。
まだ使ったことがない方は、ぜひ一度試してみてください。
Slackでの情報共有が、劇的に変わること間違いなしですよ!


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