「クトゥルフ神話TRPG」や『這いよれ!ニャル子さん』で名前を聞いたことはありませんか?
クトゥルフ神話とは、アメリカの怪奇小説家H.P.ラヴクラフト(1890-1937)が生み出した架空の神話体系です。
太古の地球を支配していた邪神たちが現代に蘇るという「宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)」を描いた独自の世界観が特徴なんです。
でも、「どの作品から触れればいいかわからない」「小説以外にどんな作品があるの?」という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、クトゥルフ神話に関連する小説・映画・ゲーム・アニメ・漫画を、ジャンル別にわかりやすく一覧でご紹介します。
クトゥルフ神話とは?

神話の誕生と発展
クトゥルフ神話は、ラヴクラフトが1920年代から1930年代にかけて執筆した一連のホラー小説を原点としています。
特徴的なのは、ラヴクラフトが仲間の作家たちと設定を共有し、互いの作品で神々や書物の名前を使い合ったこと。
これにより、一人の作家では成し得ない広大な神話体系が生まれました。
ラヴクラフトの死後、友人のオーガスト・ダーレスが作品を整理し、「クトゥルフ神話」という名称で体系化。
現在では世界中のクリエイターが、この神話を題材にした作品を生み出し続けています。
なぜ今も人気なの?
クトゥルフ神話の魅力は、人間の無力さと宇宙の無関心を描いた独自の恐怖にあります。
従来のホラーが「倒せる敵」を描いたのに対し、クトゥルフ神話では人間が理解すら及ばない存在と対峙します。
知れば知るほど正気を失うという設定は、ゲームの「SAN値(正気度)」システムとしても親しまれていますね。
ラヴクラフト原作小説一覧
クトゥルフ神話を知るなら、まずは原点であるラヴクラフトの作品から。
特に重要な作品をピックアップしました。
必読の代表作
| 作品名 | 発表年 | 概要 |
|---|---|---|
| クトゥルフの呼び声 | 1928年 | 神話の名前の由来となった最重要作品。海底都市ルルイエに眠る邪神クトゥルフの存在が明かされる |
| ダンウィッチの怪 | 1929年 | 田舎町で生まれた異形の双子の恐怖。ヨグ=ソトースが登場 |
| インスマスの影 | 1936年 | 奇妙な住民が暮らす港町の秘密。深きものとの混血が描かれる |
| 狂気の山脈にて | 1936年 | 南極探検隊が発見した古代文明の遺跡。古のものが初登場 |
| 時間からの影 | 1936年 | イースの大いなる種族による精神交換。壮大な時間SFホラー |
その他の主要作品
| 作品名 | 発表年 | 概要 |
|---|---|---|
| ダゴン | 1917年 | 最初期の作品。海の巨人との遭遇を描く |
| ナイアーラトテップ | 1920年 | 千の貌を持つ神の散文詩 |
| 魔女の家の夢 | 1933年 | 異次元への扉が開く恐怖 |
| 宇宙からの色 | 1927年 | ラヴクラフト自身が最高傑作と称した作品 |
| 闘に囁くもの | 1931年 | ミ=ゴ(ユゴスよりの菌類)が登場 |
| チャールズ・ウォードの奇怪な事件 | 1927年 | 長編小説。死者蘇生の禁断の術 |
ラヴクラフト・サークルの作品
ラヴクラフトと交流のあった作家たちも、神話の発展に大きく貢献しました。
主要な継承作家と代表作
| 作家名 | 代表作 | 神話への貢献 |
|---|---|---|
| クラーク・アシュトン・スミス | 『サタンプラ・ゼイロスの物語』『ウボ=サスラ』 | ツァトゥグァ、エイボンの書を創造 |
| ロバート・E・ハワード | 『黒い石』『無名祭祀書』 | 無名祭祀書、ブラン・マク・モーンを創造 |
| ロバート・ブロック | 『星から来たもの』『アーカムの館』 | ヨグ=ソトースの子供たちを描写 |
| オーガスト・ダーレス | 『潜伏するもの』『クトゥルフ神話の軌跡』 | 神話を体系化、旧神の概念を追加 |
| ブライアン・ラムレイ | 『タイタス・クロウ』シリーズ | 現代的なアクション要素を導入 |
日本のクトゥルフ神話小説

日本でもクトゥルフ神話は独自の発展を遂げています。
黎明期の作品
| 作品名 | 作者 | 発表年 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 黄金虫 | 高木彬光 | 1950年代 | 日本最初のクトゥルフ神話作品とされる |
| 銀の弾丸 | 山田正紀 | 1970年代 | 日本初期のクトゥルフ神話短編集 |
| 邪神惑星 | 栗本薫 | 1980年代 | 日本最初の長編クトゥルフ神話作品 |
現代の人気作品
| 作品名 | 作者 | 概要 |
|---|---|---|
| 這いよれ!ニャル子さん | 逢空万太 | 邪神を美少女化したラブコメ。アニメ化もされた大人気作 |
| 妖神グルメ | 菊地秀行 | クトゥルフ神話と日本の妖怪を融合 |
| 玩具修理者 | 小林泰三 | 日本ホラー小説大賞受賞作 |
| 名門校の女子生徒会長がアブドゥル=アルハザードのネクロノミコンを読んだら | 早矢塚かつや | タイトルが印象的なライトノベル |
| 未完少女ラヴクラフト | 黒史郎 | 現代日本を舞台にした神話ホラー |
映画作品一覧
クトゥルフ神話は映画化も盛んに行われています。
ただし、「名状しがたい恐怖」を映像化する難しさから、原作の雰囲気を完全に再現した作品は少ないのが現状です。
ラヴクラフト原作の映画化作品
| 作品名 | 公開年 | 原作 | 概要 |
|---|---|---|---|
| カラー・アウト・オブ・スペース -遭遇- | 2020年 | 宇宙からの色 | ニコラス・ケイジ主演。極彩色の恐怖を見事に映像化 |
| ダゴン | 2001年 | インスマスの影 | スチュアート・ゴードン監督の傑作 |
| ZOMBIO/死霊のしたたり | 1985年 | ハーバート・ウェストー死体蘇生者 | カルト的人気を誇るホラーコメディ |
| フロム・ビヨンド | 1986年 | 彼方より | 異次元の存在との接触を描く |
| キャッスル・フリーク | 1995年 | 部外者 | スチュアート・ゴードン監督作 |
| ダンウィッチの怪 | 1970年 | ダンウィッチの怪 | 古典的なホラー映画 |
クトゥルフ神話の影響を受けた映画
| 作品名 | 公開年 | 特徴 |
|---|---|---|
| マウス・オブ・マッドネス | 1994年 | ジョン・カーペンター監督。ラヴクラフト的恐怖を現代に蘇らせた傑作 |
| ミスト | 2007年 | スティーヴン・キング原作。異次元からの怪物が襲来 |
| エイリアン | 1979年 | 宇宙的恐怖の映像化として高く評価される |
| 遊星からの物体X | 1982年 | 不定形の恐怖を描いたSFホラーの金字塔 |
| ビヨンド | 1981年 | ルチオ・フルチ監督。エイボンの書が登場 |
| アナイアレイション | 2018年 | 異質な変容を描くSFホラー |
アニメ映画
| 作品名 | 公開年 | 概要 |
|---|---|---|
| ハワード・ラヴクラフトと凍てつく王国 | 2016年 | 少年ラヴクラフトの冒険を描くアニメ三部作の第一作 |
| 狂気山脈 ネイキッド・ピーク | 製作中 | クラウドファンディングで製作中の日本発アニメ映画 |
ゲーム作品一覧
クトゥルフ神話とゲームの相性は抜群。
特にTRPG『クトゥルフ神話TRPG』は、神話の普及に最も貢献した作品と言えるでしょう。
テーブルトークRPG(TRPG)
| 作品名 | 発売年 | 概要 |
|---|---|---|
| クトゥルフ神話TRPG(Call of Cthulhu) | 1981年 | ケイオシアム社発売。神話を体系化した最重要作品 |
| クトゥルフ神話TRPG 第7版 | 2014年 | 現行の最新ルール |
| 新クトゥルフ神話TRPG | 2019年 | 第7版の日本語版 |
| デルタグリーン | 1997年 | 現代を舞台にしたクトゥルフTRPG |
| トレイル・オブ・クトゥルー | 2008年 | 調査に特化したルールシステム |
ビデオゲーム:クラシック作品(1990年代〜2000年代)
| 作品名 | 発売年 | ジャンル | 概要 |
|---|---|---|---|
| アローン・イン・ザ・ダーク | 1992年 | アドベンチャー | サバイバルホラーの元祖。クトゥルフ神話が下敷き |
| シャドウ・オブ・ザ・コメット | 1993年 | アドベンチャー | インフォグラム社の傑作 |
| プリズナー・オブ・アイス | 1995年 | アドベンチャー | 南極を舞台にした続編 |
| Call of Cthulhu: Dark Corners of the Earth | 2005年 | アクションアドベンチャー | 『インスマスの影』を原作とした傑作 |
| クトゥルフの呼び声 | 2006年 | RPG | 日本製のクトゥルフRPG |
ビデオゲーム:現代作品(2010年代〜2020年代)
| 作品名 | 発売年 | ジャンル | 概要 |
|---|---|---|---|
| Darkest Dungeon | 2016年 | ローグライクRPG | 精神崩壊システムが神話的。大ヒット作 |
| Bloodborne | 2015年 | アクションRPG | フロムソフトウェア製。コズミックホラー要素が濃厚 |
| Call of Cthulhu | 2018年 | アドベンチャーRPG | TRPGを基にした公式ゲーム |
| The Sinking City | 2019年 | オープンワールドアドベンチャー | 水没した都市での探索 |
| Dredge | 2023年 | 釣りホラー | 釣りゲームとコズミックホラーの融合。2023年のヒット作 |
| Sherlock Holmes: The Awakened | 2023年 | アドベンチャー | シャーロック・ホームズとクトゥルフのクロスオーバー |
| Alone in the Dark | 2024年 | サバイバルホラー | 1992年作のリメイク |
| Still Wakes the Deep | 2024年 | ホラーアドベンチャー | 石油リグを舞台にしたコズミックホラー |
| Worshippers of Cthulhu | 2024年 | 都市建設シミュレーション | クトゥルフ教団を運営するシミュレーション |
ボードゲーム・カードゲーム
| 作品名 | 発売年 | 概要 |
|---|---|---|
| アーカムホラー | 1987年 | 協力型ボードゲームの傑作 |
| エルダーサイン | 2011年 | ダイスゲーム |
| パンデミック:クトゥルフの呼び声 | 2016年 | パンデミックシリーズの神話版 |
| Cthulhu Wars | 2015年 | 戦略ボードゲーム |
| Arkham Horror: The Card Game | 2016年 | リビングカードゲーム |
アニメ作品一覧

日本のアニメでも、クトゥルフ神話の要素を取り入れた作品が増えています。
クトゥルフ神話を全面に押し出した作品
| 作品名 | 放送年 | 概要 |
|---|---|---|
| 這いよれ!ニャル子さん | 2012年 | 邪神を美少女化したラブコメ。OP曲も大人気 |
| 這いよれ!ニャル子さんW | 2013年 | 第2期 |
| 機神咆哮デモンベイン | 2006年 | ロボットとクトゥルフ神話の融合 |
| D_CIDE TRAUMEREI | 2021年 | クトゥルフ神話をモチーフにしたメディアミックス作品 |
クトゥルフ神話の要素が登場する作品
| 作品名 | 放送年 | 神話要素 |
|---|---|---|
| 戦え!イクサー1 | 1985年 | 敵の名前が「クトゥルフ」 |
| THE ビッグオー | 1999年 | メガデウス「ダゴン」が登場 |
| Fate/Zero | 2011年 | ルルイエ異本、海魔召喚シーン |
| Blood-C | 2011年 | クトゥルフ神話的な設定 |
| ウルトラマンティガ | 1996年 | 脚本家・小中千昭による神話オマージュ多数 |
漫画作品一覧
日本のクトゥルフ神話漫画
| 作品名 | 作者 | 概要 |
|---|---|---|
| H.P.ラヴクラフトのクトゥルフの呼び声 | 田辺剛 | 原作を忠実に漫画化した傑作 |
| H.P.ラヴクラフトの狂気の山脈にて | 田辺剛 | 同作者による長編漫画化 |
| 這いよれ!ニャル子さん(コミカライズ) | 狐印 | ライトノベルの漫画版 |
| 邪神伝説シリーズ | 矢野健太郎 | 日本のクトゥルフ漫画の先駆け |
| クトゥルフ神話への招待 | ソフトバンク | 解説漫画 |
アメコミ・海外コミック
| 作品名 | 出版社 | 概要 |
|---|---|---|
| Hellboy | ダークホース | コズミックホラー要素を含む人気シリーズ |
| The League of Extraordinary Gentlemen: Black Dossier | DC | 旧支配者との戦いが描かれる |
| Godzilla vs. Cthulhu | IDW | 2024年発売。ゴジラとクトゥルフの対決 |
資料集・事典
クトゥルフ神話をより深く知りたい方におすすめの資料集です。
| 作品名 | 著者/出版社 | 概要 |
|---|---|---|
| クトゥルー神話事典 | 東雅夫 | 日本語で読める最も包括的な事典 |
| エンサイクロペディア・クトゥルフ | ダニエル・ハームズ | 英語圏の決定版事典(日本語訳あり) |
| マレウス・モンストロルム | ケイオシアム | TRPG用の神々・クリーチャー事典 |
| 図解 クトゥルフ神話 | F-Files | 入門者向けのビジュアル解説書 |
| 新訳クトゥルー神話コレクション | 森瀬繚 訳 | 新訳による原典小説集 |
クトゥルフ神話作品を楽しむためのポイント
初心者におすすめの入り口
小説から始めたい方
→『クトゥルフの呼び声』『インスマスの影』がおすすめ。短編で読みやすく、神話の核心に触れられます。
ゲームから始めたい方
→『Darkest Dungeon』や『Dredge』なら、比較的カジュアルに神話の雰囲気を味わえます。本格派なら『クトゥルフ神話TRPG』に挑戦してみましょう。
ライトに楽しみたい方
→『這いよれ!ニャル子さん』のアニメや小説から。コメディタッチで神話の設定を学べます。
作品を楽しむ上での注意点
クトゥルフ神話の作品には、精神的な恐怖や狂気の描写が含まれることが多いです。
ホラーが苦手な方は、まずはライトな作品から入ることをおすすめします。
また、ラヴクラフトの原作小説は独特の文体で書かれており、現代の読者には読みづらい部分もあります。
新訳版や解説付きの版を選ぶと、より楽しめるでしょう。
まとめ
クトゥルフ神話は、1920年代に一人の作家が生み出した世界観が、100年近くの時を経て世界中に広がった稀有な神話体系です。
この記事で紹介した主なジャンル
- 原作小説:ラヴクラフトの短編・長編作品群
- 継承作家の作品:ダーレス、スミス、ハワードらの作品
- 日本の小説:『這いよれ!ニャル子さん』をはじめとするライトノベル
- 映画:『カラー・アウト・オブ・スペース』『マウス・オブ・マッドネス』など
- ゲーム:TRPG『クトゥルフ神話TRPG』、ビデオゲーム『Darkest Dungeon』『Dredge』など
- アニメ・漫画:『這いよれ!ニャル子さん』『機神咆哮デモンベイン』など
小説、映画、ゲーム、アニメと、様々なメディアで展開されているクトゥルフ神話。
興味を持った作品から、この深淵なる世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。
ただし、覚えておいてください。
クトゥルフ神話について知れば知るほど、あなたの正気度は削られていくかもしれません。
それでもなお、私たちは知ることを止められない——それこそが、クトゥルフ神話の永遠の魅力なのです。
いあ!いあ!くとぅるふ ふたぐん!


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