Slackのペン機能とは?

Slackのペン機能(描画機能)とは、ハドルミーティング(Huddle)で画面共有中に、共有された画面に直接注釈や矢印を描き込める便利な機能です。
リモートワークやオンライン会議で「この部分のことです」と指し示したい時、マウスカーソルだけでは伝わりにくいことがあります。そんな時にペン機能を使えば、まるでホワイトボードに書き込むように、画面上に図形や矢印、メモを描いてコミュニケーションを円滑にできます。
ペン機能の特徴
自動で消える描画:
- 描いた内容は約10秒で自動的に消えるため、画面が散らからない
- Zoomなど他のツールと違い、わざわざ消す必要がない
リアルタイムコラボレーション:
- 複数の参加者が同時に描画できる(Draw Together機能)
- 画面共有者以外はデフォルトでペン機能が有効
カラーバリエーション:
- 複数の色から選択可能
- 参加者ごとに色を変えて描画できる
ペン機能でできること
ペン機能を使うと、以下のようなことができます。
- コードレビュー:プログラムの特定の行を丸で囲んで指摘
- デザイン確認:修正してほしい箇所に矢印を描く
- プレゼンテーション:重要なポイントをハイライト
- 説明図の作成:簡単な図やフローチャートを描く
- ペアプログラミング:問題箇所を視覚的に共有
ペンが見えない・使えない主な原因
「ペンシルアイコンが表示されない」「描画できない」という問題には、いくつかの原因があります。
原因1:特定のウィンドウのみを共有している【最重要】
これが最も多い原因です。
Slackのペン機能は、デスクトップ全体を共有している時のみ使用できます。特定のアプリケーションやウィンドウだけを共有している場合、ペン機能は利用できません。
なぜ?
ペン機能は、共有された画面の上に透明なレイヤーを重ねて描画する仕組みです。特定のウィンドウだけを共有している場合、この透明レイヤーを作成できないため、描画機能が無効になります。
原因2:ブラウザ版のSlackを使用している
ペン機能は、Mac・Windowsのデスクトップアプリでのみ利用可能です。
以下の環境では使用できません:
- Webブラウザ版のSlack(Chrome、Safari、Firefoxなど)
- モバイルアプリ版(iPhone、Android)
原因3:無料プランを使用している
画面共有機能自体が、Slackの有料プラン(Standard、Plus、Enterprise Grid)でのみ利用可能です。
無料プランでは:
- ハドルミーティングは最大2人まで
- 画面共有機能が制限される
- ペン機能も使用できない
原因4:ファイアウォールやセキュリティ設定
企業のネットワーク環境で、ファイアウォールがSlackの通信をブロックしている場合、画面共有やペン機能が正常に動作しないことがあります。
原因5:OSの画面共有権限が許可されていない
macOSやWindowsで、Slackアプリに画面共有の権限が与えられていない場合、ペン機能が使えません。
ペン機能を使えるようにする手順【解決策】
それでは、実際にペン機能を使えるようにする方法を、ステップごとに解説します。
【ステップ1】デスクトップ版Slackアプリをインストール
ブラウザ版を使っている場合は、まずデスクトップアプリをインストールしましょう。
Windowsの場合:
- Slack公式サイトにアクセス
- 「Windows版をダウンロード」をクリック
- ダウンロードしたインストーラーを実行
- 画面の指示に従ってインストール
- Slackアプリを起動してログイン
Macの場合:
- Slack公式サイトにアクセス
- 「Mac版をダウンロード」をクリック
- ダウンロードした.dmgファイルを開く
- Slackアイコンをアプリケーションフォルダにドラッグ
- Slackアプリを起動してログイン
【ステップ2】OS側の画面共有権限を設定
デスクトップアプリをインストールしたら、OS側でSlackに画面共有の権限を与えます。
Macの場合:
- 「システム環境設定(システム設定)」を開く
- 「セキュリティとプライバシー」→「プライバシー」タブをクリック
- 左側のリストから「画面収録(Screen Recording)」を選択
- 🔒(鍵マーク)をクリックして設定を変更可能にする
- リストの中から「Slack」を探してチェックを入れる
- Slackアプリを再起動する
Windowsの場合:
- Windows検索バーに「ファイアウォール」と入力
- 「Windows Defenderファイアウォール」を開く
- 左側メニューから「アプリによるファイアウォール経由の通信を許可」をクリック
- 「設定の変更」をクリック
- 「別のアプリの許可」をクリック
- Slackアプリを選択して「追加」
- 「プライベート」と「パブリック」の両方にチェックを入れる
- 「OK」をクリック
【ステップ3】有料プランを確認
画面共有機能は有料プランでのみ利用可能です。ワークスペースのプランを確認しましょう。
プランの確認方法:
- Slackアプリを開く
- 左上のワークスペース名をクリック
- 「設定と管理」→「ワークスペースの設定」を選択
- 「プランと請求」セクションで現在のプランを確認
無料プランの場合:
ワークスペースのオーナーまたは管理者に、有料プランへのアップグレードを依頼してください。
【ステップ4】ハドルミーティングを開始して画面共有
準備が整ったら、実際にハドルミーティングで画面共有を開始します。
ハドルミーティングの開始:
- Slackでチャンネルまたはダイレクトメッセージ(DM)を開く
- 画面右上の🎧(ヘッドフォン)アイコンをクリック
- 「ハドルミーティングを開始」を選択
- ハドルミーティングが開始される
【ステップ5】デスクトップ全体を共有する【最重要】
ペン機能を使うには、必ずデスクトップ全体を共有してください。
画面共有の正しい手順:
- ハドルミーティング画面下部の🖥️(モニター)アイコンをクリック
- 共有する画面を選択する画面が表示される
- 「デスクトップ全体」または「Your Entire Screen」を選択(重要!)
- 「共有」ボタンをクリック
❌ NG例:
- 「Google Chrome」など特定のアプリケーションを選択
- 「ウィンドウ」タブから特定のウィンドウを選択
✅ OK例:
- 「デスクトップ1」を選択
- 「メイン画面」を選択
- 「すべての画面」を選択
【ステップ6】ペン機能を使用する
デスクトップ全体の共有が始まったら、ペンシルアイコンが表示されます。
ペン機能の使い方:
- ハドルミーティング画面に表示される✏️(ペンシル)アイコンをクリック
- マウスやタッチパッドで画面上に自由に描画
- 描いた内容は約10秒で自動的に消える
色を変更する:
- Windows:Ctrlキーを押しながらクリック
- Mac:Commandキー(⌘)を押しながらクリック
消しゴムを使う:
- 消しゴムアイコンをクリックして不要な描画を消す
他の人にも描画を許可する:
- 「Draw Together」アイコンをクリック
- アイコンが白い状態:他の参加者も描画可能
- アイコンがグレー:描画は自分のみ
よくあるトラブルと追加の対処法
トラブル1:ペンシルアイコンが表示されない
対処法:
- デスクトップ全体を共有しているか再確認
- 画面共有を一度停止
- 再度共有する際に「デスクトップ全体」を選択
- Slackアプリを最新版に更新
- 左上のワークスペース名をクリック
- 「ヘルプ」→「アップデートを確認」
- 更新がある場合はインストール
- アプリを再起動
- Slackアプリを完全に終了
- もう一度起動してハドルミーティングに参加
トラブル2:描画しても何も表示されない
対処法:
- ネットワーク接続を確認
- Wi-Fiや有線接続が安定しているか確認
- 可能であれば有線接続に切り替え
- 帯域幅の要件を満たしているか確認
- 下り:最低1.5Mbps(推奨5Mbps以上)
- 上り:最低1.5Mbps(推奨5Mbps以上)
- Speedtest.netなどで速度測定
- ファイアウォール設定を確認
- 企業ネットワークの場合、IT部門に相談
- 必要なポート:UDP 22466、TCP 443
トラブル3:ペンの動きが遅い・カクカクする
対処法:
- ビデオをオフにする
- 📹(カメラ)アイコンをクリックしてビデオを停止
- 画面共有とペン機能だけに集中
- 他のアプリケーションを閉じる
- 不要なブラウザタブやアプリを終了
- CPU使用率を下げる
- ハードウェアアクセラレーションを有効にする
- 左上のワークスペース名→「環境設定」
- 「詳細設定」→「ハードウェアアクセラレーションを有効にする」にチェック
- Slackを再起動
トラブル4:Mac使用時に「画面共有できません」エラー
対処法:
macOS Catalina以降では、追加の権限設定が必要です。
- 「システム環境設定」→「セキュリティとプライバシー」
- 「プライバシー」タブをクリック
- 左側から「アクセシビリティ」を選択
- Slackにチェックを入れる
- 左側から「画面収録(Screen Recording)」を選択
- Slackにチェックを入れる
- Slackアプリを再起動
トラブル5:Windows使用時に画面が真っ暗になる
対処法:
- グラフィックドライバーを更新
- デバイスマネージャーを開く
- 「ディスプレイアダプター」を展開
- グラフィックカードを右クリック→「ドライバーの更新」
- 省電力モードを無効にする
- 「電源オプション」を開く
- 「高パフォーマンス」プランを選択
ペン機能の便利な活用例
1. コードレビュー
プログラミングでペアプログラミングやコードレビューをする際、問題のある行を丸で囲んだり、修正のヒントを矢印で示したりできます。
使い方のコツ:
- 行番号の横に矢印を描く
- エラー箇所を赤丸で囲む
- 正しいコードの流れを矢印で示す
2. デザインフィードバック
Webデザインやグラフィックデザインのレビュー時に、修正してほしい箇所を視覚的に伝えられます。
使い方のコツ:
- 余白の調整箇所を矢印で示す
- 色を変えるべき部分に丸を描く
- テキストの位置を示す
3. プレゼンテーション
資料を画面共有しながらプレゼンする際、重要なポイントをハイライトできます。
使い方のコツ:
- グラフの注目ポイントに丸を描く
- データの推移を矢印で示す
- キーワードに下線を引く
4. トラブルシューティング
ITサポートで、操作方法を説明する際に「ここをクリック」と視覚的に示せます。
使い方のコツ:
- クリックすべきボタンを丸で囲む
- 手順を番号で示す
- 操作の流れを矢印で示す
5. ブレインストーミング
アイデア出しの際、簡単な図やマインドマップを描いて共有できます。
使い方のコツ:
- 関連性を矢印で示す
- グルーピングを丸で囲む
- 重要度を星マークで示す
よくある質問(FAQ)
Q1: ペンで描いた内容は保存されますか?
A: いいえ、保存されません。ペンで描いた内容は約10秒で自動的に消えます。これにより、画面が散らからず、次の説明にスムーズに移れます。もし記録として残したい場合は、画面共有中にスクリーンショットを撮影してください。
Q2: タブレットやペンタブレットでペン機能を使えますか?
A: はい、使えます。MacでiPadのSidecar機能を使ったり、ペンタブレット(WacomなどApple Pencilや物理的なペンを使って、より正確な描画ができます。
Q3: モバイルアプリ(スマホ・タブレット)でペン機能は使えますか?
A: 現時点では、ペン機能はMac・WindowsのデスクトップアプリでのみSupportされています。iOS・Androidアプリでは使用できません。
Q4: 複数の人が同時に描画すると混乱しませんか?
A: Slackでは参加者ごとに異なる色が自動で割り当てられるため、誰が何を描いたかが分かりやすくなっています。また、描画は約10秒で消えるため、画面が混雑することはありません。
Q5: ペン機能を無効にすることはできますか?
A: はい、できます。画面共有者が「Draw Together」アイコンをクリックしてオフにすると、他の参加者はペン機能を使えなくなります。プレゼンテーション中など、意図しない描画を防ぎたい時に便利です。
Q6: ペンの太さや種類は変更できますか?
A: 現時点では、ペンの太さやスタイル(実線・点線など)の変更はできません。色の変更のみ可能です。
Q7: Zoomのアノテーション機能との違いは?
A: Slackのペン機能は、描いた内容が約10秒で自動消去される点が大きな違いです。Zoomでは手動で消さないと残り続けるため、画面が散らかりがちです。Slackの方が気軽に使えて、画面をクリーンに保てます。
Q8: ペン機能は録画に記録されますか?
A: Slackのハドルミーティングには標準の録画機能がありません。外部ツール(OBSなど)で録画している場合、ペンの描画も記録されます。
Q9: 画面共有を停止するとペンも使えなくなりますか?
A: はい、ペン機能は画面共有中のみ使用可能です。画面共有を停止すると、ペンシルアイコンも消えます。
Q10: 複数のモニター(マルチディスプレイ)環境でペン機能を使う場合の注意点は?
A: 複数のモニターがある場合、共有したいモニターを選択してください。ペン機能は、共有しているモニターの画面上でのみ描画できます。別のモニターには描画されません。
まとめ:Slackのペン機能を活用してリモートワークを快適に
Slackのハドルミーティングで使えるペン機能は、リモートワークやオンライン会議を大きく改善する便利なツールです。
ペン機能を使うための必須条件:
- ✅ Mac・WindowsのSlackデスクトップアプリを使用
- ✅ 有料プラン(Standard、Plus、Enterprise Grid)に加入
- ✅ デスクトップ全体を画面共有(特定のウィンドウではNG)
- ✅ OS側で画面共有権限を許可
- ✅ 安定したネットワーク接続
ペンが見えない時の確認ポイント:
- デスクトップアプリを使っているか?(ブラウザ版ではNG)
- デスクトップ全体を共有しているか?(ウィンドウ指定ではNG)
- 有料プランか?(無料プランでは使えない)
- 画面共有権限が許可されているか?
ペン機能の便利な特徴:
- 約10秒で自動消去→画面が散らからない
- 複数人で同時描画可能→コラボレーションしやすい
- 色の変更可能→誰の描画か分かりやすい
ペン機能を活用すれば、「この部分のことです」という説明が格段に分かりやすくなり、コミュニケーションの質が向上します。コードレビュー、デザインフィードバック、プレゼンテーション、トラブルシューティングなど、さまざまな場面で役立つ機能です。
この記事の手順に従って、ぜひSlackのペン機能を使いこなしてください!


コメント